- 2026-11-3
- イベントレポート, ティーチイン, 日本映画, 第39回 東京国際映画祭, 舞台挨拶

第39回 東京国際映画祭(TIFF)
ガラ・セレクション部門
映画『Diary of a Mad Old Man (原題)』舞台挨拶・Q&A
リリー・フランキー、斎藤工、ウェイン・ワン監督が登壇!
衝撃的な「ウナギ」の思い出と、“老人の性”への持論を熱弁
11月3日(火・祝)、第39回東京国際映画祭(TIFF)ガラ・セレクション部門にて、映画『Diary of a Mad Old Man (原題)』のワールドプレミア上映がTOHOシネマズ 日比谷で行われた。本作は、日本文学を代表する作家・谷崎潤一郎の最後の長編小説「瘋癲老人日記」を、現在の東京を舞台に映画化した作品。脳卒中で半身不随となった老人と、そのリハビリのために訪ねてくる長男の妻との関係を描き、“老人の性”に真っ向から向き合った意欲作だ。

上映後の舞台挨拶・Q&Aには主人公のウツギを演じたリリー・フランキー、ウツギの息子役の斎藤工、そしてウェイン・ワン監督が登壇。撮影現場で突如決まった衝撃の“ウナギ”シーンの裏側から、巨匠直伝の編集術、そして老人の生々しい人間味を描いた本作への思いまでを含む、濃密なトークを繰り広げた。
誕生日直前のリリーが「俺はまだビンビン」を表明!?
舞台挨拶冒頭、翌日(11月4日)に誕生日を迎えるリリーは観客から拍手を受けると、「どんどんジジイになっていくと……。まだ俺はビンビンですから、そこはちゃんと書いといてください(笑)」と表明し、さっそく会場を沸かせた。しかし直後に「今日ビンビンさんがいたら華やかだったのに」とヒロインのスースー役を務めたファン・ビンビンの話題を出すと、斎藤から「さっきあんなこと言うから、言いづらいじゃないですか、キャストの名前を(笑)」と即座にツッコミが。
その斎藤は参加の経緯について、「リリーさん経由でウェイン監督が谷崎(作品)を映画化しようとしてるって情報を聞いていたので、一映画ファンとしてこの映画が完成したこと、皆さんに見ていただけたことを幸せに思ってます」と感慨深げに語った。
すでに第51回トロント国際映画祭(tiff)などでも上映されている今作。リリーはその時の様子を「大評判と大不評を味わった。全く受け付けないっていうディレクターもたくさんいた」と邂逅。一方で大好きという人もいるといい「極端に分かれる、僕と工くんが一番好きなタイプの映画」と話すと、斎藤も「そうですね。今日のお客さんがそういうお客さんになること願ってますね」と返し、互いの共通点を確かめあった。

台本になかった“ウナギ”の罠!?
「ただのいい映画」を回避するウェイン監督の相談とは?
観客からの質問セッションで、ウツギの妄想の中にウナギが登場するインモラルなシーンがどのように出来上がったかを問われると、リリーは「台本に全くないんですよ、あのシーン。(ウェイン監督の現場は)台本にないことばっかりなんですけど、俺が朝行ったら『リリー、ちょっと今からマスターベーションをしてほしい』と言われたり(笑)。撮影の中盤頃に『リリー、相談がある』って。大体午前中が相談の時間なんですけど、『この映画、このまま撮影すると、ただのいい映画になる』と言って悩んでたんです。俺『それじゃダメなの?』って聞いたんですよ。だって多くの映画が『ただのいい映画』に到達するのが難しいわけですから。でも(監督は)『そこでウナギなんだ』と」と、笑いを交えつつ現場でのやり取りを明かした。

これに対しウェイン監督は「谷崎潤一郎さんの原作の最初の章に、主人公が歌舞伎を見に行って女形をあてがわれるようなシーンがありましたので、そういったところも頭の中にあったんでしょう。リリー・フランキーさんが快くあのシーンを受け入れてくださったことがありがたかったです」と説明。リリーは「ノリノリでした(笑)。結構マジでお尻にウナギが当たってて、『それで徐々に感じていってくれ』と言われて、『ガーッ』っていったら『感じ始めるのが早すぎる』と言われ、次に『うーん』ってやったら『トゥーマッチ』って(笑)。トゥーマッチが一番恥ずい(笑)」と告白し、会場の笑いを誘った。さらにリリーは本シーンを経て「自分の中で何か解消しなきゃいけない」と、翌日スタッフ全員にウナギの弁当を差し入れしことを明かした。

一方の斎藤もウェイン監督の現場の印象を問われると、「台本に書かれていることに沿って用意して行く作品ではないというのが体感としてあったので、どう転んでもそこに寄り添うぞっていう、好奇心みたいなものに溢れてる現場だったなと思います」と振り返り、刺激の多かった様子をのぞかせた。

シュレイダー監督直伝の編集術!過剰な説明を排した「引き算の美学」
本作では、撮影されたシーンが最終的に大胆にカットされているという。現場での演出やそうした編集術について話が及ぶと、ウェイン監督は「かつて私はフランシス・フォード・コッポラ監督のビルの中にオフィスを構えていました。そこにポール・シュレイダー監督のオフィスもあり、当時ウォルター・マーチと『金閣寺』を撮って編集をしていました。その時に教わった、編集で一番大切な観点は『物語や主人公に関係のないものはバッサリ切る』ことです。結果的に15分しか残らなくても、それが物語の真髄になるからそこから広げていけばいい、と。それで僕もバツバツ切るようになったんです」と巨匠たちから学んだ心得を告白。これに対し、斎藤は「登場人物の背景など過剰な説明が削ぎ落とされたことで、観客が想像力を広げられる作品になっています」と本作の魅力を伝えた。

老人のエゴと欲求をポップに描く「これは最高の推し活であり、純愛」
さらに話題は作品で描かれる老人の性意識や人間味へと移行。約10年前にウェイン監督から「老人の性をテーマにした映画を撮りたい」と聞かされ、プロットや脚本の段階で相談されていたリリーは「障害を持っている方とか、おじいさん、おばあさんは、いわゆる性に対する意識が『もうなくなっている人として、社会の中でいなければいけない』って、若い人たちや健常者のエゴがある。でも、公園でぼーっと座っているじいさんだって、若いママのケツを見ているわけじゃないですか(笑)。そうした空気を、ウェインがポップに描いてくれた」とコメント。
さらに「今までの日本映画にたくさん出てくる“息子の嫁を手篭めにするじじい”は、すごくマッチョで気分の良くないシチュエーションが多かった。でもウェインは少年で清潔な人だから、この映画の笑えてしまう感じが(できる)。カナダで試写を見た観客が、みんな腹ちぎれるくらい笑ってたんです。ビンビンさんと見て、俺らこんな笑われる映画を作ってたんだって(笑)。だけど、最後はちょっとしんみりしちゃうというか、ああ、こうやって死んでいくんだなと。ただ、あの墓石の下でスース―に踏まれながら『痛い』って言ってる姿は純愛だと思いますね。最高の推し活ですよ」と持論を展開した。

イベント終盤、リリーは本日登板のかなわなかったビンビンに対し、「彼女がいると華やかで、撮影している時から『映画』にしてくれる。すごくほがらかで、明るい人で、お芝居に対してすごく真摯。彼女が映った瞬間『あ、映画見てる』って感じしますもんね」と絶賛。さらに、ウツギと触れ合うシーンを例に挙げ「本当丁寧な人なんで、直前でペディキュアの技術者の人を呼んでずっと足のメンテナンスをしてくれてたんですよ。深夜に酔っ払って帰ってくるシーンも、『ウイスキーとワイン買ってきて』って、2人ちょっとだけ飲んでやるとか、本当チャーミングな人ですよね」その素顔を明かした。

最後は「今日見た方とマスコミの皆さんがこの映画の心臓を握ってるんで、是非良きようにお願いいたします」とメッセージ。自身がほぼ7割を話し尽くした、“独壇場”の舞台挨拶・Q&Aを締めくくった。
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映画作品情報

《ストーリー》脳卒中からの回復過程にある、身体の不自由な69歳のウツギ。やがて介護をしてくれる義理の娘スースーに次第に執着するようになり、衰えていく身体とは裏腹に、性への欲望は激しさを増す。二人の緊張をはらんだ関係は、やがて誘惑と妄想の境界を曖昧にしていく――。 |
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