映画『いのちの停車場』祝!全国公開記念舞台挨拶
成島監督「今だからこそできた映画」制作秘話を語る。
「在宅医療」に携わる医師、患者、その家族を通して、“いのち”に正面から向き合い、生きる力を照らし出す、心を揺さぶる感動作『いのちの停車場』が5月21日(金)より一部地域を除き公開。そして6月1日(火)、東京都、大阪府での映画館の休業要請の緩和を受け、47都道府県すべての地域で公開となった。
同日、全国での公開を記念して、東京・丸の内TOEI①にて<祝!全国公開記念舞台挨拶>が行われ、東京初日の上映を鑑賞したばかりの観客の前に主演の吉永小百合、広瀬すず、田中泯、成島出監督が登壇した。
映画は遂に全国公開へ
東京都、大阪府での規制緩和を受け、全国公開されることについて吉永は「スクリーンから飛沫は飛びませんし、観てくださる方も会場でお話することが減っています。どうしてかと悩んでおりました。今回緩和されて皆さんに観ていただけて嬉しいです」と笑顔で挨拶。既に公開された地域からの感想の声や手紙が届いていると明かし「映画を観たみなさんが命や生きるということについて考えていらっしゃることが伝わってきます」と映画が届けられた喜びを語る。
広瀬も「同業者の方に、食堂のシーンはどうやって撮ったの?と聞かれました。どこまでが台本で、どこからがアドリブなのかわからなかったと言われて嬉しかったです」と手応えを感じていた。
田中は「沈黙が届いております……」と冗談を混じえつつ、自身の演技について「四六時中身体の痛みと向き合っている方が大勢いらっしゃいます。その方々から“お芝居だね”と言われたくない。自分の経験に縋るような気持ちで演じました」と役作りについて言及した。
成島監督は「お客さんに観ていただいて映画は完成します。今日を迎えられて胸がいっぱいです」と安堵の表情を見せた。
各地に赴いた宣伝活動
映画の宣伝活動で全国を巡った話について聞かれると、吉永は「色々なところに行かせていただきましたが、岡山と広島が最後だったんですね。感染者が多くなってきたタイミングでどうなるかと思いましたが、無事にやらせていただけて有難かったです。ただ残念だったのはすずちゃんと一緒にご飯が食べられなかったことです」と話す。
それを受けた広瀬も「私は日帰りで金沢へ伺ったんですけど、取材以外でお会いすることが無かったので……」と残念な表情。「収まったら行こうね!」と吉永が誘うと広瀬も「是非!」と約束を交わしていた。
田中は舞台挨拶について「未だに撮影の時の役作りでの痛みから抜けられてないので何を話したらいいのか……」と挨拶の難しさを話した。
この御時世だからこそ生まれた映画
成島監督は本作の製作総指揮を務め、昨年11月に逝去された岡田裕介 東映代表取締役グループ会長との話し合いの中で松坂桃李演じる野呂が小児癌患者の萌をおんぶして泳ぐシーンについて「自分が幼い頃に小さい妹を背負って沖を泳ぎきったことがあるんだ」と明かされたと話し「めちゃくちゃだなと。医療的には間違っていると思うんですけど、実際にこのシーンをスクリーンで観て、そのダイナミックさに驚きました。いのちが未来に向かう希望みたいなものが表現できたかなと」と見どころについて語る。
また、映画について「吉永さんは最近やわらかい役が多かったので、昔みたいに追い詰められるエッジの効いた話がいいんじゃないかと岡田会長と話してたんです。でも脚本を作っている段階でコロナ禍になり、現実が物語を超えるような展開になりました。そんな中でサスペンスフルにやるのはどうなのか?と。吉永さんから話もあって色々と変更しました。ラストのシーンは答えはどこにあるのか現場も分からなくなっていました。吉永さんも田中さんも真っ白だったと思います。あのラストシーンは自然現象的に撮れた奇跡みたいなシーンです」と秘話を明かした。
最後に吉永は「東京と大阪の初日を迎えられて幸せです。ですが世には大変な状況の方がたくさんいらっしゃることを見聞きいたします。1日でも早くいい状況になるよう祈りながら終わりとさせていただきます」と挨拶。成島監督は「いのちを削って作りました。今は感染症対策で席が半分しか埋まりませんが、いつか映画が満席で観れるようになれば幸いです」と話し、舞台挨拶は終了した。
[記者: 梅田 奈央 / スチール撮影: Cinema Art Online UK]
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イベント情報
映画『いのちの停車場』祝!全国公開記念舞台挨拶
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映画『いのちの停車場』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》東京の救命救急センターで働いていた、医師・白石咲和子(吉永小百合)は、ある事件の責任をとって退職し、実家の金沢に帰郷する。 これまでひたむきに仕事に取り組んできた咲和子にとっては人生の分岐点。久々に再会した父(田中泯)と暮らし、触れあいながら「まほろば診療所」で在宅医として再出発をする。 「まほろば」で出会った院長の仙川徹(西田敏行)はいつも陽気な人柄で患者たちから慕われており、訪問看護師の星野麻世(広瀬すず)は、亡くなった姉の子を育てながら、自分を救ってくれた仙川の元下で働いている。 ふたりは、近隣に住むたった5名の患者を中心に、患者の生き方を尊重する治療を行っており、これまで「命を救う」現場で戦ってきた咲和子は考え方の違いに困惑する。 そこへ東京から咲和子を追いかけてきた医大卒業生の野呂聖二(松坂桃李)も加わり「まほろば」のメンバーに。野呂は医師になるか悩んでおり、そして麻世もまた、あるトラウマに苦しんでいた。 様々な事情から在宅医療を選択し、治療が困難な患者たちと出会っていく中で、咲和子は「まほろば」の一員として、その人らしい生き方を、患者やその家族とともに考えるようになってゆく。 野呂や麻世も「まほろば」を通じて自分の夢や希望を見つけ、歩みはじめた。生きる力を照らし出す「まほろば」で自分の居場所を見つけた咲和子。その時、父が病に倒れ・・・。父はどうすることもできない痛みに苦しみ、あることを咲和子に頼もうとしていた—。 |