映画『駅までの道をおしえて』
滝藤賢一 インタビュー
新津ちせの急成長に感嘆
親子で観ていただきたい映画
あたたかい涙があふれる伊集院静の珠玉の傑作短編「駅までの道をおしえて」がついに映画化。約1年半、共に暮らしながら撮影に挑んだ、犬と少女の成長物語が、10月18日(金)に全国公開を迎えた。
映画『駅までの道をおしえて』で主人公サヤカ(新津ちせ)の父親役を務めた滝藤賢一さんにインタビュー。撮影秘話やプライベートに至るまでお話を伺い、滝藤賢一の魅力に迫った。
—— 今回の出演オファーをいただいた時の感想をお聞かせください。
プロデューサーのオシアウコくんとは無名塾時代一緒に旅公演を廻っていて1年間毎日のように生活を共にしていたんですよ。その彼が俳優を辞めて映画プロデューサーに。何故か、1作目(2018年公開の映画『ニワトリ★スター』)では、呼ばれなかったんですけどね。おかしいなぁ…何でだろう…。
彼は塾生ではなく、外部から参加してきたので、より特別な思いがありました。電話一本のオファーでしたね。「スケジュールはあまり空きがないから上手く入れこんでね。それでよければ喜んでやらせて頂きます」とだけ言って、作品の内容も知らずに受けました。彼に限らず僕はスケジュールさえクリアできればオファーを頂いた仕事は断らないので(笑)。
役柄に関しては、どんな役でもやりたいです。特に、こだわりはありません。呼んでいただいたところでひとつひとつ責任を果たして行くという職業ですからね。
—— 主人公のサヤカを演じる、新津ちせさんとの現場でのエピソードがあればお聞かせください。
初日に母親役の坂井さんと新津さんと3人で舞台となるマンションの部屋で好きなだけ時間を過ごしてくださいと言われて、3人だけで過ごす時間があったんですよね。だからといって彼女を娘の様に扱ったわけでもないし、坂井さんにママとか、お母さんとか言うわけでもなく、普通に話したり、一緒におもちゃ使って遊んだり、テレビを見たりしていました。
僕はあまりこのようなことはやったことはないんで、この時間があったことでとても自然に家族になっていけたんじゃないかなと思います。
贅沢な時間だったと思うんですよね。貴重な経験でした。
—— 新津さんの第一印象はいかがでしたか?
最初会った時はとてもまだ幼くて、「ザ・子ども!」って感じでした。それから9ヶ月くらい空いて撮影現場で接したんですけど、ルーがいなくなって背負っているものとか抱えているものがとても大きくなっていて、すごく女性として“影ができた”というかまるで別人のようになっていましたね。本当に女性はすごく変わりますよね。
特に監督とは密に役を作り上げていたので、新津さんならではの魅力的なサヤカが出来上がっているんじゃないかと思います。監督と信じられないくらい仲が良いんですよ。
—— 滝藤さんが知っている新津さんと監督との撮影秘話はありますか?
新津さんの誕生日に学校の近くまでサプライズでルーを連れて行ったらしいよ。
あっ、そういえば撮影の後半にこんなことありましたよ。監督が新津さんに「そのご飯しっかり食べて」って何回も言っているのに全く食べないんです。彼女の中では、サヤカとしての人物像が形成されていて、“サヤカだったらここで食べないだろ” という無意識な拒否反応が出ているんでしょうね。正しい判断だったんじゃないでしょうか。素敵な女優さんだと思います。
—— 8才のサヤカは偶然通りがかったペットショップで自分と似た境遇のルーと出会います。滝藤さんは、ペットを飼ったことはありますか?
ありません。是非うちの子には何か飼わせてあげたいなと思います。
—— 滝藤さんはサヤカと同じ年頃のお子さんがいらっしゃいますが、何か飼いたいとねだられませんか?
あります。でも絶対面倒見ないですよね。僕が見れればいいですけど、結局奧さんの負担になるから、今は難しいかな。でも、生き物の生と死に向き合うというのは、とても大事だと思うんですよね。少なからず、普通に生きていけば僕らより早く亡くなるわけだから。そういう経験した方がいいのかなとは思うけど…難しいな…安易には言えないですね。
—— 作中では、サヤカに犬の命の儚さを伝えていたシーンが印象的でしたが、イクメンパパ滝藤さんはお子さんを教育する上で大切にしていることはありますか?
別にないですかね。挨拶とかそういうのは当たり前ですから。でも学校の勉強だけはやらないとうちは駄目ですね。塾は行かなくていいから宿題をちゃんとやるように徹底しているのかな。
僕の育て方は無茶苦茶ですけど、外では友達とかに思いやりをもって接していると回りまわって聞くので、親を反面教師にして子どもは育つんだなと感じています。家で発散して外でちゃんとやっていればいいんじゃないですか。親の前で良い子で外でめちゃくちゃな子の方が心配でしょう。だから、人様に胸を張って僕はこう育てています!ということは一切ないです。
—— 笈田ヨシさん演じる、先立った息子との再会を願うフセ老人は、思い出の場所である逗子の海へとサヤカと共に出かけます。作中では赤い京急電鉄の場面もとても印象的でしたが、滝藤さんは最近はどこか行かれましたか?
僕は今まで一度も夏休みを取ったことがなかったんですが、今年の夏は初めて夏休みを取ったんで行きました。静岡とか北海道とか。旅行楽しかったですね。
—— お子さんの方がより嬉しかったんじゃないでしょうか。
子どもがパパとの思い出がないってちょっと辛いですよね。家族のために仕事しているのに忙しすぎて家族との時間が取れないというのもね。友達といる方が楽しい年頃に差し掛かる前にと思って思い切って休みを取りました。
—— ルーとサヤカは2人だけの秘密の場所を持っていましたが、滝藤さんは幼少期、秘密の場所はどこかありましたか?
僕は割と小さい頃から自分の部屋が与えられてましたからね(笑)。だからあんまり…外では公園を走り回って友達の家に行きまくっていました。マンホール開けてそこから入って行って水が流れてくるようなところを歩いて川まで出るとかは、当たり前だったけどな。そういうところでザリガニ釣っていたりとか。
—— 2019年11月には『決算!忠臣蔵』『影踏み』、2020年2月には『初恋』が公開と注目作に続々とご出演の滝藤さんですが、今後はどのような活動をしていきたいですか?
自分がやりたい企画を発信したいですね。色んなことに関わって作品に携わっていくっていうこと。作品と向き合う姿勢が変わってくる気がします。
—— 最後に、これから『駅までの道をおしえて』をご覧になられる皆さんへメッセージをお願いします。
自分の子どもに観せたい作品のひとつになったので、お子さんを連れて観ていただけたら感じることがいっぱいあるだろうなと思います。監督の長年あたためていた深い愛がここに詰まっています。答えはないので、観ていただいてそれぞれ楽しんでいただけたら嬉しいです。
【インタビュー番外編】
|
[インタビュー: フジモト マリ / スチール撮影: 坂本 貴光]
プロフィール
滝藤 賢一 (Kenichi Takitou)1976年生まれ、愛知県出身。 |
Cinema Art Photography
アーティストとしても国際的に活動しているCinema Art Onlineのフォトグラファーによるスペシャルフォト。
Ptoto by Takamitsu Sakamoto
映画『駅までの道をおしえて』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》サヤカ(新津ちせ)は、赤い電車が通る湾岸の街に両親(坂井真紀、滝藤賢一)と暮らす8歳の少女。臨海学校に出かけた数日の間に愛犬のルーがいなくなったことが受け入れられず、ルーと一緒に過ごした場所を訪れては、その姿を探している。 ある日、サヤカはかつてルーに導かれて見つけた、線路の跡が残る原っぱで一匹の犬と出会う。犬はすぐに姿を消すが、数日後、近所の喫茶店の前につながれていた。サヤカは、見るからに頑固そうなマスターのフセ老人(笈田ヨシ)に、犬の名前はルースで、ルースの方から店にやってきたのだと聞かされる。時の止まったようなジャズ喫茶を営むフセ老人もまた、数十年前に幼くして亡くなった息子の死を受け入れられずにいた。 やがてサヤカは喫茶店に通うようになり、ルーの思い出話をしたり、フセ老人の息子コウイチローの話を聞いたりするうちに、フセ老人と打ち解けていく。サヤカは、フセ老人が待っているという大切な「何か」を、ただ待ち続けるのではなく、一緒に探しに行こうと提案する。 週末。サヤカとフセ老人とルースは海に向かった。「何か」とは一体なんなのか?そして二人は「何か」を見つけることができるのだろうか? |
企画・製作: GUM、ウィルコ
配給・宣伝: キュー・テック
シネマスコープ / 5.1ch / DCP / 125分
2019年10月18日(金)より
新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほかにて全国公開中!
公式Facebook: @ekimade.movie
公式Instagram: @ekimade_movie