第36回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A レポート
【写真】第36回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A (莉子、みらん、木村聡志監督)

第36回 東京国際映画祭(TIFF)
アジアの未来部門   
映画『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A 

独特にダメな5人に絶賛!
「日の当たらない人たちも一生懸命生きている」

映画ファンより「木村ワールド」と呼ばれるほど独自の世界観を持った恋愛群像劇の新たな旗手・木村聡志監督。映画『恋愛依存症の女』(2018年)、『階段の先には踊り場がある』(2022年)に続く最新群像劇となる映画『違う惑星の変な恋人』が2024年1月26日(金)に劇場公開される。

【画像】映画『違う惑星の変な恋人』メインカット

主演は、映画『女子高生に殺されたい』(2022年)、TVドラマ「ファイトソング」(2022年/TBS)、TVドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(2023年/NTV)など話題作への出演が続く莉子。共演には筧美和子中島歩綱啓永、さらに主題歌も担当するみらんが一歩引いた距離感から話に加わるシンガーソングライターを演じる。

サッカーワールドカップの裏で繰り広げられる、「ああ言えばこう言う」な厄介な5人による愛のシーソーゲームが描かれている。

登場人物たちの恋のベクトルが円になる。1つの壮大な恋愛のいく末を見守る紆余曲折のラブストーリーというよりは、日常の中である意味「隣で起こっていそう」なジリジリとした恋模様。リアルな5人の生き様に注目だ。

第36回東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門に正式出品され、10月29日(日)の角川シネマ有楽町でのワールドプレミア上映に続き、10月31日(火)に丸の内ピカデリー2で2回目の上映が行われた。上映後には舞台挨拶Q&Aが行われ、本作で映画初主演を果たした莉子、共演で主題歌を担当したみらん、そして観客とともに本編を鑑賞したばかりの木村聡志監督が登壇した。

莉子「実は理解しきれていなかった」!?
随所に散りばめられた監督独自のこだわり

つい身近に感じてしまう登場人物たちについて、司会を務めた石坂健治(東京国際映画祭 シニア・プログラマー)から「監督から演技のリクエストや指導があったか」と質問されると、莉子は「お芝居のことは、あまりなかったですね」とコメント。一方で「監督サッカーのユニフォームであったり、登場人物のニックネームの由来など独自のこだわりについては熱く語ってくださったのですが、私が世代じゃないからか、所々わからないまま演じていました(笑)」と返答し、撮影現場でも独自の世界観が展開されていたことがうかがえた。

演出に対しての考え方を問われると木村監督は、「脚本を書き上げた後に役者さんと会って話しをしたのですが、その時の雰囲気でむっちゃんのセリフなら莉子さんが話すように書き換えて撮影に挑むので、その時点で演出は終わっているという考え方ですね」と返答。「言いすぎて凝り固まったものにするよりは、(個々人の)自由にやってもらったほうが面白くなるなという感覚を演出の上で大切にしていた」と語り、どこかの世界にずっと存在していそうな登場人物たちの雰囲気はそういった演出の元で生まれたのかと感じた。

莉子はその思いに答えるように「この映画の中のむっちゃんはこういう感じだなと雰囲気で理解しながら演じていました。長セリフで基本一発撮りだったので、皆さんとのリアルな掛け合いが出るのがいいかなと思いました」と演技を振り返った。

【写真】第36回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A (莉子)

未完成の脚本で出演オファー
「なんだか面白いものになりそう」とキャスト陣快諾

キャスティングについて尋ねられると、今回は異例の映画の作り方であったことを告白。脚本を1/3ほど書いた木村監督は、プロデューサーとともにキャストのイメージを組み立てたそうで、「とりあえず話を振ってみますか?という感じで、出来上がってない脚本を皆さんに送ったら思いのほか『面白いものになるかもしれない』という反応で面白がって参加してくれました。なので、その先の2/3は役者さんが決まった状態で書けたので、莉子さんならこう話すかな?と想像しながら作っていけましたね」と、企画進行を振り返った。

抜擢を受けた莉子は、「(“木村ワールド”とは聞いていたけれど、)思った以上に監督は変な人でした(笑)。でも監督自身もそうですし、作品の持つ空気感もすごく面白いので、ついていって演じてみてという感じで、出来上がった映画を見てようやく理解できた。そんなホワホワしたなかで進んだ作品でした」と振り返る。

オファーを受けた後、木村監督と2人でカフェで打ち合わせをしたというみらんは、「全然話さないし何かないのか!?と思って(笑)。でもせっかく会ってるんだから何か得られたらいいなと一生懸命話したんですけど…」と会場の笑顔を誘った。

「人見知りでできるだけ知らない人と会いたくない」と木村監督が反論すると、みらんから「なぜ打ち合わせした?と思った」と突っ込まれる一面も。噛み合いそうで噛み合わない、でも心地が良い。そんな映画の雰囲気が舞台挨拶の舞台上にも漂っていた。

【写真】第36回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A (みらん)

観客とのティーチイン 
「独特にダメな感じの人」が5人、キャラクターの立ち上がりとは?

舞台挨拶に続いて行われたQ&Aでは、木村監督の熱烈ファンからのコアな質問が寄せられた。

Q. 脚本を作る上で、5人のキャラクターはどう立ち上がっていったのか?

もともとは、ミュージシャンと僕(木村監督)がコラボした映画を作ろうという企画だったので、(みらん演じる)ナカヤマシューコという歌手の存在がありました。その存在をどう活かすかを考えたときに、彼女が4人の輪の外にいたら面白そうだと思って、5人の登場人物を作り始めました。

キャストへのオファー段階では、ナカヤマシューコのライブに集まって大団円を想像して書き進めて行ったものの、脚本を書き進めるにつれて「むっちゃんはこう話さないよな」などキャラクターが自我を持ち始めて(笑)。2/3くらい書いてから進められなくなりました。自分の思い通りに登場人物たちが動いてくれなくなった感覚を覚えました。困ったなと思って、W杯のシチュエーションを登場させました。

Q. 木村ワールドでお馴染みの、主要キャラクターがニックネームなのはなぜ?

木村監督「名前を決めるのは、脚本を書いて中盤くらい。それまでは女1・男1などで書き進めていきます。名前が持つ役割は重要だと思っていて、むっちゃんと呼ばれるのとむつみちゃんと呼ばれるのでは役割が変わってくると思うんですね。(筧美和子演じる)グリコも「いつから呼ばれているかわかんない」と発言するシーンがありますが、実際本名そのままで呼ばれるって日常でもないかなと思うので、そのバックグラウンドを考えながらニックネームをつけています。それくらい、あだ名をつけるのは重要な作業だと思っています」

Q.(サッカーを愛する木村監督へサッカーを愛するファンから)ドーハの悲劇から30年のタイミングでのプレミア上映、そのタイミングでのW杯を題材にした映画を公開した気持ちは?

木村監督「将来はサッカーの監督になりたいくらいサッカーを愛しているのですが、この映画を撮影していたのが去年の12月。ちょうどW杯のカタール大会を開催していて、時代性を入れたらどう?というアドバイスをいただきました。それまでは時代や背景がわかる要素があえて排除してきたのですが、今回はあえて入れてみようと思いました。当時、ごくごく普通にいる人たちという意味合いを込めて、要素として入れてみたという感じですね」

Q. この映画は、勇気を持てない人にエールを与える映画ですか?

木村監督「それは正しくて、僕が普段離さないからこそ映画だとセリフ量が多くなるのと同じように、日の目の当たらない人たちはこんなに一生懸命やっているんだぞというのを見てもらいたいです。何か大きな決断をするまで行かなくても、今日家に帰ってちょっとだけ奥さんに優しくしようかな、帰りの電車でカップルの会話をイヤホンを外して聞いてみようかなとか、ちょっとした日常に影響を与えることができれば、映画としては成功だなと思っているので、日常に還元してもらえたら嬉しいです」

マリークリスティーヌが絶賛!
「ぜひフランスでも上映したい」

Q&Aで手を挙げた方の中には、昨年開催された第35回東京国際映画祭でコンペティション部門の国際審査委員を務めたマリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル(元アンスティチュ・フランセ館長)の姿が。今年はゲストとして来日している中で、アジアの未来部門の上映を鑑賞し、さらには舞台挨拶とQ&Aにも駆けつけ、ティーチインに参加するという熱心ぶりを見せた。

木村監督への直々の感想として、「今年は他の監督たちとの会話を通して「これがいい!」と選んで拝見したこの映画(『違う惑星の変な恋人』)が、今年の東京国際映画祭の中でベストだと思っています。もっともっと木村監督の他の映画を観たいですし、フランスでも観られるように力を貸してください。これからのご活躍を期待しています」と熱烈なエールを送った。

【写真】第36回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A (マリークリスティーヌ・ドゥ・ナヴァセル)

日常に耳を傾ける
「そんなきっかけになれば映画として成功」

年明けの公開に向けての意気込みを聞かれると、莉子は「初主演で嬉しい気持ちがありつつ、想像を超えて、違ったジャンルに挑戦できるという気持ちがすごくあります。(このような対話の機会を得て)監督の頭の中や、映画の謎の部分が少しずつ明らかになりながら公開に近づいていくことが、とても楽しみです」と、まだまだ公開までの楽しみがあることに喜びを滲ませていた。

イベントの最後には、登壇者を代表して木村監督からメッセージが贈られた。「平日の昼間にもかかわらず、観に来ていただいてありがとうございます。この素晴らしい劇場で自分の映画が流れるとは映画を作り始めたときは想像していなかったことです。まだ始まったばかりで、公開は来年の1月26日に新宿武蔵野館他で公開されるので、よかったことでも悪かったことでも、映画の力・作品の力になると思うので、伝えてもらえると嬉しいです」

【写真】第36回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A (木村聡志監督)

[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 飯室 佐世子]

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イベント情報

第36回 東京国際映画祭(TIFF) 
アジアの未来部門 
映画『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A

■開催日: 2023年10月31日(火)
■会場: 丸の内ピカデリー2
■登壇者: 莉子、みらん、木村聡志監督
■MC: 石坂健治(東京国際映画祭 シニア・プログラマー)

【写真】第36回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門『違う惑星の変な恋人』舞台挨拶/Q&A (莉子、みらん、木村聡志監督)

映画『違う惑星の変な恋人』予告篇🎞

映画作品情報

【画像】映画『違う惑星の変な恋人』ポスタービジュアル

《ストーリー》

同じ美容室で働くむっちゃん(莉子)とグリコ(筧美和子)は、ふとしたきっかけでお互いの音楽の趣味が合うことを発見して以降はなんでも話し合う仲になる。

ある日、美容室にグリコの元カレ・モー(綱啓永)が現れる。グリコはモーから復縁を迫られているらしい。グリコはシンガーソングライター ・ナカヤマシューコ(みらん)のライブで旧知のベンジー(中島歩)と再会。同行していたむっちゃんはベンジーに一目惚れしてしまう。

むっちゃんはグリコとモーの協力を得てなんとかベンジーと恋仲になろうと、モーはむっちゃんの力を借りてグリコにアプローチをし続けることに。そのまた一方、ベンジーはナカヤマシューコと関係を持っていて、むっちゃんからの恋心も感じているもののひさしぶりに会ったグリコに一番惹かれている。またグリコもむっちゃんへの罪悪感を感じつつも、久しぶりに会ったベンジーに惹かれていることに気付き始める。

カタールW杯の日本戦が始まる頃、複雑にこんがらがってしまった恋の矢印を整理するためにむっちゃん、グリコ、ベンジー、モーが一同に介するのであった―――。

 
出演︓ 莉子、筧美和子、中島歩、綱啓永、みらん、村田凪、金野美穂、坂ノ上茜
 
監督・脚本: 木村聡志
製作: 藤本款、直井卓俊、久保和明、玉井雄大、柳﨑芳夫、前信介、水戸部晃
プロデューサー: 原口陽平、秋山智則、久保和明
企画・キャスティング: 直井卓俊
音楽: 渡辺雄司(大田原愚豚舎)
劇中歌・主題歌: みらん(NOTT/NiEW)
撮影: 山田笑子
照明: 山田峻佑
録音: 古茂田耕吉
美術: 小泉剛
スタイリスト: 小宮山芽以
ヘアメイク: 進士あゆみ
ラインプロデューサー: 浅木大、篠田知典
助監督: 江口嵩大
宣伝美術: 寺澤圭太郎
宣伝協力: 平井万里子
製作: 「違う惑星の変な恋人」製作委員会
制作プロダクション: レオーネ
配給・宣伝: SPOTTED PRODUCTIONS
 
2023年 / 日本 / カラー / ヨーロピアンビスタ / 5.1ch / 116分
 
©️「違う惑星の変な恋人」製作委員会
 
2024年1月26日(金) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開!
 
映画公式サイト
 
公式X: @chigawaku2024
 
 

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