映画「作家、本当のJ.T.リロイ」ローラ・アルバート 来日インタビュー

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」ローラ・アルバート (Laura Victoria Albert) インタビュー

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」(Author: The JT Leroy Story)

作家、ローラ・アルバート来日インタビュー!

「あなたが抱えている秘密の量と同じくらいあなたは病んでしまう。しかし・・・」

自身の正体を偽ってその怒涛の人生を生きた小説家J.T. リロイことローラ・アルバート氏が語った、当時と現在の彼女の心境や、自分自身の問題に苦しむ人たちへのメッセージとは・・・!

さらに作品内で語られるキーパーソンの一人であるスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンについてもインタビュー。彼女は想像以上に明るく、気さくで、どんな質問にも真剣に熱心に自分の言葉を大事に答えてくれた。

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」ローラ・アルバート (Laura Victoria Albert) インタビュー

映画について

1996年アメリカで『サラ、神に背いた少年』という、母親とその恋人から虐待を受け、母親の真似をし女装の男娼として生きた過去を綴った自伝的小説が話題となった。その作者は謎の美少年作家、J.T.リロイ。彼はアメリカのあらゆる作家、ミュージシャン、俳優、デザイナーなどから熱狂的な支持を受けて、一気に時代の寵児となった。

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」(Author: The JT Leroy Story)

映画監督のガス・ヴァン・サントは『エレファント』の脚本を依頼、2作目の『サラ、いつわりの祈り』は女優アーシア・アルジェントによって映画化され日本でも上映され、アーシアとともに来日も果たした。

一躍スターダムにのし上がり、セレブの仲間入りを果たしたJ.T.リロイだったが、2006年NYタイムスの記事によって“J.T.リロイという人物は実在すらしない、その正体は40歳の女性、ローラ・アルバートだった”という暴露があり、事態は一変した。

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」(Author: The JT Leroy Story)

この作品は、ローラ・アルバートがいかにしてJ.T.リロイとしてその10年間を生きてきたのか、この世界を驚かせた事件を、彼女自身の言葉と、ガス・ヴァン・サント、トム・ウウェイツ、コートニー・ラブ、ビリー・コーガンなど多くの人々との通話音声や留守電メッセージによって解剖していく。

監督は『悪魔とダニエル・ジョンストン』のジェフ・フォイヤージーク。「狂気と創造性が交差する人間の心は興味深く、映画にする価値があるものだった」と彼は語っている。

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インタビュー

―― 作品の中で使われている膨大な量の通話記録などが印象的でした。なぜあなたは自身の記録を残していたのでしょうか。

私の母がよく記録を取っておく人だったんです。だから私はそういう風に生まれついたのだと思いますが、両親が絵を描く人なら子供が絵を描くことが普通なのと同じように、母がいつも記録を取っていたのでそれは私にとって自然なことでした。同じように写真も撮りました。子供のころにはそれによって自分を守るという意味もありました。例えば自分の親が本当は言ったことを「言ってない」と言ったり、どっちかわからなくなるようなときも記録しておけばはっきりするからです。それから記録することで(それをマテリアルとして)コラージュができるという、ある種、アートとしてもとらえていたんです。好奇心からという場合もあります。

どんなにつらかったことでも、記憶はいつか薄れてしまう。しかし私の場合“痛み”が自分の土壌となっているので、どうしてそうなったのかということを知りたいときに、記録を取っておくことでより理解できると思ったんです。

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―― このドキュメンタリーを撮る前と上映された後とではご自身の心境に何か変化はありましたか。

自分の中でいろいろなものを統合する役に立ちましたし、“怒り”を手放す助けになりました。 自分がしたことに責任を取るということの助けにもなりました。(この事件に対しての)いろいろなことがコンプリートできたように思います。

(この作品を撮るにあたり)何でも聞いてという感じだったので、自分の持っているマテリアルはすべて出しました。それは自分にとって難しいことではありました。これはちょっと恥ずかしいな・・とか思うような音声や、写真もありましたしね。しかしそれを出したことで今度は恥を手放す助けとなり、改めて見ればそんなに悪くなかったのかなと思ったりしました。虐待を受けたことにより自分はひどい人間と思い込んでいたけれど、自分が思っていたほど悪くはなかったのかもしれない、たしかに悪いことはしたけど・・。その結果出てきたものが作品となっていろんな人を救ったということを知ったとき、自分の中に平穏が訪れた気がしました。

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―― 作品の中でスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガン氏にだけ本当のことを話したというエピソードがありましたが、彼のどんなところがあなたにそうさせたのですか。彼はあなたにとってどんな存在ですか。

まず彼の音楽は私にとってすごく大きな意味があったんです。というのも彼が一番最初に性的虐待について曲を作った人でもあったから。

しかし彼に会う前に実は泣いていたんです。彼はもちろんJ.T.に会うつもりでいたわけですが、サバンナ(J.T.が表舞台に立つときのJ.T.役の少女)がいなかったのでその理由を作り上げて話す必要があった(「緊張して先に帰っちゃった」とか)んです。でもその嘘を言うのがつらかった。J.T.は有名人だけど自分は何でもない人で、またいつもと同じように周りからは見えていない存在になってしまうのではないかと思いました。J.T.が帰った、と言えば彼はまた皆と同じように自分を見えていない存在として扱うんじゃないかと思って泣いていたんです。
しかし違いました。彼はちゃんと私を私として見てくれたんです。サイキックなエネルギーというか、たまにそういうことが起こるんですけどクジラやイルカのように超音波のコミュニケーションが取れる人だと、会った瞬間に思いました。ほんとに彼は素晴らしい人で、誰にも言わないよと言って、本当に全部そのままにしていてくれました。 

実は最近彼の50歳の誕生日会があり、そこで会ったんですがまた更に繋がりが深まったなと感じました。 

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」ローラ・アルバート (Laura Victoria Albert) インタビュー

―― 作品を観て、あなたは自分自身のコンプレックスと常に向き合ってきたように感じました。日本にも自分自身のコンプレックスに悩む人はたくさんいます。コンプレックスを感じて苦しんでいる人に向けて、どうやってその悩みと向き合い、乗り越えていけば良いかあなたの考えを教えて下さい。

一番危険なのは自分が孤独だと思うことです。依存症や中毒といった、行動に出る症状は痛みを麻痺させるために起こっているのだと思います。子どもは大人とは違って過食症など苦しみを麻痺させるために食べ物を使ったりします。

私たちはもっと繊細さをもってそういう人たちを見つめる必要があると思うんです。日本も食生活が変わってきて肥満の子が増えているといいます。肥満になるとからかわれたりすることがありますよね、その辛さを麻痺させるためにまた食べてしまう。それによって更にいじめられると逃げ場がなくなってしまいます。それを暴力に訴える人もいるかもしれません。アメリカの場合だとそれが銃を撃ったりということになったりもします。女性の場合はそれが内面に出て、自分を強く責めてしまうことになりがちです。

一番大事なのは自分がひとりではないと思えることだと思います。 
「あなたが抱えている秘密の量と同じくらいあなたは病んでいる」と私は思っているのですが、その秘密(ひとりで抱え込む苦悩)が多ければ多いほど病んでしまいます。その秘密はあなたを「お前は悪い奴だ」とか「お前は一人なんだ」と言ってきます。ですからそれをシェアできる人だったり、話すことのできるグループを見つけることが大事だと思います。

乗り越える方法は必ずあるという希望をもってもらいたいと思います。自分の言いたいことに耳を傾けてくれる人は必ずいると思うし、何かしら聞いてもらえる方法もあると思います。

人々はよく“有名になれば、美しくなれば問題は解決する、みんなに愛される”と思っていたりしますが、マイケルジャクソンは肌が白くなっても整形してもその醜形恐怖は治りませんでしたよね、私もとても太っていたところからこれだけ痩せましたが、痩せることが問題解決にはつながりませんでした。やはり自分の内面的なものと対峙しなければなりません。セラピストなりグループなりなにか精神的に頼れるコネクションを探すことが大事だと思います。そしてアートというものもそれを可能にするもののひとつだと思いますね。

―― 最後に、今、自叙伝を執筆中とのことですが、完成予定はいつ頃ですか?

自叙伝は・・時計で言うと11時くらいまでできています!(完成間近!)

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」ローラ・アルバート (Laura Victoria Albert) インタビュー

インタビューを終えて

彼女はとにかく常に”記録を取ること”で自分自身と向き合い続け、そこから新たな発見をし、新たな創造に繋げているようだ。一つの質問に対してじっくりとできるだけ多くの言葉と表現を使って答えていく彼女は、インタビュー中もそのすべてを録音し、インタビューに答えながらもまた新たな”気づき”を求めているように感じた。人間に対しての探究心がとても強い人なのだろう。

青い髪の毛に、ラメたっぷりに縁取られた”LA”と描かれたピンクのベースボールキャップと、首に下げた巨大なプレッツェル型のネックレスという強烈なインパクトのあるファッション(残念ながら掲載写真では着用しておりません)をしていた彼女だったが、少し話すと、その強烈な容姿のことはすぐに忘れて素顔の彼女自身と話しているような気持ちになることがとても不思議だった。自分自身を偽った10年を経て、この映画により自分自身をさらけ出す覚悟をした彼女には、一筋縄ではいかない強いパワーと独特な魅力を感じた。

[インタビュー: Sayaka Hori / 写真: Koji Aramaki] 

プロフィール

ローラ・アルバート (Laura Victoria Albert)

1965 年、アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン生まれの女性。J1996 年から J.T.リロイ名義で小説を書き始め、「サラ、神に背いた少年」(2000年)、「サラ、いつわりの祈り」(2001年)がベストセラーになる。2004 年には「かたつむりハロルド」を出版。
「J.T.リロイ」という名前は、先に自分が創り出していた 2 つの名前「ジェレマイア」と「ターミネーター」の頭文字と、彼女が相手をしたテレホンセックスの客の名前「リロイ」から取っている。

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」ローラ・アルバート (Laura Victoria Albert)

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」作品情報

映画「作家、本当のJ.T.リロイ」(Author: The JT Leroy Story)

なぜ、“作家”ローラ・アルバートは10年もの間、J.T.リロイに物語を語らせたのか。
世界を驚かせた事件の真実を、彼女自身の言葉とセレブたちの通話音声によって解剖する。

邦題: 作家、本当のJ.T.リロイ
原題: Author: The JT Leroy Story
監督: ジェフ・フォイヤージーク(『悪魔とダニエル・ジョンストン』)
撮影監督: リチャード・ヘンケルズ
音楽: ウォルター・ワーゾワ
出演: ローラ・アルバート、ブルース・ベンダーソン、デニス・クーパー、ウィノナ・ライダー、アイラ・シルバーバーグ ほか
2016年 / アメリカ / 111分 / カラー、一部モノクロ / 1.85:1 / DCP
配給/宣伝: アップリンク
© 2016 A&E Television Networks and RatPac Documentary Films, LLC. All Rights Reserved.

映画公開日: 2017年4月8日(土)

新宿シネマカリテ、アップリンク渋谷ほか公開中!

映画公式サイト
公式Facebook: https://www.facebook.com/jtleroy.movie.jp/
公式Twitter: @JTleroyMovieJP

この記事の著者

Sayaka Hori

Sayaka Horiフォトグラファー/ライター

★好きな映画
『パリ、テキサス』 (Paris,Texas) [監督: ヴィム・ヴェンダース 製作: 1984年]
『マルホランド・ドライブ』 (Mulholland Drive) [監督: デヴィッド・リンチ 製作: 2001年]
『狂い咲きサンダーロード』 [監督: 石井 聰亙 製作: 1980年]

Sayaka SAPP Hori
http://horisayaka3.wixsite.com/mysite

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