「私が撮りたかった女優展 Vol.3」解説付きツアー
フォトグラファーが女優を指名したきっかけや作品のテーマを語る!!
撮影裏話を一部レポート🖊
「私が撮りたかった女優展 Vol.3」が3月12日(金)から3月21日(日)まで、東京・恵比寿にあるEBIS OHTSU GALLERYにて開催中。
今回が3回目となる、フォトグラファーと女優5組それぞれが撮りおろし作品の展示を行う「私が撮りたかった女優展」。
開催と写真集発売の支援プロジェクトとしてクラウドファンディングが行われ、その特典の1つである、“フォトグラファーによる解説付き会場内貸し切りツアー”が3月19日(金)に開催された。
30名限定でクラウドファンディングの支援者が招待され、写真展参加フォトグラファー5名によるQ&Aが行われた。そこで語られた、女優を指名したきっかけや作品のテーマについてなど、ツアーの一部をレポートする。
今回参加する5組(女優/フォトグラファー)は上白石萌音/sunao、池田エライザ/増田彩来、山田杏奈/酒井貴弘、芋生悠/持田薫、鳴海唯/女鹿成二。
会場には、映画やドラマに活躍する女優たちの魅力引き立つ写真が大プリントで並ぶ。
sunao(女優:上白石萌音)
sunaoが大好きだと話す千駄ヶ谷で撮影された、作品のテーマは“日曜日”。
今回の写真展をきっかけに“sunao”名義で本格的にフォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせた奈緒だが、普段は女優として活動している。上白石とはもともと仲が良く、お互い曜日感覚がなくなりがちな仕事をする中で、「“日曜日だったら嬉しい”という感覚を忘れたくないから、私たちが会う日は何曜日であっても“日曜日”ということしよう」と決め、2人が会うときを“日曜会”と呼ぶようになったという。
上白石を撮るにあたって、「私が写真家として彼女の前に立ったら、プロフェッショナルの彼女はきっと私が見たことのないような姿を見せてくれる。その上で、私が“日曜会”でいつも見ている可愛い姿も切り取ることができるのではないかと思いました」と彼女ならではの思いを語った。
配置や枠の色にもこだわられ、作品の横にはsunao直筆のコメントも添えられている。
増田彩来(女優:池田エライザ)
増田は、池田を初めて見たときに“異世界のような不思議な雰囲気”を感じたという。何故そう感じたのかがわからず、また池田自身も映画『夏、至るころ』(2020年)で監督を務めるなど作品を作る人間である彼女と「“一緒に”作品を作ってみたい」と思ったそうだ。
増田はそれと同時に“心地よい違和感”を感じたといい、「エライザさんに『私が存在していて欲しい世界の中で、生きてて欲しい』と思いました」と語る。雪とベッドという、普通ではない“違和感”のある組み合わせで撮影された作品。彼女によって演出されたこの世界は、増田が感じた池田そのものであった。
長野県の美ケ原で撮影されたというこの作品のタイトルは“ねむり姫は旅をする”だ。
“魔法にかけられたようでも、呪いを受けたようでもあり、でもなぜか心地よい世界”。
舞台である“雪とベッド”、呪いのキーになる“鏡”がそこに存在するということ、また最後には(ベッドだけを残して)彼女が消えてしまうといった最初と最後を増田が決め、その途中は撮影中に同じクリエイターでもある池田と共に作品を作っていったという。
酒井貴弘(女優:山田杏奈)
酒井がもともと知っていたわけではなかったという山田を指名したのは、彼女の宣材写真にもなっている、ネットで見つけたファースト写真集「PLANET NINE」(東京ニュース新聞社/2019年)の表紙がきっかけだった。その訴えかけるような眼力に一瞬で惹きつけられたという。
本写真展の写真を撮影した2020年12月は、山田がその1カ月後の翌年1月に20歳になるタイミング。そこで酒井は「10代の彼女を今残さなければ」と山田を指名し、作品にもそれが表現されている。
群馬県の四万温泉で撮影されたこの作品のテーマは、“山田杏奈自身が主役で主演の、台本のない物語”。普段見る女優の姿は“台本がある、誰かの役を演じている姿”であることが多いのに対し、酒井は「そんな女優が役ではなく写真の中で自分自身を思い切り表現したらどういう世界が見れるだろう」と思ったというのがこのテーマに決めた理由だ。
山田に決まってから探したという撮影場所である四万温泉は、酒井の知り合いの実家がそこで旅館をやっているということで、見に行って決めたという。「彼女はすごく色々な表現ができる女優さんで、作品によって見え方が本当に変わる演じる力がある方なので、このように色々なシチュエーションで撮影できるところを選びました」とその決め手も語った。
持田 薫(女優:芋生 悠)
今から5年前の2016年、持田は初めて作品撮りをしたときのモデルがスマホで見せてくれたことがきっかけで芋生を知った。共通の友人も多かったこともあり、いつか会えることを期待していたがなかなか会えず、2020年、本写真展の話を受けた彼は「芋生さんを撮りたい」と即答したという。
持田は「テーマって言い方を変えると自分の中に縛りを持つことだと僕は思っています。細い道でゴールまで行くより、“こういうのをやってはいけない”というNGを探して、あとは何をしても良いというほうが自分に合っていると思って」と話す。今回はあざとさ・可愛らしさをNGとし、「“何となくこんな感じかな”と撮ったものでどういう物語に見えるか」という明確なテーマを決めないやり方で撮影している。
撮影について、自分とも重ね合わせて向き合ったと話す持田。撮ったものを見ると、左側の写真は彼女が女優になる前の話、撮影した持田自身もまだプロになる前であるかのように感じられるという。そのように左から右へ時系列になっており、そういった物語が見える作品となった。
女鹿成二(女優:鳴海 唯)
女鹿が鳴海を知ったきっかけは、雑誌で表紙を飾っていたのを見たことだった。その後彼女について調べ、「これからこの子はもっと面白い表現をするんじゃないか」と可能性を感じて指名したという。
北海道で撮影されたという作品のテーマは“生命力”。
全体の写真で1つのストーリーになっているといい、体温やそれによって頬が寒さで赤くなったり、生きる気力など、女鹿の思う“生命力”が写真で表現されている。
1番最初に飾られた、鳴海の目に涙が浮かぶ大きな写真には、女鹿も実家が岩手にあることから経験したことがあるという、“本当に寒いとき自然に涙が出てしまう”といったその現象が、“生命力”の表現の1つとなっている。
J.K.Wang「私が撮りたかった女優展」企画のきっかけ
最後に、「私が撮りたかった女優展」企画のきっかけについて、プロデューサーのJ.K.Wang氏に話を聞いた。
きっかけは、“登竜門”のようなものを作りたいと思ったこと。
「俳優(女優)にとってもフォトグラファーにとっても、経歴になる、何か仕事に繋がるチャンスとなるものが作りたかった」と話す彼は、俳優もフォトグラファーも経験したことがあったという。1つでも多くのきっかけや賞を求めていた、その当時の自分がやって欲しかったような企画をしたいと思ったことが、「私が撮りたかった女優展」の始まりだった。
〈あとがき〉
フォトグラファーと女優5組それぞれが生み出したこだわりの作品が並ぶ。展示された作品をゆっくりじっくりと眺める人、ギャラリーを数周する人、スマホ等で写真を撮る人や、在廊しているフォトグラファーと話す人。さまざまな楽しみ方で、来場者は貴重な機会を満喫していた。十分に配慮された環境の中、盛況うちに幕を閉じようとする「私が撮りたかった女優展 Vol.3」。コロナ禍でも開催に踏み切り、来場者に期待以上を提供したといえるだろう。
きっと開催されるであろうこの素晴らしい写真展企画、次回にも今から期待が高まる。
2020年版と2021年版の写真集も2冊同時発売!!
そして、今回の開催に合わせて「私が撮りたかった女優展」の写真集が2冊同時発売!2020年に開催された「Vol.2」と今回開催の「Vol.3」が展示されていない未公開カットを含め、それぞれ150ページ前後の大ボリュームで掲載されている。
▼写真集「私が撮りたかった女優展2020」
堀田真由 /濱田英明、田中真琴/もろんのん、松井愛莉/刈馬健太、佐藤玲/柴崎まどか、小西桜子/松本花奈
▼写真集「私が撮りたかった女優展2021」
上白石萌音/sunao、池田エライザ/増田彩来、山田杏奈/酒井貴弘、芋生悠/持田薫、鳴海唯/女鹿成二
※女優/フォトグラファー
開催情報
「私が撮りたかった女優展 Vol.3」■開催日時: 2021年3月12日(金)~3月21日(日)10:00~20:00 |
3月12日(金)から21日(日)まで恵比寿にて開催中!!
当日観覧料は大人600円/小学生以下無料
非接触型前売観覧チケットは560円(オンラインストアにて販売)