第43回 日本アカデミー賞 授賞式 レポート
【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式

第43回 日本アカデミー賞 授賞式

最優秀作品賞は藤井道人監督『新聞記者』🏆
松坂桃李、シム・ウンギョンも最優秀主演賞をW受賞‼

3月6日(金)「第43回 日本アカデミー賞 授賞式」が、グランドプリンスホテル新高輪で開催。昨年『万引き家族』で最優秀主演女優賞受賞した安藤サクラと、フリーアナウンサーの羽鳥慎一が司会を務め、各部門の最優秀受賞者および最優秀作品などが発表された。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (司会:安藤サクラ、羽鳥慎吾)

無観客での開催も、受賞者たちは華やかに

新型コロナウィルスの影響で一般客の来場を中止し、規模を縮小しての開催となった今年の日本アカデミー賞。しかし、各部門で優秀賞受賞者は晴れやかにレッドカーペットに登場。女優陣の華やかなドレス姿や着物姿、にこやかに言葉を交わしながらの入場など、同賞ならではの温かな雰囲気は例年と変わらず、式典の幕開けを彩った。

最優秀助演男優賞は『キングダム』の吉沢亮
「主演の山﨑賢人がいたから立てた」

優秀助演男優賞を受賞したのは、綾野剛(『閉鎖病棟―それぞれの朝―』)、伊勢谷友介(『翔んで埼玉』)、柄本佑(『アルキメデスの大戦』)、岡村隆史(『決算!忠臣蔵』)、佐々木蔵之介(『空母いぶき』)、吉沢亮(『キングダム』)。受賞者は各自撮影時の思い出を披露した。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (優秀助演男優賞受賞者)

綾野は撮影先の長野のホテルで深夜に露天風呂に行った際、主演の笑福亭鶴瓶と偶然居合わせて背中を流したエピソードを語り、鶴瓶も思い出し笑いをしながら回答。伊勢谷ら他の受賞者たちを驚かせた。伊勢谷は独特の世界観とテンションで進む撮影に粛々と挑んだと話すも、「心の中の抵抗感はすごかった」と吐露。柄本は役作りにあたり、海軍学校で精神面を学んだことを明かすと、司会で妻の安藤から「当時大阪でロケをしていて、何も知らなかった。人見知りなのに気づいたら(主演の)菅田くんと仲良くなっていた」と返され、大汗をかきながらの登壇となった。

岡村は役者としての華やかな場を前に人一倍緊張した面持ち。勘定方の役作りにあたり、日々会議室でそろばんの稽古をしたことを回想。佐々木は、狭くて暗い場所での撮影が続く中、楽しみは「海軍カレー」などの食事だったこと、吉沢は1人2役を演じるにあたり、目線や剣技の違いを意識したと明かした。

最優秀助演男優賞は吉沢亮が受賞。昨年、新人俳優賞を受賞したばかりということで「まさか最優秀をいただいてここでスピーチをすることになるとは思っていなかった」と緊張しながら語るとともに、同作品で主演を演じた山﨑賢人と「次は続編で二人で(日本アカデミー賞の会場に)来ようぜ」と熱く語り合ったことを明かし、「彼が主演でみんなを引っ張ってくれたおかげで、すごく素敵な作品になったと思うし、彼とお芝居をしたことによって、僕が(最優秀助演男優賞を)いただけることになったのかなと思っています」と感謝の気持ちを伝えた。

新人俳優賞6人が喜びのコメント
横浜流星は「僕にはまだ早いのでは」

これからの映画界を担うことが期待される「新人俳優賞」は6人が受賞。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (新人俳優賞)

鈴鹿央士は「映画の現場にはすばらしい人たちがいる。現場が好きです」、森崎ウィンは「(出身地の)ミャンマーで今も暮らす祖母に初めて孝行できた」、横浜流星は「作品を通して力不足を感じている。僕にはまだ早いのではという気持ちもあるが、この賞に恥じないよう日々精進したい」、岸井ゆきのは「作品中で追いかけて手に入らなかった希望をやっと手に入れた思い」、黒島結菜は「目の前にあることを一つ一つやっていきたい」、吉岡里帆は「これからも見る人のプラスになるような瞬間を届けたい」とそれぞれに喜びの言葉を口にした。プレゼンターの役所広司からは「勇気を持って失敗を恐れずに。いい作品と出会えることを祈っています」と激励の言葉が贈られた。

最優秀助演女優賞は『キングダム』の長澤まさみ
「会ったことのない自分を目指して励みたい」

優秀助演女優賞を受賞したのは、天海祐希(『最高の人生の見つけ方』)、小松菜奈(『閉鎖病棟―それぞれの朝―』)、高畑充希(『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』)、長澤まさみ(『キングダム』)、二階堂ふみ(『人間失格太宰治と3人の女たち』)。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (優秀助演女優賞受賞)

天海は18年ぶりとなった吉永小百合との共演を思い返し、「ご一緒できて幸せだった」と感極まって涙。吉永も「最高の相棒でした」と笑顔で応えた。小松は建物の屋上から飛び降りるシーンをスタントなしで演じたことを思い返し「テストでやって自分が高所恐怖症ということを思い出した」とユーモラスに語った。高畑は撮影場所の北海道が主演を務めた大泉洋の地元であることにふれ、「店を予約してもらったけれど、(大泉)本人は役柄上痩せなくてはならず他のみんなだけでおいしい思いをした」と明かして笑いを誘った。

長澤は激しいアクションシーンで「普段の弱い自分が出ないよう」戒めていたと語り、長くて重い剣を毎日素振りしたエピソードを話した。二階堂は作品内で恋をする相手・太宰治(小栗旬)の魅力を問われ「魂を削り何かを生み出す人。何かが欠落しているところに惹かれるのでは」と微笑んだ。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (優秀助演女優賞受賞)

最優秀助演女優賞は最優秀助演男優賞に続き『キングダム』から、長澤まさみが受賞。第28回『世界の中心で、愛を叫ぶ』以来、15年ぶり2回目の受賞に。「自分にできることは何だろうと考えながら日々仕事と向き合ってきました。まだまだこの先自分がどうなるかというのは私自身も見えていない。まだ会ったことのない自分を目指してこれからも励んでいきたいと思います」と17歳で受賞してからこれまでを振り返り、今後についての抱負を語った。

最優秀主演女優賞は『新聞記者』のシム・ウンギョン
涙と感謝の言葉に会場から大きな拍手

優秀主演女優賞を受賞したのは、シム・ウンギョン(『新聞記者』)、二階堂ふみ(『翔んで埼玉』)、松岡茉優(『蜜蜂と遠雷』)、宮沢りえ(『人間失格太宰治と3人の女たち』)、吉永小百合(『最高の人生の見つけ方』)。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 レッドカーペット

シムは撮影前に実際の新聞社に仕事の様子を見に行ったといい、猫背で仕事をする記者たちの様子を役作りの参考にした当時の様子を思い返した。さらに以前から松坂のファンだったと告白、「この深い作品で共演できて光栄です」と感謝を口にした。二階堂は男性役での主演女優賞受賞に、最初は女性役に変更するとのオファーであったが「男性役で頑張ります」と自ら原作通りの性別にすることを希望したと明かした。松岡は自身のことではなく、ピアノが初めてだったにも関わらず練習を繰り返しトップピアニストを演じた共演者を、ユーモアを交えて褒め称えた。宮沢は子どもとの共演で失敗できないシーンが本番1回だったことを明かし「演技の神様が降りてきた」と表現。吉永は映画内のアイドルグループとの共演が自身の提案だったという撮影秘話を披露した。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (優秀主演女優賞受賞)

最優秀主演女優賞は外国人として初の受賞となった『新聞記者』のシム・ウンギョン。発表された瞬間は何が起こったか分からないといった表情で、呆然と壇上へ。「全然思ってもみなかったので、準備ができていなくてすみません」と、スピーチの際にもなかなか言葉が出てこない様子だったが、会場から湧き上がった拍手が後押し。「本当に(松坂と)共演できて光栄でした。これからも頑張って活動します。ありがとうございました」と言葉数は少ないながらも、涙とともに日本語で感謝の気持ちを伝えた。

最優秀主演男優賞は『新聞記者』の松坂桃李
「今後も作品の一部となっていきたい」

優秀主演男優賞を受賞したのは、笑福亭鶴瓶(『閉鎖病棟―それぞれの朝―』)、菅田将暉(『アルキメデスの大戦』)、中井貴一(『記憶にございません!』)、松坂桃李(『新聞記者』)、GACKT(『翔んで埼玉』)。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 レッドカーペット

役作りのために短期間で7kgの減量をしたという鶴瓶は、同じく壇上にいた菅田から他作品での撮影時、現場での迫力はすごかったと称えられた。菅田は演じた天才数学者役を「お芝居というよりは勉強」と表現。ベテラン俳優がそろった会議室シーンの緊張感に言及した。中井は同い年の監督・三谷幸喜への尊敬を口にした。松坂は社会的なテーマが含まれた同作出演の決めてを「純粋に作品の根底にある“自ら判断する意志をもつこと”のテーマに引かれた」と告白。同じ事務所の菅田に対する思いを聞かれると「妙な距離感。同士でもあり、僕はやはりライバルだとも思っています」と率直な気持ちを語った。GACKTはまさかの高校生役オファーに対して最初は断ったが「(原作の)魔夜先生にこの役はGACKTじゃないとと言われて心を動かされた」と出演のきっかけを明かした。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (優秀主演男優賞受賞者)

最優秀主演男優賞は、昨年、最優秀助演男優賞を受賞した松坂桃李。「一緒にお芝居をすることができて最後まで駆け抜けることができました」と讃えたシム・ウンギョンとともに『新聞記者』で最優秀主演のダブル受賞に輝いた。「今日という日を糧に、また自分が新たに作品の一部にちゃんとなれるようにと思っております」と昨年に続き、受賞の喜びを今後につなげていくことを誓った」

最優秀監督賞は『翔んで埼玉』の武内英樹監督
「取っちゃいけない作品が取っちゃった…」

日本アカデミー賞史上最多の13冠を獲得した『Swall we ダンス?』(1996年)の周防正行監督をはじめとする日本が誇る名監督がそろった監督賞では、『翔んで埼玉』のメガホンを取った武内英樹監督が最優秀賞に。武内監督は「取っちゃいけない作品が取っちゃった…」と自虐的に語りながらも、「埼玉の733万5千人の県民のみなさん、映画を応援してくれて温かく見守っていただいて、ありがとうございました!」と潔い短い挨拶で埼玉県民の皆様に向けて感謝のスピーチを送った。これには円卓で見守る主演のGACKTと伊勢谷がハイタッチ。二階堂も笑顔で武内監督の受賞を祝福した。

最優秀作品賞は『新聞記者』!!
藤井監督「うれしいしか言えない。早くみんなに報告したい」

最後の発表となった最優秀作品賞には、並み居る大型作品をはねのけて『新聞記者』が輝き、キャスト・スタッフが喜びの表情で登壇。主演の松坂は「純粋にうれしいです。ここにいないスタッフの方々、関係者の皆様と今すぐにでも喜びを分かち合いたい気分です」とコメント。藤井監督も「本当にうれしいしか言えないのですが、もっともっとたくさんのスタッフと力をみんな合わせてこの映画を作ったので、早くみんなに報告したい。桃李くんと同じ思いです」と語り、チームワークの良さを伺わせた。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (松坂桃李、シム・ウンギョン)

シムは「本当に計り知れません。何とも言えない気持ちなのですが、光栄です。ありがとうございます」と深く感謝。司会の安藤に「来年は司会です」と来年の授賞式を託されると、戸惑いながらも「頑張ります」と意気込んだ。

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式 (最優秀主演女優賞受賞 シム・ウンギョン)

縮小開催というこれまでにない形での授賞式となるも、映画人が集い、お互いの努力や功績を讃え、喜びを分かち合う光景は例年と変わらず、盛況のうちに式典は幕を閉じた。

[記者: 深海 ワタル / スチール写真: ©日本アカデミー賞協会]

第43回 日本アカデミー賞 最優秀賞 受賞結果🏆

部門 受賞者 対象作品
最優秀美術賞 斎藤岩男 「キングダム」
最優秀撮影賞 河津太郎 「キングダム」
最優秀照明賞 ※「撮影賞」と対になる賞で「キングダム」が対象者なしの為、該当なし。
最優秀録音賞 久連石由文  「蜜蜂と遠雷」
最優秀編集賞 河村信二 「翔んで埼玉」
話題賞/俳優部門 星野源 「引越し大名!」
話題賞/作品部門 「決算!忠臣蔵」
協会特別賞 金子鉄男
小田部羊一
丹羽邦夫
山田好男
会長功労賞 高田宏治
宝田明
司葉子
中島貞夫
若尾文子
会長特別賞 故・市原悦子
故・降旗康男
故・和田誠
新人俳優賞 岸井ゆきの 「愛がなんだ」
黒島結菜  「カツベン!」
吉岡里帆 「見えない目撃者」
「パラレルワールド・ラブストーリー」
鈴鹿央士  「蜜蜂と遠雷」
森崎ウィン 「蜜蜂と遠雷」
横浜流星  「愛唄-約束のナクヒト-」
「いなくなれ、群青」「チア男子!!」
最優秀外国作品賞 「ジョーカー」
最優秀音楽賞 RADWINPS 「天気の子」
最優秀脚本賞 徳永友一  「翔んで埼玉」
最優秀アニメーション作品賞 「天気の子」
最優秀助演女優賞 長澤まさみ 「キングダム」
最優秀助演男優賞 吉沢亮 「キングダム」
最優秀主演女優賞 シム・ウンギョン 「新聞記者」
最優秀主演男優賞 松坂桃李 「新聞記者」
最優秀監督賞 武内英樹 「翔んで埼玉」
最優秀作品賞 「新聞記者」

イベント情報

【写真】第43回 日本アカデミー賞 授賞式

第43回 日本アカデミー賞 授賞式

■開催日: 2020年3月6日(金)
 
■会場: グランドプリンスホテル新高輪
 
■司会: 安藤サクラ(女優)、羽鳥慎一(アナウンサー)
 

映画『新聞記者』藤井道人監督 インタビュー記事

この記事の著者

この著者の最新の記事

関連記事

カテゴリー

アーカイブ

YouTube Channel

【バナー画像】日本アカデミー賞
ページ上部へ戻る