映画『エルネスト』外国特派員協会記者会見レポート

【写真】映画『エルネスト』(ERNESTO)外国特派員協会記者会見 主演・オダギリジョー&阪本順治監督

映画『エルネスト』(ERNESTO)
主演・オダギリジョー&阪本順治監督登壇!
外国特派員協会記者会見レポート

私たちが失なった“エルネスト”〈真剣〉な生き方とは!?
名もなき学生たちの目線でキューバ危機を描く

キューバ革命の英雄チェ・ゲバラがファーストネームの“エルネスト”を託した日系ボリビア人・フレディ前村ウルタードの激動の生涯を史実をもとに描いた日本・キューバの合作映画『エルネスト』が10月6日(金)より、TOHOシネマズ新宿他にて全国公開される。劇場公開に先立ち、9月19日(火)に東京有楽町・日本外国特派員協会にて試写上映後、坂本順治監督とオダギリジョーをゲストに迎え記者会見が行われた。

【写真】映画『エルネスト』(ERNESTO)外国特派員協会記者会見 主演・オダギリジョー&阪本順治監督

記者会見レポート

―― 今回、日本とキューバとの合作ということで(『キューバの恋人』(1969年)以来)実に48年振りになるようですが、今、このストーリーを語らなければならないと思ったのは何故か。何故この48年という節目に近い年に作ることにされたのか教えてください。

坂本監督: この映画の題名でもあり、チェの名前でもあるエルネストということが、当然ご存知の方もいらっしゃるかと思うのですけれども、真剣という意味です。もっと詳しい方に訊きますと、目的を決めた上での真剣という意味です。今、政治的な立場にいようがいまいが、生活に埋没をしていようが、目的というものを決めて、誰かに与えられるわけでもなく、希望をもって今こそ生きなくてはいけないのではないかというメッセージもあります。

この映画が始まるきっかけは、僕がフレディ前村ウルタードという人を発見したことで、ゲバラとともにボルビア戦争で亡くなった日本人の血を引いた若者がいたということを知ったときから、この映画が始まっていて、まさにこのフレディの生き方が今言ったエルネストであり、そして、今僕たちが失っている生き方ではないかと思います。キューバと合同で製作することしか選択肢はなかったですね。

【写真】映画『エルネスト』(ERNESTO)外国特派員協会記者会見 主演・オダギリジョー&阪本順治監督

―― 冒頭の場面にゲバラの広島訪問をもってきたのと、最後にまた広島を使ったのは何故でしょうか。

坂本監督: 広島にチェが訪れて変化が起きたという一つの事実。それから翌年経ち、フレディ前村がキューバを訪れて学生生活に入って直ぐに、キューバ危機、10月の危機が起こり、この二つの出来事の構成を思いついたときに、僕はある種のこの映画の核に対する何らかの提議ができると思いました。これは、広島に来たゲバラと全く関係のないところで、フレディの学生生活があるとすれば、単にエピソードをつないだだけにはなるのですけれども、やっぱりキューバ危機のときにキューバにいた人の中で、唯一チェだけが広島で感じた想いとか見たものが脳裏を横切ったと思うのです。それを僕がやりたかった。だから、この二つは単に組み合わせではなくて、構成上つながった物語であるという思いです。

【写真】映画『エルネスト』(ERNESTO)外国特派員協会記者会見 主演・オダギリジョー&阪本順治監督

―― 戦争の描き方の対する監督のアプローチや脚本を書くにあたり意識されたのでしょうか。アメリカとの戦争を考えるうえで、例えば、第二次世界大戦のように直接戦争があったり、直接対決する形があったり、冷戦構造の中で他国で展開される間接的な戦争があったりするのですが、そのような様々な形の戦争をテーマとして意識しながら考えられたのかを教えてください。

坂本監督: 政治とか戦争を背景に物語を考えますけれども、結局映画は、その中にいる一人の人間を描くということですから、『13デイズ(13days)』(2000年)とかハリウッド映画の中でも、キューバ危機に触れていますけれど、今回の僕の目線は、あくまで何も知らされていなかったフレディたち学生の視線でキューバ危機の時代を描きたかったわけです。ですから、米ソのキューバの頭ごなしの交渉に対して彼は怒りを見せるわけです。あくまで、フレディたち名もなき学生の目線でキューバ危機を描いた映画です。

―― オダギリジョーさんのブレイクのきっかけであった『アカルイミライ』(2002年)という黒澤清監督の映画の最後のシーンには、たくさんの若者がチェ・ゲバラのTシャツを着てうろついていました。不思議にオダギリジョーさんとチェ・ゲバラには関係があるように感じます。オダギリジョーさんはチェ・ゲバラをどう思われますか?

オダギリジョー: そう言われて、今、『アカルイミライ』のエンディングは確かにそうだったなと思って。本当に今思い出したのですけれども。この映画を引き受けさせてもらって、友だちに次はこういう作品をやるんだよという話をしたら、「えっ、ゲバラをやるの。」って、結構な数の人から言われて。そのくらい僕がゲバラをやることが、友だちからしたらそんなに不思議ではないことなのかもしれない。ヒゲも生えていて汚いことも多いので、ゲバラの格好が似合うと思う人も少なくはないのかもしれない。僕は、ゲバラのポスターも貼っていますし、Tシャツもいくつか持っています。

【写真】映画『エルネスト』(ERNESTO)外国特派員協会記者会見 主演・オダギリジョー

―― この作品は、実話で現実にあった物語をベースにした作品だと思うのですが、事実とフィクションを混ぜる場合に、どこまで脚色が許されるのでしょうか。坂本監督はどういう風にお考えなのか教えてください。例えば、映画の中で、広島でゲバラが過ちは繰り返しませんという言葉に対して、主語をはっきりしろというシーンがあったのですが、それは現実にあったエピソードなのでしょうか。

坂本監督: 劇映画だから嘘で良いかという思いは全くなくて、取材とか、資料とかに向き合った結果、分かったうえでフィクションを盛り込むことはあります。それは、その事実を再現することが目的ではなくて、精神や空気を伝えるためにフォクションの方が伝わればフィクションにします。でも、一応をきちんと知ったうえでやるという姿勢ではあります。それから、冒頭の何故主語がないのだというのは、あのときに随行した記者のメモによるものです。他のチェの台詞も、実はチェのことを誰も知らなかったので、記者クラブで取材に行けたのは一社だけだったのですね。そのたった一人の記者は、亡くなられたのですが、遺品のメモで当時の取材をした模様を全部書き写していたのですよ。それを書き残していたのです。それを全部ご家族の方からいただいて、その台詞を企画の中に盛り込みました。

―― 映画の話を初めてキューバに持ち込んだときには、キューバ側はどのような反応だったのでしょうか。

坂本監督: 合作はもちろんできますというお答えをいただいて、逆に僕が質問をしたのですね。日本人の監督が、主役が日系人だとはいえ、あの時代を描くというのは違和感がありますかと訊いたときに、全くないと。キューバの昨今、あの時代に触れた映画がなくて、自分たちの映画でもあると思ってやりますと言っていただきました。

【写真】映画『エルネスト』(ERNESTO)外国特派員協会記者会見 阪本順治監督

―― オダギリジョーさんは、どのようにボリビア人のこの役を語学も含めて準備されたのでしょうか。

オダギリジョー: この時間まで、会見のためにお酒を飲まないでおこうと思って。真面目に答えるタイミングがここについにやってきました(笑)。

確かにスペイン語は、台詞を覚えるだけでも自分にはハードなことでしたが、もっと重要視していたのが、芝居をいかにスペイン語で成立させるかということで。それに協力をしてくれたのは現地でこの映画で共演した三、四人位の共演者が、本当に時間のあるときに何時間でもつき合ってくれて、彼ら一人一人が思うフレディ像で何パターンか台詞を読んでもらったりする中から、今度は僕が細かくフレディ像を説明をして、この場合はどういう言い方になるとか、とにかく色々なパターンで、一つの台詞を色々な俳優さんに色々な感情で色々な可能性を広く見せてもらった。そこで、監督と僕でこのシーンのフレディだったらこれに近いのかなあという。とにかく僕がスペイン語で芝居をするときに、例えば、どこにアクセントを置くことが正しいのかとか、どういう間になるかとか、そういうことを一切理解しないまま入ったので、向こうの俳優さんに大きく力を貸していただいたことが、結果的にフレディ像を明確なものにしたと思っています。本当にありがたかったですね。

【写真】映画『エルネスト』(ERNESTO)外国特派員協会記者会見 主演・オダギリジョー

『エルネスト』は、激動の時代を駆け抜け、祖国ボリビアでの抵抗運動に身を投じた若き日系二世の知られざる生涯を描いた作品である。3年半に渡るリサーチをもとに、自ら脚本とメガホンをとった坂本順治監督と体重を12 kg 減量し、半年間で主人公の訛りあるスペイン語をマスターして役作りに励んだオダギリジョーとの映画界における革命でもある。

[スチール撮影/記者: おくの ゆか]

 

イベント情報

<映画『エルネスト』外国特派員協会記者会見>

日時: 2017年9月19日(火)
会場: 公益社団法人 日本外国特派員協会
登壇者: オダギリジョー、阪本順治監督

映画作品情報

映画『エルネスト』

《STORY》

50年前、チェ・ゲバラに“エルネスト”と名付けられ、行動をともにした、ひとりの日系人がいた―。
キューバ革命の英雄、エルネスト・チェ・ゲバラ。自らの信念を突き通した生き方、その比類なきカリスマ性によって、今なお世界の人々を魅了し続けているこの男-は、1967年、ボリビア戦線で命を落とした。同じ頃、ボリビアでゲバラと共に行動し、ゲバラからファーストネームである<エルネスト>を戦士名として授けられた日系人がいた。その名は、フレディ前村。日系二世として生まれたフレディは、医者を志し、キューバの国立ハバナ大学へと留学する。そしてキューバ危機のさなかにチェ・ゲバラと出会い、その深い魅力に心酔し、ゲバラの部隊に参加。やがてボリビア軍事政権へと立ち向かっていく。

脚本/監督: 阪本順治
出演: オダギリジョー、永山絢斗、ホワン・ミゲル・バレロ・アコスタ、アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス
配給: キノフィルムズ/木下グループ
2017年|日本・キューバ合作|スペイン語・日本語|DCP|ビスタサイズ|124分
© 2017 “ERNESTO” FILM PARTNERS.
 

2017年10月6日(金) TOHOシネマズ 新宿他全国ロードショー!

映画公式サイト
公式Twitter: @ernesto_movie/
 

この記事の著者

おくの ゆか

おくの ゆかライター

映画好きの父親の影響で10代のうちに日本映画の名作のほとんどを観る。
子どものときに観た『砂の器』の衝撃的な感動を超える映像美に出会うために、今も映画を観続けている。

★好きな映画
『砂の器』[監督: 野村芳太郎 製作: 1974年]
『転校生』[監督: 大林宣彦 製作: 1982年]
『風の谷のナウシカ』[監督: 宮崎駿 制作:1984年]
『硫黄島からの手紙』(Letters from Iwo Jima) [監督: クリント・イーストウッド 製作: 2006年]

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