映画『俳優 亀岡拓次』(The Actor) レビュー
俳優 亀岡拓次

映画『俳優 亀岡拓次』

「カット!」の声がかかるまで、死ぬ気で生きる映画バカの日常

《ストーリー》

亀岡拓次(安田顕)は37歳独身。職業は俳優だ。泥棒、チンピラ、ホームレス・・・演じた役は星の数ほど。ただし、脇役。たった1カットのために、昨日は東、今日は西。ロケ先の夜はしこたま酒をのむ。そして居酒屋を手伝う出戻り若女将・安曇(麻生久美子)に恋をする。オファーがあればどこへでも行き、どんな役でも嫌がらずに受ける亀岡は、監督やスタッフに重宝がられていた。しかしただの「重宝」に終わらぬものを、亀岡は持っていたのである。「最強の脇役」と言われる亀岡拓次はいったいどんな奇跡を起こすのか? 脇役から抜け出す一発逆転はあるのか? そして恋のゆくえは?

《みどころ》

プライベートは自堕落の極致を行く亀岡拓次。一見、廃人である。常に酒を飲み、ろれつが回らず、朦朧としている。誰の目にもアル中だ。しかしいったん撮影に入り、フィクションの役になりきると、がぜん生気を取り戻す。

ファインダーの中でこそ、濃密な空間をはつらつと生きる亀岡拓次は、骨の髄まで役者なのかもしれない。亀岡の「奇跡の演技」は、映画の魔力に取り憑かれた人々の言うに言われぬ至福の一瞬をつくりだす。ずっと映像作品にこだわっていた亀岡が、舞台の仕事を受けるエピソードが素敵だ。劇団のスター女優(三田佳子)のオーラがハンパない。舞台用の身体を持たぬ亀岡の弛緩しきった体や咽喉を鍛えなおし成長させながらも、彼が根っからの映画人であることを見逃さない。ユルい笑いをふんだんにちりばめつつ、映画人の誇りと向上心、そして映画への愛を描いた作品である。

[ライター: 仲野 マリ]

映画『俳優 亀岡拓次』予告篇

映画作品情報

第28回 東京国際映画祭(TIFF) アジアの未来部門出品
第39回 ヨーテボリ映画祭 FEM KONTINENTER 部門出品
 
邦題: 俳優 亀岡拓次
英題: The Actor
監督/脚本: 横浜聡子
原作: 戌井昭人
音楽: 大友良英
撮影: 鎌苅洋一
照明: 秋山恵二郎
録音: 加藤大和
出演: 安田 顕、麻生久美子、宇野祥平、新井浩文、染谷将太、杉田かおる、工藤夕貴、三田佳子、山﨑 努
 
2015年 日本 / 日本語 カラー / 123分
配給: 日活株式会社

© 2016 『俳優 亀岡拓次』 製作委員会

2016年1月23日(土)より、北海道先行ロードショー!
2016年1月30日(土)より、テアトル新宿ほか全国ロードショー!
 

映画公式サイト

公式Twitter: @kameokatakuji
公式Facebook: @kameokatakuji

この記事の著者

仲野 マリ映画・演劇ライター

映画プロデューサーだった父(仲野和正・大映映画『ガメラ対ギャオス』『新・鞍馬天狗』などを企画)の影響で映画や舞台の制作に興味を持ち、書くことが得意であることから映画紹介や映画評を書くライターとなる。
檀れい、大泉洋、戸田恵梨香、佐々木蔵之介、真飛聖、髙嶋政宏など、俳優インタビューなども手掛ける。
また、歌舞伎、ストレートプレイ、ミュージカル、バレエなど、舞台についても同じく劇評やレビュー、俳優インタビューなどを書き、シネマ歌舞伎の上映前解説も定期的に行っている。
オフィシャルサイト http://www.nakanomari.net

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