映画『真っ赤な星』井樫彩監督インタビュー
【写真】映画『真っ赤な星』井樫彩監督インタビュー

映画『真っ赤な星』井樫彩監督インタビュー

私から産み出されるものを結構出した

中編映画『溶ける』(2015年)で卓越した演出力と表現力が評価され、第70回カンヌ国際映画祭シネフォンダシオン部門への選出をはじめ国内外で注目を集めている22歳の新鋭監督・井樫 彩による初長編映画『真っ赤な星』がいよいよ12月1日(土)に公開となる。

【画像】映画『真っ赤な星』メインカット

井樫彩監督に初長編作品への想いや自身のこれからについて聞いた。

たくさんの想いの詰まった『真っ赤な星』

【写真】映画『真っ赤な星』井樫彩監督インタビュー

―― 今回の作品のタイトルは何故『真っ赤な星』なのでしょうか?

色々な要素が入っているんですけど、(本作の冒頭シーンに出てくる)手を伸ばしても届かない空を飛んでいる赤いパラグライダーが(ある時)星みたいに見えたのがきっかけのひとつです。無数にある星の中で、白や黄色ではなく、一つだけ違う赤色の星が小さく燃えているというのは陽から見た弥生であったりします。ほかにも色んなメッセージを込めて『真っ赤な星』というタイトルを付けました。

会った瞬間に「この人だ!」と直感したオーディション

【画像】映画『真っ赤な星』場面カット11

―― キャスト陣の演技にも引き込まれるものがありましたが、どのように決められたのでしょうか?

主演の2人ともオーディションで決まったんですけど、初めに決まったのが弥生役の桜井さんなんですね。会った瞬間に「この人だ!」と思いました。直感だけでなく、実際に桜井さんと話してみても、私が思い描いていた弥生の温度みたいなものと近しい人だったので決めました。そこから、もう一人の主人公・陽のキャスティングとしては「桜井さんが演じる弥生と合う陽」を探すことになりました。身長も出来るだけ陽の方が小さい方がいいし、精神的な年齢の差も欲しかったので10代のまだ擦れてない、経験がない子をずっと探していて、小松さんに出会い決まりました。

何気ない日常を作品のエッセンスに

【画像】映画『真っ赤な星』場面カット1

―― 本作で特に意識して撮影したシーンを教えて下さい。

脚本段階で先にファーストシーン、クライマックス、ラストシーンを書くんですよ。なので撮影でもその3つのシーンは作品としても重要な部分だと思います。
また、自然の風景が主人公の心情を示す表現が好きなので、視覚的に心地よいものが撮れるように意識しました。

陽と弥生が2人でベットで寝っ転がって網戸の穴を見つけるシーンがあるんですけど、あれは実際に友達とやったことのあるシチュエーションです。日常過ごしていく中で「このやりとりは使える」といったシチュエーションがないか常に意識しています。

刺激を受けたカンヌ

【写真】映画『真っ赤な星』井樫彩監督インタビュー

―― カンヌ国際映画祭で感じたことを教えて下さい。

カンヌで初めて海外の映画祭に行ったんです。当時東京で初めて映画を撮って、色んな映画祭で上映してもらって「若いのに凄いね」みたいな空気があったんですよね。世界に出て行った時に、世界ってめちゃめちゃ層が厚いというか、レベルが高くて。上には上がいるし、自分はまだまだだなっていうのを実感した経験ではあったので、『真っ赤な星』を撮る前にカンヌに行けたことは物凄く良かったです。

初挑戦とこれから

【画像】映画『真っ赤な星』場面カット2

―― 初めての長編映画の製作はいかがでしたでしょうか?

また、今後の映画製作についても教えてください。

すべてが大変でした。時間にも限りがあったので、夜中の部屋のシーンを昼間に撮ったりと工夫に工夫を重ねました。ペース配分や管理の大切さを痛感しました。

この作品で「私から産み出されるものは結構出したな」と、今のところ感じています。アウトプットしてばっかりだと枯渇してきますし、原作の映画化にも興味があるので、オリジナルも撮っていきつつ、ご縁があったら色々な作品を作っていきたいです。

【写真】映画『真っ赤な星』井樫彩監督インタビュー

―― 最後にこれから作品をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。

14歳の少女と27歳の女性の2人の話でありつつも、根本的に描いているテーマはすごく普遍的な事だと思います。観た人によっていかようにも解釈のできる映画なので、広がる景色や2人のやりとり、音などを感じ取ってもらいたいです。閉鎖された静かな空間である映画館で観て頂きたい映画なので、是非劇場へ!

映画『真っ赤な星』は、2018年12月1日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開される。

[インタビュー: 梅田 奈央 / スチール撮影: Cinema Art Online UK]

プロフィール

井樫 彩 (Aya Igashi) 

1996年生まれ、北海道出身。
学生時代に卒業製作として制作した『溶ける』が、 ぴあフィルム・フェスティバル、なら国際映画祭など国内各種映画祭で受賞し、第70回カンヌ国際映画祭正式出品を果たす。 『真っ赤な星』は初長編作品、劇場デビュー作となる。また、山戸結希プロデュースによるオムニバス 映画『21 世紀の女の子』の公開も控えている。

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映画『真っ赤な星』予告編

映画作品情報

【画像】映画『真っ赤な星』ポスタービジュアル

《ストーリー》

片田舎の病院に怪我をして入院した 14歳の陽(小松未来)。彼女はいつも優しく接してくれていた看護師の弥生(桜井ユキ)に対 し、特別な感情を抱き始めていた。だが退院の日、弥生が突然看護師を辞めたことを知る。 1年後、陽は買い物の帰り道で偶然弥生と再会する。そこにいたのは、過去の優しい面影はなく、男たちに身体を売ることで生計 を立てている弥生だった。再会後、学校にも家にも居場所がない陽は、吸い寄せられるように弥生に近づく。一方、弥生には誰に も言えない悲しい過去があった。満たされない現実を冷めた目で見つめ、互いに孤独を抱えるふたりは、弥生のアパートで心の空 白を埋める生活を始めていく——。

《キャスト》

小松未来、桜井ユキ
毎熊克哉、大原由暉、小林竜樹、菊沢将憲、西山真来、湯舟すぴか、山谷武志、若林瑠海、 大重わたる(夜ふかしの会)、久保山智夏、中田クルミ(声の出演)、PANTA

《スタッフ》

脚本・監督: 井樫彩
撮影: 萩原脩
照明: 仁藤咲
録音・整音: 柳田耕佑
衣装: 藤山晃子
ヘアメイク: 藤原玲子
美術: 田紫織
助監督: 満岡克弥
制作: 飯塚香織、吉田幸之助
編集: 小林美優
カラリスト: 川村尚寛
音楽: 鷹尾まさき
スチール: 北島元朗、大塚健太郎
デザイン: 田中進
エグゼクティブ・プロデューサー: 松坂喜浩
プロデューサー: 菅原澪、島野道春
アソシエイト・プロデューサー: 髭野純、夏原健
製作・配給: 映画「真っ赤な星」製作委員会
配給協力: SDP
©「真っ赤な星」製作委員会 
 
2018年12月1日(土) よりテアトル新宿ほか全国順次公開!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @makka_hoshi
公式Facebook: @makkanahoshi

この記事の著者

梅田 奈央シネマレポーター/ライター

様々な人々の想いによって創られる映画。限られた時間の中に綿密に練られた構想。伝えたいメッセージ。無限大の可能性と創り手の熱量に魅了され、作品やそこに込められた想いをたくさんの人に知って貰いたいと活動を開始。インタビューや舞台挨拶などのイベントに至るまで、様々な角度から作品の魅力を発信している。

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