映画『KARATE KILL カラテ・キル』レビュー
映画 「KARATE KILL /カラテ・キル」

映画『KARATE KILL カラテ・キル』

“攻め続ける映画の拳”  

《ストーリー》  

寡黙でストイックなケンジ(ハヤテ)は、女優を夢見てロサンゼルスに留学した妹マユミ(紗倉まな)が音信不通になったことで不安を募らせ、渡米する。マユミはその頃、テキサス州エルパソ郊外の辺境にある謎の組織「キャピタル・メサイア」に捕らえられていた。そこには、教祖バンデンスキー(カーク・ガイガー)が経営する超高額の会員制違法サイトでインターネット中継される、本物の拷問や強姦、殺人のいけにえが世界中から集められていた。「空手で強くなって、絶対にマユミを守ってやるから」という幼い頃の誓いを胸に、ケンジは殺人空手を炸裂させる。

映画 「KARATE KILL /カラテ・キル」

《みどころ》

パルクール、アクロバットの演出も手がけるハヤテを主演に迎えたアクション活劇で、両親を亡くした空手家が、留学したまま失踪した妹を救うため、アメリカのカルト集団に殴り込むといった物語。

物語としてはシンプルだが、その中で見せる光武監督の手腕は観客を退屈させない。例えば観客に媚びたような守った創り方はしない。俺はこれをやりたいんだという突出した欲望、映画愛そのものが画面の隅々まで行きわたり、それがこちら側まで伝わってくるようだ。

映画 「KARATE KILL /カラテ・キル」

一見突飛な設定とも思える設定も、細部のこだわり、個性的なキャラクター、俳優陣の演技によってリアリティある作品に仕上げることに成功している。

光武蔵人監督の前作『女体銃/GUN WOMAN』においてもまさにそれが当てはまる。中でもそれを全面に感じられるのは、クライマックスのトレーラーの中での闘いのシーンである。

今にも『ロボコップ2』のケインが中から出てきそうな黒く大きなトレーラー。広大な土地を走るこのトレーラーの中で、ゲーム感覚で対戦相手を決められ、その相手と闘う主人公。このシーンだけでもシリーズ化して欲しいと思うほど迫力のあるシーンになっている。

映画 「KARATE KILL /カラテ・キル」

その小さい体に物凄いエネルギーを凝縮したかのようなハヤテのアクション、その不器用さ、亜紗美の存在感と美しさ、鎌田規昭の怪演、カルト集団の異様さ、国際俳優のカメオ出演、その全てが見どころといえるだろう。こんな映画はほかでなかなか観ることができない。

さらにこの映画は、初見よりも二度目が面白かった。その理由はおそらく、三度目を観ないとわからないだろう。

[ライター: 後藤 直樹]

映画『KARATE KILL カラテ・キル』予告篇

映画作品情報

映画 「KARATE KILL /カラテ・キル」

ゆうばりファンタスティック国際映画祭2014 審査員特別賞受賞作品

邦題: KARATE KILL /カラテ・キル
原題: Karate Kill
 
出演: ハヤテ、紗倉まな、亜紗美、鎌田規昭、デヴィッド・サクライ、カーク・ガイガー、カタリナ・リー・ウォーターズ、トム・ヴォス、北村昭博
 
監督・脚本: 光武蔵人
エグゼグティブ・プロデューサー: 久保直樹
プロデューサー: 岡崎光洋、柳本千晶
アクション監督: 田渕景也
撮影監督: 今井俊之
音楽: ディーン・ハラダ
編集: サム・K・ヤノ
製作・配給: マメゾウピクチャーズ
配給協力: エムエフピクチャーズ
2016年 / 日本 / DCP / 5.1ch / シネスコ / 89分 / 映倫区分: R15+
© 2016 TORIN,INC.

2016年9月3日(土)より、
シネ・リーブル池袋レイトショー他全国順次ロードショー!
 

映画公式サイト

この記事の著者

後藤 直樹俳優、ライター

映画を数日観ない日、それに関わらない日が続くと、体調が悪くなるという禁断症状が現れるほどの映画好き。
バック・トゥ・ザ・フューチャーは、土用の丑の日と同じくらいの感覚で観てしまう。
12月はダイハードシリーズとホームアローンが観たくなる。

★好きな映画
「ミッドナイト・ラン」(Midnight Run) [監督: Martin Brest 製作: 1988年/米]
「GO」 [監督: 行定勲 製作: 2001年/日]
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(Guardians of the Galaxy) [監督: James Gunn 製作: 2014年/米]

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