映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映 舞台挨拶レポート
【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ、草彅剛)

映画『パラサイト 半地下の家族』(英題:PARASITE/原題:GISAENGCHUNG)

ポン・ジュノ監督&主演 ソン・ガンホ緊急来日!
㊗大ヒット!プレミア上映 舞台挨拶

チョナン・カン(草彅剛)がサプライズ登場!
20年越しのラブコールの末、念願の初対面叶う

全員失業中の貧しい一家とIT企業を経営する裕福な社長一家という相反する2つの家族の出会いから想像をはるかに超える展開へと加速していく物語を描いたポン・ジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』(原題: GISAENGCHUNG/英題: PARASITE)。日本でもアカデミー賞発表前の1月10日(金)の公開直後から全国的に満席が続き、2月22日(土)時点で動員220万人を超え、興行収入は遂に30億円を突破。『私の頭の中の消しゴム』(2004年)以来、15年ぶりに記録を更新し、日本における韓国映画の歴代興行収入第1位となった。

【画像】映画『パラサイト 半地下の家族』メインカット

今回緊急来日を果たしたポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホが、2月23日(日)に日本記者クラブにて行われた来日記者会見に続き、2月24日(月・祝)にTOHOシネマズ 六本木ヒルズでの上映後に行われた舞台挨拶に登場した。

注:以下ネタバレあり

MCからの呼び込みでポン・ジュノ監督とソン・ガンホが笑顔で登場すると、上映終了直後の興奮もあり、観客達から割れんばかりの歓声で迎えられた。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ)

ポン・ジュノ監督とソン・ガンホそれぞれより挨拶

ポン・ジュノ監督: まずはこのように劇場をいっぱいにしてくださりありがとうございます。アカデミー賞に関連して多くのお祝いのお言葉をいただきましたが、オスカー受賞以前に日本の観客の皆さんが映画をご覧くださり、熱いご感想をいただいていたことに心から感謝いたします。それと同時に、皆さま、とても高い好みをお持ちだなと思いました。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ポン・ジュノ監督)

ソン・ガンホ: 本当にありがとうございます。この映画は言語が違いますが、たとえ言語が違っても共感できるのだ、それが映画の力なのだということを皆様が見せてくださいました。感謝いたします。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ソン・ガンホ)

今回の舞台挨拶付きプレミア上映の観客の中にはリピーターも多く、中には10回以上鑑賞した人も。カンヌおよびオスカー受賞を心から喜んでいるということで、黄金色のくす玉を割って監督、ソン・ガンホの二人と一緒に大ヒットのお祝いをすることに。「“パラサイト”おめでとう~!!」という観客全員からの祝福の声援に合わせ、二人の手によってくす玉が割られ、会場は大きな拍手と歓声に包まれた。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 くす玉割り(ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ)

世界中で大ヒット中の本作品であるが、日本でもこれまでの韓国映画の興行収入を塗り替えられた韓国映画歴代ナンバーワン作品となったことについて聞かれると、

ポン監督: 2000年の頭に韓国映画が日本で活発に公開され愛されていた時期がありました。その頃というのは日本映画も同じく韓国で多く上映され関心を持たれていた。20年経って、いま現在こうして韓国映画が日本でヒットしているということは、両国にとっても、両国の国民にとってもお互いを尊敬し合える、愛されるきっかけになれば。第二の交流の時期が始まってほしいという願いがあります。

ソンガンホ: こちらに興行収入30億円突破という数字がありますが、数字よりも大切なものがあると思うのです。今、監督もおっしゃっていましたが韓国の観客は日本の映画を楽しみ、日本の観客は韓国の映画を楽しむ。そうやってお互いに触れ合って共感できるということが大切なことだと思います。韓国でも以前から日本の巨匠と呼ばれている監督の映画が公開されてきましたし、最近もでも例えば是枝裕和監督、阪本順治監督、イ・サンヨル監督の作品などがたくさん愛されています。そんな風にお互いに共感できる。今作がそんなきっかけの作品になったような気がしていて、とても嬉しく思っています。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ)

ーー カンヌ国際映画祭でのパルムドール受賞も素晴らしかったですが、アカデミー賞で作品賞、監督賞、国際長編映画賞、脚本賞の4部門を獲得されました。その時を振り返ってみてどんな気持ちでしたか。

ポン監督: 全く計画していたことではありませんでした。映画のセリフの中にも「無計画が最高の計画だ」というセリフがあります。計画していたことではなかったのですが、こういった賞をいただけたということは、嬉しくもあり気が少し動転しているような気持ちでした。本当に貴重な賞をいただいたと思っていますし、とても光栄なことだと思っています。トロフィーは大切にしまっています。ただ、日本も含めフランスやメキシコや北米でも多くの観客の皆様に熱烈な反応をいただきましたことが一番嬉しいです。この映画を知っていただいて、大きく受け止められ、熱い反応をいただけたこと。賞をいただいたこと以上に、そこを嬉しく感じているのです。

ソン・ガンホ: オスカーを受賞した時の映像を見ていただくと、私は嬉しさを少し噛み締めながら控えめにしていたのです。監督のあばら骨を折らないように気をつけていました。

ポン監督: カンヌで賞をいただいた時に僕の肋骨を強く叩いてくれていたので、実は少しヒビが入っていたようなのです(笑)。

ソン・ガンホ: なので今回は首の後ろですね。それから背中と顔を中心にして抱きしめました(笑)。

チョナン・カン(草彅剛)がサプライズ登場!

二人の仲の良さが伝わるエピソードが披露されたところで、ここでスペシャルゲストがカンヌ・オスカー受賞のお祝いに駆けつけた。サプライズでバラの花束と共に草彅剛が登場すると、会場からは驚きと興奮の声が上がった。過去にチョナン・カンとして日韓で活躍した経験のある草彅が流暢な韓国語でお祝いの言葉を贈ると二人が破顔した。

草彅剛: 今日わざわざ来てくださってありがとうございます。二人の熱烈なファンです。自分が演技をする時にもソン・ガンホさんだったらどう演技するんだろう?と考えながら演技をしています。本当におめでとうございます。最近は韓国語の勉強をする時間がなく忘れてしまいました。いつも力をいただいています。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (草彅剛/チョナン・カン)

これまで何度かオファーをしたがタイミングが合わず、今回念願の初対面を果たせたと喜ぶ草彅に対し、監督とソンの二人からも草彅へ感謝のメッセージが送られた。

ソン・ガンホ: 光栄です。もう20年ぐらい前からチョナン・カンさんが私のファンだとおっしゃってくださっていたことは知っていました。本当にありがたかったですし、今回ようやくお会いすることができて私も嬉しいです。今日は記念すべき日ですね。

ポン監督: 僕も草薙さんについては様々な活動をしていらっしゃることを存じていました。

香川照之さんと共演した『僕に炎の戦車を』という作品公演も観にいっていたんです。

ポン監督の作品はほぼ全部観ていると話す草彅が『パラサイト 半地下の家族』の感想について聞かれると、「僕も一流のエンターテイメントになっていて退屈するところがひとときもなかった。鑑賞後に様々なシーンについて話し合いたくなる作品だし、家族愛も描かれている。またすぐに観たくなる作品ですね」と話し、「無計画というところが先ほどもあったのですがお父さんが計画ないのに子供達に計画があると嘘をついて、体育館で説得力あるような本当は計画なかったんじゃないかというのが面白かったです。計画を立てなければ失敗することはないということで、基本的に僕もノープランなので、とても心に響いていくシーンなのですが。ポンジュノ監督が撮る作品、二人のタッグというのは『殺人の追憶』(2003)も好きなんですけど、鬼気迫った状況でもブラックユーモアが効いているというか、人ってこんな極限の状況でもこんなことを考えたりするのかなといったような、人間、誰しもが持っているいろんな喜怒哀楽の感情がいろんなところに散りばめられていて、好きな作品です。全部好きですね(笑)。リアリティがあるので。

映画『パラサイト 半地下の家族』の感想を直接二人へ伝え、その後は草彅から二人へ作品にまつわる質問の時間が設けられた。

ソン・ガンホ演じるお父さんとパク社長がインディアンの格好をしていたシーンについて

お父さんのインディアンの羽が赤く、パク社長の羽は黒かったことについて、何か意味を込めていたのかを尋ねたところ、二人とも特に意識はしていなかったが、「いま草彅さんにそうおっしゃっていただいて、なんとなくそういった意識があったのかな。今後のインタビューで引用させていただいてもよろしいでしょうか?」とポン監督が笑いながら草彅へオファーすると、ソン・ガンホは「私が付けていたインディアンの羽の赤の方が先住民のイメージがあり、パク社長の黒は、侵略者の意味があったような気がしますね。実は監督も私も全く考えていないことだったんですね。草彅さんに教えていただいたような気がします。」と、草彅の作品に対する考察に感心した様子だった。「僕は当日、とにかく陽が落ちそうだったのでそれどころではなくて、だから今回、草彅さんがまた新たな脈略でこの映画を豊かにしてくれたような気がします。本当にこの後のインタビューで是非引用させていただければと思います(笑)」とポン監督が続けた。

クライマックスのシーンについて

平和なガーデンパーティーが恐怖と混乱で一変するシーンにて、パク社長は全てを知って死んでいったのかという草彅からの質問に対し、「多分、パク社長は家族の秘密を何も知らないまま亡くなったのではないかと思いますし、それが幸いだったと思います。」とソンが答えると、ポン監督も、「特に一度もこれまで見たことのないホームレスのような人が現れて、自分に向かって『リスペクト』と叫んでいる。全てが非現実的だったと思います。パク社長は車のキーを手にすることに必死でもありましたし、全く理解できていないままあの世に旅立たれたと思います。かわいそうですね。」と答えた。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ、草彅剛)

主演 ソン・ガンホ&ポン・ジュノ監督からメッセージ

三人でのフォトセッションが行われた後、草彅は降壇。
最後に映画『パラサイト 半地下の家族』に対する二人からのメッセージが。

ソン・ガンホ: 以前アメリカの俳優さん達からいただく大きな賞のスピーチの際、アメリカの皆さんへ、この映画『パラサイト 半地下の家族』の内容は、どう生きたらいいのか、どう生きるべきなのかといった「共生」についての映画だと話したのです。国境と言葉の壁を超えて日本でもこの映画に対して皆さんが共感してくださり、この映画を通じて触れ合えるというのは、この『パラサイト』という映画が持っている意味と合っているように思います。心の中に長く残る映画になってくれたら嬉しいです。「ありがとうございます」(日本語)。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ソン・ガンホ)

ポン監督: 今日は本当にありがとうございました。ボックスオフィスに書かれた興行の数字などもありますし、これまでの映画祭の受賞や数々のトロフィーをいただけたことも嬉しいですが、私は映画そのものとして、たとえば俳優のセリフや眼差し、カメラワークや映画の中のあるシーンというものが具体的に皆様の頭の中に、長く記憶に残ってほしいという素朴な願いを持っています。「ありがとうございます」(日本語)。

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ポン・ジュノ監督)

最後は会場の観客も15秒間のカメラ撮影OKのサービスタイムがあり、大歓声の中、ポン監督とソン・ガンホが降壇し、イベントは大盛況のうちに幕を下ろした。

映画『パラサイト 半地下の家族』は絶賛全国公開中。

[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 蒼山 隆之]

イベント情報

映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶

■開催日: 2020年2月24日(月・祝)
■会場: TOHOシネマズ 六本木ヒルズ
■登壇者: ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ、草彅剛(サプライズゲスト)
■MC: 伊藤さとり

【写真】映画『パラサイト 半地下の家族』プレミア上映後舞台挨拶 (ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ、草彅剛)

映画『パラサイト 半地下の家族』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『パラサイト 半地下の家族』ポスタービジュアル

《ストーリー》

全員失業中、“半地下住宅”で暮らす貧しいキム一家。長男ギウは、“高台の豪邸”で暮らす裕福なパク氏の家へ家庭教師の面接を受けに行く。そして兄に続き、妹ギジョンも豪邸に足を踏み入れるが…。

この相反する2つの家族の出会いは、次第に想像を遥かに超える物語へと加速していく――。

 
原題: GISAENGCHUNG
英題: PARASITE
邦題: パラサイト 半地下家族
 
出演: ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督: ポン・ジュノ
撮影: ホン・ギョンピョ
音楽: チョン・ジェイル
提供: バップ、ビターズ・エンド、テレビ東京、巖本金属、クオラス、朝日新聞社、Filmarks
配給: ビターズ・エンド
 
2019 年 / 韓国 / 132分 / PG-12 / 2.35:1
 
© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @Parasite_JP
公式Facebook: @Parasite.movie.JP
公式Instagram: @bitters_end

この記事の著者

蒼山 隆之アーティスト/インタビュア/ライター

映画俳優や監督のインタビュー、映画イベントのレポートを主に担当。
東京都内近郊エリアであれば、何処にでも自転車で赴く(電車や車は滅多に利用しない)スプリンター。

そのフットワークを活かし、忙しい中でもここぞという時は取材現場に駆けつけ、その時しかないイベントを現地から発信したり、映画人の作品へ対する想いを発信するお手伝いをしている。

また、自身も表現者として精力的に活動を展開。

マグマ、波、雷など、自然現象から受けたインスピレーションをブルーペイントを用いたアートで表現する「Blue Painter」として、数々の絵画作品を制作。銀座、青山、赤坂などで開催する個展を通じて発表している。

俳優の他、映画プロデューサーやインテリアデザイナーと幅広い顔を持つブラッド・ピットをこよなく尊敬している。

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