映画『孤狼の血』岡田桃子役 阿部純子インタビュー

【写真】阿部純子

映画『孤狼の血』岡田桃子役 阿部純子インタビュー 

暴力だけじゃない、女性の私でも共感できることが多い作品です。

「躰が痺れる、恍惚と狂熱の126分。」―― 本作のメガホンをとった白石和彌監督が「長らく途絶えていた東映のプログラムピクチャーの血脈を受け継いだ作品。その中でも一等賞を獲る気持ちで撮影に臨みました。」という想いのもと作り上げた、「警察小説×『仁義なき戦い』」と評される柚月裕子原作の実写化である東映最新映画作品『孤狼の血』。昭和63年、暴力団対策法(暴対法)成立直前の広島の架空都市・呉原を舞台に、刑事、やくざ、そして女が、それぞれの正義と矜持を胸に、生き残りを賭けて戦う生き様を描いた本作において、唯一原作に登場しない映画オリジナルの登場人物である薬剤師・岡田桃子役をみずみずしく演じ、強烈な物語に癒やしをもたらした阿部純子のインタビューをお届けする。

【画像】映画『孤狼の血』

―― 原作にはない映画オリジナルの登場人物である岡田桃子役を演じられましたが、本作の脚本を読んだ最初の印象を聞かせてください。また、演じるにあたって白石監督からはどのようなアドバイスがあったのでしょうか?

最初、脚本を読んだ時は女性の私にはあまり馴染みのない男の抗争でしたし、仁義の話だったので、未踏領域に足を踏み入れるような気持ちでした。脚本を読みはじめると止まらなくなってしまうぐらい物語にのめり込んでしまいました。私が演じる桃子が出てくるシーンでは、ラブストーリー要素が強かったので、どう演じようか悩みもしましたが、監督からは特に考えすぎないようにと言われていたので、松坂さん演じる日岡との雰囲気を大切にしようと思い演じていきました。

―― 今回はオーディションで決まったそうですが、どのようなオーディションだったのでしょうか?

もともと白石監督は、『ロストパラダイス・イン・トーキョー』(2009年)を観ていて、その時からずっとお仕事をご一緒したいなと思っていた監督でした。別の現場で私のことを覚えてくださっていて、オーディションに呼んでくださったのがきっかけです。その時は、自分なりに桃子について考えて、空想ですけど缶ビールを呑みながらお芝居をしました。、薬剤師の役ではあるけれども、それだけじゃないところをちゃんと見せなきゃなと思って、例えば女らしさなどを意識しながら演じていました。

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―― 二面性を持っている人物という意味では、日岡(松坂桃李)と桃子は似ているように感じました。後半、一皮向けた日岡の前に監督がおっしゃるところの桃子が登場するわけですが、そんな二面性を持つ桃子を演じるにあたって、気をつけたことはありますでしょうか?

なるべく脚本に忠実にやろうと思って演じました。と言いますのも、役所さん、松坂さん以外の演者さんとご一緒のシーンがなかったので、物語全体がどんな雰囲気になっているのかわからなかったんですね。あと、「桃子はこうあって欲しい」という指示もが監督から特に提示されておらず、固めないでほしいと言われていたので直感が勝負でした。監督に役をゆだねていただいているなと感じていましたね。桃子が持つ、最後まで明らかにならない複雑な人間関係について、何となく頭の片隅に置いておいたところはありました。でも、それもこう見せたいという計算ではなく、素直に演じることを楽しんでいました。脚本が本当に面白かったからなのですが、脚本にどれだけ忠実に、遊び心を持って演じられるだろうかと考えながら演じていました。

―― 劇中、桃子の初登場は薬局のシーンでしたが、あのシーンで役所さん演じる大上の迫力に圧倒されませんでしたか?

はい、とても圧倒されました。役所さんが本当に毎回リハーサルごとに演じ方を変えられるんですね。「こうしたら面白いんじゃないか?」とか、どんどんLEGOを積み重ねるように演じてらっしゃって。完成試写を見た時に「ああ、こういうことをしていらっしゃったんだな。」とか、役のことだけを考えるんじゃなくて、どう演じたらそのシーンが面白くなるのかを考えながら演じていらっしゃるんだなと感じました。

―― 本作の完成試写を初めてご覧になった時の感想を教えてください。

アドレナリンが出続けていました。もちろん暴力的なシーンも少なくないですけど、そこだけにフォーカスしないでほしいなとは思います。私以外の出演者の方達がどのようにこの映画を作っていったのかを想いながら観ましたので、イチ観客としてもエンターテイメントだなと思う作品でした。表面的には男同士の抗争であったりだとかは、女性にとってはとっつきづらいテーマかもしれないのですが、その根底にある友情だったり、誰か大切な人を守る為の流儀というものについては、女の私でもとても共感するものが大きかったですね。

―― 試写を拝見した際、「とにかく桃子が良かった!」という男性記者の声が多く聞こえました。ご自身が桃子を演じてみて感じた彼女の魅力があれば教えて下さい。

嬉しいです(笑)。ありがとうございます。脚本が本当に面白くて、脚本の中の桃子が、とても演じたいと思わせてくれる桃子だったんです。
白石監督が役を委ねていただいたおかげだなと思います。この役を任せてくださっているということに対してのプレッシャーだけじゃなく、お芝居を尊重してくださっている監督の姿勢が嬉しくて、それに応えられたらいいなという気持ちが常にありました。脚本と監督、皆さまとの現場が楽しかったおかげです。ありがとうございます。

【写真】阿部純子

 

―― 桃子の呉弁が非常に可愛くて、そこに魅了される方々が続出しておりますが、呉弁は今でも使用しているのでしょうか?

呉弁、かわいいですよね。今回、撮影前から呉弁のイントネーションを習得する為に呉弁のCDを頂いていて、ずっと聴きながら練習していました。私は大阪弁を普段話すんですけど、微妙にイントネーションが違うので。丁寧にCDを用意してくださるのはやっぱり『孤狼の血』だったからかなと思っています。今はあまり呉弁を喋っていませんが、「びしゃびしゃじゃなくてびちゃびちゃよ~。」っていう、あのシーンすごく恥ずかしかったんですよ(笑)。

(劇中のセリフを桃子役そのままのイントネーションで披露し、インタビューの会場を沸かせた。)

―― これまでに、もしくは本作出演にあたって、ヤクザ映画をご覧になられたことはありますでしょうか?

東映映画の『仁義なき戦い』を観ました。「この時代の女性はどういう風に生きてるんだろう?」ということに興味がありましたし、役を任せていただいているということに嬉しさ反面、プレッシャー反面といった感じだったので、どこかで資料が欲しくなったんです。一つのヒントを得るために、女性がどういう風に仁義なき世界の中で男たちに翻弄されながらもちゃんと生きていくのかというヒントをもらいました。迫力がすごくあって楽しかったです。これまで、男の人がスカッとするような、気合いが入る映画という印象だったヤクザ映画が、この映画を観て一変しました。それ以上に生き様や友情などに美学を感じました。それらは現代の女性の私にも共感する部分の方が大きかったです。

―― 共演した松坂さんの印象について聞かせてください。

松坂さんは現場の王子様といった印象ですね。白石監督からは常にいじられていたという印象があります(笑)。松坂さんも出演していた白石監督との前作ももちろん観ましたし、映画作りに対する信頼感がすごく強い方なんだなということをひしひしと感じました。そして物腰が柔らかくて、すごく腰の低い方なんです。それは一つの才能というか、松坂さんのお人柄なんだろうなという感じがしました。演じられるときはそのモードが切り替わるのですが、演じるときも、演じているとき以外でも、いい意味でお仕事しやすいなという安心感がありました。

―― 白石監督がインタビュー時に松坂さんを「濡れ場の天才」と評してましたが、松坂さんとのラブシーンについてお聞かせください。

そうおっしゃってましたか!?(笑) 確かに安心感しかなかったです。事前に監督からもそこは任せて大丈夫だよと言われていたんですけれど、でも、どういう風に動いたらそれっぽく見えるかみたいなのをわかりきっているというか、完全に熟知していらっしゃると感じました。こんなこと言っていいのでしょうか(笑)。とにかく全然緊張しなかったですね。あとはカメラマンさんなど皆さんがそれっぽく見せてくれました。

本当に白石組は映画作りを楽しく出来るチームなんだなと思いました。そして松坂さんは本当に(濡れ場の)エキスパートだと思いました(笑)。

―― 阿部さんにとって、全くのオリジナルキャラクターを膨らませるのと、原作に存在するキャラクターを演じるのでは、どちらが得意なのでしょうか?

私は桃子がオリジナルの登場人物だったから、ある意味リラックスして演じられたのかもしれません。「こうしなきゃいけない」って考え始めて、監督や相手の役者さんへのレスポンスが出来なくなっちゃうと空回ってしまうので、たとえ原作があったとしても、めちゃくちゃ資料を集めて、でもそれらを現場には持ってこないで演じるというアプローチの方が今の所、私に合っているのだと思います。レスポンスが遅くならないようにできるよう、私はどんな役でも、私なりのオリジナルキャラクターだと思って演じるのがいいのかもしれません。

―― 『ロストパラダイス・イン・トーキョー』を観て白石監督と仕事をしたいと思っていたとおっしゃってましたが、いつ頃のことですか?

今から8年前で、私が高校生の頃だったと思うのですが、とにかく圧倒的で、監督の頭の中はどうなってるんだろう?と思って観ていました。会ってみた時の印象と作品と、現場にいらっしゃる時の印象がいい意味で変わらない方なので、白石監督の頭の中をもっと見てみたいと思いましたし、その世界に入ってみたいと強烈に想ったのを憶えています。監督の作品のオーディションに呼んでいただけたことだけでも嬉しいのに、選んでいただいたことが本当に嬉しいです。これからも白石監督に呼んでいただけるように頑張らなきゃなと思っています。

【写真】阿部純子

 

―― 本当に多彩で個性的な役柄のキャスト陣ですが、その中で共感できる、好きな人物は誰ですか?

(即答で)ガミさん(役所広司演じる大上)が好きです。ガミさんの男気溢れるところが好きですし、人を本気で守るってこういうことなんだなって、ガミさんを見ていると思います。常に誰かのことを考えて行動しているところも男気だと思いますし、素敵だなと感じています。役所さんと共演させていただいたのはワンシーンだけだったんですけど、常に私の呉弁のイントネーションまで憶えていてくださっていたことに驚きました。その上、作品がどうなっていくのかをずっと考えていらして。役所さんは尊敬する俳優さんのお一人でしたので、お会いするのはとても緊張したんですけど、実際にお会いすると本当に気取らない方なんですよね。こう演じようよとか、そういうお話ではなくて、「お弁当のこれおいしいね」とかお話しして下さるほど穏やかな方で、現場の雰囲気として役所広司さんがいらっしゃるということに緊張してしまうと思いきや、白石監督の下、役所さんの現場だったからこそ、こんな風にいい意味で力を抜いて挑めたのかなと思っています。ベストを尽くせる環境を作っていただきました。

[インタビュー: 蒼山 隆之 / スチール撮影: 坂本 貴光]

プロフィール

阿部 純子 (Junko Abe)

1993年5月7日、大阪府生まれ。2010年『リアル鬼ごっこ2』でヒロインに抜擢される。主演映画『二つ目の窓』(2014年)が第67回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、同作品で第4回サハリン国際映画祭主演女優賞を受賞する。その後、渡米し、ニューショーク大演劇科で演劇を学ぶ。帰国後、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(2016年)に出演。今後の活躍に期待が集まる実力派女優。主な出演作にTVドラマ「理想の息子」(NTV)、「好きな人がいること」(2016,CX)、「4号警備」(2017年、NHK)、映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』『ポンチョに夜明けの風はらませて』(2017年)、『海を駆ける』(2018年)がある。

【写真】阿部純子 (Junko ABE)

映画『孤狼の血』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『孤狼の血』

《ストーリー》

「わしは捜査のためなら、悪魔にでも魂を売り渡す男じゃ。」昭和63年、広島。所轄署の捜査二課に配属された新人の日岡は、ヤクザとの癒着を噂される刑事・大上のもとで、暴力団系列の金融会社社員が失踪した事件の捜査を担当することになった。飢えた狼のごとく強引に違法行為を繰り返す大上のやり方に戸惑いながらも、日岡は仁義なき極道の男たちに挑んでいく。やがて失踪事件をきっかけに暴力団同士の抗争が勃発。衝突を食い止めるため、大上が思いも寄らない大胆な秘策を打ち出すが……。正義とは何か、信じられるのは誰か。日岡は本当の試練に立ち向かっていく――。

 
出演: 役所広司、松坂桃李、真木よう子、音尾琢真、駿河太郎、中村倫也、阿部純子、中村獅童、竹野内豊、滝藤賢一、矢島健一、田口トモロヲ、ピエール 瀧、石橋蓮司、江口洋介
 
原作: 柚月裕子(「孤狼の血」角川文庫刊)
監督: 白石和彌 脚本:池上純哉 音楽:安川午朗
撮影: 灰原隆裕 照明:川井稔 録音:浦田和治 美術:今村力
企画協力: 株式会社KADOKAWA 
製作: 「孤狼の血」製作委員会
配給: 東映
2018年 / 日本 / 126分 / 映倫区分 R15+
© 2018「孤狼の血」製作委員会
 
2018年5月12日(土) 全国ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @Korounochi_2018
公式Facebook: @korounochi.movie
公式Instagram: korounochi_movie

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