映画『チア男子!!』原作者・朝井リョウ×風間太樹監督インタビュー

【写真】映画『チア男子!!』原作者・朝井リョウ × 風間太樹監督インタビュー

映画『チア男子!!』

原作者・朝井リョウ×風間太樹監督インタビュー

21歳の葛藤…青春を終えた今思い出す、気持ちだけで動くことのできたあの時

漫画、アニメ、舞台といろいろなジャンルで何度もメディアミックス化されてきた、朝井リョウの小説「チア男子!」。男子だけのチアリーディングチームを描いた本作が、満を持して実写映画化!原作者・朝井リョウと、本作の映画化に挑んだ風間太樹監督に、映画の見どころや作品についての思いを伺った。

【画像】映画『チア男子!!』メインカット2

映画一本に、7人分の葛藤をどれだけ濃密に詰め込めるか

風間: 根本にあるチア自体の魅力・熱量を描くことは、原作や他のメディアミックス作品との共通のテーマでした。映画化するにあたっては、チアに挑む彼らの身体的成長を描きつつ、7人の内面的な葛藤、痛みや悲しみを乗り越えてチアに昇華していく過程の部分を主人公だけではなくメンバー全員分、優劣付けずに丁寧に描くというのが目標でした。長編小説一本分の葛藤を映画一本にまとめる訳ですから、原作の魅力をどれだけ詰め込めるか、またそれを保ちつつそぎ落としていく作業が多かったですね。キャラクターの抱えているものを濃密に描き、より明確にした上で、ラストチアの演舞そのものが物語の解になったらいいなと思いました。

ハル役の決め手は「がんばれ」という言葉が心に響く声

風間: ハルという役は声が大事だと思っていました。どんな声に「がんばれ」と言われたら心に響くかなと。あとは、ハルっぽさという意味では人当たりが柔らかく、身体能力が高いことも必要な要素でした。横浜流星君は、空手をやっていたということもあり、パフォーマンスでは能力を発揮してくれるだろうなと思っていたので、プラスアルファで声の魅力がありましたね。この人の声が聞きたい、聞いていたいと思えることは重要ですし、感情移入してもらう為に聴覚的な印象は大切だと思っています。

【画像】映画『チア男子!!』ハル (横浜流星)

朝井: 声は大事ですよね。前に(横浜さんと)対談させてもらった時に、落ち着いていてゆっくりしたテンポでお話しされる方だったので、説法を聞いているみたいでした。声が素敵だなと思いました。

風間: よく通る声をしてますし、声の振動が心地いいのかもしれないですね。

朝井: 独特の波長がある声は魅力的ですよね。

【写真】映画『チア男子!!』原作者・朝井リョウ × 風間太樹監督インタビュー

最後の青春!?溝口のコミカルさとリアリティとのさじ加減

風間:  浅香航大君は、朝井さん原作の映画『桐島、部活やめるってよ』(2012 年)の 時の印象はもちろん、それ以降のお仕事を拝見していて、いつかご一緒したいという思いがありました。今回は役としても、少しだけ大人な支柱になるだろうなと思ってお願いしました。

朝井: 一番漫画的なキャラクターなので、やり過ぎるとしらけちゃうし、あまり現実的に演じられても浮いちゃいますよね。さすが浅香さん、とても丁度良かったです。

風間:  その塩梅ができる人があまりいないですよね。そのあたりは本当に上手に演じてもらえました。

朝井: もしかしたら、年齢的にも青春映画は最後かもしれないですね。

風間: 本人もそう言っていました。「この映画で青春を十分に謳歌しました」って(笑)。だから少し年上の溝口の設定もちょうどよかったですよね。

【写真】風間 太樹 (Hiroki Kazama)

主演二人の姿と重なる、原作小説を描いた21歳の頃

朝井: 作家として2作目となる『チア男子!』を執筆していた時は21歳で、私にとって作家人生の青春期だったと思っています。主演の二人も撮影の時21歳だったそうで、これからの俳優人生へと駆け出していく二人の姿に、当時の自分の気持ちを重ねてしまいました。

【画像】映画『チア男子!!』場面カット (横浜流星&中尾暢樹)

当時はスポーツ小説がどれだけ難しいかもわからないまま、ただ書きたい!という気持ちで突っ走ることができた時期でした。中国人留学生を仲間に入れるとか、今なら絶対に書けないような展開ですし。アニメや舞台にしていただいたタイミングに自分で読み返したのですが、久しぶりに読むときは、青春期の自分の無鉄砲さに触れるのが怖くて、指の隙間からこわごわと覗き見るような感覚でした。

【画像】映画『チア男子!!』場面カット (「男子チア」入部大歓迎)

でも、あのときやっておいてよかったなと本当に思います。野球やバレーボールなど文脈が共有されている競技って、たとえば「スパイクを打った」だけで読者が映像を思い浮かべられる。チアリーディングは他のスポーツに比べると競技人口が少ないので、「トップを飛ばした」だけでは読者は何が何だかわからないですよね。だから動作をいちいち事細かに説明しなければならない。こういう大変さに気付かないまま書き始められるのって、やっぱり青春期ならではの青さだと思うんです。ただやはり苦労はしました。

【画像】映画『チア男子!!』場面カット

今回最終的に大会に出る展開があったので、“大会に出るくらい練習をしている”という説得力を醸し出さなければいけなかったんですが、そのためには練習のシーンをた大量に、丁寧に書かなければならない。だけど練習のシーンだけだと物語が進まない……悩みました。また、今までの大学スポーツ小説って、バイトと就活が無視されているんですよ。それがすごく不自然だったので、自分の作品には絶対そのふたつの描写を入れようと思っていました。それもとても苦労したのですが、おかげでこのジャンル特有のキレイすぎる嘘くささを抑えられた気がしています。

【写真】原作者・朝井リョウ

原作者と監督から、これから映画を観る方にメッセージ

朝井: まず、横浜さんの稀に見る身体能力とかっこよさですね。これまで佐藤健さんがやってきたような、大変な身体能力を求められことをこれからバンバンやらされるのではないかと踏んでいます(笑)。ハルという役が、その魅力がみつかるきっかけになってもらえたら嬉しいです。

この映画では学園祭編までを描いていますが、原作だとその後に大会編があります。

【画像】映画『チア男子!!』場面カット (BREAKERS)

私は作家性的に、団体競技の上手くいかないところを書いている方が楽しかったので、この作品も明るい曲より暗い曲の方が流れている時の方が長いように感じます。感情のやり取りも想像以上にしっかり描いてもらえました。初めてチアリーディングを一緒にやるときに生じる人間のもつれと、大会のようなものに臨むときのもつれは違うところがあると思って書きましたが、今回人間関係の描写で、大会編で書いたエピソードもいくつか入っています。まとめるのは大変だったと思いますが、その分人間の感情のやり取りというのは濃密に描かれているのではないかと思います。さりげなく原作では大会編もありますということもお伝えしつつ(笑)。

【画像】映画『チア男子!!』場面カット (BREAKERS)

風間: ブレイカーズの7人がチアリーディングを通して苦悩を乗り越えていく姿を、泥臭く、とにかくまっすぐ、一人ひとりの心情に寄り添って描写しました。彼らが駆け抜けた118分の夏には「痛み」と共に「輝き」が映っています。今まさに青春を送っている方はもちろん、過ぎた青春に思い残りのある大人の方にも楽しんで頂ける作品になったと思います。役の垣根を越えて「チアリーディング」に挑んだ俳優たちのパフォーマンスには、これから「挑戦」やあらゆる「選択」をする方の背中を押せるような力強さがこめられたと思いますので、是非ブレイカーズのチアリーディング、応援を劇場で体感頂けたら嬉しいです。

【写真】映画『チア男子!!』原作者・朝井リョウ × 風間太樹監督インタビュー

[インタビュー: 金尾 真里 / スチール撮影: Cinema Art Online UK]

プロフィール

朝井 リョウ (Ryo Asai)

1989年、岐阜県出身。2009年「桐島、部活やめるってよ」で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、同作が12年に映画化。2011年「チア男子!!」で第3回高校生が選ぶ天竜文学賞受賞、同作が2016年にアニメ化、舞台化。2012年「もういちど生まれる」で第147回直木賞候補、2013年「何者」で第148回直木賞を戦後最年少で受賞、同作が2016年に映画化、2017年に舞台化。2014年「世界地図の下書き」で第29回坪田譲治文学賞受賞。その他の小説に「少女は卒業しない」「星やどりの声」「スペードの3」「武道館」「世にも奇妙な君物語」「何様」「ままならないから私とあなた」、エッセイ集に「時をかけるゆとり」「風と共にゆとりぬ」がある。最新作は「死にがいを求めて生きているの」(中央公論新社)。

【写真】朝井 リョウ (Ryo Asai)

風間 太樹 (Hiroki Kazama)

1991年、山形県出身。東北芸術工科大学映像学科卒業。在学中に製作した初監督映画『Halcyon days』が山形国際ムービーフェスティバル’13にて入賞。2014年AOI Pro.入社、現在エンタテイメントコンテンツ部所属。映画『帝一の國』のスピンオフドラマ「帝一の國〜学生街の喫茶店〜」(全5話/2017年)で商業作品デビュー。「東映 presents HKT48×48人の映画監督たち」(2017年)に参加し、短編映画『屋上のおばけ』を発表。最新作は映画『恋は雨上がりのように』のオリジナルドラマ「恋は雨上がりのように〜ポケットの中の願いごと〜」(全4話/2018年)。

【写真】風間 太樹 (Hiroki Kazama)

映画『チア男子!!』公開記念CAO読者プレゼント

映画『チア男子!!』』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『チア男子!!』ポスタービジュアル

《ストーリー》

柔道一家に生まれたハルは、幼い頃から柔道に打ち込む姉=晴子に憧れて育った。優しすぎる性格から晴子のように強くなれない晴希は、ある日の試合で肩を負傷。以降、柔道を続けるかどうか迷っていた。そんな時同じ柔道仲間で無二の親友であるカズが、突然「やりたいことがあるんだ」と柔道をやめることを宣言。動揺するハルに「俺はこれをやる。ハルと一緒に!」と笑顔で畳みかけたのは、“男子チアリーディング部”の創設だった。ひとつ間違えると大けがにつながるチアの基本は、「仲間を信頼すること」。だが、メンバーを集め練習に打ち込んでいくうちに、“BREAKERS”の歯車は少しずつ狂い始め、やがてメンバーの間に決定的な亀裂を生んでしまう。

 
出演: 横浜流星、中尾暢樹、瀬戸利樹、岩谷翔吾、菅原 健、小平大智、浅香航大、清水くるみ、唐田えりか、山本千尋、伊藤 歩
 
原作: 朝井リョウ「チア男子!!」(集英社文庫刊)
主題歌: 阿部真央「君の唄(キミノウタ)」(PONY CANYON)
監督: 風間太樹
脚本: 登米裕一
音楽: 野崎良太&Musilogue
制作プロダクション: AOI Pro.
配給: バンダイナムコアーツ/ポニーキャニオン 
© 朝井リョウ/集英社・LET’S GO BREAKERS PROJECT
 
2019年5月10日(金) 全員で、翔べ!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @letsgobreakers7
公式Instagram: @letsgobreakers7

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