
映画『トランジット・イン・フラミンゴ』
山下リオ × 祷キララ インタビュー
冷蔵庫を背負うヘンテコな旅で見つけた、嘘のない瞬間
第8回なら国際映画祭の映画製作プロジェクト「NARAtive2024」から誕生した映画『トランジット・イン・フラミンゴ』が、5月15日(金) より新宿武蔵野館、Strangerほか全国で順次公開される。

本作は、恋人に置いていかれた主人公・サエ(山下リオ)、地元を離れられないリュウタロウ(細川岳)、そして冷蔵庫を背負って現れた物語のキーパーソン・アカリ(祷キララ)という、偶然出会った3人が「フラミンゴ」を探して旅をする、少し不思議で温かいトランジット・ストーリーだ。
今回、主演を務める山下リオと、物語の鍵を握る祷キララの二人に、脚本を読んだ時の驚きから、撮影地・奈良県宇陀市でのエピソード、そして二人が「嘘がなかった」と振り返る濃密な撮影の日々について、たっぷりと語ってもらった。
「冷蔵庫を背負う」という異彩を放つ存在感が、日常のスパイスになる
物語は、主人公・サエ、リュウタロウ、アカリの3人が、一台の冷蔵庫と共に奈良県宇陀市を彷徨う姿を映し出す。その設定は一見突飛だが、スクリーンの中では不思議なリアリティを持って存在している。
―― 脚本を初めて読んだ際、「冷蔵庫を背負ってフラミンゴを探す」という独創的な設定をどう受け止めましたか?
山下: 正直、脚本を読んだ時は「大丈夫かな?」という不安も大きかったです(笑)。大きな事件が起きるわけではなく、人物像や細やかな空気感が大切になる作品だと思ったので、完成形が上手く予想できなくて。撮影地の観光PR映画のようになってしまわないかという危惧もあり、監督とは事前にお話をさせていただきました。でも、堀内監督は若いですけど明確なヴィジョンを持っていて、撮りたいものが意思としてハッキリと感じられたんです。役者同士の化学反応を信じて身を委ねるのがベストだと思い、期待半分、不安半分でクランクインしました。
祷: 私は堀内監督が描こうとする「大きなドラマは起こらないけれど、日常生活と地続きにある小さな心の変化」というテーマがすごく好きでした。脚本を読んだ時、とりとめもない会話が羅列されていることで生まれる独特の空気感が想像できたんです。その空気感を成立させるためには、自分自身のいびつな部分を解放して、さらけ出す必要があると感じていました。
―― 劇中でアカリが冷蔵庫を背負って現れる姿は、非常に鮮烈な印象を残しますね。
山下: 映像的にすごく面白いですよね。ドラマとしての大きな波はないけれど、あの冷蔵庫という異質なものが画面に居続けることで、観ている人にとってのスパイスになるんじゃないかと思いました。でも、いざ現場でアカリが冷蔵庫を背負っている姿を見たら、意外と驚かなかったんです(笑)。「しっくり来てるな」って。まさに「冷蔵庫女優」の誕生だなって思いました。
祷: 本当に、現場では普通に受け入れてくれましたよね(笑)。
山下: ええ(笑)。「えっ?」とは思うけれど、どこかしっくり来ている。その絶妙なバランスがこの映画の面白さなんだろうなと感じました。

「自分自身を役に乗っ取られていくような感覚」嘘のない時間が刻まれた現場
本作は長回しのシーンが多用され、役者たちの呼吸や微細な感情の変化が丁寧に切り取られている。山下は、この現場での体験を「役が憑依するとはよく言いますが、私自身が役を乗っ取っていくような感覚になる稀有な現場でした」と振り返る。
―― 本作は長回しのシーンが印象的なのですが、実際に現場で演じられてみて、いかがでしたか?
山下: あの空間には、嘘が何一つなかったです。「よーい、はい」が始まってからの場所に無理がなくて、自分の感情なのか、サエの感情なのか分からなくなるほど自然にその場にいられました。まさに、自分自身を役に乗っ取られていくような感覚、というか。知らない間に撮られていた、という感覚に近いかもしれません。
祷: 堀内監督は私たちのフィーリングをすごく信頼してくれていて、細かなオーダーもほとんどなかったですよね。
山下: そう。だからこそ、名前も知らない相手と一緒にいる居心地の良さをリアルに感じられました。現代社会では壁を作ったり、自分を隠したりするのが当たり前ですけど、あの旅の中では徐々にその壁が剥がれていった。特別なことは何も起きないけれど、その壁が崩れていくこと自体が、この映画における一番大きな出来事だった気がします。

祷: 私も、アカリが親友のキョンちゃんを失ったあとの罪悪感など、直接は描かれていない背景を自分なりに考えて演じていました。でも現場に行くと、宇陀の景色や3人の空気感に助けられて、自然と役として生きることができました。

山下: 宇陀の景色は本当に力がありましたよね。私がただ眺めていて、ポロっと涙が出るシーンがあるんですけど、台本を読んだ時は正直「これ泣けないわ……」と思っていたんです(笑)。
でも実際に行ってみると、感じるものがあった。全ての要素が合わさった瞬間瞬間のものが詰まった映画だと思います。

宇陀での濃密な時間と、深まった3人の絆
撮影中、キャストたちは奈良県宇陀市に滞在し、濃密な時間を共にした。主演の二人にとっても、この旅は忘れられない記憶となっている。
―― お二人は今回初共演ですが、お互いの印象はいかがでしたか?
山下: 祷さんは佇まいからしてお洒落だし、「映画的女優さん」という印象でした。難しい役どころを突飛に見せず、馴染ませてしまう。年齢は私よりずっと若いですけど、現場では堂々としていて、本当に頼もしかったです。
祷: 私にとって山下さんは、シーンの強度をグッと引き上げてくれる存在でした。ごまかすことなく、本音で向き合い続けている。そんな山下さんだからこそ、サエというキャラクターをあんなに魅力的に生きることができたんだなと感じました。

―― 撮影を通じて、距離感もかなり縮まったようですね。
山下: 現場でよく3人でご飯を食べに行きましたよね。私が自車で現場に来ていたので、(撮影が休みの日には)2人を誘ってちょっとしたショートトリップに行ったり。祷さんは落ち着いているけど、お酒を飲むとすごく可愛いくて安心しました(笑)。
祷: 宇陀のスナックで監督やスタッフさんたちも交えて飲んだことがあったんですけど、私、普段はそんなに酔わないのに、その時はすごく酔っ払ってしまって。それだけあの現場が安心できる場所だったんだと思います。翌日、細川さんから「昨日、山下さんと祷さんが2人で変な踊りをしながら部屋に消えていったよ」って言われて、本当に仲良くなれたんだなって嬉しくなりました(笑)。

―― 最後に、特にお気に入りのシーンや注目してほしいポイントを教えてください。
山下: 私は3人で笑っているシーンが全部好きです。特にお酒を飲んで爆笑しているシーンは、細川さんのセリフもほぼアドリブ。今の私たちがもう一度やろうとしてもできない、純粋な心で笑っている瞬間が映っています。
祷: 私もあの家で飲んでいるシーンが好きです。大笑いした後にふと静かになって、タバコを吸うサエとリュウタロウと目が合って、また笑けてきちゃう。あの瞬間の空気は、ぜひスクリーンで感じてほしいです。

山下: 嘘のない瞬間が積み重なった、不思議な魅力がある映画です。2年経った今でも、まるで全てが本当に起こったことのように、奈良の景色や匂い、そして二人の表情が懐かしく新鮮に記憶が蘇ってきます。皆さんにとっても、何故だかその場にいたような感覚にさせてしまう、不思議な魅力があるはずです。ぜひ、フラミンゴを私たちと一緒に探しに来てください。劇場でお待ちしています。

プロフィール
山下 リオ (Rio Yamashita)1992年10月生まれ、徳島県出身。
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祷 キララ (Kirara Inori)2000年3月30日生まれ、大阪府出身。 2026年5月22日(金)〜5月31日(日) シアタートラムにて舞台「玉田企画『光る』」へ出演。
[ヘアメイク: 山口 恵理子 / スタイリスト: 和田 ミリ]
[トップス: PEN SESAME CLUB / ラップスカート: ROLF EKROTH(BOW INC.) / シューズ: ADIEU(BOW INC.)] |
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映画予告篇
映画作品情報

《ストーリー》一緒に移住してきた恋人に置いていかれたサエ。 地元から離れられないまま日々を過ごすリュウタロウ。 冷蔵庫を背負い、親友キョンちゃんとの思い出を探しにきたアカリ。 見知らぬ3人が偶然出会い、1台の冷蔵庫と共に、フラミンゴを探すことに。銭湯に行ったり、スーパーに行ったり、あてもなく歩きながら過ごすうちに、3人は少しずつ本音をこぼしていく。 迷って、笑って、ときどき立ち止まりながら、それぞれの停まっちゃった時間が少しずつ動き出す。偶然が重なって始まった、ちょっとヘンテコであったかい、人生のちいさな交差点での物語。 |
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