古き良きシネマの時代― 彩り豊かに咲いた異色の純恋物語!
ロマンスが降り注ぐ奇蹟な二人に胸がキュン×2と躍る!!
《ストーリー》
昭和浪漫が薫る映画の黎明期。映画会社の助監督をつとめる牧野健司(坂口健太郎)は、まだまだ修行中の身。朝から晩まで撮影の準備に追われ、忙しい日々を送っていた。そんな彼の唯一の楽しみは街中にある馴染みの「ロマンス劇場」で、クラシック映画を観ること。お気に入りはモノクロ映画『お転婆姫と三獣士』で、ヒロインの美雪姫(綾瀬はるか)にいつしか魅かれた牧野は、飽くことなく繰り返し見入るのであった。まるで現実の恋人のように美雪姫に想いを寄せる牧野。だが、銀幕の彼女に会うことなんてできるわけもなく・・のはずだったが、ある日途方もない奇跡が舞い降りるのであった―
《みどころ》
「映画」というより「活動写真」という言葉がピッタリ似合う、戦後まもない日本の映画シーン。撮影所は熱気と活気にあふれ、まさに「古き良き時代」であり「キネマの黄金時代」であった。そんなエネルギッシュでノスタルジックな世界に咲いた異色の恋模様を描いたのが本作『今夜、ロマンス劇場で』だ。小説や漫画の実写化が全盛をきわめる昨今だが、こちらは映画の為に書き下ろされた完全なオリジナル作。これもまた、昭和の映画を思い起こさせる一つのファクターとなっており、映画ファンには嬉しい要素だ。
物語は、もし『ローマの休日』(1953年)のオードリー・ヘプバーンや『カサブランカ』(1942年)のイングリッド・バーグマンが自分の恋人であったら…オールド映画ファンなら一度は夢見てしまう理想(もしくは妄想)を、そのまま具現化したようなお話。
だが、綾瀬演じる美雪姫は、前述した二人のようにお淑やかな女性でなく、至極勝気なお姫様というキャラクターがひとひねりあって面白い。そして、モノクロ映画のヒロインが銀幕から飛び出す―。当然、現実はフルカラーの世界なので、そのコントラストによる美しさも本作の大いなる美点だ。ロマンス劇場のカラフルな館内、美雪姫の数々の衣装、季節感あふれる風景…とにかく色使いに拘りがあり色彩豊かなシーンが目立つ。だからこそモノクロである綾瀬の美しさが、より一層際立つのだろう。人の“ぬくもり”を感じることが叶わない悲しきヒロインだが、鮮やかな背景をバックにした切なくも楽しい牧野との逢瀬は、この映画の大きな見どころだ。
その他、社長令嬢・成瀬塔子役で登場した本田翼は、その美貌は言うに及ばずだが、同時に昭和の控えめな深窓のお嬢様キャラを巧みに演じてくれている。
また映画会社の看板スター・後藤龍之介役に起用された北村一輝も、奇天烈でナルシストといったアクの強い役どころを面白おかしく務め上げ、コミカルなアクセントとして映画に華を添えてくれた。
「映画館を舞台にしているのだから、映画愛に溢れた作品にしたい」という想いから、古今東西の名画へのオマージュが随所に散りばめられているのも観ていて楽しい。“街中の古い劇場と老映写技師”というのは名作『ニュー・シネマ・パラダイス』(1988年)を彷彿とさせるし、王女と身分違いの男性の恋は前述した『ローマの休日』の設定のウリ二つだ。その他にも『また逢う日まで』(1950年)や『オズの魔法使い』(1939年)など…最後は『タイタニック』(1997年)のラストシーンのオマージュかな?と筆者は感じてしまったのだが、どうだろうか。
劇中で「映画は儚いね。大抵観た作品の内容は、やがて忘れてしまう」という意味のセリフが出てくるのだが、映画を観た時の躍動した心と感動は永遠に残る。本作は、そう信じてやまない映画ファンに捧げられたような型破りのエンタメ・キネマだ。かけがえのない“ぬくもり”をきっと劇場で感じることができるに違いない。
[ライター: 藤田 哲朗]
映画『今夜、ロマンス劇場で』予告篇
映画作品情報
キャスト: 綾瀬はるか、坂口健太郎
本田翼、北村一輝、中尾明慶、石橋杏奈、西岡德馬、柄本明、加藤剛
制作プロダクション: フィルムメイカーズ
2018年2月10日(土) 全国ロードショー!!