映画『笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ』
合わせて人生2世紀分
世の中を見続けてきた2人を追った、命輝くドキュメンタリー
《ストーリー》
日本初の女性報道写真家・笹本恒子と、伝説の新聞記者・むのたけじ。同い年で、映画撮影時101歳の2人は100歳を超えてもなお現役のジャーナリストであり続けている。2人を突き動かす原動力は何なのか。戦争経験者としての体験、笹本氏が報道写真家になるまでの苦労と、明治から逞しく生きる女性たちの粋な生き様、むの氏が大学生たち若い世代に伝えた、力強いメッセージとは。2人の現在の生活の様子から、今に至るまでの生き方、考え方に迫ったドキュメンタリー。
《みどころ》
100歳を超えてもなお現役の笹本恒子とむのたけじの2人は、世の中を自分の目を通して見て、どうしたらもっと生きやすい社会になるか自分の頭で考えている。生涯を通して、自分の声で今の世を生きる人たちに呼びかけるという使命を、自らに課しているかのようだ。
笹本氏は、戦争の記憶の1つとして赤い紙について語っている。家の前の垣根に、赤くて小さな紙が落ちていた。拾ってみると黒い顔の下にバツが描いてある。家にいる母親に紙を見せると「そんな紙すぐに捨てなさい!」と怒られたという。「黒い顔にバツ」はドクロマークで反戦運動のビラだったのだ。その時、「何で人間同士で戦わなくてはいけないのだろう」と思ったという。
むの氏は、中国人だけが厳しい環境で働かされているのを見て、やはり「何で同じ人間なのに扱いが違うのだろう」と子供心に疑問に思ったと語っている。
女性の権利が低かった時代に笹本氏は、日本人女性として初めての報道写真家となり、笹本氏と同じ、明治、大正、昭和、平成と激動の時代の波を乗り越えてきた、美しく逞しく生きる女性達の写真をたくさん撮っている。写真を通して伝わる彼女達の生き様は、どんな状況下でも、自分たちの意見を持って、生きていくことの大切さを教えてくれている。
むの氏は、新聞記者として、日本が強い国だから戦争に勝っていると、国民に情報を流してしまったことに対して、けじめをつけると戦後に退社。その日から、週刊新聞「たいまつ」を自ら造り、家族で新聞を発行しては戦争の悲惨さを発信し続けてきた。「たいまつ」休刊後も、講演を行うなど、労力を惜しまず時間のある限り、少しでも多くの人に戦争から受けた痛みを伝え続けていた。
最後の最後までジャーナリストであり続けたむの氏は、映画制作中の2016年8月21日に亡くなった。
2人の生き方に共通するのは、生涯現役ということ。輝く瞳と明るい笑顔は、自分の足で人生を歩んできたから得られたもの。老いは決して怖いことではない。どう生きてきたかが大事だ。
そしてもう一つ、何にでも好奇心を持って生きるということ。まず、世の中のことを知ることが大事。疑問に思ったこと、やりたいと思ったことは遠慮せず声をあげる、やってみる。それが、自分自身の活力にもなり、周りに与えられるほどのエネルギーにもなる。その生き方を知ることが、戦争を知らない私たちにも、生きるヒントを与えてくれるのではないだろうか。
[文: 大石 百合奈]
映画『笑う101歳×2 笹本恒子 むのたけじ』予告篇
映画作品情報
第29回 東京国際映画祭(TIFF) 特別上映[ワールド・プレミア]
英題: Two Journalists: One Century
プロデューサー: 平形則安
音楽: 加古 隆
撮影: 中野英世
撮影: 海老根 務
編集: 荊尾明子
音楽監督・音響効果: 尾上政幸
出演: 笹本恒子、むのたけじ、谷原章介(語り)
2016年 日本 / 日本語 / カラー / 91分
製作: ピクチャーズネットワーク株式会社
配給: 株式会社マジックアワー、有限会社リュックス
© ピクチャーズネットワーク株式会社
2017年春、全国順次公開!
公式Twitter: @warau101_2