森ガキ侑大監督 インタビュー
こだわりを見せた“斬新な映像表現”に迫る!隠された監督の思いとは!?
霊が〈祓える男〉冷川と〈視える男〉 三⾓は “除霊”という特殊能力を使い、怪奇事件の解決に挑んでいく。連続殺人事件と呪いの謎に隠された真実に、心霊探偵バディはたどり着けるのか――?
岡田将生×志尊淳W主演による映画『さんかく窓の外側は夜』が、1月22日(金)より全国公開される。
原作は、「HER」「ドントクライ、ガール」で「このマンガがすごい!2011オンナ編」の1位・2位を独占という快挙を成し遂げた今注目の女性漫画家・ヤマシタトモコの「さんかく窓の外側は夜」。累計発行部数が130万部を超えるベストセラーコミックスを実写映画化した。
主人公の冷川理⼈を演じるのは、人気俳優・岡田将生。三⾓康介役には若手実力派俳優として活躍中の志尊淳。ヒロインの“呪いを操る”女子高生・⾮浦英莉可役に平手友梨奈、霊をまったく信じないリアリストの刑事・半澤を滝藤賢⼀が演じるなどキャスト陣にも注目が集まる。
そして、監督を務めたのは、CMディレクターとして、グラブル、資生堂、ソフトバンク、日清カップヌードル、JRA、ENEOSなど数々のCMを手掛け、CANNES LIONS 2016 ブロンズ賞、ACCシルバーなど広告賞を多数受賞し、初の長編映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』(2017年)で第39回ヨコハマ映画祭の森田芳光メモリアル新人監督賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ている森ガキ侑大。
前作とは一転、斬新な映像表現を創り上げた森ガキ監督に話を聞いた。
人間と幽霊、それぞれの色に込めた意味とは!?
—— 前作とは違うタイプの映画を撮りたかったと伺いました。今作へはどのように臨んだのでしょうか?
この作品の企画をいただいた時、見たことのないような描写や衣装、音楽だったり、変わった感性を表現できる企画だと感じました。
前作の『おじいちゃん、死んじゃったって。』は大衆に向けた映画だったので、今回は若者に支持してもらえるような、新しいスタイルに挑戦したいと思いました。
今作では、化学反応が起きたような、新しい表現が出来ていると思います。
—— 衣装はどのようなところにこだわったのでしょうか?
宗教団体の衣装では、宗教のキーカラーを白か紫か黒で悩みました。最終的には、メインキャストの3人の世界観を黒で統一していたので、そことギャップをつけるために紫に決めました。
幽霊の色にもこだわっています。
—— 幽霊の描き方が原作と大きく異なっていますが、なぜ映画であのように幽霊を描いたのでしょうか?
この世の中の人たちを“生きている”という意味で黒に統一して、あの世の人たちを白に統一しています。人間は、幽霊よりも邪念とか裏切りとかががあって怖いという意味で黒、それに対して幽霊は浄化しているという意味で白で表現しました。黒には、“人間の方がよっぽど怖い”という思いを込めています。
—— 劇中で 「人間のほうがよっぽど怖いですよ」というセリフもありましたが、“人間の怖さ”を表現する上で意識したことはありますか?
現代社会において“呪い”はどのように表現すればリアリティが出せるのかと考えました。SNSを描いたシーンでは、呪いのリアリティを出すために、誹謗中傷などの“言葉”が現代の呪いや穢れになるのではないかと思って描きました。共感してもらえるように、SNS上で問題になっている誹謗中傷をモチーフにしました。
他にも、三角は幽霊が視えて違う世界にいるけれど、家に帰ると味噌汁が出てくるような家庭にいたり、ヒウラエリカは、同年代の女子高生がわちゃわちゃして楽しんでいる姿を遠くから見ていたりと、現代的な日常を表現できたらと思いました。
“さんかく窓”のアイデアはファッションショーから?!
—— 黒い涙を流しているシーンが印象的でした。黒い涙にはどのような意味があるのでしょうか?
黒い涙で穢れが体から出てくることを表現しようと思いました。普通の涙ではなく、特徴的な呪いや穢れが体に入っていて相手に届く、という意味を表現しています。
—— 除霊の際に現れる“さんかく窓”は、どのようにして考案されたのでしょうか?
2人の世界観を変わった方法で表現をしたいなと思っていた時に、ファッションショーの撮影で三角形の蛍光ランプを見てインスパイアされました。それを取り入れて映画の表現に持っていきました。
原作のキャラクターとの共通点は“特殊能力”を持っていること
—— W主演を務めた岡田さんと志尊さんのキャスティングについてはどのように決められたのでしょうか?
プロデューサーの方達と一緒にチームを組んで、相談しながら決めていきました。
—— 非浦英莉可を演じた平手さんについてはどのように選ばれたのでしょうか?
原作を読んでいる時にヒウラエリカ=平手友梨奈だと感じました。“これは平手さんしかいない”と思い、決めました。
メインキャストの岡田さん、志尊さん、平手さんの3人は、“芸能人”という特殊な能力を持っているじゃないですか。プライベートがなかったり、メディアに追われたりしてしまうので、なかなか腹を割って本音を言える場所って少ないと思います。なので、それぞれ能力を持っている3人(三角・冷川・英莉可)と同じ様にどうしても孤独になりつつあり、分かり合える人が少ないというところがリンクしていると感じました。
—— 三角のキャラクターは原作とは違い、映画では弱々しいイメージから徐々に強くなってく姿が印象的でした。
最初から特徴がないというよりは変化があった方がいいのかなと思いました。“成長があった方がいいよね”ということで、共感できるように人間の変化を見え隠れさせました。
志尊くんは勘もいいので、こういう弱い面を持つ役も合っていたと思います。
—— キャストの方々の表情が印象的でした。表情を撮影する上で心掛けたことはありますか?
冷川と三角は対比して撮りたいと思っていました。三角は人に興味があって、人に関心的なことをしているけれど、冷川の場合はそういう関係を全く理解していない。そのお互いの穴埋めを表現できるように、バディ感は意識しました。
ヒウラエリカの場合は、孤独で暗い感じの表情だけれど、後半は少しずつ心を開いて人と話すようになっていく姿を表現したいと思いました。
—— 今後はどのような作品に挑戦していきたいですか?
出身地である広島を題材にした作品です。あとは時代劇にも興味があります。人の葛藤を描きたいです。
—— 最後に、映画の公開を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
エンターテイメント性もあるけれど、挑戦的な表現ができたと思っています。誰もが楽しめる作品になっていると思うので、ぜひ多くの人に観てほしいです。
[インタビュー: 田上 結菜 / スチール撮影: Cinema Art Online UK]
プロフィール
森ガキ 侑大 (Yukihiro Morigaki)1983年生まれ。広島県出身。グラブル、資生堂、ソフトバンク、日清カップヌードル、dマガジン、DAIHATSU、JRAなどのCMを手掛け、CANNES LIONS 2016 ACCシルバーなど多数受賞。2018年、初の長編映画『おじいちゃん、死んじゃったって。』で第39回ヨコハマ映画祭 森田芳光メモリアル新人監督賞を受賞したほか、海外映画祭でも高い評価を得る。「坂の途中の家」(WOWOW)、「時効警察はじめました」(EX)、「満島ひかり×江戸川乱歩」シリーズ(NHK BS)などテレビドラマでも活躍。 |
映画『さんかく窓の外側は夜』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》書店で働く三⾓康介(志尊淳)は、⼀⾒普通の⻘年だが、幼い頃から幽霊が視える特異体質に悩まされていた。ある⽇、書店に除霊師・冷川理⼈(岡⽥将⽣)がやってくる。「僕といれば怖くなくなりますよ」の⼀⾔で、三⾓は冷川と除霊作業の仕事を共にすることに。そんな中、⼆⼈は刑事・半澤(滝藤賢⼀)から、ある連続殺⼈事件の話を持ち掛けられる。調査を進めるうちに、⼆⼈はある⾔葉にたどりつく――。 「ヒ ウ ラ エ リ カ に . . . だ ま さ れ た . . . 」 この事件には、呪いを操る⼥⼦⾼⽣・⾮浦英莉可(平⼿友梨奈)の影が潜んでいたのだ。 果たして〈ヒウラエ リカ〉とは何者なのか︖ 事件との関係は? 死者からの謎のメッセージを解き明かそうとする冷川と三⾓の⼆⼈は、やがて⾃⾝の運命をも左右する、 驚愕の真実にたどり着く――。 |
脚本︓ 相沢友⼦
© Tomoko Yamashita/libre
公式Instagram: @sankakumadoeiga