- 2021-11-6
- イベントレポート, ティーチイン, 日本映画, 第34回 東京国際映画祭

第34回東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門
映画『よだかの片想い』Q&A
城定秀夫も嫉妬!? 称賛のラストカットに注目!!
2018年に「ファーストラブ」で第159回直木三十五賞を受賞し、これまでにも「ナラタージュ」、「Red」などの著書が映画化されてきた作家、島本理生の傑作恋愛小説「よだかの片思い」(集英社文庫刊)が映画化され、2022年に公開される。
主演を務めるのは、映画『はらはらなのか。』(2017年/酒井麻衣監督)、『今日も嫌がらせ弁当』(2019年/塚本連平監督)、『ゾッキ』(2021年/竹中直人監督)などに出演し、2021年11月には主演映画『幕が下りたら会いましょう』(2021年/前田聖来監督)が控える松井玲奈。
共演の、アイコが想いを寄せる飛坂役には、2015年に公開された初主演映画『グッド・ストライプス』(岨手由貴子監督)で第7回TAMA 映画賞最優秀新進男優賞を受賞し、第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した『偶然と想像』(2021年/濱口竜介監督)や、第76回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に選出された『サタデー・フィクション』(公開未定/ロウ・イエ監督)などの出演作の公開が控える中島歩。
本作のメガホンをとるのは、長編映画監督デビュー作の『Dressing Up』(2012年)が第7回大阪アジアン映画祭にて上映された後、2013年の第14回TAMA NEW WAVE のグランプリを受賞し、2015年に全国で劇場公開され、第25 回日本映画プロフェッショナル大賞新人監督賞を受賞した新鋭・安川有果。
さらには、『性の劇薬』、『アルプススタンドのはしの方』(ともに2020年)の2作品で第42回ヨコハマ映画祭監督賞を受賞し、2021年6月には今泉力哉監督(『愛がなんだ』、『街の上で』など)とのコラボレーション企画として、互いに脚本を提供し合ってR15+指定のラブストーリーとなる劇場映画を監督する企画「L/R15(えるあーるじゅうご)」を発表するなど、脚本家としても精力的に活動する城定秀夫が今作の脚本を手掛ける。
制作は、『勝手にふるえてろ』(2017年/大九明子監督)、『寝ても覚めても』(2018年/濱口竜介監督)、『愛がなんだ』(2019年/今泉力哉監督)、『本気のしるし』(2020年/深田晃司監督)を手掛けてきたメ〜テレと、制作会社ダブ。本作は新進女優と次世代監督がタッグを組み、「不器用に、でも一生懸命“今”を生きるヒロインたち」をそれぞれの視点で映画化するプロジェクト、“(not) HEROINE movies”=ノット・ヒロイン・ムービーズの第ニ弾公開作品として制作された。
遅い“初恋 ”を通して成長する女性の内面を瑞々しく描き、彼女が一歩前に踏み出すその姿は観る人の心をそっと押してくれる。恋愛映画であり、恋愛だけではない様々なものを抱えて日々を生きる全て人の心に響く本作が第34回東京国際映画祭(TIFF)のアジアの未来部門に出品され、ワールドプレミアとなる上映が11月3日(水・祝)、続いて11月6日(土)に角川シネマ有楽町で上映された。
上映後のQ&Aには安川有果監督と脚本を担当した城定秀夫が登壇し、観客とのティーチインが行われた。11月6日(土)に行われた2回目のQ&Aをレポートする。
脚本を手がけた城定は「観る前は少し恥ずかしかったんですけど、素直に感動しました。まだ余韻が残っています」と感想を述べた。脚本を書いた後も安川監督と密に連絡を取り合い内容を変えていったと言う。撮影当日も変更を繰り返し、かなり悩みながら映画を撮っていたことを明かした。また「ラストカットは素敵に撮れていて、すごいなと思いました。自分には撮れないなと、ちょっと嫉妬に近い感情を覚えました」と絶賛した。
城定の脚本について安川監督は「自分で脚本を書いたら自分が撮りやすいように書いてしまっていたなと思います。私だったら感情とかも、後から思い出して笑ったり、一人でいるシーンで表現しようとするんですけど、城定さんは掛け合いの中で起こる感情も多く書かれていたので〝これは試練だな〟と。頑張りました」と今までの自身の作風とは違った演出であると話した。
激論の末、超越したラストシーンに
本作の痣による偏見という社会的な側面とラブストーリーのバランスについて城定は「いちばん監督と話し合った部分ですね。朝から夜までずっとその話をしていた日もあったんです。アザへの偏見などの社会的な問題を大きく扱うのか、ひとりの女性の恋愛映画に焦点を当てるのか、そのバランスがすごく難しいところで。僕は堅苦しくない映画にしたいと思っていたんですが、安川監督は社会的な部分も扱っていきたいということで、短い時間の中でどう配分していくかというのは、すごく議論しました。ただ完成してみると、もちろん両方の要素があるうえで、青春映画になっていて良かったなと思いましたね。アイコをかわいそうに描きたくないというのは、最初に思っていたところでした。僕の側から成長といってしまうと偉そうになってしまいますが、本人にとってはそういう思いで踊っていたのかなと。偏見と闘うとか、何か超越したラストシーンだったのかなあと思いましたね」と感心していた。
安川監督は「いま描くべきテーマかなと。ついセリフで説明して、説教臭くなってしまいそうなところに、城定さんがそうじゃないんじゃないかと言ってくださったので、すごく良いバランスになったんじゃないかと思います」と美の抑圧など社会的な問題についても取り上げ色んな見方ができる映画にしたかった心中を明かした。
2回目のティーチインも大盛り上がりを見せ、名残惜しくも終了した。
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イベント情報
第34回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門
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映画作品情報
《ストーリー》物語の主人公は、理系女子大生の前田アイコ(松井玲奈)。彼女の顔の左側にはアザがある。幼い頃から、からかいや畏怖の対象にされ、恋や遊びはあきらめていた。大学院でも研究一筋の生活を送っていたが、「顔にアザや怪我を負った人」のルポルタージュ本の取材を受けて話題となってから、状況は一変。本が映画化されることになり、友人の編集者・まりえ(織田梨沙)の紹介で、監督の飛坂逢太(中島歩)と会う。話をするうちに彼の人柄に惹かれ、作品にも感動するアイコ。飛坂への片想いを自覚してから、不器用に距離を縮めていくが、相手は仕事が第一で、女性にも不自由しないタイプ。アイコは飛坂への想いを募らせながら、自分のコンプレックスとも正面から向き合うことになる・・・。 |