映画『水上のフライト』兼重淳監督インタビュー
【写真】映画『水上のフライト』兼重淳監督インタビュー

映画『水上のフライト』兼重敦監督インタビュー

実話から着想を得た感動の物語が誕生!
“中条あやみの最高傑作”を作り出せた。

主人公・遥は、走高跳の選手としてオリンピックへの出場を夢見ていた。しかし、突然の事故により下半身麻痺の状態に陥ってしまう。そして、心を閉ざした遥は、カヌーという新たな目標に出会う。

主人公、遥を演じるのは中条あやみ。走高跳やカヌーなどの難演技にも挑戦した。実話から着想を得た感動の物語、映画『水上のフライト』が11月13日(金)に公開される。

【画像】映画『水上のフライト』メインカット

この作品は、映画『超高速!参勤交代』シリーズなど数多くの大ヒット作の脚本を手掛ける土橋章宏が、実在するパラカヌー日本代表選手との交流を通じて作り上げたオリジナルストーリーだ。そして、監督として迎えられたのが映画『キセキ -あの日のソビト-』(2017年)を手掛けた兼重淳。観る者の心の奥底に届く、一人の女性の成長を描くヒューマンドラマを誕生させた。

登場人物たちは俳優陣と一緒に作り上げた

—— 『水上のフライト』の映画化は、脚本家の土橋氏が企画されたものとのことですが、監督を引き受けた経緯を教えてください。

今作の制作会社のプロデューサーと昔から知り合いだったんです。その制作会社で犬童一心監督の作品の助監督をずっとやっていて、僕が監督をやっているのも知っていてくれていたんです。僕の今までの作品も観ていてくれていたので、作品の内容に僕が合っていると思ったんですかね。それでオファーをいただいて、台本を読んで決めました。

【写真】映画『水上のフライト』兼重淳監督インタビュー

—— 今作のキャスティングについてですが、中条あやみさんをヒロインに起用した理由をお聞かせください。

中条さんは、まずアスリートに見えますよね。あと、作品内容的にも彼女の持つ健全性みたいなものが役にぴったりだと思ったのでお願いしました。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット

—— 他にも“この方をぜひ”とキャスティングされた方はいますか?

全員です!小澤征悦さん、大塚寧々さん、高月彩良さんの3人とは、助監督時代に仕事をご一緒したことがあったんです。それでこの作品をいただいて台本を読んでいるうちに、イメージに合っているなと思って、お願いして引き受けていただきました。

そして、それぞれの俳優さんから台本にもご意見をいただいて、話し合いながら役を作り上げていきました。

僕、アドリブが大好きなんですよ

—— カヌー教室の子供達もとても印象的でした。子供達の出演はどのように決まったのでしょうか?

オーディションです。でも、設定が色々あるじゃないですか。ネグレクトにあっていたりとか、心に傷を負っているという設定なので、台本を渡して読んでもらってお芝居の技量を見るということは全然しないで、とにかく手当たり次第に会ってキャラクターを見ました。

僕が説明したことをどう理解してくれてるかとか、応用力みたいなものを見て、それで印象に残った子達のバランスを見て8人キャスティングしました。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット

—— 撮影現場での子供達とのエピソードがあれば教えてください。

子役が撮影をする際は、事務所の方とかお母さんが現場に来るんですよ。なので、子供達が来ている時はギャラリーが多かったんです。その際に、僕が説明するより先にお母さんが入って来ちゃうこともありました(笑)。それに、すごく暑かったんですよ。撮影が去年の夏で、酷暑で、台風も来たし、だからどんどん子供達の目つきが暑さで悪くなるとかはありました。でもキャラクター付けしただけあって、みんなそれぞれちゃんとやってくれていました。自然な方がいいのでセリフを書いた台本を渡さずに、その場“この子はこういう気持ちだと思うんだよ”という感じで伝えながら進めて行きました。

小澤さんが演じる宮本浩も劇中で言っていたんですけど、後半は彼らの笑顔に僕たちが助けられていました。子供がいると現場が穏やかになるし、賑やかになるんです。子供がいる設定にしてとても良かったと思います。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット (小澤征悦)

—— アドリブが多かったということでしょうか。

僕ね、アドリブが大好きなんですよ。だから小澤さんはそこらへんも得意ですし、子供達をいじってる様子とかも全部アドリブでした。楽しかったです。

—— 印象に残っているアドリブのシーンはありますか?

小澤さんが、子供達に「ネジ触るな!」みたいに注意するシーンですね。子供達が(カヌーの)ネジをすぐ回すんですよ。回しちゃいけないネジを触っていて、それを小澤さんに突っ込まれるんです。あとは、「ほら!お前らも応援しろ!」とか言わないと、暑くて伸びているというか、サボっているみたいなところもありました。

初めは緊張して上手いことできているんですけど、中盤から後半になってくると子供達ってすぐ慣れてしまうので。でも、緊張させないように、本番やテストとか段取りとかを分けずに撮影していました。“本番だから失敗するなよ!”みたいなことは全然なくて、“そのままでいいよー!”みたいな。そんな感じで撮影をしていました。

【写真】映画『水上のフライト』兼重淳監督インタビュー

レースの撮影で使用されたのは“レゴブロック”⁉︎

—— カヌーということで、川や湖での撮影も多かったかと思います。水辺での撮影はいかがでしたか?

通常の倍は時間がかかりましたね。カメラをセッティングするためにカメラ用のボートを出さなきゃいけなかったりするので。一番大変だったのは、アップサイズを撮ろうとすると、カヌーがカメラ用のボートの波で揺れちゃうことです。

中条さんも苦労したと思います。あと室外機やエンジンの排ガスもあるし。しかもフィックスをとっていても揺れちゃうってことがあったので大変でしたね。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット (中条あやみ)

—— パラカヌーのレースシーンはとても迫力がありました。工夫した点などはありますでしょうか?

レゴブロック(LEGO®)のカヌーシリーズみたいなのがあるんですよ。大まかな流れを作ってから、それを模造紙の上にコースを書いて並べて、中条さんも冨手さんも他の選手役の人も呼んで、“スタートして30メートルまではこういう順位で”という風に説明をしました。

スタッフに関しては絵コンテを書いて、“このカットとこのカットを撮りたい”ということを綿密に打ち合わせして臨みました。

【画像】映画『水上のフ【画像】映画『水上のフライト』メインカットライト』メインカット

—— トレーニングのシーンもリアルに描かれていましたが、どのように撮影されたのでしょうか?

パラカヌーの指導で健常者のカヌー指導の方が入ってくれまして、その人たちにそれぞれトレーニングメニューを聞いて準備しました。カヌーって実は中にペダルがついていて、舵があるんですよ。でも遥は下半身不随でその舵が使えないので、コース取りとかも全部パドルで調節するしかないんです。その時に何をどうトレーニングしたらいいのかを考えて、トレーニングのシーンを撮っていきました。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット

中条あやみの笑顔の映画にしたかった

—— ヒロインを演じた中条あやみさんの第一印象はいかがでしたか?

中条さんってとにかく女性からの人気も高いじゃないですか。最初に会った時は、“女の子から人気があるのも分かるな”という印象でした。

実は、この作品に入る前に中条さんの作品をほとんど観たんですよ。それで彼女の持つ健全性みたいなものが良くて、彼女でいきたいなと思ったんです。なおかつ“他の監督が撮ってない中条あやみさんの表情とかお芝居をこの作品で撮ろう”と決めてお会いしたので、この人だったらできるだろうなと思ったのが初めて会った時の印象です。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット (中条あやみ)

—— パラカヌーに出会ってから段々と明るくなっていく遥(中条さん)の表情が印象的でしたが、何かご指導はされたのですか?

とにかく中条さんの笑顔が素敵で、“彼女の笑顔の映画にしたいな”と思っていたんですよ。最後に笑顔で終わるために、前半は高飛車な感じで、今まで見たことのない中条あやみを撮っていきました。逆算をしていった感じです。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット

—— 中条さんは実際に特訓してカヌーを漕げるようになったとのことですが、特訓の様子はどのような感じでしたか?

練習に立ち会っていた助監督チームから聞いていたのは、とにかく競技用のカヌーっていうのが、浮いていること自体も難しいということでした。体育大学のカヌー部の子も慣れるのに1カ月かかるくらいなんです。

中条さんも一番初めにプールで競技用のカヌーに乗った時は、全然浮かんでいられなくて。彼女自身が危機感を抱いたのか、すごく練習日程や回数を増やして臨んでくれていたようです。彼女自身が“ちゃんと乗れるようになろう”って努力していたのだと思います。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット (中条あやみ)

—— 中条さんが演じた遥は、監督から見てどのような人物ですか?

一番初めに中条さんとお会いした時に、「台本を読んで質問はありますか?」って僕が聞いたら、中条さんに「遥は強い女性でいいんですよね?」と質問されたんです。でも、僕は「強い女性だとは思わない」と言いました。

遥は、自分が弱い人間だと分かっているから、自分が強く見えるように努力を惜しまない人、自分の弱さをさらけ出すことも強さだって分かってる人だと思うんです。だから、そういう風に演じていきましょうと言って、彼女に表情も精神的な面も含めて変わっていくようにしてもらっていました。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット

「すごく頼もしかった」
成長を遂げた杉野遥亮が表情で伝える演技に注目!!

—— 加賀颯太役の杉野遥亮さんは、映画『キセキ ーあの日のソビトー』にも出演していました。3年ほど経ちましたが、当時から印象は変わりましたか?

変わりました!すごく上手になっていて、現場でも慣れてるし、おどおどしてないっていうか(笑) 。本当は杉野さんのセリフは結構多かったんですよ。

だけど彼と話して、「加賀さんはあんまり喋らないキャラクターだよね。セリフで言わなくても、今の杉野さんなら表情で伝わるから、なるべくセリフを切っていこうね」って二人で話して役を作っていったんです。杉野さん、すごく頼もしかったですよ。場数を踏むことって、人間をこういう風に変えるんだなと思いました。

【画像】映画『水上のフライト』場面カット (杉野遥亮)

読者の皆様へ

—— 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆様にメッセージをお願いします。

僕は、中条あやみさんの現時点での“最高傑作”を作り出せたと自負しています。

劇場は衛生的にも安全な場所なので、ぜひ大きなスクリーンで皆様に観ていただきたいです。よろしくお願いします!

【画像】映画『水上のフライト』(兼重敦監督)

[インタビュー: 田上 結菜 / スチール撮影: 坂本 貴光]

プロフィール

兼重 淳 (Atsushi Kaneshige)

1967年生まれ。助監督として、犬童一心監督『眉山-びざん-』(2007年)、『ゼロの焦点』(2009年)、橋口亮輔監督『ハッシュ!』(2001年)、『ぐるりのこと。』(2008年)、是枝裕和監督『歩いても歩いても』(2008年)、『奇跡』(2011年)、『そして父になる』(2013年)、『海街diary』(2015年)、『海よりもまだ深く』(2016年)などに参加。2007年、『ちーちゃんは悠久の向こう』で映画監督デビュー。監督作に、『男たちの詩(スパゲッティーナポリタン)』(2008年)、『腐女子彼女。』(2009年)、大ヒットを打ち出した『キセキ -あの日のソビト-』(2017年)がある。公開待機作に『461個のおべんとう』(2020年11月6日公開予定)がある。

【写真】映画『水上のフライト』兼重淳監督 (Atsushi Kaneshige)

映画『水上のフライト』予告篇🎞

映画作品情報

【画像】映画『水上のフライト』ポスタービジュアル

《ストーリー》

交通事故で歩けなくなった遥。
心を閉ざした彼女が出会ったのは、カヌーという夢ー。

自分の実力に絶対の自信を持つ高慢な遥は、走高跳で世界を目指し、有望スポーツ選手として活躍していた。だがある日、不慮の事故に合い、命は助かったものの二度と歩くことができなくなってしまう。将来の夢を絶たれた遥は、心を閉ざし自暴自棄になるが、周囲の人々に支えられパラカヌーという新たな夢を見つける―。

きらめく水面を背景に、母の愛、淡い恋心、恩師との約束・・・そして、大切な人の想いを乗せて、どん底から道を切り開いていく。

 
TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM 2017 審査員特別賞受賞
第33回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品
 
出演: 中条あやみ、杉野遥亮、高月彩良、冨手麻妙、高村佳偉人、平澤宏々路、大塚寧々、小澤征悦
 
監督: 兼重淳
企画: 土橋章宏
脚本: 土橋章宏、兼重淳
音楽: 上野耕路
主題歌:「ひとりで生きていたならば」SUPER BEAVER
プロデューサー: 遠山大輔、田中美幸
スーパーライジング・プロデューサー: 久保田修
アソシエイト・プロデューサー: 小林麻奈実
ライン・プロデューサー: 原田文宏
撮影: 向後光徳(J.S.C)
照明: 斉藤徹
美術: 布部雅人、春日日向子
録音: 大竹修二 (J.S.A.)
装飾: 松尾文子
編集: 川瀬功 (J.S.E.)
衣装: 加藤哲也
ヘアメイク: 知野香那子
スクリプター: 増子さおり
助監督: 渡辺圭太
製作担当: 阿部史嗣
協賛: SOMPOひまわり生命
広報協力: 東京都、TEAM BEYOND
協力: 一般社団法人日本障害者カヌー協会
製作: 映画「水上のフライト」製作委員会
製作幹事: カルチュア・エンタテインメント
制作プロダクション: C&Iエンタテインメント
配給: KADOKAWA
宣伝協力: シンカ
 
©︎ 2020 映画「水上のフライト」製作委員会
 
2020年11月13日(金) 全国ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @suijo_movie

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