武内英樹監督 インタビュー
圧倒的に笑えて、圧倒的に泣ける。
王道なのに新しいロマンティックなラブストーリー
綾瀬はるかと坂口健太郎が初共演を果たし、モノクロ映画の中のヒロインと現実世界の青年が織りなす切ない恋の行方を描いた、今 “泣ける”と話題のとびきりロマンティックなオリジナルラブストーリー『今夜、ロマンス劇場で』。映画監督を目指す青年・健司はモノクロ映画のヒロインである美雪に心を奪われ、スクリーンの中の彼女に会うために映画館に通い続けていた。そんなある日、奇跡が起こり、スクリーンから飛び出してきた美雪が健司の前に現われる。
モノクロの世界からやってきた美雪は初めて見る“色”の数々に胸を躍らせ、健司が美雪の今まで知ることのなかった“色”を一つ一つ教えていく中で、2人は少しずつ惹かれ合っていく。しかし美雪には、人のぬくもりに触れると消えてしまうという秘密があった。
本作でメガホンをとった武内英樹監督へのインタビューをお届けする。
―― 笑える映画や、泣ける映画が多いなか、両立している映画は新鮮でした。
ずっと笑って泣ける映画を作りたかったんですが、それを明確に出来た作品に仕上がったと思います。この映画を観れば、一度に2本の映画を観るような体感が出来るかも知れません(笑)。美雪の“人のぬくもりに触れたら消えてしまう”という秘密が判明してから一気に話が転調するということは決まっていたのですが、後半の展開は誰もが心に打たれるストーリーだったので自信をもって撮影にのぞみました。
―― これまで、『のだめカンタービレ』シリーズや、『テルマエ・ロマエ』シリーズなど、大ヒット原作を実写化した映像作品の監督をされてきていますが、今回は完全オリジナル脚本ということで、映画製作に至るまでの経緯を教えてください。
稲葉プロデューサーに監督をオファーされたときに、綾瀬はるかさんがお姫様役だと告げられました。その時は全く全貌が見えませんでしたが、企画書を読んで、ボロボロ泣いてしまいました。映画のシーンをすぐイメージする事が出来たと同時に、もの凄い作品が出来るかもしれないと、武者震いじゃないですけどワクワクして、どうしてもこの作品を撮りたいと思いました。
―― 様々な名画のオマージュがちりばめられていて、名画に慣れ親しんでこられた方はニヤっとするようなシーンがたくさんあります。しかし、愛している者同士なのに触れたら消えてしまう、そんな設定で成り立つ純愛ストーリーは斬新ですね。
究極のラブストーリーだと思います。最初はスクリーンからお姫様が出てくるというファンタジーなストーリーだと思わせて、徐々にリアルな方に引きずり込んでいく。重要な役どころを演じてくれた綾瀬さんと坂口さんの2人には本当に感謝しています。 “好きだけど、触れることが出来ないという試練を、どこか現実離れをした存在感を持つ2人が演じたからこそ、お客様に信じてもらえたのだと感じています。「だんだんとリアリティを感じていく」そういう風に作品を作っていきたかったんです。
―― 綾瀬さんと坂口さんの相性はものすごくいいですね。演じてもらうにあたり、何か特別な注文はされましたか?
撮影中の綾瀬さんはモノクロではないので、坂口さんには「モノクロのお姫様であることを常に忘れずに、目の前にいるのはスクリーンから出てきたお転婆姫・美雪だという前提でリアクションをしてほしいと」お願いしました。撮っているうちに我々スタッフも忘れちゃうんです(笑)。また、“綾瀬はるか史上最も綺麗に撮る”と言う事を意識していたので、衣装合わせは凄くこだわりました。お姫様としての立ち振る舞いに関しても、お姫様のような強い芯が伝わるよう気品ある振る舞いや、立ち方、手の動き、顔の角度などを徹底してもらいました。綾瀬さんはオードリーヘップバーンの様に見えて本当に素敵でした。
―― 他のキャストの方々も良い味を出していましたね。特に北村一輝さんは最高でした(笑)。
私も北村さんも京映撮影所の看板スター・俊藤龍之介のキャラクターが大好きなんです(笑)。アイデアを出し合っていきながら俊藤龍之介を構築していきました。しんみりとしたシーンが続く中、彼のキャラはどこか安心感を与えてくれる役柄だったので、すごく良い塩梅で緊張感を与えてくれました。切なく悲しい気持ちになるシーンもありますが、俊藤がいることでバランスが取れたと思います。塔子役の本田翼さんも、社長令嬢役がものすごく可憐で素敵でしたし、今回初めてご一緒した石橋杏奈さんは、劇中で鍵を握る役どころを演じ、苦戦されていたようですが、感覚をつかんでからは、良い演技をしていらっしゃって流石だなと思いました。
―― 柄本明さん演じるロマンス劇場の支配人・本多は、健司の“ある意味先輩”的な立ち位置で、重要な役どころでしたね。
とても自然体にお芝居をされるのですが、シーンを繋いでみると計算されているようなんです。全て計算されて演じているとしたら本当すごい役者さんだと思います。「ロマンス劇場に起こる奇跡」という象徴を、柄本さんがファンタジックに演じきってくれました。柄本さんに出演いただいて本当に良かったです。
―― 特にお気に入りのシーンはありますか?
手を繋げない二人がハンカチを握り合って、浜辺を歩いて散歩していくシーンです。そのシーンの撮影中少し泣いてしまいました。このシーンは女性だけなく、意外と男性の方も泣いてくださったと聞いて嬉しいです。
―― 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆様へメッセージをお願いします。
スクリーンの中から憧れていたヒロインが飛び出してくるというファンタジックな設定ですが、“触れたら消えてしまう”という障がいを乗り越えようとする美雪と健司の姿に、自分だったらどうするんだろうと重ね合わせることが出来ると思います。“映画”に愛を込めて作った作品なので、是非劇場で観ていただきたいです。
[スチール写真: オフィシャル提供]
プロフィール
武内 英樹 (Hideki Takeuchi)「神様、もう少しだけ」(1998年)、「彼女たちの時代」(1999年)、「電車男」(2005年)、「のだめカンタービレ」(2006年)、「デート〜恋とはどんなものかしら〜」(2015年)で、ザ・テレビジョンドラマアカデミー賞の監督賞を5度受賞するなど数々の大ヒットTVドラマを演出、リアリティー重視の映像表現に定評がある。映画では『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』(2009年)で初監督を果たし、『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』(2010年)で総監督、『テルマエ・ロマエ』シリーズ(2012年、2014年)で監督を務め、いずれも大ヒットに導いている。 |
映画『今夜、ロマンス劇場で』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》綾瀬はるか×坂口健太郎 初共演 モノクロ映画のヒロインと、現実世界に生きる青年。出逢うはずのない二人が出逢ったら―。それはロマンティックで切ない恋のはじまり。 |
本田翼、北村一輝、中尾明慶、石橋杏奈、西岡德馬、柄本明、加藤剛
2018年2月10日(土) 全国ロードショー!!