主演・上原実矩 インタビュー
初長編映画主演作品、遂に公開へ!
“自分の生きて行く道を見つけた”表情で魅せる
第22回TAMA NEW WAVE、第15回田辺・弁慶映画祭の双方でグランプリを獲得した映画『ミューズは溺れない』が9月30日(金)に公開される。
誰もが抱えている高校生の葛藤、そしてアイデンティティに揺れる様子をリアルに描いた青春映画の主演を務めたのは、短編映画『この街と私』で注目された上原実矩。多くの悩みを抱えながらも自分自身を探し求めていく美術部員の朔子を演じた。
第22回TAMA NEW WAVEコンペティションでベスト女優賞を受賞し、今後の活躍も期待されている彼女に、初の長編映画主演作品となる『ミューズは溺れない』について話を聞いた。
“想像していなかったことが起こった”3年越しの公開へ
—— 撮影から3年が経った今、長編映画での初主演となる今作が劇場で上映されると決まった際の率直な気持ちを教えてください。
撮影していた当時は、こうしてテアトル新宿という大きい劇場で公開していただけるとは思ってもいなかったので、たくさんの人に観に来て頂けたら嬉しいなと思っています。この3年の間で作品も完成して、TAMA NEW WAVE、田辺・弁慶映画祭という二つの映画祭で賞をいただいて、本当に想像していなかったことが起こって未だに驚いています。
—— 実際に3年前の作品を見返してみた感想はいかがですか?
当たり前のことなんですけどずっと自分が出ているので、どういう視点で観たらいいのか、少し恥かしい気持ちもありました。自分だから思う“ここをこうすれば良かったな”とか、どうしても気になることも多かったです。でも、作品を観てくださった方に“良かったよ!”とかすごく好意的な感想をいただくことが多かったので、それは自信になりました。
—— 以前インタビューした短編映画『この街と私』では社会人の役でしたが、今作では高校生役となります。女子高生の役を演じて何か感じたことはありますか?
まだ二十歳になったばかりだったので、自分自身も少し十代の感覚は残っていたこともあって、脚本を読ませていただいたときに違和感があまりなかったんです。すごく真っ直ぐに読めたというか、朔子の心情描写がすんなりと入ってきました。高校生だとか十代だとかを気にせずに、感じたそのままで演じることができたと思います。
日々迷いながら作り上げていった主人公・朔子への共感
—— 朔子は進路や人間関係など多くの悩みを抱えていましたが、どのようにして役作りをされたのですか?
全く同じ悩みを抱えていたという訳ではないんですけど、悩みの種、芯みたいなものは共通認識として持っているものも多かったんです。でも朔子はすごく迷っているというか、いろんな人の意見の中でフラフラと自分を探している状態だったので…自分の共通認識があるところを頼りに、現場では一緒に迷いながら日々撮影していきました。
脚本も5年前くらいから監督が温めていたオリジナル作品という話を聞いたので、朔子に限らず随所に監督の想いを感じました。なので監督と話し合いながら、監督が何を考えているのか、何を思っているのかを感じながら役作りをしていきました。撮影中もその都度監督と話しながら、本当に現場で作り上げていった印象はあります。
—— 冒頭で朔子が海に溺れたシーンを描いた絵がとても印象に残っています。あのシーンは実際に海に入って撮影されたのですか?
そうです!スタッフの方がまず安全確認も兼ねて飛び込んでくれて、“こんな感じです!”みたいな(笑)。それから本番の一発であのシーンは撮影しました。
—— 非常に完成度が高い絵でたが、作品をご覧になった感想はいかがでしたか?
あまり自分を描いてもらうことってなかったので、すごく嬉しい気持ち反面、悪い姿じゃないですか。なので、少し複雑な気持も反面…そこは朔子に同情しましたね。私は油絵とか全然描けないので凄いなと。でも凄いのに複雑、みたいな(笑)。朔子と同じ気持ちだったかもしれないです。
—— 劇中に登場する、身の回りの色々な物を使って作られていく船も印象的でした。
撮影期間中、ラストシーンで完成品を持っていくために家の裏でずっと作っていたんです。なので毎日現場に行く度に着々と船が出来上がって行く様子を見れました。解体するシーンの順に合わせて、船も順番に作られていったらしいので。日々成長して行く船を見ながら、“朔子はこういうのを作りたいと思っているんだな”という発見もありました。
“光を見つけた”ラストシーンの表情へのこだわり
—— 作品を通して、私自身上原さん演じる朔子の一つ一つの表情にとても引き込まれました。どのようなことを考えて表情を作っていたのでしょうか?
作品を通して、最後には朔子が“自分を見つけた”という印象になればいいなと思っていたので、そこを目指して作っていきました。朔子のちょっと垢抜けないところや、モヤモヤと悩んでいるところを一つ一つネジを外していくじゃないですけど、解体していくようなイメージで演じていました。そういう気持ちや表情の変化だったりをつけられたらいいなと思っていました。
—— 作品の後半に連れ、どんどん柔らかい表情になっていく朔子がとても印象的でした。
作品の中で、“自分の生きて行く道を見つけた”、“光を見つけた”みたいな印象になればいいなと思っていました。冒頭の朔子はずっと迷っていたので、後半に連れて表情を開いていけるように意識していました。
これからは「違う景色を見ていきたい」
—— 短編に続き長編の主演映画が公開されましたが、これから女優として挑戦していきたいことを教えてください。
“これに出たい!”とかやりたいこと、達成していきたいことはありますが、それを目指すというよりは、そこに行くために今目の前にあることに真剣に向き合えたらいいなと思っています。今までももちろん真剣に向き合ってきたんですけど、最近また自分の中で“視野が新しく広がりそうだな”と感じているんです。これからは毎作品ごとに、何か自分の中で発見があればいいなと思っています。その“違う視点が見えて深まりそうだな”という感覚をもう少し自分の中で掴んでいくことが自分の中での今の最大の課題です。
—— “視野が広がりそうだな”と感じたきっかけは何かあったのでしょうか?
今まではお芝居のことだったり日常生活のことだったり、自分の中で考え込んでしまうことが多かったんです。人に答えを聞いたり頼ったりすることがうまくできなくて、自分の中で答えを出しがちだったんですけど、今は“もうちょっと柔軟に対応できそうだな”って思う自分がいて。もう少し人に頼ったり、いろんな意見を取り入れていった先にまた新しいものが見えてくるんじゃないかなと思っています。なのでこれからは柔軟に対応をしていって、今までとは違う景色が見れたらいいなと感じています。
—— 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆様にメッセージをお願いします。
朔子と同年代の中高生から大人まで、多くの人に響く作品になっているなとすごく感じているので、年齢問わず多くの人に観ていただきたいです。作品自体も監督の頭の中というか愛情が随所に詰まっているので、そのあたりも感じていただけたらと思います。
プロフィール
上原 実矩 (Miku Uehara)1998年生まれ、東京都出身。映画『君に届け』(2010年)で俳優デビュー。独特な個性から、『暗殺教室』(2015年/羽住英一郎監督)、『来る』(2018年/中島哲也監督)や『⻘葉家のテーブル』(2021年/松本壮史監督)など多数の映画やドラマ、大手企業広告に出演。短編映画『この街と私』(2022年/永井和男監督)で映画初主演を務めた。本作で第22回TAMA NEW WAVE コンペティションベスト女優賞を受賞。 |
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映画『ミューズは溺れない』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》美術部に所属する朔⼦は、船のスケッチに苦戦している最中に誤って海に転落。それを⽬撃した⻄原が「溺れる朔⼦」の絵を描いて絵画コンクールで受賞、朔⼦の絵は学校に飾られるハメに。 さらに新聞記者に取材された⻄原は「次回作のモデルを朔⼦にする」と勝⼿に発表。朔⼦は、悔しさから絵の道を諦め、代わりに壊れた鳩時計などを使って造形物の創作に挑戦するが、再婚した⽗と臨⽉の義⺟、そして親友の栄美と仲違いしてしまう。引っ越しと⾃宅の取り壊し⼯事が迫る中、美術室で向き合う朔⼦と⻄原。”できること“を⾒つけられないことに焦る朔⼦は、「なぜ⾃分をモデルに選んだのか︖」と⻄原に疑問をぶつける…。 |
第15回田辺・弁慶映画祭 弁慶グランプリ受賞