西野七瀬×村上虹郎 インタビュー
実は「乃木坂」つながりの二人
役を離れても姉弟の絆を深める
第42回日本アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を総なめにした映画『孤狼の血』(2018年)。その続編となる映画『孤狼の血 LEVEL2』が公開中だ。前作から3年後の日岡秀一(松坂桃李)が、最狂の悪役・上林成浩(鈴木亮平)と対峙する。
観た人に強烈なインパクトを残す作品のため、白石和彌監督の元には「『孤狼の血』に出たい」と逆オファーする役者が後を絶たないという中、スナック「スタンド華」のママ・近田真緒役で新境地を開いた西野七瀬と、その弟・近田幸太(通称:チンタ)役で物語のキーパーソンとなる人物を体当たりで演じた村上虹郎にインタビュー。実際の姉弟さながら、息の合った掛け合いで盛り上がった。
最後まで悩みながら演じた西野七瀬
アドレナリン出まくりだった村上虹郎
—— 前作からの続投キャストも多い中、『孤狼の血』の世界観で見事な存在感を残していらっしゃった二人。出演が決まったときのお気持ちと、撮影中や終わった後のお気持ちも聞かせてください。
西野: びっくりしました。今までに経験したことのない作品だったので、ちゃんと(監督の期待に)応えられるのかな、という不安もありつつ、嬉しさもあって。撮影中は、ずっと悩みながら演じていましたね。自分と同じような部分が少ないことも難しかったです。私は真緒みたいに面倒見が良くないし、実生活では妹でお姉ちゃんでもなくて。でも、自分がいまできる精一杯のことはできたかな、と思います。
村上: 僕は、役が決まるまでにはちょっとした経緯がありまして。3年前に『銃』(2018年)という作品で第31回東京国際映画祭に出させてもらったんですが、そのパーティーで白石監督と沖田修一監督が二人でお話しされていて、僕のほうから白石監督に「『孤狼の血』の続編撮るんですか?」って話しかけたんです。そしたら白石監督から「やるよ。出る?」と(軽い感じで)言われまして。出演したいとかそういうつもりで続編のことを聞いたわけではなかったので、「え、まじですか?」と。続編が観たいから聞いただけだったんです。『孤狼の血』の中では、僕ぐらいの年齢の役は出てこないのだろうな、というのが前提としてあったので、「若い出演者の役ってあるんですか?」と聞いたら、「そういう奴がこの世界五万といるのが当たり前じゃん」と言われて。それを有言実行していただいた感じです。
西野: 自分から!すごい!
村上: がめつい奴みたいになっちゃっいました(笑)。それで脚本を読んでみて、なるほど、と。この役だったら確かに自分の年齢でも作品の中に存在できるなと思いました。
撮影中は、もちろん役に対する葛藤や苦しみはありましたが、現場の熱量がすごくてアドレナリンがドバドバ出ていました。周囲の俳優もスタッフも、気合十二分という感じで凄まじかったので。でも、不思議にあったかい安心感もあったんです。それは皆さん、前作からの座組がしっかりとできあがっていたので、その圧倒的な安定感がある中に入れていただいてるわけですよね。そこまでお膳立てしていただいているので、僕らはそこで暴れるだけというか、逆に仕上がりが悪かったら僕らのせいでしかない、というプレッシャーはありました。でも演じ終わった後は爽快感がすごかったです。
お父さん(村上淳)は熱烈乃木坂ファン!
—— お二人は姉弟役ということで、現場でのコミュニケーションはどんな風に取っていらっしゃいましたか?
西野: 現場では、村上さんが私のことをずっと「姉ちゃん」って呼んでくれていたので、それがすごくありがたかったです。普段の撮影以外の時でもそう呼んでくれていたから、姉弟の距離感が表現できたかもしれないです。
村上: いまだに「姉ちゃん」以外の呼び方を知らないので、何て呼べばいいかわからないんですよ。
—— 劇中では、姉役の西野さんが、弟役の村上さんを引っぱたいたりつねったりするシーンもありましたね。
村上: けっこうキレがよくてスパーンと手のひらが飛んできました(笑)。テストの時は優しくしてくれたんですが、本番はガッツリと来てました。
西野: そこは遠慮なくいかせてもらいました(笑)。
—— 休憩時間や待ち時間にはどんな会話がありましたか?
西野: 私はけっこう少年マンガが好きなので、マンガの話で盛り上がりました。「銀牙 -流れ星 銀-」(高橋よしひろ作)という犬が主人公のマンガが大好きなのでその話とか。
村上: 親父(俳優の村上淳)が、実は数年前から急に乃木坂46のファンになったらしく、コンサートにも行っているくらい好きなんです。「中村勘九郎さんと一緒に行って、応援用のライトを一緒に振ったんだよ」なんて話をしていて。
—— 西野さんはそのことをご存知だったんですか?
西野: 私は、村上淳さんは別の映画の撮影でお会いしたことがあって。共演シーンはなかったものの、その時の会話は乃木坂46に対する熱量がすごくて“乃木坂ファン”だったので知っていました。でも、それより前にドラマでご一緒させていただいた時は、全然乃木坂46の話はされていなかったので、変わりようにびっくりしたことを覚えています。
村上: 元々は乃木坂46のことも知らないくらいのレベルから、僕も何がきっかけかわからないくらい突然ファンになった気がします。だから、西野さんと共演するんだよ、ということは親父に伝えましたね。
関西弁ネイティブは苦労する広島弁のイントネーション
—— 今回の映画は、前作に引き続きキャストはみんな広島弁(呉弁)を話していますよね。西野さんは大阪出身、村上さんは東京出身ですが、方言はいかがでしたか?
村上: 元が関西弁の人は大変だったと思います。
西野: そうですね。どうしても関西弁ぽくなってしまうので苦労しました。頭の中ではこういう発音だ、というのはわかっているんですけど、口から出ると違っているということが何度もありました。理解はしているけど、口から出た発音が合っているかどうか、関西弁に寄ってしまったかどうか……だんだん自分ではわからなくなり、方言指導の先生の表情で読み取るようになりました。優しい先生ですが、間違っていると微妙な表情になるので(笑)。
村上: 関西弁と中国地方の言葉って、個人的に真逆だと思うんです。僕は両親がともに大阪出身で、二人とも関西弁をしゃべるんです。それを聞いて育っている僕も関西弁が話せるので、何となく広島の言葉もいけるかな、と思っていたんですが、以前広島が舞台の別の作品(TVドラマ「この世界の片隅で」)で桃李くんとご一緒した時に、むしろ関西弁とは真逆で標準語っぽいんだなと実感しました。心電図がピンと上がるように、平坦なイントネーションの中にいきなりピッと高くなる時があるんです。だから難しかったですね。
西野: 方言は大変だったな~。
村上: 毎熊さんは、多分唯一広島出身のネイティブな方だったので、時々教えてもらいました。鈴木亮平さんは、撮影前に完璧に広島弁を仕上げていました。撮影の前日にホテルの会議室で話す時間があったのですが、普段の会話でもけっこう広島弁を話していてすごいな、と思いました。
サウナにハマる人続出のキャスト陣
—— 広島・呉市でのオールロケということで、撮影がない時間やお休みのときはどんな風に過ごしていらっしゃったんですか?
西野: その時期、東京でドラマも撮影していたので行ったり来たりしていたのですが、撮休の日は、海を眺めながら大和ミュージアムのあたりをマネージャーさんと散歩しました。虹郎くんはサウナ行ってたよね?
村上: 共演した三宅弘城さんもサウナ好きだったので、サウナの話で盛り上がりました。白石監督や桃李くんは電気風呂にハマったらしくて「呉の電気風呂はパワーが違う」とかそんな話していましたね。あとは、ロケ中にコロナ対策をしたスタッフやキャストだけが出入りできる「居酒屋『孤狼の血』」と呼んでいた空間があったのですが、そこでのコミュニケーションも楽しかったです。「姉ちゃんも行く?」と西野さんに聞いたら「虹郎くんが行くなら行く」と言ってくれて(笑)。西野さんは他のキャストにタバコの吸い方を教わったりしていましたよね。劇中で「スタンド華」のママとして、タバコを吸うシーンもあったので。
もしさらに続編があっても姉弟一緒じゃないとイヤ
—— 西野さんは、アイドル出身というイメージを覆すような、スナックのママで刑事の日岡とも親密な間柄という難しい役柄でした。役づくりはどのようにされましたか?
西野: スナックも行ったことなかったので、まずはイメージでした。
村上: 西野さんは、同時期に自分が主演のドラマを撮っているのに、映画(『孤狼の血』)のほうに合わせて自分の髪をブリーチしていたので、気合を入れる場所が合っているのか心配でしたね(笑)。
西野: 映画のほうがオファーいただいたのは先ということもあって(笑)。髪の毛も、地毛をあそこまで明るくブリーチしたのは初めてでした。
—— もし続編があったら、また真緒として出演したいと思いますか?
西野: チンタがいないなら嫌だな~。
鈴木亮平さんは後輩に惜しみなく与える方
松坂桃李さんは仏のよう
—— 村上さんは、兄のように慕っている日岡の依頼で上林組に潜入する、という危険と隣り合わせの役柄でした。松坂さんや鈴木さんと共演していかがでしたか?
村上: 映像は男くさいですが、みんながコミュニケーションを取り合う明るい現場でしたね。上林を演じた亮平さんはめちゃくちゃ暴力的で怖い役ですが、普段はよくしゃべる陽気な方で、撮影になるとパッと変わるんです。亮平さんは、今までご一緒してきた役者の先輩の中でもちょっと特殊で少しハリウッド俳優っぽいというか。基本的に日本の役者は、自分の学んできたこととか演技コーチの存在とかって美徳として隠すような傾向があるのですが、ハリウッドだと誰に学んでどこのスタジオ出身でワークショップで何を学んで、というのはお互いに明らかにされていて隠さない。亮平さんは自分の学んだことは後輩にどんどん伝えて育っていってほしい、と思っているので惜しみなく教えてくれる方なんです。懐が深い方です。桃李くんも、優しくて懐が深いというのは一緒なのですが、現場に来たらスッと仏のようにその場にいるような感じです。
西野: わかる。ニコニコしてみんなの話聞いてる感じ。
村上: 同時にコミュニケーション能力もすごく高くて、桃李くんからコミュニケーション取ってくれますが、最後まではつかめない、不思議な感覚の先輩です。
西野: 松坂さんは、安心感がめちゃくちゃありましたね。
白石監督はアドリブが出るまで自由に演じさせてくれる
—— お二人に対する白石監督の演出はいかがでしたか?
西野: あんまり、細かな演出はつけないほうじゃない?動線や、こう思ってる、ということは伝えてくださるのですが、演出的なことはあまりなかった気がします。
村上: あんまり細かい演出はなかったですね。基本的には自由にやれ、という感じで。アドリブ出るまで止めない勢いで、出てきたものをどんどん採用していくような監督です。
こんな時代だからこそ映画から刺激を受けて(村上)
女性もぜひ観てほしい(西野)
—— 最後に、これから作品を観る方にメッセージをお願いします。
西野: 女性で観るのを迷う方もいらっしゃるかもしれないですが、ストーリーも複雑過ぎず、エンタメ感も強いのでぜひ観てほしいです。最初は、男っぽい世界に馴染めないと思う方もいるかもしれないけど、観始めると話が進む度にどんどん楽しく観られると思います。私自身もそうでした。ぜひ観てもらいたいですね。
村上: 今の時代、刺激的なことって少ないじゃないですか。肉体的な刺激(移動や遊びなど)が制限されているから、せめて画面から浴びるくらいは許されるはずなので、刺激を受けてほしい。僕自身、最近ギャング映画やクライムドラマばかり観ているんです。今まで特別好き、というジャンルではなかったのですが、僕も刺激を求めているのかもしれないです。
[インタビュー: 富田 夏子 / スチール撮影: Cinema Art Online UK]
プロフィール
西野 七瀬 (Nanase Nishino)
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村上 虹郎 (Nijiro Murakami)
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フォトギャラリー📸
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映画『孤狼の血 LEVEL2』キャラクター動画
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映画『孤狼の血 LEVEL2』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》舞台は前作から3年後。広島の裏社会を収めていた伝説の刑事・大上亡き後、その遺志を受け継いだ若き刑事・日岡秀一。権力を用い、暴力組織を取り仕切っていた日岡だったが、出所してきたたった一人の“悪魔”によって事態は急転していく・・・。原作シリーズでは描かれていない、完全オリジナルストーリーとして誕生! |
製作:『孤狼の血 LEVEL2』製作委員会
配給: 東映