映画『ペンギン・ハイウェイ』石田祐康監督インタビュー

【写真】映画『ペンギン・ハイウェイ』石田祐康監督インタビュー

映画『ペンギン・ハイウェイ』石田祐康監督インタビュー

自己完結して楽しめるところが、僕とアオヤマ君は似ているかも

映画『ペンギン・ハイウェイ』が8月17日(金)に劇場公開された

原作は「夜は短し歩けよ乙女」、「有頂天家族」などで有名な森見登美彦による同名小説で、日本SF大賞を受賞した作品。小学4年生の少年・アオヤマ君がクラスメイトとともに、住宅街に突然現れたペンギンの謎を追う。

【画像】映画『ペンギン・ハイウェイ』アオヤマ君とウチダ君とペンギン

アニメーションでの映画化にあたり、スタジオコロリドの石田祐康が監督を務めた。石田監督は自主制作作品「フミコの告白」で第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞し、劇場デビュー作品となる「陽なたのアオシグレ」は第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査員特別推薦作品に選出された。本作も、カナダ・モントリオールで開催された第22回ファンタジア国際映画祭で、最優秀アニメーション賞にあたる今敏賞(長編部門)を獲得した。

アニメーション界で今、最もその才能に注目が集まっている石田監督に、作品へのこだわりやアオヤマ君への思いを聞いた。

―― 監督のブログを拝見して、森見登美彦さんの作品をかなり読み込んでいる印象を受けました。初めて手がける長編作品の題材に森見登美彦さんの作品を選んだのは、そういったことが大きかったのでしょうか。

自分も京都に住む大学生だったこともあり、腐れ大学生には大分馴染みがありまして(笑)。四畳半の部屋に貧乏な学生が集って、和気あいあいアホやっている感じは思い当たる節があります。だから森見さんが描く世界観が好きでしたね。「太陽の塔」、「四畳半神話大系」、「夜は短し歩けよ乙女」、「有頂天家族」など、大概の作品は読んでいました。

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―― 森見作品の中から、「ペンギン・ハイウェイ」を選んだのはどうしてでしょうか。

僕の周りにいた大学の同期の子や制作デスクの方、他社のプロデューサーさんなど、勧めてくれる方が多くいたんです。最初は何故だろうと思いました。

他の“腐れ大学生”作品は読み手として楽しんで読んでいましたが、自分が作るとなると違う。他の監督で実例がありますし、そこを自分がやっても意味がない。

それに対して、「ペンギン・ハイウェイ」は別物と言ってもいいくらいテイストが違う作品です。今までの森見さんの作品と意識せずにやれるのではないかと思いました。また、純粋に作品として持っている淀みのない景色の広がり方と、その一方で、ペンギンやお姉さん、アオヤマ君の可愛らしさ、街並みの煌びやかさとは裏腹の、闇を感じさせるような深遠さにも惹かれました。これは大学生の頃に読んだ他の森見作品のおもしろ可笑しい感じとは違います。「この作品は難しいけれどやってみたい」と思いました。実際、難しかったですけれどね。

【画像】映画『ペンギン・ハイウェイ』アオヤマ君とペンギン達

―― 作品の冒頭で、アオヤマ君の部屋を真上からすーっと移動するように映し出します。小さなドローンを使って、監視しているスパイ映画のようでした。あまり見ない演出ですね。

おもしろい着眼点ですね。初めて聞きました(笑)。

ファーストカットで何かをやりたい。そこで、作品を象徴するものをある程度、物語りたい。まずは、アオヤマ君のきちんと整頓されている部屋から、彼の家庭には上品さがあり、親が子どもをとても大切にしていることを見せたかった。

そして、単純に映像としての流れですね。スパイ映画という意識はありませんでしたが(笑)、何でもない、止めのカットにはしたくなかったのです。アニメの場合、立体的に動かして、角度を変化させたら、その都度、キャラクターを全部、描かないといけません。けっこうしんどい作り方を選択しています。それをしてまでも「この映画は何かやってくれるんじゃないか」という予感を持たせたいと思ったのです。

ちょこんと座って、なりふり構わず一生懸命に書いているアオヤマ君をファーストカットで見せる目算もありました。

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―― ノートの内容からアオヤマ君がおっぱいに興味があること、道を渡るシーンから状況判断のできる子どもであること、ペンギンが逃げ回るシーンから舞台となっている街の様子が伝わってきました。見事な情報処理ですね。

意識して描いていますが、指摘されたことはありませんでした。

雰囲気だけの冒頭にならないよう、オープニングまでの流れを一気通貫で、きれいにやりたい。そこでだいたいの情報が分かるようにしたい。佐藤順一監督から、冒頭でキャラクターを印象付けることの重要性をうかがい、自分なりに考えて出した答えでした。

本棚は整頓され、学んだことをノートのマス目に1文字1文字きっちり書く。ケチャップで汚れた妹の口を拭いてあげるしっかり者のお兄さん。それとは裏腹のおっぱいへの興味。アオヤマ君は頭がよくて、しっかり者だけれど、ちょっとズレています。

ペンギンを見ようと道を渡って、車に轢かれそうになるシーンも、「今なら、ちゃんと手を挙げれば大丈夫」という計算のもとに行動しています。1つのことが気になったら、そこに目線が集中する。アオヤマ君の集中力の高さを表しました。

この作品のキャッチコピーは「ぼくの街にペンギンが現れた」で、物語はそこから始まります。「何でもない郊外の住宅地に、何でペンギンがいるねん!」という違和感を見せるためにも、オープニングシーンは必要でした。可笑しみのあるシチュエーションとそこから物語がいかにも起きそうな感じ。個人的には本編の中でも一際、気に入っているシーンです。

そのシーンは自分がこれまで短編でやっていたような、飛んだり跳ねたりという派手な演出がありません。地味と言えば地味なシーンですが、ペンギンを描いていてかわいいなと思えて、やってみたくなったのです。

【画像】映画『ペンギン・ハイウェイ』お姉さん

―― 監督が手掛けたノイタミナの10thスペシャルアニメーション「ポレットのイス」に出てきたイスから、まるで生きているかのような疾走感が伝わってきました。本作でも、水に飛び込んだときのペンギンから感じます。

作品に出てくるペンギンは、ネタバレになりますが…ペンギンとしてプログラミングされているだけで、本物のペンギンではありません。何の気なしに生まれてきて、何の気なしによちよち歩いている。本来は海の生物なんだということを忘れています。しかし、水に落ちた瞬間、本能が呼び覚まされて、水を得た魚のようにあっという間の速度で泳ぐ。猫と比較して走らせる工夫もして、「泳ぎがこいつの得意技」というペンギンの特徴も表しました。

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―― アオヤマ君は小学校4年生。賢い子で、的確に状況を判断する力を備えています。しかし、おっぱいに興味があるけれど、ウチダ君さえわかる恋心はさっぱりわからないアンバランスさもあります。男の子の成長過程として、監督は似たような経験がありますか。

僕は集中して何かをしたり、妄想したりする時間が好き。絵を描いたり、映画を観たりボーッとしたり、自分自身でけっこう楽しめてしまうので、一人でいることが多いんです。

アオヤマ君にも独自の世界があって、ウチダくんやハマモトさんが考えている悩み、心の機微には無頓着なところがちょっとありますね。自己完結しているところが、僕とアオヤマ君は似ているかもしれません。

そうやって自分を信じて、自分がやりたいこと、正しいと思ったことを貫こうとしている姿勢は好き。だから感情移入して描けました。むしろ、そういう主人公でないと自分は描きたくなかったので、この作品を選びました。ひねくれたキャラクターが主人公だったら、選んでなかったかもしれません。

【画像】映画『ペンギン・ハイウェイ』アオヤマ君

―― 日々努力を怠らず勉強し、大人になったらどれほど偉くなるか、自分でも見当がつかないアオヤマ君が20歳になったとき、どんな青年になっていると思いますか。

真っすぐすぎるアオヤマ君は、スズキ君やハマモトさんの異性に対する淡い気持ち察することができずに衝突が起きましたが、それに近いことが今後もあると思います。そういう紆余曲折を経て、アオヤマ君なりの生きていく上でのバランス感覚を、微調整しながら形作っていくでしょう。でも、これと決めたことに真っすぐ、がっつりその身を捧げてしまう根本の部分はきっと変わらないと思っています。そのステージや規模が今と違うところに移ったり、もっと大きくなったりするけれど、必ず何かをやり遂げる。少なくとも他の森見作品に出てきた、京都の四畳半の部屋でいじけているような、そんな男子にはならないと信じて、この作品を作っていました。

自分が描く愛すべきキャラクターとして応援したい気持ちと同時に、自分自身の思いも相当入って、アオヤマ君と気持ちが同期しています。

[スチール撮影: 平本 直人 / インタビュー: 堀木 三紀]
[構成・編集: Cinema Art Online UK]

監督プロフィール

石田 祐康(Hiroyasu Ishida)

1988年、愛知県知多郡美浜町に生まれる。愛知県立旭丘高等学校美術科に入学。在学中にアニメーションの制作をはじめ、2年生の時に処女作「愛のあいさつ-Greeting of love」を発表。京都精華大学マンガ学部アニメーション科に進学し、2009年に発表した自主制作作品「フミコの告白」は、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞、2010年オタワ国際アニメーションフェスティバル特別賞、第9回 東京アニメアワード学生部門優秀賞など数々の賞を受賞。
2011年に同大学の卒業制作として発表した「rain town」も第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門新人賞などを受賞。

2013年、劇場デビュー作品となる「陽なたのアオシグレ」を発表。監督・脚本・作画を務めた本作は、シンプルなストーリーながら疾走感あふれる映像が話題となり第17回文化庁メディア芸術祭にてアニメーション部門の審査員特別推薦作品に選出された。

2014年にはフジテレビ系ノイタミナの10thスペシャルアニメーション「ポレットのイス」を制作。

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映画『ペンギン・ハイウェイ』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『ペンギン・ハイウェイ』ポスタービジュアル

《ストーリー》

小学四年生のアオヤマ君は、一日一日、世界について学び、学んだことをノートに記録する。毎日努力を怠らず勉強するので、「将来は偉い人間になるだろう」と思っている。そんなアオヤマ君にとって何より興味深いのは歯科医院の“お姉さん”。気さくで胸が大きくて、自由奔放でミステリアスなお姉さんをめぐる研究も、真面目に続けていた。 

 

ある日、アオヤマ君の住む郊外の街に突如ペンギンが現れ、そして消えた。さらにアオヤマ君は、お姉さんがふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」 一方、アオヤマ君は、クラスメイトのハマモトさんから森の奥にある草原に浮かんだ透明の大きな球体の存在を教えられる。やがてアオヤマ君は、その謎の球体“海”とペンギン、そしてお姉さんには何かつながりがあるのではないかと考えはじめる。そんな折、お姉さんの体調に異変が起こり、同時に街は異常現象に見舞われる。果たして、お姉さんとペンギン、“海”の謎は解けるのか――!?

 
出演: 北 香那、蒼井 優、釘宮理恵、潘 めぐみ、福井美樹、能登麻美子、久野美咲、 西島秀俊、竹中直人
原作: 森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」(角川文庫刊)
監督: 石田祐康
キャラクターデザイン: 新井陽次郎
脚本: 上田誠(ヨーロッパ企画)
音楽: 阿部海太郎
制作: スタジオコロリド
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会
 
2018年8月17(金)より、全国公開!!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @pngnhwy

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