映画『フロム・ノーウェア』(From Nowhere) レビュー
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映画『フロム・ノーウェア』
(原題:From Nowhere) 

健全さよりも悪、個人よりも法的証明

《ストーリー》

国籍がないことに気がついてから、日常が変わる。舞台はアメリカNYのブロンクスにある高校だ。ドミニカとペルー出身の女生徒と、アフリカ系の少年の3人は、親が不法移民である。他の生徒と同じように、恋をし将来の夢を描き、卒業していくはずだった。しかし、不法滞在が公になれば強制送還されてしまう。学校からの協力をえ、3人は正規の滞在権を手にいれるべく動き出す。それぞれのまさかの結末が、観る者の心をかきみだす。

《みどころ》

各国が抱える難民問題。かつて移民により作られた国・アメリカも例外ではない。

滞在権を得るべく、敏腕の弁護士と若者3人は面談を繰り返す。弁護士が彼らに求めるのは、よい成績でも、健全な人間性でもない。強制送還されないための理由だ。本国にいる血縁者に、重度犯罪により服役中の者がいないか、一番の有効手段を手にいれるため動き出す内に、彼らは知りたくなかった、別の事実や現実に直面することになる。

友達とのちょっとしたいざこざで、警察に身分証明の呈示を求められたアフリカ系の少年。その時の、この世の終わりのような表情が印象的である。身分を証明するものがない心もとなさは、多くの人が味わったことがあるのではないか。そのうん十倍の不安を想像してほしい。

若者の運命が、身分証明1つで左右される理不尽さ、やりきれなさ、でもそれが現実だと静かに訴えかけてくる映画だ。

[ライター: 宮﨑 千尋]

 © No Place Like Films, LLC

映画『フロム・ノーウェア』(From Nowhere) 予告篇

映画作品情報

SXSW映画祭2016 ナラティヴ・スポットライト部門 観客賞受賞
第29回 東京国際映画祭(TIFF) ワールド・フォーカス部門 出品作品
 
邦題: フロム・ノーウェア(仮題)
原題: From Nowhere
 
監督: マシュー・ニュートン
プロデューサー・脚本・原作: ケイト・バレン
撮影監督: ジェイ・カイテル
編集: ベッツィ・ケーガン
プロダクション・デザイナー: マディソン・バージェス
コスチューム・デザイナー: ベゴーニャ・ベルジュ
音響: ウィル・ディグビー
 
出演: ジュリアン・ニコルソン、J・マロリー・マクリー、オクタビア・チャベス・リッチモンド、ラクエル・カストロ、チナサ・オグブアグ、シドニー・ボードワン
 
2016年 / アメリカ / 英語、スペイン語 / 90分 / カラー

© No Place Like Films, LLC

第29回 東京国際映画祭(TIFF) 公式サイト

この記事の著者

宮﨑 千尋ライター

一番古い映画に関する記憶は、姉と「天使にラブソングを...」ごっこをして遊んだこと。
10代後半でひとり暮らしを始めてから、ひとり映画にどっぷりはまっている。
映画館の独特な雰囲気を好み、休みの日にはミニシアターや小さなカフェで行われる自主上映にも足を運んでいる。

★好きな映画
『天使にラブソングを...』 (Sister Act) [監督: Emile Ardolino 製作:1992年/米]
『アバウトタイム~愛おしい時間について~』 (ABOUT TIME) [監督: Richard Curtis 製作: 2013年/英]
『シックスセンス』 (The Sixth Sense) [監督: M. Night Shyamalan 製作: 1999年/米]

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