第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見レポート
【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (中島かずき、山田洋次監督、手塚眞監督、足立伸監督)

第32回東京国際映画祭(TIFF)
ラインナップ発表記者会見

世界115の国と地域、1804本の応募から14作品を選出!
新しい試みと日本映画のレジェンドに注目!!

開催まであと約1カ月!

9月26日(木)、第32回東京国際映画祭(TIFF)のラインナップ発表記者会見が東京・六本木アカデミーヒルズ 49階 タワーホールにて開催され、各部門の全ラインナップ、審査委員、各イベントの魅力や見所が発表された。

記者会見の冒頭、今年8月に着任した安藤裕康チェアマンと久松猛朗フェスティバル・ディレクターより開催の挨拶と今回の企画や上映に関する発表があり、115の国と地域、1,804作品もの応募の中から14作品がコンペティション部門に選ばれ、日本からも『喜劇 愛妻物語』と『ばるぼら』の 2作品が選出されたことが明かされた。

「コンペティション」「アジアの未来」「日本映画スプラッシュ」「特別招待作品」「ワールド・フォーカス」「Japan Now」「CROSSCUT ASIA」「ジャパニーズ・アニメーション」部門など、各部門のラインナップについては、各部門のプログラミング・ディレクター、アドバイザー、東京国際映画祭事務局長らから、それぞれ各上映作品の見どころなどを交えながら発表された。

会見にはスペシャルゲストとして、今回のオープニング作品に決定した『男はつらいよ お帰り 寅さん』の山田洋次監督、コンペティション部門に選出された『喜劇 愛妻物語』から足立紳監督、『ばるぼら』から手塚眞監督が登壇。さらに「ジャパニーズ・アニメーション THE EVOLUTION OF JAPANESE ANIMATION/VFX」から中島かずき氏が登壇。

また、第32回東京国際映画祭のフェスティバル・ミューズを務める女優の広瀬アリスからビデオレターが届き、フェスティバル・ミューズとして選ばれた時の想いや、レッドカーペットへの意気込みなどが収録された特別映像がスクリーンに映された。

先立って発表のあった今回のコンペティション部門の審査委員長は、『初恋のきた道』(1999年)で鮮烈な映画デビューを果たし、以来『SAYURI』(2005年)『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)などハリウッドでの活躍もめざましい世界的な女優 チャン・ツィイー。第16回の時にコン・リーが務めて以来、女性の審査員長となる。

また、審査委員として、『グラン・トリノ』(2008年)、『アリー/スター誕生』(2018年)などを手掛け、アカデミー賞®にもノミネートの経験のあるプロデューサー、ビル・ガーバー氏。2009年に『エイト・タイムズ・アップ』(2009年)で第22回東京国際映画祭の最優秀女優賞を受賞したフランスの女優でもあり、プロデューサーでもある、ジュリー・ガイエ。『氷の季節』(2018年)で第31回東京国際映画祭の審査員特別賞を受賞した、北欧デンマークの気鋭、マイケル・ノアー監督。そして、日本からは、『ヴァイブレータ』(2003年)で 40以上の国際映画祭で数々の賞を受賞し、俳優女優陣から圧倒的な信頼を受けている廣木隆一監督ら5名が審査委員を務める。

第32回東京国際映画祭は、 10月28日(月)~11月5日(火)の9日間の開催期間中、170本の映画が上映される。世界中から訪れる様々なゲストが多数登場し、Q&Aやトークショーなど映画祭ならではのイベントが目白押しとなる。

東京国際映画祭チェアマン 安藤裕康 コメント

映画祭はどうあるべきかとよく聞かれるが、私は日本や世界中の優れた作品が一堂に会して、そこに映画を愛する方々が集まって、社会や人生について思いを巡らすことができる映画祭であるべきだと思っています。その意味で、今年は多種多様で立派なラインナップが揃ったと思います。

東京国際映画祭フェスティバル・ディレクター 久松猛朗 コメント

映画を観る喜びの共有/映画人たちの交流の促進/映画の未来の開拓の3つのビジョンを掲げて、プログラミングを編成してきました。来年東京オリンピック、パラリンピックを控えて日本は世界で最も注目される国になると思っております。そこで日本をハイライトしたラインナップを揃えました。

東京国際映画祭 Vision 
今年のハイライトと新規取り組み

第32回東京国際映画祭(TIFF) ロゴ

TIFF Vision

Expansive ― 映画を観る喜びの共有
世界の様々な国や地域から、幅広いテーマやジャンルの映画を紹介し、多様で多彩で豊かな映画の魅力を共有。誰もが参加したくなる、祝祭感溢れる映画祭を開催。

Empowering 映画人たちの交流の促進
日本、アジアのみならず、世界の映画文化及び映画産業に携わる人々が交流するハブとなり、相互に発信・受信しながら、新たな出会いと活動が生まれる場を提供。

Enlightening 映画の未来の開拓
若いクリエイターの育成、未来のクリエイターの創出に取り組み、彼らが世界に羽ばたいていくプラットフォームとしての役割を果たしていく。また、映画の魅力、映画を観る喜びを共有してもらうことで、若い映画ファン、将来の映画ファンの開拓に取り組む。

★今年のハイライト

● オープニング作品:山田洋次監督『男はつらいよ お帰り 寅さん』
● GALA作品:周防正行監督『カツベン!』
● Japan Now特集 大林宣彦監督
● 日本映画クラッシクス 京マチ子をフィーチャー
●「ジャパニーズ・アニメーション」部門の新設
●「ウルトラQ」の4Kリマスター版での上映

★新規取り組み

● Virtual × Real × Tech ライブ ~featuring 直観 × アルゴリズム♪~
● シン・ファンタ復活!?東京国際ファンタスティック映画祭ナイト
● 大学対抗ショートフィルムコンテスト(アメリカン航空共催)
● ヤング・フィルムメイカーズ・フォーラム(アメリカン航空共催)
● ウーマン・イン・モーション(ケリング主催)

第32回東京国際映画祭フェスティバル・ミューズ 広瀬アリス VTR コメント

【写真】第32回東京国際映画祭フェスティバル・ミューズ 広瀬アリス VTRメッセージ

今回フェスティバル・ミューズという素敵なお仕事を任せていただけるということで、とても嬉しく思います。
 
私でいいんですか?!というのが率直な感想でした。過去、『巫女っちゃけん。』(2017年/第30回TIFF 特別招待作品)、『銃』(2018年/第31回TIFF 日本映画スプラッシュ部門)、『旅猫リポート』(2018年/第31回TIFF 特別招待作品)で東京国際映画祭ではレッドカーペットを歩かせていただきました。
 
日本の方だけではなく、映画というものを愛している世界中の方々に観ていただく、これは私にとっては、とても特別な感覚で、一昨年の感覚、去年の感覚は、今でも忘れられません。独特の緊張感と、でも皆さんが温かく迎えてくれる、アットホームな感じが私はとても大好きなんです。この時間がずっと続いたら良いなと思えるくらい心地よい時間です。
 
そんな時間を少しでも多くの方と共有したいなと思っています。今からとても楽しみでなりません。
 
今回の東京国際映画祭で自分にとって「運命」と思えるような映画に出会えますように。「映画」の良さをもっともっと広めていきたいです。

第32回東京国際映画祭
コンペティション部門出品作品ラインナップ

作品タイトル  監督  製作国
列車旅行のすすめ アリツ・モレノ スペイン/フランス
アトランティス ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ ウクライナ
喜劇 愛妻物語 足立 紳 日本
チャクトゥとサルラ ワン・ルイ 中国
ディスコ ウェー ヨールン・ミクレブスト・シーヴェシェン ノルウェー
湖上のリンゴ レイス・チェリッキ トルコ
ジャスト 6.5 サイード・ルスタイ イラン
ラ・ヨローナ伝説 ハイロ・ブスタマンテ グアテマラ/フランス
マニャニータ ポール・ソリアーノ フィリピン
ネヴィア ヌンツィア・デ・ステファノ イタリア
動物だけが知っている ドミニク・モル フランス
ばるぼら 手塚 眞 日本/イギリス/ドイツ
戦場を探す旅 オーレリアン・ヴェルネ=レルミュジオー フランス/コロンビア
わたしの叔父さん フラレ・ピーダセン デンマーク

コンペティション部門選出作品『ばるぼら』手塚眞監督 コメント

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (コンペティション部門選出作品『ばるぼら』手塚眞監督)

—— ヴェネツィアなど海外の映画祭に招かれた経験がある中で、地元の東京国際映画祭でコンペティションに選出されていかがでしょうか。

本当に嬉しいです。実はここ数年作った長編映画がすべて映画祭で上映されています。3回目で初めてコンペ選出となり、ちょっとずつ自信がついてきて、本当に嬉しいです。

—— 原作は父・手塚治虫の異色作、この作品を選ばれた理由は何でしょうか。

読者の皆様は漫画の中では異色作といわれているが、私からするととても手塚治虫らしい、また手塚眞らしい作品だと感じていました。父親の考えた感性やストーリーと息子である私の感性の融合という形で作りました。

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (コンペティション部門選出作品『ばるぼら』手塚眞監督)

—— 初めて稲垣さんと組まれたと思いますが、いかがでしたか。

一番好きなタイプの俳優です。何も言わなくても以心伝心で思った通りの演技をしていただけるので、今日本で一番好きな俳優です。

—— 二階堂ふみさんはいかがでしたか。

この映画のミューズのような存在、彼女がいたから成立したと思っています。二階堂ふみさんなのか、役のばるぼらなのかわからないくらいぴったりの俳優だったと思っています。

コンペティション部門選出作品『喜劇 愛妻物語』足立紳監督 コメント

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (コンペティション部門選出作品『喜劇 愛妻物語』足立伸監督)

—— 2016年のデビュー作『14の夜』が第29回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で上映されて以来、初めてコンペティション部門の選出ですが、発表を聞いていかがでしたか。

嬉しかったけど、まずびっくりしました。監督としてはまだ2作目でコメディなので、そういう作品がコンペに入るのはあまり無いと思うので大丈夫なのかと、そうとうびくびくしました。

—— 原作・脚本も監督が務められておりご自身を反映されているように思いますが、いかがでしょうか。

濱田岳さんが演じている役よりもよりも僕はもうちょっとひどい男ですけども、自分の分身を演じていただきました。

—— 水川あさみさんへのお芝居の演出はどのようにされましたか。

演出らしい演出はしていない。昔から水川さんのことが好きで、映画やドラマを見ていたが、バラエティに出演されているのを拝見して、絶対この役にぴったりだろうと思って、オファーいたしました。

—— 濱田岳さんはいかがでしたか。

素晴らしく、撮影3日目からこの人大丈夫かなと思うくらい、本当にダメな人に見えてきて、水川さんがガンガン怒るのがわかるくらいでした。

—— どんな思いを映画に込めましたか。

単に怒っているのではなく、愛情が込められているのを描きたかった。夫婦というのが赤の他人の人間関係としては、最もみっともない姿を見せあう関係だと思うので、そういった夫婦関係を描ければと思った。

「THE EVOLUTION OF JAPANESE ANIMATION/VFX」 中島かずき氏 コメント

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (中島かずき)

—— 映画祭でご自身の脚本作品『プロメア』が上映されることについていかがですか。

嬉しいですね。応援上映という、お客さんたちがスクリーンを観ながら声をかけたり、サイリウムを振ったりとコンサートのような特殊な上映スタイル。日本のファンたちがこういう楽しみ方をしているという、海外に向けての良いプレゼンになるのではないかと思います。

—— アニメの部門化は期待できますね。

海外に対して日本の映像作品として、アニメーションは代表されるものだと思いますので、それがきちっとこういう形でプレゼンテーションできるというのはとても良いことだと思います。

オープニング作品『男はつらいよ お帰り 寅さん』山田洋次監督 コメント

【画像】映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』メインカット

—— ご挨拶をお願いします。

15~16年前になりますが、『隠し剣鬼の爪』(2004年)という時代劇映画がオープニングで選ばれたことがありまして、それ以来久しぶりにオープニングに僕の最新作が上映となり光栄に思います。

—— 中でも寅さんの最新作を上映できることに対してどのようにお思いですか。

この作品は 50年かけて作った映画という気がします。自分で出来上がった映画を見て、50 年かけて作ったんだと分かって不思議な思いを抱いた。その理由でオープニングに選ばれたのではないかと思います。

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (【オープニング作品『男はつらいよ お帰り 寅さん』山田洋次監督)

—— 国際映画祭ですので、日本だけでなく、世界の方々に観られるかと思いますが、海外の方の反応などは気になるところでしょうか。

かつてトリュフォーが『大人は判ってくれない』(1959年)の主人公の男の子が成長してからその子で別の映画を撮ったりしましたが、それでも十数年くらいでしょうから、他にも長い期間をかけて撮った映画はいろいろありますが、50年かけた映画は決してなかったと思うので観ていただきたいと思います。それだけは言っていただきたい、今後も無いと思うので。俳優も入れ替わらないでやっているわけだから。

—— 監督は今回の映画のどんなところに奇跡を感じましたか。

そうですね。編集によって黒澤明さんが「映画はつなぎ合わせて作るものだけれども、カットのつなぎ目に魔法が働く」とおっしゃっていたが、その魔法を感じ取られた気がしました。

—— 渥美清さんがご覧になられたらどんな言葉をかけられるでしょうか。

山田さんよくやったねとにやにやして笑うでしょうね。

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (【オープニング作品『男はつらいよ お帰り 寅さん』山田洋次監督)

—— 最後に一言

若いころよく見たという方もたくさんいると思うけれど、寅さんを見たことの無い人たちもたくさんいるに違いない、そういう方たちにとっても楽しくて不思議な色合いを持った作品だと思いますので、多くの人に見ていただければと心から思っております。

記者質問 Q&A

Q. 今回の映画祭でご自身として楽しみなこと、期待していることはどのようなことがありますでしょうか?

中島: 個人的には京マチ子さんの特集が楽しみです。古い映画が好きなので、3本とも楽しみにしています。

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (中島かずき)

山田: TIFF は世界中の映画祭の中でもこれが東京国際映画祭なんだという特徴というかフィロソフィーをちゃんともってほしい、早くそこにたどりついてほしい、発見してほしいなと思います。そういうふうな思いを抱きながらこの映画祭に参加したいと思います。

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (【オープニング作品『男はつらいよ お帰り 寅さん』山田洋次監督)

手塚: 山田監督のような巨匠と一緒に参加できることを本当に嬉しく思っておりますし、大林宣彦監督の最新作や京マチ子さんの特集では黒澤明監督や衣笠先生の作品も上映されます。世代を超えて素晴らしい日本映画が集まる映画祭になっていると思いますので、初めて参加される方もぜひこの機会に参加してもらえれば、日本の映画の歴史の一端をみることができるとおもいますので、ぜひ来ていただければと思います。

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (コンペティション部門選出作品『ばるぼら』手塚眞監督)

足立: 自分の映画が上映されていない時もよく来て毎年何本も観ていて、日本で上映されるかもわからない外国のなかなか見られない映画もたくさん観られますので、そういった映画を毎年見るのが楽しみで今年もたくさん観ようと思っております。

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (コンペティション部門選出作品『喜劇 愛妻物語』足立伸監督)

[スチール撮影&取材: Cinema Art Online UK]

第32回 東京国際映画祭 ラインナップ発表記者会見 ムービー

第32回 東京国際映画祭 ラインナップ発表記者会見 概要

■開催日: 2019年9月26日(木)13:00~
 
■会場: 六本木アカデミーヒルズ 49階 タワーホール
 
■司会: 笠井信輔(アナウンサー)
 
■登壇者: 安藤裕康(東京国際映画祭チェアマン)
久松猛朗(東京国際映画祭 フェスティバル・ディレクター)
都島信成(東京国際映画祭 事務局長)
矢田部吉彦(コンペティション部門、日本映画スプラッシュ部門 プログラミング・ディレクター)
石坂健治(アジアの未来部門 プログラミング・ディレクター)
安藤紘平(Japan Now部門 プログラミング・アドバイザー)
氷川竜介(アニメーション特集 プログラミング・アドバイザー)
 
■ゲスト: 広瀬アリス(第32回東京国際映画祭 フェスティバル・ミューズ)※ビデオレター 
山田洋次監督 (オープニング作品『男はつらいよ お帰り 寅さん』より)
手塚眞監督 (コンペティション部門『ばるぼら』より)
足立紳監督 (コンペティション部門『喜劇 愛妻物語』より)
中島かずき (THE EVOLUTION OF JAPANESE ANIMATION/VFX より)

【写真】第32回東京国際映画祭(TIFF) ラインナップ発表記者会見 (中島かずき、山田洋次監督、手塚眞監督、足立伸監督)

第32回 東京国際映画祭 開催概要

■開催期間: 2019年10月25日(月) ~ 11月5日(火)
■会場: 六本木ヒルズ、EX シアター六本木(港区)、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区)ほか 都内の各劇場及び施設・ホールを使用
■併設マーケット: TIFFCOM (Japan Content Showcase 2019) / 2019年10月22日(火) ~ 10月25日(金)

第32回 東京国際映画祭(TIFF) 公式サイト

【画像】第32回東京国際映画祭(TIFF) ティザービジュアル

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