- 2015-11-29
- 映画レビュー, 映画作品紹介, 第28回 東京国際映画祭
映画『イザベラ・ロッセリーニのグリーン・ポルノ』
科学です。でもエロスです。とにかく明るいSexの話。
《ストーリー》
世紀の大女優イングリット・バーグマンを母に、名監督のロベルト・ロッセリーニを父に持つイザベラ・ロッセリーニ。自らも女優として活躍するイザベラは、幼いころから「生物の生殖」について、興味を持っていたという。彼女が自らが動植物の生殖行動を演じるコメディタッチのショートフィルムはウェブ上で公開されるや評判を呼び、発信された40に及ぶ作品をベースに、4大陸35都市のワールドツアーをするまでになる。世界を驚かせ、そして人々を笑顔にしつつ「性」の多様性を問う「グリーン・ポルノ」とは、いったいいかなるものなのか? そして彼女は、なぜ「性」にこだわるのか?
《みどころ》
とにかく爆笑の連続だ。教育テレビの子ども向け工作番組のような、画用紙と布とヒモでできた紙芝居のような世界を想像してほしい。紙のお面やら羽根やらをつけたイザベラが、「科学的な」数字を並べながら、昆虫や海洋生物や植物になって、彼らの「気持ち」をユーモラスに代弁していく。動物や植物やバクテリアや昆虫の「生殖」の話。そうか、だから「グリーン」か。きっと理科の時間で観たような・・・などと安心してタカをくくっているとタイヘン! 映像はコミカルだが、話はけっこうストレートなエロティック・フィルム、そう、「ポルノ」とついているのはダテじゃない!
最初は生物のトンデモSEXをただ紹介しているように見えるが、話は次第に人間との共通部分に。イザベラは人間の、それも女性の視点から彼らのSEXをひもといていく。生殖行為は男性がイニシアチブをとっていると思いがちだけれど、女性は決して消極的なのではなく、実は「好きな人のタネしか受け入れないように誘導している」「選んでいるのは女性」など、など。
そして彼女がもっとも訴えたいのは「男と女だけが性なのか」という問題。「ノアの方舟」には様々な動物が1つがい(雌雄)ずつ乗せられたことになっているけれど、地球上には生殖交尾のときに雌雄が初めて決まるものも多く、あるいはオスがいなくても生殖可能な生物もいて、「ノアはいったい彼らをどのように乗せたのか」という非常にシニカルな問いかけをしている。
あるいは、人間が「あの動物は下等、あの動物は賢い」という思い込みを笑い飛ばすかのように、彼らの「性癖」を暴露するところもある。同性愛、自慰行為など、キリスト教倫理が厳しく糾弾してきたことが、実は生物界ではそれほど奇異なことではないことを、コメディタッチで説明するところが真骨頂だ。
「生殖」には、「性交の歓び」とともに「DNAの継承」という側面がある。決して「チョー美人」ではないイザベラが、世紀の大女優の子どもとして生まれたために背負った苦しみはいかばかりだったろう。同じ女優の道を歩みながら、親のDNA の呪縛から解き放たれ、自分らしく生きる道をみつけるまでのイザベラの葛藤が、このフィルムたちをつくったのではないかと思われるふしがある。まさに「性」は「生」に通じる。だからこそ、「グリーン・ポルノ」はLGBTへのエールにもなっているのではないだろうか。
[ライター: 仲野 マリ]
映画作品情報
原題: Isabella Rossellini’s Green Porno Live!
監督: ジョディ・シャピーロ (Jody Shapiro)
プロデューサー: リック・ギルバート (Rick Gilbert)
プロデューサー: モリー・オキーフ (Molly O’Keefe)
エグゼクティブプロデューサー: イザベラ・ロッセリーニ (Isabella Rossellini)
エグゼクティブプロデューサー: ローラ・ミカルチーシン (Laura Michalchyshyn)
エグゼクティブプロデューサー: 鷲尾賀代
エグゼクティブプロデューサー: ジェイソン・ブラック (Jason Black)
エグゼクティブプロデューサー: リンジー・ウェブスター (Lindsay Webster)
編集: ステイシー・フォスター (Stacie Foster)
編集: チェルシー・スミス (Chelsea Smith)
出演: イザベラ・ロッセリーニ (Isabella Rossellini)
藤原紀香(声の出演/日本語吹き替え)
2015年 / アメリカ=日本 / 日本語 / カラー / 65分
配給: 株式会社WOWOW
© Photo Jody Shapiro