劇場版『若おかみは小学生!』高坂希太郎監督インタビュー
【写真】劇場版『若おかみは小学生!』高坂希太郎監督インタビュー

劇場版『若おかみは小学生!』

 

高坂希太郎監督インタビュー

久しぶりの監督作品。「最初は抵抗感があった」

累計発行部数300万部を記録する人気児童文学シリーズ「若おかみは小学生!」。2018年4月8日(日)からアニメシリーズが放送スタートし、6月11から16日(現地時間)にフランス・アヌシーで開催された第42回アヌシー国際アニメーション映画祭にて世界最速で上映されるなど、今日でも人気が絶えない劇場版『若おかみは小学生!』が9月21日(金)より公開となる。

【画像】劇場版『若おかみは小学生!』メインカット

『もののけ姫』(1997年)、『千と千尋の神隠し』(2001年)、『風立ちぬ』(2013年)などの作画監督として知られ、『茄子 アンダルシアの夏』(2003年)以来約15年ぶりに劇場アニメーションの監督を本作で務めた高坂希太郎監督に話を聞いた。

―― 劇場版『若おかみは小学生!』は監督にとってどのような作品なのでしょうか?

この作品はある意味挑戦でした。女児向け児童文学には縁が無く、初見で抵抗感がありました。TVシリーズのキャラクターイメージデザインを友人から頼まれたのが『若おかみは小学生!』に関わった最初の切っ掛けなんですけど、絵を描くにあたり原作を読んだらベストセラーという事もあり物語りが巧みに書かれていて面白かったんです。そして数年後、劇場版を作る話が出た時に監督をやって欲しいと呼ばれて。久しぶりに監督をやるのも良いなと感じていたので引き受けました。

【写真】劇場版『若おかみは小学生!』高坂希太郎監督インタビュー

―― 今回監督をやって面白かった事はありましたか?

原作を読んだ時に自分があまり接して来なかった類いの題材だったので、どんなものがお子さん・女の子にとって可愛いのかが掴みきれなかったし、久しぶりの監督で至らない部分もあると感じたので、今回は今まで以上に色んな人の意見を聞きながら作りました。スタッフに出来上がった絵コンテを見せて、「代替案は出さなくていいから、率直に何でも言ってくれ」と色々な意見を集めて作っていく作業が面白かったですね。

―― 花の湯温泉の舞台のモデルである有馬温泉に実際に足を運んでみてどうでしたか?

令丈ヒロ子先生がモデルにしたという話を聞き取材に行った中で、特に「御所坊」さんという旅館の女将さんにはたいへん世話になりました。なかなか見られないバックヤードまで色々見せていただき、旅館業の楽しさや大変さを垣間見ることが出来ました。また、女将さんの話を聞いて、お客様に気を使わせることが旅館にとってあってはならないことなのかなと、自分なりに解釈を見つけて映画に反映させる事が出来ました。

【画像】劇場版『若おかみは小学生!』場面カット

―― 原作は20巻ありますが、その中で厳選し、映画に反映させたシーンについて教えてください。

1本の映画を作る上で、原作の一巻は基本設定の多くを紹介しているので外せないと思い、入れました。また、原作6巻を読んでおっこへのインパクトが強いグローリーという存在も物語に盛り込みたいと。

もう1つ要素として、”今のおっこ”はあかねなんですよ。表出は違うけれども同じ境遇で、場合によってはおっこもあかねと同じ態度をとったかもしれない。グローリーは同じ接客を生業としているのもあり”未来のおっこ”。そして、これはオリジナルですが、最後のお客の子供には過去のおっこを重ね、ある意味、それぞれがおっこの成長を見守る存在になっています。

【画像】劇場版『若おかみは小学生!』場面カット

―― おっこのライバル、真月はどのようなイメージで描かれましたか?

原作の小説でもそうですが、真月はおっことはまるっきり別の存在、花の湯温泉を象徴する存在として、都会から来たおっこを「そう簡単に受け入れたりしないわよ」という立場を貫かせました。おっこが自然と花の湯温泉街に育まれていくに従って2人が分かり合っていくのも、両親の話とは別の1つの物語として織り込みました。また、勉強熱心な感じは原作者の令丈ヒロ子先生からも強いオーダーがあったので、各所にある真月の見せ場に盛り込みました。

【画像】劇場版『若おかみは小学生!』場面カット

―― アヌシー国際アニメーション映画祭2018での会場の様子や感想、手応えはどうでしたか?

日本国内で日本の作法やしきたりをそこら卑近の人に聞くよりも、フランス人の方が日本文化について詳しかったりするのかなという思いがあったので、そういう所で受け入れられてホッとしました。また、偉人の名言が出てくるシーンで会場がもの凄く盛り上がったのが意外でしたね。描き方の部分で言うと、おっこの心情描写の評判が良かったと聞いています。

これからご覧になる方は是非温泉旅行に行く気分で観ていただけたら嬉しいです。

[インタビュー: 梅田 奈央 / スチール撮影: 清水 彩帆]

監督プロフィール

高坂 希太郎 (Kitaro Kosaka)

1962年(昭和37年)生まれ。神奈川県出身。1979年 OH!プロダクション入社しアニメーターとしてのキャリアをスタートさせる。1986年にフリーに転身後、多数のスタジオジブリ作品に作画監督や原画として参加。2003年『茄子 アンダルシアの夏』で監督デビュー。同年カンヌ国際映画祭に出展され高い評価を受けた。2014年、『風立ちぬ』で東京アニメアワードフェスティバル・アニメーター賞を受賞。

劇場版『若おかみは小学生!』予告篇

映画作品情報

【画像】劇場版『若おかみは小学生!』ポスタービジュアル

《ストーリー》

小学6年生のおっこ(関織子)は交通事故で両親を亡くし、祖母が経営する花の湯温泉の旅館<春の屋>で若おかみ修業をしている。

慣れない修業に毎日失敗の連続のおっこだったが、旅館に昔から住み着いているユーレイのウリ坊や、美陽、子鬼の鈴鬼たちや、ライバル旅館の跡取りで同級生の真月に励まされながら、持ち前の明るさと頑張りで、お客様をもてなしていく。

いろんなお客様と出会い、触れ合っていくにつれ、旅館の仕事の素晴らしさに気づき、少しずつ自信をつけていくおっこ。やがて心も元気になってきたが、突然別れの時が訪れて―。

 
原作: 令丈ヒロ子・亜沙美(絵)(講談社青い鳥文庫「若おかみは小学生!」シリーズ)
監督: 高坂希太郎、脚本: 吉田玲子、音楽: 鈴木慶一 他
キャスト: 小林星蘭、水樹奈々、松田颯水、薬丸裕英、鈴木杏樹、ホラン千秋、設楽統(バナナマン)、山寺宏一 他
主題歌: 藤原さくら「また明日」(SPEEDSTAR RECORDS)
製作: 若おかみは小学生!製作委員会
アニメーション制作: DLE、マッドハウス
配給: ギャガ
© 令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会
 
2018年9月21日(金)
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー!!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @anime_wakaokami

この記事の著者

梅田 奈央シネマレポーター/ライター

様々な人々の想いによって創られる映画。限られた時間の中に綿密に練られた構想。伝えたいメッセージ。無限大の可能性と創り手の熱量に魅了され、作品やそこに込められた想いをたくさんの人に知って貰いたいと活動を開始。インタビューや舞台挨拶などのイベントに至るまで、様々な角度から作品の魅力を発信している。

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