映画『Vision』公開記念舞台挨拶
河瀨直美監督、原点に立ち返った10作目『Vision』への思いを語る。
18歳の時、初めて8ミリカメラを手にしてから約30年。今や、世界中で高い評価を受ける河瀨直美監督が、生まれ故郷である奈良県を舞台に、『イングリッシュ・ペイシェント』(1997年)で米国アカデミー賞助演女優賞、世界三大映画祭すべてで女優賞を獲得したフランスの名女優ジュリエット・ビノシュ、そして、『あん』(2015年)、『光』(2017年)と河瀨監督作品2作に連続主演、日本が世界に誇る国際派俳優 永瀬正敏をW主演に迎えた映画『Vision』が6月8日(金)に全国公開となった。
その翌日の6月9日(土)、東京・新宿ピカデリーにて公開記念舞台挨拶が実施され、W主演のジュリエット・ビノシュと永瀬正敏、共演の夏木マリ、岩田剛典、美波、そして河瀨直美監督が登壇した。
《イベントレポート》
満席御礼の会場に盛大な拍手の中、キャストと河瀨監督が登場すると、ジュリエット・ビノシュは「こんにちは、みなさん。愛してます」と日本語で挨拶。
永瀬ら日本人キャストは逆に「ボンジュール」とフランス語を取り入れて挨拶をした。夏木は「ボンジュール、ジュリエット・ビノシュです」とジョークを混じえて挨拶をし、客席に笑顔を咲かせた。
河瀨監督は、全国130の劇場でライブビューイングに参加している観客にも感謝の気持ちを述べ、本当は一つひとつの劇場に足を運んで挨拶がしたかったと悔しがったが、伝えたい気持ちが映画を通して届けられた事に満足していた。
ジュリエット・ビノシュは、映画を撮るために来日した時の印象を聞かれると「本当に素晴らしい体験をさせてもらいました。普段日本に来ると行くのは東京や大阪、京都など都市が多いですが、今回は日本の奥深い吉野へ皆さんに招待される形で入っていけました。そこで自分はとても大切なものをシェアする事ができました」とコメントした。
永瀬は、監督がセッティングした撮影中のジュリエット・ビノシュとの神社デートについて聞かれると「ジュリエット・ビノシュと散策をしていると、彼女は木や森を見て“あれはとても美しい”と言いました。その彼女を見て、すごく役とシンクロしていて素敵だなと感じた事が印象に残っています」と語った。
また、ジュリエット・ビノシュ演じるジャンヌの通訳兼アシスタントである花を演じた美波は「ジュリエット・ビノシュさんは日本について徹底的に勉強を来てきていました。歴史についてだったり、宗教観、土地、古事記など様々な角度から日本について調べていて、とても勉強になりました」とジュリエット・ビノシュの役作りに対する熱量の高さに関心していた。
岩田は英語を話すシーンがあるため、そこへのアプローチはどうだったか聞かれると「最初台本を読んだ時は焦りました。アドリブが自然に返せるように頑張りましたが、最終的にはジュリエット・ビノシュの包み込むような母性に助けられました。目と目で繋がるものがあるんだと感じました」と話した。それを聞いたジュリエット・ビノシュは「私も日本に息子が居るなんて思わなかったわ(笑)」とコメントし、「僕もフランスにお母さんが居るなんて」と笑顔で返した。
また、舞台挨拶の途中では、『Vison』のキャスト・スタッフを代表して永瀬から深い緑色に大きく『Vision』の文字が入った和傘がサプライズでプレゼントされた。受け取ったジュリエット・ビノシュは「世界に1つだけの傘をフランスでさす勇気はあるかしら?やってみようかしら?」と笑顔でコメント。クルクルと楽しそうに傘を回したり、永瀬と相合傘をして満足そうであった。
最後に、河瀨監督は「私たちはこの先の一歩をどう踏み出していったらいいのか分からない。自分の原点に立ち返って作った10作目、『Vision』。誰も足を踏み入れない吉野の森で繰り広げられるストーリー。是非そのまだ見ぬ思いを私たちと一歩を踏み出して観ていただけたらと思います」とコメントし、舞台挨拶は終了した。
[スチール撮影: 堀 清香 / 記者: 梅田 奈央]
イベント情報
映画『Vision』公開記念舞台挨拶■開催日: 2018年6月9日(土) |
映画『Vision』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》紀行文を執筆しているフランスの女性エッセイスト・ジャンヌ(ビノシュ)が奈良・吉野の山深い森を訪れる。彼女は、1000年に1度、姿を見せるという幻の植物を探していた。その名は“Vision”。旅の途中、山守の男・智(永瀬)と出会うが、智も「聞いたことがない」という……。ジャンヌはなぜ自然豊かな神秘の地を訪れたのか。山とともに生きる智が見た未来とは―。 |
企画協力: 小竹正人
エグゼクティブプロデューサー: EXILE HIRO
プロデューサー: マリアン・スロット、宮崎聡、河瀨直美
配給: LDH PICTURES
2018年 / 日本・フランス合作 / 110分 / PG12