映画『クーパー家の晩餐会』(Love the Coopers) レビュー
【画像】映画『クーパー家の晩餐会』(Love the Coopers) メインカット

映画『クーパー家の晩餐会』
(原題: Love the Coopers)

クリスマス・イブに幕が上がった、大家族のハート・ウォーム群像劇

ストーリー

離れ離れで暮らしている家族が一同に会する、クーパー家恒例のクリスマス・イブの晩餐会。夫との離婚が決まっていたシャーロットは、それを皆には伏せて、最後の晩餐会を最高のものにしようと秘かに決心していた。イブ当日、そんなことも知らず家族はクーパー家に続々と集まってくるが・・不倫を隠すため空港で出会った男を恋人にしたてる娘、失業したことを言い出せない息子、クリスマスプレゼントを万引きして逮捕されてしまう妹など、家族たちもまた、それぞれ嘘や秘密を抱えていた。やがて皆が無事にそろい、シャーロット手作りの豪華な食事がテーブルに並び、はた目には陽気な晩餐会がはじまったが・・

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最悪の家族をハートフルに調理し、家族の絆をたっぷりと味わう

クリスマスを舞台にした群像劇と聞けば、真っ先に『ラブ・アクチュアリー』(2003年)を思い浮かべる映画ファンも多いだろう。映画史に残る名群像劇。ただ二つの作品は似て非ざる物で、『ラブ・アクチュアリー』が、ロンドンの様々な住人(実は家族だったり友人だったりするのだが)による壮大な群像劇であるのに対し、『クーパー家の晩餐会』は、家族というコンパクトな舞台の上で織りなされる群像劇だ。映画の主題も「ラブ・アクチュアリー」が恋愛を軸においているのに対し、こちらは家族愛をテーマとしている。

一見、つつましくも順風満帆な生活を送っているような家族たち。だが、それぞれが紡ぎ上げてきた人生に、微妙な綻びが出始めていた。それを互いに隠し合い、現実とは違う自分を見せようと躍起になる。そうした姿が実にユーモラスに描かれており、観ていて滑稽になるのだが、決して見栄や意地のためでなく、実は相手のことを思ってのことなのだとやがて気づく。

不器用な家族たちに、運命のレシピは一体どのようなスパイスを加えていくのか。この映画は、家族の絆の素晴らしさをとっておきの調理で味あわせてくれる。劇中に登場するシャーロットの豪勢な手料理にも引けをとらない心温まるメニューを、是非冷めないうちに劇場で召し上がって頂きたい。 

【画像】映画『クーパー家の晩餐会』(Love the Coopers) 場面カット

みどころ

本作でメガホンをとったのは、名作『I am Sam アイ・アム・サム』(2001年)で一世を風靡したジェシー・ネルソン監督だ。その脚本に一目で惚れ込み、『ラブ・アクチュアリー』に勝るとも劣らない豪華なキャストを使って、劇中に登場するシャーロットの料理のような極上の映画を撮りあげた。主役のシャーロットを演じたのはご存知ダイアン・キートン。今年で御年70を迎え、ずいぶんと「おばあちゃん」役が板についてきた。近作「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」でもモーガン・フリーマンとコミカルで味のある老夫婦を演じ、その演技力はもはや円熟味の境地に達している。

逆にフレッシュな若さと演技で観客を楽しませてくれているのが、今ハリウッドでもっとも美しく輝いている女優といっていい、アマンダ・セイフライドだ。今作では、自分に自信を持てない食堂のウェイトレスという、彼女にしては地味な役どころを演じているが、地に足のついた演技でしっかりと存在感を出している。アラン・アーキン演じる老父バッキーとの微妙な関係も、ほっこりさせられて具合が良い。

ちなみに豪華俳優陣の中で、実は日本出身の役者も出演している。いや、役者と言うのは正確でないかもしれないが・・クーパー家の愛犬ラグスを演じたオーストラリアン・シェパードのボルト君は、何と大阪の生まれだそうだ。「何だ犬のことか」とバカにしてはいけない。彼(?)の愛くるしいナレーションは、この映画に欠かせない大事なアクセントとなっており、絶妙なムード感を演出してくれている。

名監督や数々の名優を配したにしては、派手さのない日常生活をおった映画となっているが、だからこそ贅沢なつくりとも言えよう。季節外れのクリスマス群像劇は、たっぷりと笑いと感動がつまった家族の物語。体の芯から、そして心の底から暖まってほしい。

[ライター: 藤田 哲朗]

映画『クーパー家の晩餐会』予告篇

映画作品情報

邦題: クーパー家の晩餐会
原題: Love the Coopers
 
監督/製作: ジェシー・ネルソン (Jessie Nelson)
製作: マイケル・ロンドン (Michael London)
製作: ジャニス・ウィリアムズ (Janice Williams)
製作総指揮: キム・ロス (Kim Roth)
 
出演: ダイアン・キートン (Diane Keaton)
ジョン・グッドマン (John Goodman)
アマンダ・セイフライド (Amanda Seyfried)
オリヴィア・ワイルド (Olivia Wilde)
アラン・アーキン (Alan Arkin)
エド・ヘルムズ (Ed Helms)
マリサ・トメイ (Marisa Tomei)
ジューン・スキッブ (June Squibb)
 
2015年 / アメリカ / 英語 / カラー / 107分
配給: ギャガ株式会社
© 2015 CBS FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
 
2016年2月19日(金) よりTOHOシネマズ シャンテほか
全国順次ロードショー
 

映画公式サイト

この記事の著者

藤田 哲朗映画ライター・愛好家

大手出版取次会社で20代後半より一貫してDVDのバイヤー/セールスの仕事に従事する。
担当したクライアントは、各映画会社や映像メーカーの他、大手のレンタルビデオチェーン、eコマース、コンビニチェーンなど多岐にわたり、あらゆるDVDの販売チャネルにかかわって数多くの映画作品を視聴。
プライベートでも週末は必ず都内のどこかの映画館で過ごすなど、公私とも映画づけの日々を送っている。

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