(原題:PLEASE STAND BY)
失敗も経験のうち、成長はその先にある!
映画『500ページの夢の束』が公開された。自閉症の主人公ウェンディは大好きな『スター・トレック』の脚本コンテストに向けて500ページの脚本を書き上げ、数百キロ離れたハリウッドまで届けに行く。そこに至るまでのさまざまな困難を描いた作品である。
ウェンディに扮するのは、『I am Sam アイ・アム・サム』や『宇宙戦争』で天才子役の代名詞となったダコタ・ファニング。他人とのコミュニケーションがうまく取れないウェンディを愛すべきキャラクターに作り上げた。ウェンディを支えるソーシャルワーカーのスコッティに『リトル・ミス・サンシャイン』のトニ・コレット、ウェンディを大切に思いながらも訳あって離れて暮らしている姉・オードリーに『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のアリス・イヴ。監督は『セッションズ』のベン・リューインが務めた。
ウェンディは家族と離れて施設で暮らす。理解あるソーシャルワーカーに支えられ、規則正しく落ち着いた毎日を送っていた。曜日によって決まった色のセーターを着て、バイト先には決められた道をきちんと確認しながら歩いて行く。具体的な説明はないが、ウェンディの生活から彼女が自閉症であることがわかる。
『スター・トレック』が大好きで、その知識では誰にも負けない。『スター・トレック』ファンがお金をかけて挑戦してきたトリビア知識対決も楽々クリア。ここで出てくる問題はかなりマニアックなレベルらしい。制作者の『スター・トレック』愛が伝わってくる。 そんなウェンディの目下の関心事は『スター・トレック』の脚本コンテスト。500ページもの渾身作を書き上げたが、トラブルが起きて、郵送では締切に間に合わなくなってしまう。そこで、自分で脚本を届けようと、ハリウッドまで数百キロの旅に出た。
ここから先はトラブルの連続。バスのチケット1枚を買うのにも苦労し、やっとバスに乗ったかと思えば、愛犬を同行していることがバレて、バスから降ろされる。しかし、途中下車したことで、ウェンディの状況がソーシャルワーカーのスコッティたちに伝わる。禍福は糾える縄の如し。いや、トラブルの方が多いので、禍禍福は糾える三つ編みの如しといった感じか。
それでもウェンディは締め切りに間に合わせようと勇敢に突き進む。不安な気持ちになると、作品の原題でもある「PLEASE STAND BY」という言葉をつぶやいて、自分を落ち着かせていた。これは「そのまま待機」という意味だが、『スター・トレック』でも使われていた。状況がわからないとき、カーク船長が乗組員へ出した指示である。人は不安になるとついつい焦って行動しがち。そんなとき、この「そのまま待機」と言って立ち止まってみるのもいいかもしれない。
ウェンディはたくさんの寄り道をしながらも、何とかハリウッドにたどり着く。これで安心と思って見ていると、最後の最後に危機に直面。しかし、ここに至るまでにさまざまな経験を積んだウェンディが見事な機転を利かす。
ウェンディはか弱き存在として、危険から守られ続けてきた。しかしそれではいつまで経っても成長しない。失敗することで人は学び、次のステージへと進んでいくのだ。
天才子役と言われたダコタ・ファニングも24歳。ウェンディが大きな一歩を歩み出したように、ダコタ・ファニングも大人の女優としてますますの活躍が期待される。今後がとても楽しみだ。
ところで、本作では『スター・トレック』だけでなく、ダコタ・ファニングが出演した『宇宙戦争』へのオマージュもある。腕を抱くように丸くして「この中は自分だけの場所。ここは安全。何も怖いことは起きない」と言うのは、『宇宙戦争』でダコタ・ファニング演じるレイチェルを落ち着かせるために兄が言ったおまじない。これも「PLEASE STAND BY」同様、使えそうだ。
映画『500ページの夢の束』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》『スター・トレック』が大好きで、その知識では誰にも負けないウェンディの趣味は、自分なりの『スター・トレック』の脚本 を 書くこと。自閉症を抱える彼女は、ワケあって唯一の肉親である姉と離れて暮らしている。ある日、『スター・トレック』脚本コン テストが開催されることを知った彼女は、渾身の作を書き上げるが、もう郵送では締切に間に合わないと気付き、愛犬ピートと一緒にハリウッドまで 数百キロの旅に出ることを決意する。500ページの脚本と、胸に秘めた“ある願い”を携えて── |
製作: ダニエル・ダビッキ、ララ・アラメディン
新宿ピカデリーほか全国ロードショー!