- 2016-12-12
- 映画レビュー, 映画作品紹介, 第29回 東京国際映画祭
映画『フロム・ノーウェア』
(原題:From Nowhere)
健全さよりも悪、個人よりも法的証明
《ストーリー》
国籍がないことに気がついてから、日常が変わる。舞台はアメリカNYのブロンクスにある高校だ。ドミニカとペルー出身の女生徒と、アフリカ系の少年の3人は、親が不法移民である。他の生徒と同じように、恋をし将来の夢を描き、卒業していくはずだった。しかし、不法滞在が公になれば強制送還されてしまう。学校からの協力をえ、3人は正規の滞在権を手にいれるべく動き出す。それぞれのまさかの結末が、観る者の心をかきみだす。
《みどころ》
各国が抱える難民問題。かつて移民により作られた国・アメリカも例外ではない。
滞在権を得るべく、敏腕の弁護士と若者3人は面談を繰り返す。弁護士が彼らに求めるのは、よい成績でも、健全な人間性でもない。強制送還されないための理由だ。本国にいる血縁者に、重度犯罪により服役中の者がいないか、一番の有効手段を手にいれるため動き出す内に、彼らは知りたくなかった、別の事実や現実に直面することになる。
友達とのちょっとしたいざこざで、警察に身分証明の呈示を求められたアフリカ系の少年。その時の、この世の終わりのような表情が印象的である。身分を証明するものがない心もとなさは、多くの人が味わったことがあるのではないか。そのうん十倍の不安を想像してほしい。
若者の運命が、身分証明1つで左右される理不尽さ、やりきれなさ、でもそれが現実だと静かに訴えかけてくる映画だ。
[ライター: 宮﨑 千尋]
© No Place Like Films, LLC
映画『フロム・ノーウェア』(From Nowhere) 予告篇
映画作品情報
SXSW映画祭2016 ナラティヴ・スポットライト部門 観客賞受賞
第29回 東京国際映画祭(TIFF) ワールド・フォーカス部門 出品作品
第29回 東京国際映画祭(TIFF) ワールド・フォーカス部門 出品作品
邦題: フロム・ノーウェア(仮題)
原題: From Nowhere
原題: From Nowhere
監督: マシュー・ニュートン
プロデューサー・脚本・原作: ケイト・バレン
撮影監督: ジェイ・カイテル
編集: ベッツィ・ケーガン
プロダクション・デザイナー: マディソン・バージェス
コスチューム・デザイナー: ベゴーニャ・ベルジュ
音響: ウィル・ディグビー
出演: ジュリアン・ニコルソン、J・マロリー・マクリー、オクタビア・チャベス・リッチモンド、ラクエル・カストロ、チナサ・オグブアグ、シドニー・ボードワン
2016年 / アメリカ / 英語、スペイン語 / 90分 / カラー
© No Place Like Films, LLC