第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶レポート
【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (のん、岩井七世、コトリンゴ、片渕須直監督)

第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品
映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』
特別先行版上映 舞台挨拶

のん「もう一度演じられてよかった」
3年を経て、掘り下げた“すずさん”の葛藤

11月4日(月)、第32回東京国際映画祭(TIFF)にて、特別招待作品である映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』特別先行版の上映が、TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われた。

【画像】映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』メインカット

上映後には舞台挨拶の場が設けられ、主人公・すずの声優を務めたのんのほか、遊郭で働く少女・リン役の岩井七世、音楽を担当したコトリンゴ、片淵須直監督が登壇した。

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (のん、岩井七世、コトリンゴ、片渕須直監督)

前作、映画『この世界の片隅で』は、2016年の第29回東京国際映画祭で初上映された。それから3年、新たなシ-ンを追加した新作映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』を引っ提げての凱旋となる片淵監督は「帰ってきたような気持ちです」と深い感慨を表した。

さらに、「前作は、すずと義姉の径子さんの関係の変化で、すずの道を示していた。でも人間ってそんなに簡単ではなく、もっとたくさんのものに出会い、苛まれて生きていくもの。今回新しい場面を追加したことで、前作で描かれた場面の裏で、本当はすずさんはこの時あんなことを思い、こんなことを考えながらこの言葉を話していたのかもしれないと想像が広がると思う。今作を通して、よりすずさんという人物像が多面的になったのではないかなと思います」と、製作の意図を語った。

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (片渕須直監督)

前作に引き続き、主人公・すずを演じたのんは約絵の取り組みについて、「期間をおいてから同じ役に挑むというのは初めての経験でした。何度も前作を観たり、原作を読み返したり、新しいシーンをどういう風に演じるか構築していくうちに、なんとなくすずさんの皮膚感がよみがえってきました。そして、緊張もありましたが、監督への信頼があったので、強い気持ちで臨むことができました」と、話す。

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (のん)

今回、すずとの関わりがより深く描かれる、遊郭で働く少女・リンを演じた岩井は「私自身この作品のファンなので、新しく入ったシーンをすごく楽しみにしていました。緊張しましたが、自分でも呉に行ったり、映画館に10回くらいに観にいったりして、気張らず、監督の言葉に耳を傾けて臨みました」と、今作への思い入れを語った。

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (岩井七世)

音楽を担当したコトリンゴは、前作を踏襲しながらも、アレンジに変更を加えたという。「今回はすずさんの世界でリンさんが大きくかかわっていて、それに周作さんも加わっていく。前作のそれぞれの登場人物の音楽を発展させて、自然に新しいシーンに繋がるように作りました」と話す。新たに録音しなおした、エンディング曲の「たんぽぽ」については「聞いたときのイメージは変えたくなくて、でも完結に向かう名残惜しい重厚感を出したくて、アレンジを豪華にしました」と、前作からの変更点を説明した。

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (コトリンゴ)

のんは、今作で追加され、深く描かれたすずとリンの関係性について、「リンさんはすずさんのなかでこんなにも大きな存在なんだな、というシーンがたくさんあります。リンさんは、初めてすずさんに絵を描いてほしいと言ってくれた人なんです。呉に来て、知らない家族の中でお嫁さんの義務を果たすことで自分の居場所を作っていったすずにとって、自分の中にあるものを認めてもらえた、ということは心のよりどころになっていたのではないかなと思います」と語る。

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (のん)

「リンさんと周作さんとの間の秘密を知って、いろいろな感情が渦巻き、すずとしても感情の置き所に戸惑っている。そういった複雑な部分を難しいなと思いましたが、監督に演出をしてもらいながら自分自身でも気づく部分もあり、振り返ればもう一度演じられて良かったなと思います」と演じる上の苦労した部分を明かした。

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (のん)

今回の上映は“特別先行版”ということもあり、まだ製作途中で、あと数分長くなるという。片渕監督は、「これから帰ったら作業です(笑)」と打ち明け、最後に一般公開に向けて、観客にメッセージを伝えた。

「『この世界の片隅に』という映画がありますが、今作は新しい映画というつもりで作りました。初めて一般の方に観ていただく機会になりましたが、こんなに沢山の方に観ていただけてうれしいです。これからもよろしくお願いします!」

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (のん、岩井七世、片渕須直監督)

[スチール撮影: Cinema Art Online UK / 記者: 金尾 真里]

イベント情報

第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品
映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』特別先行版上映 舞台挨拶

■開催日: 2019年11月4日(月)
■会場: TOHOシネマズ 六本木ヒルズ スクリーン7
■登壇者: のん(女優)、岩井七世(女優)、コトリンゴ(音楽)、片渕須直(監督/脚本)
■MC: 奥浜レイラ

【写真】第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』舞台挨拶 (のん、岩井七世、コトリンゴ、片渕須直監督)

映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『この世界の (さらにいくつもの) 片隅に』ポスタービジュアル

《ストーリー

広島県呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19年、日本が戦争のただ中にあった頃だ。戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。

ある日、迷い込んだ遊郭でリンと出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりに気づいてしまう。だがすずは、それをそっと胸にしまい込む……。

昭和20年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。

そして、昭和20年の夏がやってくる―。

 
第32回 東京国際映画祭(TIFF) 特別招待作品
 
原題・邦題: この世界の(さらにいくつもの)片隅に
英題: In This Corner (and Other Corners) of the World
 
出演: のん、細谷佳正、稲葉菜月、尾身美詞、小野大輔、潘めぐみ、岩井七世、牛山茂、新谷真弓、花澤香菜、澁谷天外(特別出演)
 
監督・脚本: 片渕須直
音楽: コトリンゴ
原作: こうの史代「この世界の片隅に」(双葉社刊)
 
監督捕・画面構成: 浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督: 松原秀典
美術監督: 林孝輔
企画: 丸山正雄
プロデューサー: 真木太郎
製作統括: GENCO
アニメーション制作: MAPPA
配給: 東京テアトル
後援: 呉市、広島市、日本赤十字社
製作: 2019「この世界の片隅に」製作委員会
 
© 2019こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会
 

2019年12月20日(金)
テアトル新宿・ユーロスペースほか全国公開!

映画公式サイト
 
公式Twitter: @konosekai_movie
公式Facebook: @konosekai.movie

この記事の著者

金尾 真里ライター

神奈川県横浜市生まれ。
「うつし世はゆめ、夜の夢こそまこと」(江戸川乱歩)を座右の銘とし、エンタテインメント全般を愛好。作品の規模、ジャンル問わず、自分が「面白い」と感じる映画の紹介をしたいと映画ライターの活動を行う。キャスティングと物語が好きな映画は『ベニスに死す』、好きな映画音楽は『ロシュフォールの恋人たち』、総合して一番好きな映画は『GSワンダーランド』

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