映画『スノーデン』(原題:SNOWDEN)
彼は人権の守護者であったのか、
それとも国家の危機を招く犯罪者であったのか、
これは全世界の人に信を問う映画だ。
《ストーリー》
2013年6月。英国の大手新聞ガーディアンが衝撃のニュースをぶち上げた。この記事により米国政府が全世界のインターネットやSNSを監視するシステムを組織的に使用していたことが判明。Freedom(自由)を標榜するアメリカにとって、政府の信頼を根底から失墜させかねない世紀のスクープであった。このスクープをリーク・証言したのが身内であるNSA(米国国家安全保障局)の職員であったことが、さらにセンセーショナルに拍車をかける。職員の名はエドワード・ジョセフ・スノーデン。パソコンスキルが高いことを除いては、どこにでもいるごく普通の青年だ。そんな彼が、なぜ高給や安定を投げ出し、命の危険を冒すまでの決断をしたのか。スノーデンの心に宿った数々の葛藤が、今、名匠オリヴァー・ストーン監督の手によって明かされようとしていた。
《みどころ》
まだ記憶に新しいスノーデン事件。アメリカ政府は彼を不法行為・国家への裏切りと非難し、FBIは情報漏洩罪などの罪状で指名手配を行った。スノーデンは現在ロシアに亡命(当初はそこからさらに第三国へ亡命しようとしたが実現できていない)しており、公式な見解において反逆人というポジションは今も変わらない。
© 2016 SACHA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
アメリカにとっては“アンタッチャブル”な存在だ。そうした人間を映画の題材としてとりあげるのは、かなりのリスクであったろう。そのリスクをあえておったのが、前述したオリヴァー・ストーンだ。オリヴァーは『プラトーン』(1987年)や『7月4日に生まれて』(1989年)でベトナム戦争を、『JFK』(1991年)でケネディ元大統領の暗殺をとり上げるなど、アメリカの歴史に残る重大事件をいくつも扱ってきた。一青年が起点となった本件も、歴史的な大事件と判断したのだろう。リスクを伴うのを承知でメガホンをとったのは、ハリウッドきっての社会派監督ならではの果断と勇気といえる。
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そんないわく付の映画だから、さすがに大物のキャスティングは難しい・・と思いきや、今やあちこちの映画から出演オファーが殺到しているジョセフ・ゴードン=レヴィットが主演に起用された。ただし、そこに描かれたのは、これまでゴードンが演じてきたようなヒーローとは少し異なる。劇中本編で描かれるゴードン版スノーデンを見ていると、このか細い青年は、単純な正義漢、あるいは人権家だったわけではないように思える。曲げられることのない強い信念、燃えるような芯の強さがあるわけではない。普通の感情や倫理観をもった市井の一員が、ごく自然に考え、なすがままの行動をとった結果、それが国家の横暴と機密の暴露につながったのだろう。
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良くハリウッド映画ではFBIやCIAが最新のテクノロジーを用いて、特定の個人を24時間人工衛星から監視したり、携帯電話を盗聴したりするようなシーンがお約束のようにある。スノーデンの暴露は、そうした空想の世界顔負け、まさに映画の夢物語を地で行くようなお話だ。当時の合衆国政府は「個人の基本的人権よりも国家の安全保障が優先される」と考えたわけだが、果たしてそれは正しい考え方だったのだろうか?法治国家としてあるべき姿だったのだろうか?つい先日トランプ大統領が誕生し、久しぶりに民主党から共和党へ大統領の座が移った。新しい政権がどのように臨んでいくか、この映画を観ておさらいをし、逆に私たちが彼らのこれからの舵取りを監視するのも面白いかもしれない。
映画『スノーデン』予告篇
映画作品情報
原題/英題: SNOWDEN
監督: オリバー・ストーン
脚本: キーラン・フィッツジェラルド&オリバー・ストーン
原作:「Time of the Octopus」 著:アナトリー・クチェレナ
原作:「スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実」 著:ルーク・ハーディング(日経BP社)
製作: モーリッツ・ボーマン/フェルナンド・サリシン/フィリップ・シュルツ=ダイル/エリック・コペロフ
撮影: アンソニー・ドッド・マントル
美術: マーク・ティルデスリー
編集: アレックス・マルケス/リー・パーシー
衣装: ビナ・ダイヘレル
音楽: クレイグ・アームストロング
配給: ショウゲート
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2017年1月27日(金)より
TOHOシネマズ みゆき座ほか全国ロードショー!