映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』公開初日舞台挨拶レポート
【写真】映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』公開初日舞台挨拶

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』

 公開初日舞台挨拶

「岡田麿里初監督作品に参加できてうれしい」と入野自由、梶裕貴 
「等身大で素直に向き合っていけた」と石見舞菜香 
「生きる力、希望を与えてくれる作品」と主題歌を歌うrionos 

劇場アニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』が2月24日(土)に公開され、初日舞台挨拶が新宿バルト9で行われた。 本作は『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011年)、『心が叫びたがってるんだ。』(2015年)の脚本家として知られる岡田麿里の初監督作品。10代半ばで外見の成長が止まり、数百年の寿命を持つ一族「イオルフ」の少女マキアが人間の男の子の赤ちゃんエリアルと出会い、母として成長していく姿を描く。

 

初日舞台挨拶には声優の石見舞菜香、入野自由、梶裕貴、主題歌「ウィアートル」を歌うrionos、脚本も務めた岡田麿里監督、プロデューサーの堀川憲司が登壇した。

大きな拍手で迎えられた登壇者がひとことずつ挨拶をした後、岡田監督が「企画が始まって5年、制作を始めて3年」とここまでの長い道のりを振り返り、「テレビシリーズと違い、作っている間に見てくださった方の反応がない。時に不安になりながらも、スタッフみんなで声を掛け合ってがんばってきました。うれしい気持ちと緊張の気持ちでいっぱいです」と今の心境を述べた。 

【写真】岡田麿里監督

主役のマキアの声を演じた石見は本作が初めての劇場作品出演。緊張で震えながらも「初日を迎えられ、とても幸せな気持ちです」と喜びを語った。司会者が「(緊張感で)泣きそうですね」と突っ込むと、入野が、「昨日は9時くらいから布団に入って寝ようとしたけれど、なかなか眠れなくて、結局寝たのは2時くらいだったんだよね?」と助け船を出した。「そのまま緊張していてください」とツッコミを続ける司会者に、入野が慌てて「解してあげてください」と先輩らしいサポートを見せた。

【写真】映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』公開初日舞台挨拶 石見舞菜香、入野自由

役作りについては、「母になった経験がないので、想像で補うしかなかったけれど、根本的な性格はマキアに近い。等身大で素直に向き合っていけたらと思っていました」といい、台本で読み取りきれなかったところを入野から「このシーンはこの感情をちょっと加えたら、もっとよくなるよ」などアドバイスしてもらったことを告白。「(入野を始めとする)尊敬する先輩方に支えていただいて、マキアに向き合っていけました」と感謝の気持ちを言葉にした。

【写真】石見舞菜香

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』にも出演した入野は「完成を楽しみにしていたので、素直に喜んでいる」と岡田の初監督作品に参加できた喜びを語った。そして台本を初めて読んだときの感動をすぐにメールして伝えたことを明かすと、岡田監督はちょっと照れくさそうに「覚えています」と答えた。 

また、司会者から、入野にアドバイスしてもらったと石見が言ったことを振られると、「助けるのではなく、僕がこれまで先輩方にいろいろ教えていただいて、自分の中でこういうことが大事だったなということを伝えました」と芸歴の長い入野ならではの答えを返した。

【写真】入野自由

岡田作品に数多く出演している梶は「岡田さんの初監督作品なので、何かお手伝いさせていただければと思っていた。クリム役をいただき、うれしかった」と感謝の気持ちを表した。そして、1年以上前に行われたプレスコ(絵のない段階で録音し、その後で映像を作る手法)を「キャラクターの気持ちや物語の展開に胸を刺される思いだった。みんなで心を重ね、涙をこぼしながら収録したのを覚えている」と振り返り、その時の感動を劇場で見てもらえることを喜んだ。

一般的にアニメ作品では事前の本読みをしない。しかし、本作では本読みが行われた。
入野は演じたエリアルが赤ちゃんからおじいさんまで描かれ、演じたのはその一部だったが、本読みでは全部やったという。「(本読みで)2人の関係が作れていたので、(アフレコでは)一瞬で作らなくてはならない役を思い出せた」と本読みのメリットを強調。「今後のアニメ映画では本読みを続けてほしいと思う」と続けた。

【写真】梶裕貴

梶は「意味のある時間だった」といい、「作品にかける思いが監督やスタッフから伝わってきた。僕らもその気持ちに乗っかかり、読み合わせから全力投球の剛球で、気持ちを込めてやってこられた」。また、本読みをすることで「他の声優の芝居に刺激され、自分が想像していた以上のものが表現できた」とし、そこで気づいたものを再構築して実際のオフレコに臨んだという。 これを受けて、「声優の熱演は制作現場に影響を与えたか」と司会者に問われた岡田監督は「(梶が演じた)クリムはセリフだけでは病んでいるところが強くなってしまいます。でも、病んでいても、梶さんが発したセリフには真面目で優しい人柄が感じられます。作画でも病んでいるところではなく、穏やかな切なさを表情に強調してもらいました」と声からもらったものの大きさを語った。

主題歌「ウィアートル」を歌うrionosは、作品を見た印象を「人生には一度しか咲かない花のような瞬間が確かにあると強く感じた」と詩的に表現。「自分がいつかおばあちゃんくらいになったときにかけがえのない日々を思い出して、悲しかった別れも含めて、これでよかったんだと思えるまで生きたいと思わせてくれる。生きる力、希望を与えてくれる作品だと思いました」と語った。

【写真】rionos

一方、rionosの歌にマキアを感じたという岡田監督も「舞菜香ちゃんの声を聞いたときに『見つけた』と思いましたが、rionosさんの声と曲を聞いたときも同じように思いました」と言い、スタッフが曲を聞きながら作業をしていたという裏話をした。プロデューサーの堀川も「聞いていたというより、歌っていた」と話した。主題歌「ウィアートル」が現場を支えていたと知り、rionosは何度も「うれしい」とつぶやきながら喜んでいた。

【写真】岡田麿里監督

最後に岡田監督が「ヒビオルを折るように、スタッフやキャスト、関係してくださったすべての人たちの力で作品が織りあがりました。こうしてみなさんに見ていただくことで、本当に完成したと思います」と挨拶。盛大な拍手とともに登壇者が舞台を降り、イベントは終了した。

[スチール 撮影: 蒼山隆之 / 記者: 堀木 三紀]

イベント情報

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』公開初日舞台挨拶

■開催日: 2018年2月24日(土)
■会場: 新宿バルト9 スクリーン9
■登壇者: 石見舞菜香、入野自由、梶裕貴、rionos、岡田麿里監督、堀川憲司プロデューサー
■MC: サンキュータツオ

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』ポスタービジュアル

《ストーリー》

縦糸は流れ行く月日。横糸は人のなりわい。 人里離れた土地に住み、ヒビオルと呼ばれる布に日々の出来事を織り込みながら静かに暮らすイオルフの民。 10代半ばで外見の成長が止まり数百年の寿命を持つ彼らは、“別れの一族”と呼ばれ、生ける伝説とされていた。 両親のいないイオルフの少女マキアは、仲間に囲まれた穏やかな日々を過ごしながらも、どこかで“ひとりぼっち”を感じていた。 そんな彼らの日々は、一瞬で崩れ去る。イオルフの長寿の血を求め、レナトと呼ばれる古の獣に跨りメザーテ軍が攻め込んできたのだ。 絶望と混乱の中、イオルフ一番の美女レイリアはメザーテに連れさられ、マキアが密かに想いを寄せる少年クリムは行方不明に。 マキアはなんとか逃げ出したが、仲間も帰る場所も失ってしまう……。 虚ろな心で暗い森をさまようマキア。そこで呼び寄せられるように出会ったのは、親を亡くしたばかりの“ひとりぼっち”の赤ん坊だった。 少年へと成長していくエリアル。時が経っても少女のままのマキア。同じ季節に、異なる時の流れ。変化する時代の中で、色合いを変えていく二人の絆――。 ひとりぼっちがひとりぼっちと出会い紡ぎ出される、かけがえのない時間の物語。

  
声の出演: 石見舞菜香、入野自由、茅野愛衣、梶裕貴、沢城みゆき、細谷佳正、佐藤利奈、日笠陽子、久野美咲、杉田智和、平田広明
 
監督・脚本: 岡田麿里
 
配給: ショウゲート
 

© PROJECT MAQUIA

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映画公式サイト
 
公式Twitter: @sayoasa_jp
 

この記事の著者

ほりき みきライター

映画の楽しみ方はひとそれぞれ。ハートフルな作品で疲れた心を癒したい人がいれば、勧善懲悪モノでスカッと爽やかな気持ちになりたい人もいる。その人にあった作品を届けたい。日々、試写室に通い、ジャンルを問わず2~3本鑑賞している。

主に映画監督を中心にインタビューを行っており、これまでにインタビューした監督は三池崇史、是枝裕和、阪本順治、岸善幸、篠原哲雄、大九明子、入江悠、本広克行、荻上直子、吉田照幸、ジョン・ウーなど。

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