映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』
公開記念舞台挨拶
片淵須直監督の9年にわたる執念の新作
のん「この作品に参加できたことが誇らしい」
第二次世界大戦中の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向き、日々の暮らしを紡いでいく女性・すずの深い感情を、新たなエピソードを盛り込むことで描き出す新作劇場アニメーション映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が12月20日(金)に公開を迎えた。
2016年11月12日に公開された『この世界の片隅に』は、全国で続々と拡大上映され、深い感動の輪を拡げていき、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞、第41回アヌシー国際アニメーション映画祭審査員賞など国内外で70以上の賞を受賞するなど大きな反響を呼び、多くのファンと上映劇場の熱意に支えられ、公開から1日も途絶えることなく1,000日以上も日本全国どこかの劇場で上映が続けられている。
『この世界の片隅に』を原型に、すず、リン、周作・・・それぞれの内に秘められた“想い”を描いたシーンを追加、新たな物語として『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が製作された。
公開を記念して、12月21日(土)に公開館のテアトル新宿で舞台挨拶が実施され、 のん、細谷佳正、尾身美詞、潘めぐみ、岩井七世、新谷真弓、牛山茂らキャスト陣と片渕須直監督が登壇した。
主人公・すずの声優を務めたのんは、「新作と送り出すというほかにない経験をして、喜びに満ちています。(前作で)6年も、そしてこの作品も併せて9年も一つの作品に向き合う監督の執念…この作品に参加できたことが誇らしい」という言葉で再び作品に携われた喜びを表現した。
すずの夫・周作を演じた細谷佳正は、「前作はすずを中心にした作品で、夫婦間・男女間の愛は人間愛として描かれていたが、この作品では新婚から始まる男女の関係性のリアリティが描かれている」と、すずと周作の関係性の描かれ方が前作と異なる点に点に触れ、「中性的に演じるのはもったいないと思い、バランスを考えながら周作の”男性”の面を意識して演じました」と、演じかたを意識して変えたことについて語った。
すずの親友・リン役の岩井七世は、「前作のアフレコで監督に「もっとリンを演じたかった」と話したら、監督に「ちょっと待ていてください」と言われ、その言葉を信じた3年」と話す。今作ではすずとリンのふたりのシーンが多く追加されているが、桜の木の上で話をするシーンが気に入っているという。中でも、すずと「ふふふ」と笑いあうシーンは台本にはセリフがなく、絵に合わせてのんと二人で自由に演じた「心からの”ふふふ”」というセリフであったと収録を振り返った。
すずの叔母・径子を演じた尾身美詞は、前作の収録以降も”声の家族”たちで会う機会が何度かあり、「まるで本当の家族のように一緒に時をすすめてている」と感じていると話す。今回の舞台挨拶で、「(前作に引き続き)再び家族一同揃って挨拶できた」と再会を喜んだ。
すずの妹・すみを演じた潘めぐみは、広島弁で挨拶。前作が今も上映されていることに触れ、「作品名通り、今も”この世界の片隅で”この作品に愛情を注いでくださっている」と、観客に感謝を述べた。
すずの義母・サンを演じた新谷真弓は、今作へは方言監修としても参加。収録にも立ち会っていたといい、「みなさんの素敵な広島弁が聴けてお得な立場だったなと思います」と話した。
すずの義父・円太郎を演じた牛山茂は呉弁に苦闘したという。アフレコのガイドのテープの吹き込みや方言指導などを担当した新谷の尽力に触れ、「助かりました」と感謝を伝えた。
片淵須直監督は、再集結してもらった声優陣に対し「前作から3年経っているので、アフレコの前は”前作と違っていたらどうしよう”という心配もあったが、実際に演じてもらったら心配は吹き飛んだ」と話す。「その場にずっと生き続けている人たちの日常を切り取ったようで、最初から今作の長さだったように自然に感じられました。みなさんご苦労様でした」とキャストたちをねぎらった。
すずの幼馴染・水原哲役の小野大輔は、イベントには参加できなかったため、手紙で作品への思いを寄せ、司会者によって代読された。
「例の羽ペンでこの手紙をしたためています」と前置きし、前作では哲の気持ちがつかみきれず、長考してアフレコを止めてしまったというエピソードが語られた。片淵監督は「小野さんは「納屋のシーンで哲はなぜすずを押し倒さないのか」とおっしゃっていた」といい、片渕監督が「哲は“いいやつ”で、乱暴者ではなく、すずと目を合わせることができないがゆえの行動」と、人物像を説明したことで、小野が納得して演じられるようになったと明かした。
最後に、片淵監督は本作が公開初日と同日に公開された毎日映画コンクールの候補作品にノミネートされたことに触れ、通例として映画賞などはディレクターズカット版などは対象とならないことから、「新作としてに認めていただけたことが嬉しい」と話し、のんも「全く違う味わいの作品になった」と、前作を見た人でも新しい気持ちで楽しめる作品となっていると太鼓判を押した。
また、前作は”公開から中断なき映画館での連続上映”の日数を更新し続け、1133日という新記録を残した。本作の公開により作品が切り替わるため、片淵監督は「また1日からのスタートです」と話し、「これからもすずさんの人生が上映され続けてくれたらと思います」と、前作同様の末永い応援を願い、イベントを締めくくった。
[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 金尾 真里]
イベント情報
映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』公開記念舞台挨拶■開催日: 2019年12月21日(土) |
映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》広島県呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。 ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりに気づいてしまう。だがすずは、それをそっと胸にしまい込む……。 昭和20年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。 そして、昭和20年の夏がやってくる―。 |
監督・脚本: 片渕須直
音楽: コトリンゴ
企画: 丸山正雄
プロデューサー: 真木太郎
製作統括: GENCO
アニメーション制作: MAPPA
後援: 呉市、広島市、日本赤十字社
製作: 2019「この世界の片隅に」製作委員会
2019年12月20日(金)
テアトル新宿・ユーロスペースほか全国公開!
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