映画『かぞくわり』主演・陽月華インタビュー

【写真】映画『かぞくわり』主演・陽月華インタビュー

映画『かぞくわり』主演・陽月華インタビュー

「老若男女問わず世界中の人に観てほしい!!」って、大声で叫びたいくらいなんです!

作家・民族学者の折口信夫著「死者の書」をモチーフに日本最古の都・奈良に伝わる伝説の中将姫と大津皇子が、現代の奈良で出会う転生の物語を”家族”という主軸を据えて描いた映画『かぞくわり』。主人公の堂下香奈(どうしたかな)を演じるのは、元宝塚歌劇団宙組でトップ娘役を務めた陽月華。小日向文世、竹下景子の名優コンビが香奈の両親役で脇を固め、地元・奈良で精力的に映画製作活動をしている新鋭・塩崎祥平が監督・脚本を手掛けた。

【画像】映画『かぞくわり』メインカット

本作で映画初主演、主人公・香奈を演じた陽月華さんにお話を伺った。

―― この映画で初めて主演を演じられたわけですが、この主演のお話が届いたときの感想をお聞かせください。

最初は、「主演」という言葉に「責任」というような重いものを感じたのですが、脚本を読んで監督のお考えを聞いていくうちに役の面白さを感じ始めました。そして監督がやりたい不思議な感じもみえてきて、演技で冒険できそうな期待感が高まっていきました。

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―― 『かぞくわり』というタイトルにどのような印象を受けましたか?

うまいタイトルをつけるなぁと思いました。覚えやすいですし、携帯電話のサービスプランにも「家族割」ってありますから耳馴染みもいい。そして、この言葉は、「かぞくのやくわり」や「かぞくがわれてしまう(バラバラになる)」などいろいろな意味合いにもとれるので、この映画にピッタリなタイトルですしキャッチ―だと思いました。

【画像】映画『かぞくわり』場面カット

―― 今回、これまで出演された映画の撮影とは違うと感じられたことはありましたか?

これまで色んな役柄を豊富にこなしてきたわけではないので、わたしが経験してきた範囲の感覚でお話しすると、映画や映像を創っていくことは、自分の知らない未知の世界がその根底にはあって、「どうやって創っていくんだろう?」といった感覚がまだあります。なので、映画製作のベテランの方々がいらっしゃる現場に入ると、まわりに流れている時間と自分に流れている時間とのスピード感が違うのを感じました。

監督にお会いするまでは、こんな難しい作品を書かれるくらいだから、すごく気難しい人に違いないという妄想が膨らみ、この映画のモチーフにもなっている「死者の書」(折口信夫著)を読んだり、いろいろ勉強してどこから突っ込まれてもいいように準備しようとしました(笑)。でも、それは杞憂で、実際に監督にお会いするととても柔和な方で、映画を創りあげていくうえでの意見交換もできるような方でした。むしろ、みんなと交流しながら一緒に創っていくことを楽しんでくださる方でした。そのような環境の中で、現場でのスピード感の中の一部に自分がなれている気がして、それが新鮮であり、「モノを創るのって楽しかったんだよなぁ~」という原体験を味わえる素敵な撮影現場でした。

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―― 撮影現場となった葛城市の方々との交流はありましたか?どのような印象を持ちましたか?

朝から晩までとてもよくしてくださいました。撮影がスムーズにいくように全面的に協力してくださって、お昼のお食事だけでなく夜のお弁当までご用意してくださいました。作品に出演してくださっている方々もたくさんいらっしゃって、撮影現場というより、そこに住んでいるという感覚になれたのがとてもありがたかったです。

葛城市は、どこにでもあるような安心できる場所でした。いい意味で特別な場所ではなく、「この感覚知っている」と思えるようなどこにでもある空気感だったり、子どもの声が聞こえてきたり、この作品の世界に入るのにとても良い環境をつくっていただきました。

そして、奈良の自然がとても素晴らしく、美しかったのがとても印象的でした。これ、ぜひ書いてください(笑)。

【画像】映画『かぞくわり』場面カット

―― 陽月華さんが演じられた香奈は、大きな変容を遂げていく非常に難しい役柄だったと思いますが、役作りをどのようにされましたか?

当初、脚本を読んでもパッとイメージが浮かびづらく、撮影前の衣装合わせの際に監督にお会いしたので、疑問点を投げかけて答えをいただいたりしたのですが、それでもなかなかピンとくることができないまま撮影の初日を迎えました。わたし自身、少々気負いがあったせいか、「こんなんでいいのかな?」といった焦りのようなものもありました。撮影2日目あたりに小日向さん(陽月華さん演じる香奈の父親役)が入ってくださって、家族のキャストさんたちと監督を交えた台本会議のような機会をつくってくださり、そこで抱えていた疑問点や役の中でみんなが共通認識しておいたほうがいいことなどを確認しあうことができました。その後も、朝現場に入ると撮影シーンに関して確認し合ったうえで撮影に入るといった形をとってくださったので、最初はぼんやりとしか見えてこなかった像が徐々に形や肉付きがみえてきて、役に近づけていくことができました。

―― 演じるうえで難しかったことや、苦労されたことはありますか?

監督が描かれているイメージを外さないように演じることが難しかったです。監督は、ここは絶対こうしてほしいといったものを持っていらっしゃるけれども、だからと言ってすべてにおいてがんじがらめなわけではなく、例えるならば、「線は示さず点は示す」といった感じでした。なのでどう表現していいか掴みきれず、当初は、「そのイメージをもっとわかりやすく教えてくれよー」と思っていたのですが、監督とお話してるうちにだんだんとどう演じたらよいか見えてきて楽しめるようになっていった感じです。監督は、脚本に書かれている文字を映像化していくことで、どんな作品になっていくのかワクワクしているようなところがあったと思います。だけど、監督として外せない「点」はあるので、監督がこの作品で表現したいと思われていることを、ちゃんと受け取って演じていきたいな、監督の溢れる思いをそのままみせたいな、という思いで演じていましたが、「点」しかわからなかったので選択肢がありすぎて難しかったです。

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―― 画を描かれるシーンはとても神がかっていました。どのように取り組まれたのか教えてください。

チーフプロデューサーの弓手研平さんは本職が画家でいらっしゃって、弓手さんの作品を劇中でも使わせていただいているんですが、監督も弓手さんの作品を観てインスパイアされてこの物語が生まれたということがありました。なので、弓手さんの感覚、表現、その表現方法などが大事だということを肌で感じていました。いつも弓手さんが現場にいらしてくださっていたので、些細な疑問がでてきたときでもすぐその場で聞けるという恵まれた環境にありました。

それから、弓手さんがご自身のアトリエに招いてくださり、描き方や絵に対する想いなどをとても丁寧に悦明してくださいました。それだけでなく弓手さんは、絵を描くために必要な大事な道具を貸してくださいました。道具ってとても大切だと思うんです。たとえ使えこなせなくともいつも持っているだけで、撮影の日に初めて手にするよりだいぶ違うかなと思いまして。ほんとうに恵まれた環境で取り組むことができました。

【画像】映画『かぞくわり』場面カット

―― 香奈とご自身との共通点や親近感をもったところなどありましたか?

劇中の香奈を大きく2つに分けるとしたら、一見ダラダラした生活をしている前半の香奈と、洞窟のなかで好きなことに没頭している後半の香奈とあると思うんですが、前半の香奈の時間の過ごし方が自分に似ているかなって思います。別につまんないわけではなくってボーっとしているのでもないですけど、ふらふら自転車に乗ってみたり、そういう役って今までやったことがなかったので、すごく楽しくできました。

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―― 『死者の書』をモチーフにつくられた本作ですが、「転生」についてどう感じられましたか?

『死者の書』はすごく難しかったです(笑)。自分はこうだという確固たる思想があるような人間ではまったくないんですけど、「転生」について、そういうことってあるのかなぁとか感じています。わたしはすごく1つの宗教に明るいわけではなくって、例えば、友達のキリスト教での結婚式にもいくし、お盆にはお坊さんが家に来るといった、ごく一般的な日本の家庭で育った人の感覚なんです。ですが、職業柄もあって、お坊さんからお話しを聞くことがあって、興味を持って聞くと、転生に関する様々な考え方を教えてくれて、「もしかしたらあるのかなぁ・・・」って、ずっと思っていました。法事の時に、自宅でお経をあげてくださったお坊さんが、「お盆は仏様の夏休みで、仏さまも修行しています」みたいなことをおっしゃられて、死んだらまた自分も修行しなきゃいけないなんて、すごい大変だなぁって思いました。自分としては、死んだら「無」のほうが楽なのかなぁって思ったり、今はそう思っているんですけど、ちっちゃいときは死ぬのがすごく怖かったりとか、ん~、なので、まったく定まっていません。

【画像】映画『かぞくわり』場面カット

だけど、その人が「転生」についてどう考えているのか、とか、その考え方がなぜ生まれてきたのか、ということにすごく興味があります。それと、こういう不思議な話が大好きなんです。この作品も「転生」がモチーフにある不思議な作品なので、こういう世界もあるのかなぁって思っていただくと、今まで見ていた世界が変わると思うので、そういった観点からも楽しんでいただけるかなって思います。

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―― 謎の集団が企てていた計画はどのようなものだったと思いますか?

それについては、台本会議の時に「これは結局どうなんだ?!」といったように明確な答えを求めたところ、監督の中には明確な答えがありました。ところが、役者さんは様々にとらえて演じていて、監督はそれを楽しんでいらっしゃる感じでした。たぶん監督のなかに明確な答えがあるけれども、観る人がどう観るかということでいいという感じなんだと思います。絵もそうだと思うんですが、その絵の解説書や音声ガイドの説明はどんなものだったとしても、わたしには「愛」に見えると思ったら、悲しい絵でも「愛」の絵になったり、それがその人の正解であるわけだから、もう難しく考えなくってもいいのかなって途中から思ったんです。で、わたしは試写を観せていただいたときに、自分の中では「わたしはこう思う」っていうことは言えるんですけど、それ言っちゃったらもったいない気がするので、みなさんが自由に想像していただくのがいいのかなって思います。

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―― 今回、様々なジャンルを経験されてきた方々や若手と共演されたわけですが、何か得たものはありましたか?

わたしは、共演する方々のお話を聞くのがすごく好きなんです。経験豊かな方々からいろんなお話を聞かせていただきました。その方々の現場での自然なありかたとか、こちらが気づかないように共演者の方々が演じやすいように自由にしてくださるさりげない気の遣い方をしてくださって、とても勉強になりましたし、自分もそういう人間になりたいなと思いました。
今回、高校生の木下彩音ちゃん(香奈の姪っ子の松村樹月役)がほぼ演技が初めてという状態で出演されたのですが、すごく目がきれいな女の子で、純粋な真っ白さがあるんです。できあがった映像を観たら、実際の目もすごくきれいなんですけど、スクリーンに映っている目がほんとうにきれいで、生きていて、こういう人っているんだなぁって思って、彼女の雰囲気とかあり方にも教えていただくことがたくさんありました。

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―― 共演された方々と、どのような交流がありましたか?

撮影はすごく朝が早く始まるので、現場ではみんな眠くてしょうがないんですけど、そんなときでも小日向さんがずっと都市伝説系の話をしてくれるんです。未確認飛行物体とか不思議な生物とかの話をしてくださって、みんなで盛り上がっていました。すごく楽しい現場で、みんなが休みの日だったときに明日香村の古墳をまわったりしたんですが、「古墳だねー」「これが石舞台ね」って普通に見るだけではなくって、小日向さんが不思議情報をトリビア的におっしゃってくださるので、すごく楽しいツアーでした。

【画像】映画『かぞくわり』場面カット

―― 香奈を演じたことで、ご自身の家族に対する考え方や向き合い方に変化はありましたか?

特別な変化はないように思います。わたしは両親の愛情に守られて生きてきたっていう自覚があるんですけど、あらためて両親の愛情を感じました。あとは、家族の大切さや家族の愛ってあたり前すぎて気づかないことがあったりすると思うんですけど、脚本を読み込んだり監督の家族に対する想いを聞いたりしているうちに、それを再認識させてもらうきっかけになったかなと思いました。

監督ご自身のご経験を伺うこともあったのですが、「その経験を映画にした方がいいんじゃない?」と思えるような様々なご経験をされていて、その複雑なご経験のなかから生まれたシンプルな答えがこの映画の主軸になっていて、結局ここなんだなって思いました。

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―― 陽月さんが感じられた香奈と家族の変化は、どのようなものでしたか?

ちゃんと言葉にして伝えられるようになったと思います。家族だから察してくれよっていうんじゃなくって、それだとほんとうの思いが伝わらなかったりするからダメだと思うんですけど、言葉にしなきゃ伝わらない。言葉に頼りすぎてもいけないけれど、ちゃんと伝えて相手に渡すということが大切だと思うんです。香奈だけでなくお父さんも伝えることから逃げていたけど、それではわかりあえない。家族であろうとちゃんと伝えることは大事だなって思いました。

【画像】映画『かぞくわり』場面カット

―― 完成した『かぞくわり』をご覧になられたとき、どのように感じられましたか?

自分が出ている映像を観るのが得意な方ではないので、観るのが怖かったです。ですが、今回は自分が出ているということをあまり意識せずに、1つの作品として観ることができました。一番思ったのは、出演されている役者さんがみなさん素敵だなということと、自分のことを客観的に観れてよかったなということ、撮影前に脚本を読んだ時に疑問に思っていたことが「これなんだ~」というように腑に落ちたことが嬉しかったです。

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―― この映画をどのような方に観てほしいと思われますか?

観ていただくことってとてもありがたいことだと思うし、観ていただいてこその作品なので、たくさんの方に観ていただければ嬉しいです。家族の映画だから家族で観てほしいとかではなく、できれば大声で「この映画『かぞくわり』を老若男女問わず、世界中の方々に観てほしい!!」って叫びたいくらいなんです。この映画は答えが出づらい作品だと思いますので、観てくださってから「わたしはこう思う。あなたはどう思う?」というようにコミュニケーションのきっかけになったりするといいなぁって思います。

―― 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆様へメッセージをお願いします。

[インタビュー: 神原 貴子 / スチール撮影: 坂本 貴光]

プロフィール

陽月 華 (Hana Hizuki)

1980年生まれ、東京都出身。1998年に宝塚音楽学校に入学。2007年に宙組トップ娘役に就任。2009年に宝塚歌劇団を退団し、芸能活動を開始。以降、舞台・ドラマ・映画など多方面で活躍中。映画出演作に『劇場版 ミューズの鏡~マイプリティドール~』(2012年/福田雄一監督)、『駆込み女と駆出し男』(2015年/原田眞人監督)、『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年/河合勇人監督)がある。2019年は本作のほか、『二階堂家物語』(アイダ・パナハンデ監督)、『あの日のオルガン』(平松恵美子監督)に出演。

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映画『かぞくわり』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『かぞくわり』ポスタービジュアル

《ストーリー》

堂下香奈、38 歳。画家になる夢を挫折し、両親の元で無気力な生活を送っていた。ある日、妹の暁美と娘 の樹月が家に住み着き、香奈を軽蔑したことで堂下家の生活が一変する。家に居づらくなった香奈は神秘的な男性と 出会い、ふたたび絵を描くようになった。絵に没頭するようになり、香奈が内に秘めていた魂が解き放たれる時、家 族、そして奈良の街に危機が降り掛かる——。

 
出演: 陽月華、石井由多加、佃井皆美、木下彩音、松村武、星能豊、今出舞、小日向えり、関口まなと、雷門福三、国木田かっぱ、竹下景子、小日向文世
 
脚本・監督: 塩崎祥平
音楽: Slavek Kowalewski
LLPプロデューサー: 田中敏彦、佐藤聞雄
プロデューサー: 弓手研平
キャスティングプロデューサー: 近藤芳憲
撮影: 早野嘉伸
照明: 杉山文朗 美術: 橋本泰至 
録音: 出口藍子 サウンドデザイン: 石井ますみ
編集: 目見田 健 音響効果: 中村佳央 助監督: 高田眞幸 
ヘアメイク: 笨田ゆかり、近藤幸子(竹下景子) 衣装: 斎藤安津菜
ラインプロデューサー: 馬場麻紀 
音楽監修: 大倉源次郎
特別協賛: みぞえ画廊 
協賛: セントラル画材株式会社、ホルベイン株式会社
企画製作: かぞくわりLLP
配給: 日本出版販売株式会社
宣伝: アルゴ・ピクチャーズ 
2018年 / 日本 / アメリカンビスタ / 5.1ch / 129分
© 2018かぞくわりLLP
 

2019年1月19日(土)
有楽町スバル座・TOHOシネマズ橿原ほか全国順次公開!

映画公式サイト
 
公式Twitter: @kazokuwariLLP #かぞくわり
公式Facebook: @kazokuwari

この記事の著者

Takako Kambara

Takako KambaraCinema Art Online 専属ライター

★好きな映画
『素晴らしき哉、人生!』 (It's a Wonderful Life) [監督: Frank Russell Capra 製作: 1946年/米]
『太陽と月に背いて』 (Total Eclipse) [監督: Agnieszka Holland 製作: 1995年/英]
『きみに読む物語』 (The Notebook) [監督: Nick Cassavetes 製作: 2004年/米]

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