第34回 東京国際映画祭(TIFF) Nippon Cinema Now部門『彼女が好きなものは』Q&A レポート
【写真】第34回 東京国際映画祭(TIFF) Nippon Cinema Now部門 映画『彼女が好きなものは』Q&A (草野翔吾監督)

第34回東京国際映画祭(TIFF)
Nippon Cinema Now部門
映画『彼女が好きなものは』Q&A 

プロデューサーの熱意に監督を務めることを決意 
題材と真摯に向き合い映画化へ 

2019年にNHKにて「腐女子、うっかりゲイに告る。」のタイトルでドラマ化され話題を呼んだ、浅原ナオトの小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」(角川文庫刊)が映画化!

“ゲイ”であることを隠す主人公と“BL好き”であることを隠すヒロインという、交わるはずのなかった二人の出会いから始まる青春映画『彼女が好きなものは』12月3日(金)に公開される。

【画像】映画『彼女が好きなものは』メインカット

ワールドプレミア上映となった第26回釜山国際映画祭(BIFF)Open Cinema部門での上映に続いて、第34回東京国際映画祭(TIFF)Nippon Cinema Now部門に出品され、11月6日(土)にTOHOシネマズ シャンテで上映された。上映後のQ&Aには草野翔吾監督が登壇し、ティーチインが行われた。

プロデューサーの熱意を受け止め、監督を務めることを決意 

司会を務めた東京国際映画祭 プログラミング・ディレクターの市山尚三氏からの“この映画を作ることになったきっかけ”に関する質問を受けると、草野監督は「2018年から2019年にかけての冬に、プロデューサーの前原さんから原作の小説とお手紙が送られてきて、それがこの作品との最初の出会いでした」とその出会いから振り返った。

続けて「小説を読んで、身近なお話なのに今まで見えてなかったことや聞こえていなかったことが赤裸々に語られていると感じ、久しぶりに小説を読んで泣いてしまいました。それを映画化するということに『果たして自分の力が及ぶのか』という不安はありましたが、実際にプロデューサーとお会いしてその熱意を知り、それならば僕もこの題材、小説に『向き合おう』と思ったんです」と映画を作る決意をすることとなったきっかけを語った。

【写真】第34回 東京国際映画祭(TIFF) Nippon Cinema Now部門 映画『彼女が好きなものは』Q&A (草野翔吾監督、市山尚三プログラミング・ディレクター)

実際にディスカッションを行い、脚本の参考に 

中盤からは、草野監督が観客からの質問にその場で答えるティーチンが行われた。

まず劇中のディベートのシーンに注目した観客から「(ディベートのシーンの)セリフは用意されていたものなのか」と聞かれると、「原作にあるものではありませんが、セリフは決めていました。クラスメイト役のオーディションを開催して、高校生くらいの年齢の子たちが集まる中で、実際にディスカッションをしてもらって。その中で僕がグサッときた言葉を採集して、脚本に落とし込みました。それをできるだけ“自分の言葉”として、セリフっぽさは出すことなく演じてもらっています」とエピソードを披露。

続けて釜山国際映画祭でのQ&Aの様子や反応について聞かれると、「やはりディベートのシーンに関する質問が多かったです。ここにいる皆さんが彼女らの言葉をどう受け止めたかはわかりませんが、そこでは主に“ポジティブな言葉”として捉えられていたのかなという印象があって。もちろんその捉え方が必ずしも違うということではありませんが、僕は少し“危うい言葉”に聞こえていたもので、字幕を通して言葉のニュアンスが変わっているのか、もしくは日本と韓国で捉え方が違うのか…これは面白いなと思いました」と興味深い回答をした。

【写真】第34回 東京国際映画祭(TIFF) Nippon Cinema Now部門 映画『彼女が好きなものは』Q&A (草野翔吾監督)

最後に草野監督からメッセージ
「良い感想はぜひインターネットに!」

セクシュアルマイノリティのカミングアウトについての質問には、「LGBTを取り巻く考え方や環境は、日本では日々すごいスピードで変わっている最中ですよね。本当は“カミングアウト”なんて言葉が使われなくなるくらいみんなフラットな考え方ができるようになったり、この映画が特別“LGBTQを描いた映画”だと言われない日が来ることが、きっと理想なんだろうなと思います」と思いを語った。

イベントの最後には「感想がもっと聞きたいので、ぜひ“良い感想”をインターネットに書いてください。“悪い感想”は飲み込んでもらって…(笑)」と草野監督がユーモア溢れるメッセージを送り、感謝を述べて舞台挨拶は幕を閉じた。

【写真】第34回 東京国際映画祭(TIFF) Nippon Cinema Now部門 映画『彼女が好きなものは』Q&A (草野翔吾監督)

[スチール写真&記者: 美坂 英里]

イベント情報

第34回 東京国際映画祭(TIFF) Nippon Cinema Now部門
映画『彼女が好きなものは』Q&A

■開催日: 2021年11月6日(土)
■会場: TOHOシネマズ シャンテ スクリーン2
■登壇者: 草野翔吾監督
■MC: 市山尚三(東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター)
■英語通訳: 富田香里

【写真】第34回 東京国際映画祭(TIFF) Nippon Cinema Now部門 映画『彼女が好きなものは』Q&A (草野翔吾監督)

映画『彼女が好きなものは』予告篇🎞

映画作品情報

【画像】映画『彼女が好きなものは』ポスター

《ストーリー》

高校生の安藤純(神尾楓珠)は自分がゲイであることを隠して日々を過ごしている。ある日、書店でクラスメイトの三浦紗枝(山田杏奈)が、男性同士の恋愛をテーマとした、いわゆる BLマンガを購入しているところに遭遇。BL好きであることを秘密にしている紗枝は「誰にも言わないで欲しい」と純に口止めをするのだが、彼女はまだ知らなかった。目の前にいる純がゲイであることに。純には妻子ある同性の恋人・誠がいるが、書店での遭遇をきっかけに、純と紗枝は急接近。紗枝の友人達とダブルデートをしたり、クラスメイトたちと遊園地で遊んだりと仲を深めるうちに、純は紗枝から告白をされる。「自分も“ふつう”に女性と付き合い、“ふつう”の人生を歩めるのではないか︖」。一縷の望みにかけるかのように、紗枝の告白を受け入れ、付き合うことになったのだが・・・。

 
第26回釜山国際映画祭(BIFF) Open Cinema部門 出品作品
第34回東京国際映画祭(TIFF) Nippon Cinema Now部門 出品作品
 
出演: 神尾楓珠、山田杏奈、前田旺志郎、三浦獠太、池田朱那、渡辺大知、三浦透子、磯村勇斗、山口紗弥加/今井翼
 
監督・脚本: 草野翔吾
 
原作: 浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」(角川文庫刊)
 
エグゼクティブプロデューサー: 成 宏基
プロデューサー: 前原美野里、宮本 綾
ラインプロデューサー: 小泉 朋
音楽: ゲイリー芦屋
撮影: 月永雄太
照明: 藤井 勇
美術: 安宅紀史
録音: 齋藤泰陽
装飾: 山本直輝
スタイリスト: SAKAI
ヘアメイク: 寺沢ルミ
編集: 浦部直弘
助監督: 杉岡知哉
制作担当: 狭間聡司
スチール: 柴崎まどか
宣伝デザイン: 大寿美トモエ
宣伝プロデューサー: 小口心平
企画協力: KADOKAWA
企画・制作・プロデュース: アニモプロデュース
配給: バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース
製作: 「彼女が好きなものは」製作委員会(バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース、ベンチャーバンクエンターテインメント、カラーバード、ハーク、Filmarks、ムラタピクチャーズ)
 
2021年 / 日本 / 121分 / アメリカンビスタ / 5.1ch / カラー / デジタル
 
© 2021「彼女が好きなものは」製作委員会 
 
2021年12月3日(金) 
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter:@kanosuki2021
公式Instagram:@kanosuki2021
公式ハッシュタグ:#彼女が好きなものは / #カノスキ
 

映画『彼女が好きなものは』山田杏奈 インタビュー

映画『彼女が好きなものは』草野翔吾監督 インタビュー

この記事の著者

美坂 英里ライター/レポーター

2002年生まれ、シネマティーンズ所属。
映画やドラマが好きで、普段から邦画を中心に鑑賞している。好きな映画ジャンルは、コメディ映画、青春映画、アニメーション映画など。

Cinema Art Onlineに出逢い、"好きなこと"の発信に自分も携わりたいと参画を決めた。「読んでよかった」と思ってもらえる記事を発信できるようになることを目標に、ライター/レポーターとして活動中。インタビューやスチール撮影もこなし、様々な側面から、自分なりのオリジナルのコンテンツが発信できるよう挑戦している。

この著者の最新の記事

関連記事

カテゴリー

アーカイブ

YouTube Channel

Twitter

【バナー画像】日本アカデミー賞
ページ上部へ戻る