映画『Arc アーク』完成報告会
芳根京子7年ぶりの単独映画主演で悔し涙
寺島しのぶは石川慶監督に「もう帰してあげて」
映画『愚行録』(2017年)、『蜜蜂と遠雷』(2019年)で国内外より注目される石川慶監督の待望の新作映画であり、『累 -かさね-』(2018年)と『散り椿』(2018年)で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、最新作『ファーストラヴ』(2021年)では “涙の魔術師”と絶賛された主演・芳根京子が一人の女性の17歳から100歳以上を生き抜くという、キャリア史上最難関の役どころを繊細かつ大胆に演じる、人類にとって全てが初めてとなる不老不死の世界を描いた、驚嘆と不思議(=センスオブワンダー)に彩られた壮大なるエンターテインメント作品、映画『Arc アーク』が6月25日(金)より全国公開される。
芳根京子が10代から100歳以上までを姿を変えずに演じ分け、いままで誰も観たことのない新しい日本映画として話題沸騰中の本作の完成を記念して、キャスト大集結の完成報告会が6月2日(水)にグランドハイアット東京で行われ、主演の芳根京子と、共演した寺島しのぶ、岡田将生、清水くるみ、風吹ジュン、小林薫そして石川慶監督の総勢7名がが登壇。無観客、配信での完成報告会となったが、撮影を振り返ってのクロストークを繰り広げ、作品にちなんで「もしも永遠の命を得たら100年後、何をしていたいか」というテーマについてフリップを披露した。
完成報告の場となったグランドハイアット東京の特設会場には、カラフルな絵画のようなパネルが設置され、両脇には劇中に出てくるストリングス(糸)が張り巡らされたような装飾が。作品世界をイメージしたスタイリッシュな空間となっていた。
石川監督の緻密で崇高な映像美に注目を
まず、人類で初めて永遠の命を得た主人公・リナを演じた芳根京子が「今日を迎えられてとてもほっとしています!配信ですが、今日はよろしくお願いします」と一言。司会に透け感のある黒いドレスを褒められ「映画で演じたリナを意識しました」と返し、また会場のセットについても「撮影当時の記憶が一気によみがえります」と笑顔に。リナに大きな影響を与える女性・永真を演じた寺島しのぶは「とても不思議な作品が出来上がりました。石川監督の緻密で崇高でとても美しい映像美、みなさんにどう届くのか凄く楽しみです、今日はよろしくお願いします」と挨拶。天才科学者でリナの最愛の夫・天音を演じた岡田将生は「配信を見ている皆さん、ありがとうございます。石川慶監督とお仕事をしたいとずっと願っていたのでとても嬉しかったです。いろんなテーマを投げかける作品ですので早く観てほしいです!」と続いた。
夜中までがんばっても上手くいかず悔し涙を流した芳根京子
10代から始まり、30歳以降は外見は同じまま内面の年齢だけどんどん重ねるという難役をこなした芳根京子を、共演者たちが口々に労った。寺島は「芳根さんはとにかくガッツがあってすごかったんです。あるシーンがなかなか上手くいかなくて、悔し泣きしながらがんばっていて。てっぺん(深夜0時)を回っても、監督がまだ撮ろうとするから『もう帰してあげてください』と私が言わなくてはいけないくらいの現場で(笑)。でも、それくらい石川監督は芳根さんの魅力をもっと引き出そうとしていたし、それに応えようとする芳根さんの姿がとても素敵だったと思います」とコメント。「がんばったね」と芳根に優しい笑顔を向けていた。
岡田も「芳根さんは闘っている人でした。この小さな体のどこからこんなにパワーが湧いてくるのだろうと思って、その姿がすごく美しかった。彼女を支えたいという気持ちで現場にいたので、リナと天音として映画で生きられたことは僕にとっても幸せな時間でしたし、芳根さんにとっても幸せだったらいいなと思います」と夫婦役ならではの温かい言葉を送り、芳根も「私も幸せでした!」と微笑み合う和やかな場面も。
日本映画にありがちな「湿度」のない新しい作品
リナの同僚とその娘という一人二役を演じた清水くるみは、作品を「日本映画っぽくない、湿度がなくて観やすい新しい映画」と評した。また、「きょんちゃん(芳根のこと)は本当にガッツがあって、絶対に『できない』とは言わない。年下なのにしっかりしていて、引っ張っていただきましたし、撮影期間ずっと一緒にしゃべっていて楽しく思い出に残る作品でした」とも。物語後半を牽引する利仁役を演じた小林薫は「何て言ったらいいんだろう。とにかく不思議な映画ですよ。観終わっても、何かに例えたりしにくい。清水さんが言ったように日本的なウェットな感じが画面に流れていないのは本当で、僕と風吹ジュンさん演じる芙美の夫婦役のシーンも意外とドライだったかもしれない」と清水の作品評に賛同。風吹は「作品自体は視覚的情報量が多いので、観る方はきっと刺激的。いち視聴者としてとても楽しかった」と感想を述べた。
「石川監督とはがっつり二人三脚でリナという女性をつくり上げた」(芳根)
今回の役どころについて芳根自身は、「1人ではつくれなかった役だなと思っています。撮影の前にいろいろ頭で考えてもわからなくて、石川監督と沢山お話させてもらう中で、現場で見たこと、触れたこと、感じたことを形にしていこうと。監督とは、がっつり二人三脚で同じ歩幅でいろんな感情を共有しながらリナという女性をつくっていきました」と石川監督との信頼関係で乗り越えられたこと明かした。
岡田将生とのクランクインはいきなりキスシーン!
岡田は「この映画のクランクインがいきなりキスシーンだったんです」と告白。芳根とは共演経験があり、「お互い役者としての信頼関係はあったけれど、リナと天音としては初めましてだったので、監督と3人で1時間くらい段取りを話し合って……そのうちにそれぞれの役柄を深く理解できてああいったキスシーンになった」と撮影の様子を振り返った。一方、芳根も岡田と久しぶりの共演について「天音役が岡田さん”かも”と聞いたとき、”かも”なんて言わないで、絶対に岡田さんにしてください!ってお願いしたんです」と明かした。「天音はリナにとってとても重要な役柄だし、信頼している岡田さんで緊張のクランクインも心がポカポカする気持ちでとても安心できました。癒しのまーさんです」と言って微笑み、岡田が照れる一幕も。
現場では本物の夫婦さながらだった小林薫と風吹ジュン
ドラマや映画で夫婦を演じることが多い小林と風吹は、今作でも息がぴったり。小林が「現場で風邪を引いちゃったんだけど、誰も助けてくれなくて(笑)。そんな時に、風吹さんが濃縮ビタミン剤をくれて言われるままに飲んだら熱が下がった。本当に有り難かった」と感謝を述べると、風吹は「隠れ妻のように支えました(笑)。小林さんは相変わらずかっこよく頼りになりました」と答え、まるで本物の夫婦のように支え合ったエピソードを披露した。
芳根も「風吹さんが車いすに乗って小林さんがそれを押して走り回るシーンがあるんですが、そこがいちばん好きなんです」と、大先輩の夫婦役にうっとりしていた。
登場人物の何かをジャッジする物語じゃない
世界的SF作家ケン・リュウ氏の原作に惚れ込み、難しいと言われた実写映画化に挑んだ石川監督は、「ケン・リュウさんにOKもらって、これだけのキャストが揃ったので、あとは美術にすごくこだわりました。SF作品を観ると、世界観がつくり切れていなくて周辺が気になり、残念に思うことがあります。だから、この作品ではそんなことがないようにつくりこみました」とこだわりを述べた。また、原作者のケン・リュウからは「僕はこれをディストピア(反理想郷)として書いているんじゃない」と言われたそう。「僕も登場人物の何かをジャッジする物語にしたくないとは思いました」と、作者の思いを大切に実写映画化したことに触れた。
前向き意見と後ろ向き意見に分れたフリップトーク岡田の理想は「どうぶつの森」!?
続いて、本作の内容にちなんで【もしも永遠の命を得たら100年後には何をしていたいか】というテーマでフリップトークに。
芳根の回答は【答え合わせをしたい】。「劇中のリナと同じくらいまで生きて、果たしてリナと同じことを思うのか、答え合わせをしたいです」と主演らしい答えに一同「おぉ~」と感嘆の声。一方寺島は【そんなに生きなくて大丈夫です】と回答。「もう十分かな、100年は辛い。今を生き切ろうと思っているので」と話し、会場の笑いを誘った。
小林はその上をいく【土の中にいたい】という衝撃的な回答。「100年経ったときに、周りに知り合いや感情を共有できる人がいなかったらキツいなと思う。静かに土の中にいたい」と悟りを開いたように淡々と語り、他のキャストのフリップを見て「みんな前向きだね~!」と驚いていた。
岡田は、【自分の島を作りたい】と答えた。「孤独になりたくなりたくて…。自分といて楽しい人だったり価値観の会う人を集めて『一緒に住みませんか』って仲間を探したいです」と寂しがり屋な一面を見せたが、「どうぶつの森みたい(笑)」という芳根のツッコミに「そうだよね、自分も話していて途中で思った(笑)」と息ぴったりの掛け合いが。
孫がいるという風吹はひ孫以降の呼び方を調べて来たそうで【玄孫(やしゃご)、来孫(らいそん)、昆孫(こんそん)、仍孫(じょうそん)、雲孫(うんそん)】と掲げ、「孫の孫の孫の孫の……代まで見たいんです。その場合は迷惑にならないように生きたい」と述べた。
清水からは、【宇宙語を学んで宇宙人と話したい】と夢のある回答が。「100年後ならばきっと宇宙にも行けると思うし、言葉も学べそうだから宇宙人と友達になりたい」と希望を話した。
7年ぶりの単独主演で気合の入った締めのメッセージ
イベントの最後に芳根は、「本日はありがとうございました。完成したこの作品を観た時に、新たなジャンルの映画ができたなと思いました。そんな作品に主演として参加できたこと嬉しく思っています。個人的には、今作で映画の単独主演が7年ぶり。あまりこんなこと言わないんですが、気合いもすごくすごーく入った大切な作品です!大きな声で劇場に来てねと言えないことが悔しいですが、美術もヘアメイクも衣装も全て美しくて、劇場で観ていただけると嬉しいです。映画『Arc アーク』をどうぞよろしくお願いいたします!」と、力強いメッセージでイベントを締めくくった。
フォトギャラリー📸
映画『Arc アーク』完成報告会 配信動画🎞
イベント情報
映画『Arc アーク』完成報告会
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映画『Arc アーク』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》舞台はそう遠くない未来。17歳で人生に自由を求め、生まれたばかりの息子と別れて放浪生活を送っていたリナは、19歳で師となるエマと出会い、彼女の下で<ボディワークス>を作るという仕事に就く。それは最愛の存在を亡くした人々のために、遺体を生きていた姿のまま保存できるように施術(プラスティネーション)する仕事であった。エマの弟・天音はこの技術を発展させ、遂にストップエイジングによる「不老不死」を完成させる。リナはその施術を受けた世界初の女性となり、30歳の身体のまま永遠の人生を生きていくことになるが・・・。 |
脚本: 石川慶、澤井香織
音楽: 世武裕子
製作プロダクション: バンダイナムコアーツ