第45回 日本アカデミー賞 授賞式 レポート
【写真】第45回 日本アカデミー賞 授賞式 (最優秀賞受賞者 集合写真)

第45回 日本アカデミー賞 授賞式

最優秀作品賞は『ドライブ・マイ・カー』🏆
主演の西島秀俊が最優秀主演男優賞!ほか最多8部門を受賞!!

3月11日(金)、「第45回 日本アカデミー賞 授賞式」が、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール「崑崙」で開催。昨年『MOTHER マザー』で第44回最優秀主演女優賞受賞した長澤まさみと、第43回・第44回授賞式に続いて3回目となるフリーアナウンサーの羽鳥慎一が司会を務め、各部門の最優秀賞受賞者および最優秀作品などが発表された。

満場の拍手に包まれた、華やかなレッドカーペット

今年も一般客を迎えて開催された日本アカデミー賞の授賞式。ドレスアップした各部門の優秀賞受賞者が現れると、レッドカーペットは一気に華やかになり、満場の拍手が沸き起こった。色とりどりのドレス姿やシックな着物姿が並び、にこやかな笑顔を浮かべながらゆっくりカーペットを踏みしめるベテラン俳優、少し緊張した面持ちで進む新人賞受賞者たち、観客席を指さしながら笑顔を見せる若手俳優と晴れ舞台ならでの表情が続く。中でも佐藤健菅田将暉松坂桃李ら旬の演技派俳優と西島秀俊役所広司が顔をそろえる優秀主演男優賞の授賞者が現れた際には、思わず、というように歓声が沸いた。

最優秀助演男優賞は『孤狼の血 LEVEL2』の鈴木亮平
「関わってくれた方の顔を思い浮かべながら、ブロンズを眺めたい」

優秀助演男優賞を受賞したのは、阿部寛(『護られなかった者たちへ』)、鈴木亮平(『孤狼の血 LEVEL2』)、堤真一(『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』)、仲野太賀(『すばらしき世界』)、村上虹郎(『孤狼の血 LEVEL2』)。受賞者は各自撮影時の思い出を披露した。

奇しくも東日本大震災から丸11年後の開催となった今回の授賞式。阿部は、同震災が作品の大きなキーになることに思いを寄せ「(撮影した)宮城では、行ってみなければ分からないことがいろいろあった。今日は3月11日。作品を形にして出していくところに大きな意義を感じています」と感慨深げに語った。また、同じく会場にいた主演の佐藤健に対して「健君は常に利根でいて、話しかけてはいけない雰囲気でした。そうした彼の集中力が現場を支えていたと思います」と感謝を述べた。席を並べる堤が同い年であることにふれられると、「昔から一緒だから、さっきはホッとしましたね」と表情を緩め、堤から「第一声で、お互いの子どものことを心配し合うっていう」と関係性が明かされる一幕も見られた。

凶悪なヤクザの組長役で印象を残した鈴木は、役作りの上で重要だった広島弁の習得方法について聞かれると、撮影前が初めての緊急事態宣言中だったため、広島出身の知人とリモートでつながってひたすら勉強していたことを明かした。また、「(演じた上林は)いわゆる悪役だけど、一番僕を悪く見せてくれているのが桃李くん。全部受け止めてくれた。(松坂を)3発殴るシーンで、もう一発いきたいって気持ちになってしまって、本来は駄目なんですけど桃李くんなら分かってくれるだろうとやってしまった。そしたら本当に分かっていたかのようにスパンと受け止めてくれた」と激しい乱闘シーンに関するアドリブについて語った。松坂も「雨のシーンでテンション上がっていたので、亮平さんならくるのではと思ったら本当に(もう一発)来て『さすが亮平さん!』と思いましたね」と何度も共演を重ねた2人だからこその信頼を口にした。

敵役を演じた堤は「最初は断るつもりだったんですよ。岡田(准一)くんはアクションがすごすぎて無理だと思ったので。けれど脚本を読んだらアクションのない役だったので受けました。アクションで言うと、壁を殴る場面があって、壊れるセットだと思って一生懸命殴っていたら本当のコンクリートで、監督がケラケラ笑っていたことがありました」と茶目っ気たっぷりのエピソードを披露した。また、堤は司会を務める長澤を(司会者と受賞者で並んでいるのが)「不思議ですよね。さっき噛んでたし」といじって大らかなキャラクターで場を和ませた。

仲野は役所広司演じる三上の「伴走者でい続けよう」と考えて役作りに取り組んだといい、自分の撮影がない日も役所の撮影を見学したり、役所とツーショットを取って台本に貼り付けたりして、常に近くに感じながらの撮影だったことを伝えた。その反面、大先輩となる役所との共演に緊張してなかなか話せなかったといい、同作に参加していた長澤が間に入って「自分が考えて質問を長澤さんが聞いてくれた」と明かした。それを聞いた役所は「てっきり長澤さんが僕に興味を持って聞いてくれてると思っていた。ちょっとショックですね」とユーモアを交えて回答した。

片側に鮮やかな花柄の模様がついた個性的なロングジャケット姿の村上は「撮影の早い段階から松坂たちに『この組の“雨”はヤバいよ』言われていたけど、本当に痛かった。背中を銃弾で撃たれているような雨。俳優続けていくの難しいかもと思った」と激しい雨を降らせた中での撮影について、苦労を語った。また、その中で共演した鈴木と松坂をに対して「(2人は)ジャケットを着られる役だから、中に(痛みが弱まるようなものを)仕込んでいてズルいんですよ。『俺も偉くなろう』と思いました」とユーモアを交えたエピソードを披露した。

最優秀助演男優賞は鈴木亮平が受賞。自身の名前を呼ばれた瞬間、口を開けて驚きの表情を見せた鈴木は、「自分一人では決していただけないもの。この作品に関わったすべての方。ロケに協力していただいた広島の方に感謝しています」と述べた後「いただきました」としっかりブロンズを握りしめた。

【写真】第45回 日本アカデミー賞 授賞式 最優秀助演男優賞受賞者 (鈴木亮平)

 

その後も「はーすごいですね」と感慨深げにため息をつき、「子供のころから本当にたくさんの方に助けていただき、この世界で仕事をして今日一つの評価をいただけた。その方たち一人一人の顔を思い浮かべながら今日はブロンズを眺めたい」と率直な思いを伝え、左胸に手を当てたポーズでレッドカーペットを進んだ。

最優秀助演女優賞は『護られなかった者たちへ』の清原果耶
「みんなが報われるような世の中になればと思い、演じた」

優秀助演女優賞を受賞したのは、石原さとみ(『そして、バトンは渡された』)、清原果耶(『護られなかった者たちへ』)、草笛光子(『老後の資金がありません!』)、西野七瀬(『孤狼の血 LEVEL2』)、広瀬すず(『いのちの停車場』)。

妊娠中のため体調を考慮し、別室からの出演となった石原は初の母親役を演じるにあたり、娘役の子役と二人きりになる時間をもらって似顔絵を描いたり、かけっこ、縄跳びなど体を動かすことで仲を縮めたと話した。また、「演じた役の原動力は娘。その軸は大切にした」という今作について「初めて娘に観せたいと思った」と語り、ここでも“母の顔”を見せた。

清原は自身が演じた丸山を「人間の多面性が表にでたキャラクター」だと表し、「楽しい役ではなかったのでので、(現場でも)真剣にいろいろ考えながら演じていましたが、そうした中で佐藤さんや阿部さんとたわいもない会話ができたのは楽しかったです」と撮影時の様子を伝えた。佐藤も「宮城で撮影でしたので、現場はやはり重い空気があった。今度は楽しい役で一緒にやりたいですね」と応じた。

天海祐希演じる主婦の悩みの種となる浪費家の姑を演じた草笛は、初めて監督から「演じないでください。そのままでどうぞ」と言われたといい。監督を信じて演じないでやったと笑顔を見せた。また、男性に扮する場面で偶然(小道具の)歯が抜けてしまい、そこでも監督から「映画の女神が舞い降りたのでそのまんま撮って」と言われて「見られたくなかったけど、諦めました。もう仕事こないんじゃないかと思った」とアクシデントが実際の場面に生かされた様子をチャーミングに語った。これには天海も「笑っちゃいけないと思っていたけど、一言笑っていいですか?と断って目の前で笑った」という。

西野は殺伐とした場面が多い作品の現場で、松坂とはゲームの話で盛り上がり、合間はなごやかだったと振り返った。また、煙草を吸わないといけないシーンがあり、持ち方も知らなかったため、合間でその指導を受けたという。広瀬は、吉永小百合が現場でずっとスクワットをしていて、パワフルな姿に驚いたことを告白。長澤から「人のことをジーっと観察して様子をうかがっている小動物のような方。まだまだこれからが楽しみ」と伝えられると、「ずっとお姉ちゃんのように思っている方なのでうれしいです」と笑顔で返した。

最優秀助演女優賞は清原果耶が受賞。「本当に自分が受賞させていただけるとみじんも思っていなかったので、びっくりしています」と話しながらも満面の笑顔を見せた。

【写真】第45回 日本アカデミー賞 授賞式 最優秀助演男優賞受賞者 (鈴木亮平)

 

「人間の生きる原動力や動くきっかけは、ひとそれぞれで様々な理由があるとは思うが、作品・役を通してみんなが報われるような世の中になればいいと思い、演じていました。俳優として、映画を愛する人間としてこれからも成長できるように頑張ります」と締めくくり、晴れやかな顔で時々「ありがとうございます」と返しながら堂々とレッドカーペットを歩いた。

新人俳優賞8人が感謝のコメント
磯村勇斗は「映画は社会を映しだす鏡、偏見や差別のない世界を」

これからの映画界を担うことが期待される「新人俳優賞」は、今田美桜(『東京リベンジャーズ』)、西野七瀬(『孤狼の血 LEVEL2』)、三浦透子(『ドライブ・マイ・カー』)、吉川愛(『ハニーレモンソーダ』)、磯村勇斗(『ヤクザと家族 The Family』『劇場版「きのう何食べた?」』)、尾上右近(『燃えよ剣』)、宮沢氷魚(『騙し絵の牙』)、Fukase(『キャラクター』)の8人が受賞。

まずプレゼンターの草彅剛が、「今日は晴れ晴れしい舞台ですが、3月11日ということで、日本中が思うところがあるのではないかと思います。受賞されたみなさんの作品を観て一人でも心に残るものがあればいい。僕もみなさんと一緒に演技をする日がくればいいなと思っています」と伝え、受賞者一人一人に丁寧に表彰状を渡した。

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2作での受賞となった磯村は、「ようやくこの賞をいただき、スタートラインに立てた。俳優の道を志してよかったなと思えている。映画は社会を映しだす鏡、精進と共に偏見や差別のない世界を志していきたい」、尾上は「たくさん映画に出たいので、どうぞ右近を買ってください。見ている方は歌舞伎、観に来てください、映画も観に来てください、エンターテインメントの価値と力を心から信じています」と力強くアピール。宮沢は「ここ、2~3年コロナで世界中が暗い毎日。改めて映画の素晴らしさ、みなさんに希望を与える作品がこんなにあると再確認した」、Fukaseは、自身のバンドが10周年ツアー中だと前置きをしたうえで「10年間も音楽を続けた先にこんな素晴らしい賞をいただけると10年前の自分が知ったらどう思うか。ありがとうございます」と感謝を伝えた。

今田は「『東京リベンジャーズ』は撮影時コロナ渦で何度もストップしました。スタッフ・キャストの強いが思いがあってできた作品です。それが伝わったかな」、西野は「これから先も出会える作品があれば、誠意・熱意をもって関わっていきたい」、三浦は「本当に作品に恵まれたと改めて実感。自分の能力以上の力を引き出していただいた。もっと大きな人間になれるよう頑張ろうと今日改めて思った」、吉川は「初めての受賞。これから先にどんどんいろんな役を演じ、いろんな方に憧れられる俳優になりたい」とそれぞれに喜びの言葉と先への展望を口にした。

会長功労賞は戸田奈津子、野沢雅子ら6人が受賞
話題賞ではプレゼンターの小栗旬が、あのキャラクター姿で登場!

長年にわたり多大なる貢献と顕著な実績を記した映画人に贈られる会長功労賞には、草笛光子(女優)、戸田奈津子(映画字幕翻訳者)、野上照代(記録・黒澤組プロダクションマネージャー)、野沢雅子(声優)、森英恵(衣裳)、山崎努(俳優)らバラエティ豊かな6人が選ばれた。

草笛は「長く生きてしまい、88歳で初めてこんな賞をいただいてどうしていいか分からない。これからまた頑張らないと。次呼ばれるときは最優秀助演・主演賞をいただきにきたい」とチャーミングな笑顔。戸田は「ほぼ半世紀大好きな映画にハマってすごし、こんな賞をいただけていいのかしら。運のいいことに映画の黄金時代を過ごして来た。毎日毎日怒涛のように素晴らしい映画が押し寄せてきた。素晴らしい映画を上げてくださったみなさんに感謝と敬意しかない」、野沢は「今までずっと黙々とやってきて、長くやりすぎたかなと思うくらい長くやっているけれど、そのおかげで本当に素晴らしいこんなお年玉のような賞をいただけました。ありがとうございます」としみじみ感謝を伝えた。

映画ファンの投票によって選ばれる話題賞は、俳優部門を菅田将暉(『花束みたいな恋をした』)、作品部門を『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が受賞。プレゼンターとして登場した小栗旬は、現在菅田が主演を務めるTVドラマ「ミステリと言う勿れ」の主人公に扮した姿で会場の笑いを誘った。登壇した菅田が小栗を指さして吹き出すとニヤニヤ。挨拶では「今日はたまたま撮影中のドラマの現場からそのまま来ました。これからも益々の話題を作っていってください」と徹底してボケてみせた。

菅田は自身の受賞コメントで「ちょっと言葉の出ない登場にびっくりしています。この世界に入る前から話題の中心だった小栗旬と言う人が、今もこんなエンターテインメントの最前で戦っていることに驚いています」とコメントした後「『花束みたいな恋をした』はコロナ渦真っ只中で公開し、劇場に来てくださいと言えない状況での宣伝でになりましたが、たくさんの方が観に来てくれて感謝しています」と苦しい状況の中話題になったことに改めて感謝を伝えた。また、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を代表して登壇した企画プロデュースの紀伊宗之は「2回コロナで延期しながらも公開できて、こういう賞をいただけた。制作スタッフのみなさんも喜んでいると思います」と喜びを口にした。

最優秀主演男優賞は『ドライブ・マイ・カー』の西島秀俊
震災を思い返し「人とのつながりを描いた作品での受賞に意義がある」

優秀主演男優賞を受賞したのは、佐藤健(『護られなかった者たちへ』)、菅田将暉(『花束みたいな恋をした』)、西島秀俊(『ドライブ・マイ・カー』)、松坂桃李(『孤狼の血 LEVEL2』)、役所広司(『すばらしき世界』)。

佐藤は「震災から時間は経っても、災害は形を変えて我々の生活を侵食している。それを原作に教えられました。そういった現状をさまざまな方に伝えたいと思って臨んだ」とあらためて作品に賭けた想いを吐露。長澤はそんな佐藤と釜山の映画祭で一緒になった時のことを振り返り「各国の方から身体能力の高さを絶賛されていました。自分を更新していかれている方」と高く評した。また、佐藤は「監督は現場で声を荒げたりしない方だった。でも泥水に自分が沈められるシーンで相手が遠慮してしまったとき、初めて監督から『もっと沈めろ!』と大声が飛びました」と撮影時のエピソードを披露した。

菅田は特に自身の印象に残っているシーンでファミリーレストランの場面を上げ、「出会いも別れもそこがキーになる。共通の好きな物での盛り上がりから、生活、社会に出て行ってという中で(脚本の)坂本裕二さんのリアリティはすごい」と作品の魅力について語った。また恋人役で共演した有村架純について「(有村は)関西人。よく聞いていると、たまに「なんでやねん」とか隣にいても聞こえないくらいの小さな声で突っ込んでる。あ、関西人なんだなって」と微笑ましいエピソードを明かした。

西島は、日本初の米国アカデミー賞作品賞にノミネートされた主演作について「嘘をつかせない現場を監督が徹底的に作ってくれました。“嘘をつかない”ということの積み重ねがそういう結果になったのかな」と自身の見解を伝えた。車の中のシーンが多く出てくる作品において、通常は停車した車内で演じることが多い中、今作ではほとんどリアルで走らせていたといい「実際に風景が流れたり走っている時の音が演技に影響するからと、録音部もカメラマンも監督もびっちりついて走らせた。でもそれがリアルになった」と振り返った。

松坂は、隣に座る役所から引き継いだ主演を務めたことについて「役所さんの隣でこれを答えるのはすごいプレッシャー」と笑いながらも「役所さんがいない中という緊張感、いないからこそ前作を超えるものを作るぞという熱意になりました。(前作で役所が演じた大上と関わりが深い)ライターが時々出てきます。撮影に入る前に普段もライターを持って手になじむようにしました」とその存在が力になったことを伝えた。オール呉で撮影した現場は、とにかくアクション多くて「身体がボロボロ」だったといい、鈴木と白石和彌監督と「明神湯」という銭湯に行ったが「電気風呂が強くて、感電しそうなくらいだった」と温かなエピソードを披露した。

役所は、長澤との共演場面について「焼き肉店で長澤さんの長せりふのシーンがあって、メッセージが込められてるんですけど、そこで焼き肉が燃え始めた。せりふ聞いているふりをしながら燃えているお肉が気になって仕方なくて」と告白。さらに仲野との銭湯のシーンについてふれると「前張りをするんですけど、大賀くんの前張りがちょっと浮いていて、僕は松坂くんに教わった“松坂モデル”でやっていて、大賀にその方法を教えたら無事にピタっとした」とシリアスな作品からは想像のつかないコミカルな裏話を披露した。

ベテランと若手が入り乱れての混戦となった最優秀主演男優賞を獲得したのは、『ドライブ・マイ・カー』の西島秀俊。「このような名誉な賞をありがとうございます。監督、スタッフさん、岡田将生、三浦さんたち皆さんの力でいただけた賞。僕たちは毎日本読みをしていたのですが、(芝居の)相手が目の前にいることが自分の演技に影響を与えてくれました。本当に、一人で取れたものではありません」と謙虚に語った。

さらに「世界が混乱し、いろんなつながりが切れている中、3.11に人とのつながりの喪失と再生を描いたこの映画が賞をいただけたというのは、何か大きな意味があるのではないかと思っています。映画の繁栄にこれからも身を捧げたいです」と象徴的な日の受賞に思いを寄せた

【写真】第45回 日本アカデミー賞 授賞式 最優秀主演男優賞受賞者(西島秀俊)

最優秀主演女優賞は『花束みたいな恋をした』の有村架純
「背中を押してくれたのは、これまで出会ってくださった方の言葉」

優秀主演女優賞を受賞したのは、天海祐希(『老後の資金がありません!』)、有村架純(『花束みたいな恋をした』)、永野芽郁(『そして、バトンは渡された』)、松岡茉優(『騙し絵の牙』)、吉永小百合(『いのちの停車場』)。

仕事のできるリーダー役が多い天海は姑に振り回される今作の役に「最初は毛色の変わった役で嬉しかったけど、だんだんストレスが。でもすごく楽しい現場。とても豊かな気持ちで楽しく、明るく過ごせた。草笛さんの存在とお言葉に何より力がありました。そこを邪魔しないように演じました」と笑顔で伝えた。有村は、「作品全体を通してさまざまなカルチャーが出てくる。あらためてエンターテインメントが生活に与える影響を考えました。(菅田とは)5年の時間を共有しないといけない。ガチャガチャを一緒にするとか、ギターも菅田さんと紡ぐ時間としてやっていた」と役作りのために撮影の合間の時間を大事にしたことを伝えた。

永野は母親役を演じた石原について「初めて会った時にすごく力いっぱい抱きしめてくれて、会えていない時間を埋めてくれてすごくうれしかった」と伝え、石原は「本当に会いたかったので嬉しかった」と笑顔。原作は実の母がもともと好きな作品だったといい、公開時に母親から「素晴らしい映画を観せてくれてありがとう」と感想を言ってもらえたことを嬉しそうに語った。

松岡は大泉との共通点を「宣伝を頑張りたいタイプ」と挙げ、「一緒にやれるものはやろうと。大泉さんがOKする量が膨大で、過去一宣伝をしました。大泉は10回笑いが出ないと帰らないタイプ」とエピソードを披露。吉永は、10年ほど前の成島監督の作品『孤高のメス』素晴らしかったと前置きし、「私もこういうのがやりたいと。コロナだったので救命救急センター長が来てくれて、医療シーンについて教えてくれました。以前に転んだことから自転車がトラウマでしたが、広瀬さんが得意だというので背中を見ながらずっと乗っていました」と撮影秘話を語った。さらに広瀬はクランクアップの時にサプライズで『吉永さんおつかれさまでした』のTシャツを着て登場したという。

最優秀主演女優賞は、『花束みたいな恋をした』の有村架純。有村は、ブロンズを胸元に抱きしめて「すごくびっくりしています。この賞をいただけたのは、この作品に携わるキャストのみなさん、スタッフのみなさんのおかげ。私が作品に対してできることは限られている。自分がいったいこの作品にどういう影響を与えられるのか常々不安な部分ありますが、幾度となく背中を押してくれたのは、これまで出会った方々がくれた言葉たちでした。彼らがいたから好きな芝居を続けることができました。これからも一人よがりの芝居ではなく、思いやりを持って芝居、現場、人に対して誠実に向き合い、一緒に戦ってくれる仲間を大切に精進していきたいです。世界中が一刻も早く穏やかに過ごせるよう祈っています。私自身もみなさま貢献できるよう頑張っていきますので、今後もよろしくお願いいたします」とゆっくり噛み締めるように挨拶。レッドカーペットでは満面の笑みがこぼれた。

【写真】第45回 日本アカデミー賞 授賞 優秀主演女優賞受賞者 (有村架純)

東日本大震災のドキュメンタリー撮影が監督業の基盤に
『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督が最優秀監督賞

優秀監督賞を受賞したのは、 白石和彌(『孤狼の血 LEVEL2』)、瀬々敬久(『護られなかった者たちへ』)、成島出(『いのちの停車場』)、西川美和(『すばらしき世界』)、濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)の5名。

白石監督は、「撮影もコロナ渦で大変だったが、エンターテインメントの力を信じて、ここで僕らが暴れ倒さないとみんなに伝わらないという想いで一生懸命作った映画です。今回、美術の方が“この映画には絶対に必要だ”とワンシーンのために原爆ドームを作ってくれました。暴力場面がたくさんありますが、『孤狼の血』は反戦映画です。世の中からあらゆる暴力と戦争がなくなること祈っています」、瀬々監督は「この映画は東日本大震災のその後を描いた映画です。僕らの撮影を受け入れてくれた宮城県のみなさんに感謝しています。映画には共に感じる力がある。大変な時期ではありますが、共に感じて新しいところにいければと思っています」と今もなお苦しんでいる人々をへの想いを滲ませて挨拶。

成島監督は「撮影中からコロナとの闘いでした。公開時も大都市ではコロナの影響で観客ゼロでのスタートになった。初日、観客がいない舞台挨拶で(主演の)吉永さんが『スクリーンから飛沫は飛びません。なぜ演劇がよくて映画は駄目なのか』と挨拶されていた姿が忘れられない。それが大きく取り上げられて少しずつ劇場が開き、大勢の方が観てくださった。映画を愛してくださる皆さまに本当に感謝したい」、西川監督は、「小さなドラマだけど、憧れの役所さん、カメラマンさんを迎えみんなで大切に作った作品がこのように評価され感謝しています。私の現場は4割5分くらいが女性スタッフ。これからの映画人の取り組み方や働き方も変えていけるのかなと思っています。これからも後の世代が続けていけるように、私も監督として頑張りたい」、濱口監督は、「こういうことが自分の人生で起こるとは思っていなかったので、感激しています。多くのスタッフがノミネートし受賞して本当にうれしく思う。みなさんのお仕事があって、私が監督としてここに立てていると思います。一歩一歩研鑽を積んで、映画の世界でできることを探していきたいです」と映画界のこの先に向けて言及した。

最優秀監督賞を獲得したのは、『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督。濱口監督は震災から2年間、主に津波に遭われた方のインタビューを行いドキュメンタリーを作っていたと明かしたうえで「彼らがくれた力強い生きる力があって、そういう生命力を描いていきたいという思いが、監督の基盤になっている。間違えることもあるかもしれないけれど、今いるところから進んでいくしかない。みなさんが一緒に映画を作る、今の仲間で未来の仲間だと感じている。一緒に映画を作っていけたら」と映画作りに向けた思いを力強く語った。

最優秀作品賞は『ドライブ・マイ・カー』!!
西島秀俊「この作品が希望の光に」

優秀作品賞を受賞したのは、『キネマの神様』『孤狼の血 LEVEL2』すばらしき世界』ドライブ・マイ・カー』『護られなかった者たちへ』の5作品。

最後の発表となった最優秀作品賞には、米国アカデミー賞の行方も気になる『ドライブ・マイ・カー』が輝き、今回最多となる8部門での最優秀賞の受賞を果たした。

主演の西島は「作品を評価していただき、世界中で観ていただいているのも、世界の大きな波みたいなものかと思っています。この作品が希望の光になるとすれば、そのために必要なものが何なのかを、耳を傾けることの大切さを伝えているのではないかと思います。今日3月11日に苦労をされている方に思いを寄せながら、力になれるように考えていきたいと思っています」と喜びと今日の日への想いを告げ、満場の拍手で包まれるレッドカーペットをゆっくりと退場した。

WITHコロナの時代が長く続き、世界の様子が刻一刻と変わる中で行われた今回の日本アカデミー賞。3月11日の開催ということあり、受賞者たちが世界の人々、苦境に立たされる人々に思いを馳せながらも、映画がその力になることを祈りながら喜びと感謝を伝え、前を向いて進む様子が印象の残った授賞式は、盛況のうちに幕を閉じた。

[記者: 深海 ワタル / スチール写真提供: 東京写真記者協会]

フォトギャラリー📸

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第45回 日本アカデミー賞 最優秀賞 受賞結果🏆

部門 受賞者 対象作品
最優秀作品賞 『ドライブ・マイ・カー』
最優秀アニメーション作品賞 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
最優秀監督賞 濱口竜介 『ドライブ・マイ・カー』
最優秀脚本賞 濱口竜介
大江崇允
『ドライブ・マイ・カー』
最優秀主演男優賞 西島秀俊 『ドライブ・マイ・カー』
最優秀主演女優賞 有村架純 『花束みたいな恋をした』
最優秀助演男優賞 鈴木亮平 『孤狼の血 LEVEL2』
最優秀助演女優賞 清原果耶 『護られなかった者たちへ』
最優秀音楽賞 岩崎太整
Ludvig Forssell
坂東 祐大
『竜とそばかすの姫』
最優秀撮影賞 四宮秀俊  『ドライブ・マイ・カー』
最優秀照明賞 高井大樹 『ドライブ・マイ・カー』
最優秀美術賞 原田哲男  『燃えよ剣』
最優秀録音賞 伊豆田廉明
野村みき
『ドライブ・マイ・カー』
最優秀編集賞 山崎 梓 『ドライブ・マイ・カー』
最優秀外国作品賞 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
新人俳優賞 今田美桜 『東京リベンジャーズ』
西野七瀬 『孤狼の血 LEVEL2』
三浦透子 『ドライブ・マイ・カー』
吉川 愛 『ハニーレモンソーダ』
磯村勇斗 『ヤクザと家族 The Family』
『劇場版「きのう何食べた?」』
尾上右近 『燃えよ剣』
宮沢氷魚 『騙し絵の牙』
Fukase 『キャラクター』
協会特別賞 大林恭子(プロデューサー)
笹竹利行(映画美術文字デザイン)
月岡貞夫(アニメーター)
会長功労賞 草笛光子(俳優)
戸田奈津子(映画字幕翻訳者)
野上照代(記録・黒澤組プロダクションマネージャー)
野沢雅子(声優)
森 英恵(衣裳)
山崎 努(俳優)
会長特別賞 大塚康生(アニメーター) 3月15日没 享年85
原 正人(プロデューサー) 3月17日没 享年89
田中邦衛(俳優) 3月24日没 享年88
千葉真一(俳優) 8月19日没 享年82
澤井信一郎(監督・脚本) 9月3日没 享年83
高岩 淡(東映 元代表取締役社長・製作) 10月28日没 享年90
ワダエミ(衣裳デザイン) 11月13日没 享年84
岡田茂賞 京都アニメーション
東映アニメーション
話題賞/俳優部門 菅田将暉 『花束みたいな恋をした』
話題賞/作品部門 『シン・エヴァンゲリオン劇場版』

イベント情報

第45回 日本アカデミー賞 授賞式

■開催日: 2021年3月11日(金)
 
■会場: グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミール「崑崙」
 
■司会: 羽鳥慎一(アナウンサー)、長澤まさみ(女優)
 
■副賞協力: ブルガリ
 
■協賛: サラヤ、横井定
 
【画像】日本アカデミー賞 (JAPAN ACADEMY FILM PRIZE)
 

第44回 日本アカデミー賞 授賞式 レポート

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