脚本家・高野水登 インタビュー
超魅力的な悪役とギャンブルのハラハラ感が「賭ケグルイ」の世界に引きずりこむ!
生き生きと賭け狂うキャラクターたちを劇場で!!
河本ほむら原作、尚村透作画、月刊「ガンガンJOKER」(スクウェア・エニックス刊)で好評連載中の大ヒット漫画「賭ケグルイ」。スピンオフも数多く発表され、シリーズ累計部数は620万部を突破。2019年5月には完全オリジナルストーリーによる『映画 賭ケグルイ』が全国ロードショーされ、大ヒットを記録した。今年2021年3月には早乙女芽亜里が主人公の「賭ケグルイ双」が実写ドラマ化され、Amazon Prime Videoにて全話独占配信中。
そして、待望の劇場版最新作『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』が、2度の公開延期を経てついに6月1日(火)に公開された。
劇場版第2弾となる今作は、生徒代表指名選挙を終え、束の間の平穏が戻ったかのように思われた私立百花王学園ひゃっかおうがくえんで、主人公・蛇喰夢子を中心とした熾烈なギャンブルバトルが再び巻き起こる完全オリジナルストーリー。
主人公・蛇喰夢子役の浜辺美波をはじめ、鈴井涼太役の高杉真宙、早乙女芽亜里役の森川葵、生徒会長・桃喰綺羅莉役の池田エライザが続投。また「賭ケグルイ」シリーズ史上、最も狂気に満ちたキャラクター視鬼神真玄役を人気グループ・ジャニーズWESTの藤井流星が演じる。
これまでのドラマ&映画「賭ケグルイ」に引き続き、英勉監督とタッグを組んで脚本を手掛けたのは脚本家・高野水登。彼に『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』の魅力を存分に語ってもらった。
悪役好きにはたまらない最凶悪役・視鬼神真玄の魅力が滲み出る‼
―― 今作も完全オリジナルストーリーでの映画化ですが、コンセプトはどのように考えられたのでしょうか?
最初は“お茶会”だったり、“密室ミステリー”みたいなアイデアも出ていました。前作の『映画 賭ケグルイ』は、“非ギャンブル・不服従”という「賭ケグルイ」最大のアンチテーゼをぶつけたかなり深いテーマで、色々な勢力が絡み合う戦いになっていたと思います。
今作でそれを超えるには、強い悪役を出して、“最強同士が素手で殴り合う王道の話”にしないといけないという話になりました。複雑なものを求める人が多いこの時代ですが、“どシンプルで勝負する”というところは意識しました。
でも正直、夢子に匹敵するほどの強い敵を出してそれでスベったらと思うと、個人的にはかなり怖かったです(笑)。「逃げていては駄目だ!」と覚悟を決めましたが、結果的にも本当にそれで良かったと思っています。自分でも納得できるお話ができたと思いますし、なにより視鬼神役の藤井さんがめちゃくちゃ格好良かったので!
―― 今作に登場する最凶ヴィラン“視鬼神真玄”のキャラクターは、どのように確立されたのでしょうか?
視鬼神というキャラクターには本当に拘りました。どうやったら最悪な奴になるか、夢子を負かせることができるのか…。観る人が「最後はどうせ夢子が勝つんでしょ?」って思いながら観ることにならないようにも、ヴィランである彼をいかに恐ろしく見せるかすごく考えました。
視鬼神は場外戦が強い。夢子も「例えるなら巣を張って獲物を罠にかけるジョロウグモ」と言っていたりしますけど、ギャンブルそのものと関係ないところで勝ちを決めてきますからね。なおかつ、全ての選択肢が最悪な中で「お前はどの最悪を取る?」っていうのを常に突き付けていじめてくる、“最悪の二択を迫ってくる”キャラクターにしたんです。
「賭ケグルイ」の蛇喰夢子っていうのは、葛藤や悩みすらない “絶対負けない最強のヒーロー”だと思うんです。それにも匹敵する最強っていうのが視鬼神真玄。“最凶のヴィラン”と謳ってますけど、一言で“ただの悪い奴”とは言えないような、不思議な魅力があって。拘っただけあって本当に良い悪役に仕上がりました。
そんな視鬼神というキャラクターが監督の演出と藤井さんの演技によって最高に格好良く作り上げられているので、そこは今作最大の見どころの一つになっていると思います。
―― 「賭ケグルイ」のキャラクターは特徴的な名前が多いと思います。“視鬼神真玄”という名前も非常にインパクトがありますが、名前の由来は何ですか?
前作では、メインのゲストキャラクターの名前は「賭ケグルイ」原作者の河本ほむら先生に決めていただいていたのですが、今作では僕が自分の厨二病の部分を引き出して一生懸命考えました。
“視鬼”の部分は、“色しき”から取っています。もともとこの設定は監督のアイデアなんですけど、視鬼神は人のオーラのようなものを色として“視る”ことができる共感覚の持ち主で。そこに“鬼”だったり“神”だったりの漢字も使って、強そうで格好良い名前をつけさせてもらいました。あとは実際そんなセリフもありますけど、“真玄まくろ”は「綺麗な色も全部“真っ黒”に塗りつぶす」というニュアンスです。
ちなみにネーミングに関して言うと、“デュエル・ダイス・スタッキング”で芽亜里めありの相手をした“葱韮ねぎにら”くんの名前は複数の方からふざけすぎだと怒られました(笑)。でも結局そのまま通ったのでありがたかったです。
―― そんなこだわりのキャラクターですが、藤井流星さん演じる視鬼神をご覧になってどう思われましたか?
今作は“色んな人を出してお祭り感を出す”というよりも、“とにかく強くて格好良いゲストキャラクターを一人置く”っていう勝負をしようとしていたので、その視鬼神を演じる方に十分な演技力や知名度、エネルギーなどがなきゃ全部が成り立たなくなってしまう。そういった理由もあって、僕自身はキャスティングに直接関わったわけではありませんでしたが、プロデューサー陣も相当こだわっていたと思います。
いざ試写を観てみたら冒頭の掴みから本当に格好良くて、鳥肌が立ちました。「これは100点超えてる!5億点!!」と大興奮してしまいました(笑)。“藤井さんが視鬼神役を演じる”という賭けに大勝ちしたことを確信した瞬間でしたね。
藤井さんから滲み出るものもあって、悪役好きとしてはたまらない悪役ができたと思います!悪役ファンの方には是非今作を観て欲しいですね。僕自身“本当に悪い奴なのに惹かれてしまう”みたいなのがすごく好きで、そこに迫るものになったかなと思っています。
視鬼神というキャラクターが本当に大好きなんですよ。自分の厨二病の部分がくすぐられて、本当に「格好良いなぁ…!」って思いながら観ていました。僕が中2の時にこの映画を観たら多分真似してます(笑)。
「生死が賭けられているからこそのヒリヒリ感を感じて欲しい」
“指名ロシアンルーレット”‼
―― 高野さんはゲームにも精通されていますが、今作のギャンブル(ゲーム)は高野さんが考えられたのですか?
今回は基本僕ですね。大体は自分がやったことのあるゲームからヒントを貰って考えたみたいな感じでした。
もともと父が筋金入りのゲーム好きで日本有数レベルにボードゲームを持っていて、家にボードゲームのための物置きがあるぐらいなんですよ(笑)。なので僕もゲームが好きで、小学生くらいの頃からよくやっていたんです。
―― 芽亜里が挑戦したのは“デュエル・ダイス・スタッキング”というギャンブルでした。なぜこのギャンブルを選んだのでしょうか?
芽亜里役の“ワイルド・スピード森川”の異名を持つ森川さんがバラエティ番組「それって!?実際どうなの課」(NTV)出演の際、短時間で習得したという得意技“ダイス・スタッキング”を是非やって欲しいという話になって、このギャンブルに決まりました。なのであのシーンは映像のトリックとかは使わず森川さんが実際にやってます。すごいですよね!
―― また、続いての夢子VS視鬼神のギャンブルに“ブラック・テキサス・ホールデム・ポーカー”を選んだ理由もお聞かせください。
前作でもじゃんけんがベースのギャンブルがありましたが、映画なのでスピード感も大切ですし、ルールを理解するために頭を使ってしまうとお話に入れないので、やっぱりシンプルなゲームが良いというのがありました。そうするとやっぱりポーカーが良いんじゃないかと思ったんです。
ポーカーと聞いて日本人が思い浮かべがちなのは手札が5枚のルールのものだと思いますが、手札が2枚のこの“テキサス・ホールデム”式が実は世界的に一番メジャーなんですよね。僕は正直こっちのほうがルールはわかりやすいんじゃないかと思っていて。それこそこれは昔やったことがあって、改めてまたやってみたら「これは観ている人にもわかりやすそう」って思ったのでこのギャンブルに決めました。あとちょうどその時期にポーカー系YouTuberの“世界のヨコサワ”さんという方と知り合ったので、その影響もあったりします(笑)。
そこになんとかして「夢子が勝つことによって何か嫌なことが起こる」っていう仕組みを組み込みたかったんです。夢子って、例えば“指を賭ける”とかだと動じないどころか喜んでやっちゃいますよね。だから「ギャンブルは普通に進むけど、全然関係ないところで何か嫌なことが起こる」というのにしたんです。夢子でも多分それは嫌がるんじゃないかなと思って。
メジャーで分かりやすく、パッと見て「どっちが勝つ!?」っていうヒリヒリ感が伝わる。さらにその中に視鬼神らしい罠が仕掛けられる…。そういう風な色々な要素が加わって、このギャンブルができたという感じですね。
―― 夢子・綺羅莉・視鬼神三つ巴の最終決戦のギャンブルに選ばれた“指名ロシアンルーレット”ですが、このギャンブルはどのようにして生まれたのでしょうか?また他にはどのような案が出ていましたか?
最初のほうのプロットでは、トランプを使うギャンブルとかも考えていました。でもカードゲームというだけだと、前回と同じな上どうしてもヒリヒリ感が足りない。そこで「ロシアンルーレットってドキドキするよね」って話が出たんです。
マニアックな情報ですが、カードが出されるごとにルールがどんどん追加されていくフラックス(fluxx)というカードゲームがありまして。この感じをロシアンルーレットに持ってきたら、“誰かが場をコントロールしていて、そのコントロールをさらに抜けた者が勝つことができる”みたいな面白さを出せるんじゃないかとこの“指名ロシアンルーレット”というギャンブルを考えてみました。
極端な話をすると、これって人の命が懸かっていなかったらあまり面白くないゲームなんですよ。でも生死が賭けられることによって、その人が思うのは「大事な人を殺したくない」かもしれないし、「人殺しになりたくない」っていうのもあるかもしれない。やっぱり“生死を賭けたヒリヒリ感”というのがとても大切で、そこに “常に最悪の二択を迫ってくる”視鬼神のキャラクター性が加わってこのルールになりました。
生死を賭けるという点では、本当に初期の頃ですけど、“後ろに水槽みたいなものがあって、賭けるごとにどんどん水が溜まっていって溺れ死にそうになる”みたいなギャンブルの案もありました(笑)。
印象的なシーンを語る!!
思い入れのある爆発シーン実現に感無量?
―― 特にお気に入りのシーンはどこですか?
完全に個人的なものだと爆発のシーンですね。僕は娯楽映画に必要なものは「①爆発②人死に③カーチェイス」だと思っていて、それほどに“爆発”が大好きなんです(笑)。
それで今回、正直半分投げやりで「ギャンブルに絡ませて爆発がやりたい」って案を出したんですけど、なんとそれが通ったんです!本当に感無量でしたね。ついに自分の書いたもので爆発が起こったっていうので、すごく嬉しかったです。
―― 今作で強烈なインパクトを残したキャラクターの一人である開拓地長・討嶋うちしま役として、前作で生徒会役員・豆生田楓をまにゅうだかえで演じた中川大志さんが再登場しましたが、どういった経緯だったのでしょうか?
まず開拓地は、“お金がなくなると開拓地送りになる”っていう人生ゲームのイメージなんです。面白いなと思って、“開拓地長”っていうのは確かにもともと考えていたんですよ。借金の取り立て役の言ってしまえばモブキャラなんですけど、僕の記憶が確かなら「こういうの大志がやったら面白いんだよな」みたいなことを監督が仰っていて。そしたらまさかのそれが実現したんです。あれは本当に色々と奇跡でした(笑)。
―― 芽亜里と鈴井のミュージカルシーンも印象的でした。
「芽亜里の見せ場を作りたい」とこのアイデアが出たんですけど、あれはまさに“監督入魂”のシーンでした。森川さん(芽亜里)と高杉さん(鈴井)の迫真の演技と歌が凄かったですし、タイミングが急なのもギャップがあって面白かった(笑)。
劇中歌「開拓民の唄」の歌詞は僕も一緒に考えましたけど、何より監督がすごくこだわってました。英監督はミュージカルがお好きなんだと僕は思ってます(笑)。
“ただただ気持ちの良いエンターテイメント映画”
気になる続編は「皆さん次第」‼
―― 改めて、映画の見どころを教えてください。
キャラクターが生き生きしているところだと思います。ちゃんと“命を宿している”っていう感覚もあって、脚本を書いていて、キャラクターのセリフで「ここなんて言うかわからない」というところはほぼありませんでした。 それにキャストの皆さんも本当にのびのびと演じられていて、それがすごく魅力的で、観ていて楽しい。ちょっとしたアドリブとかもあったり、それこそ夢子が「体育祭がなくならないんでちゅ」って言うシーンは予告でも流れてますけど、「ちゅ」なんて僕書いてないんですよ(笑)。でもそういうのがめちゃくちゃ面白かったりして。
あと、やっぱり個人的にはギャンブルのハラハラ感を楽しんでもらえたら嬉しいです。シンプルかつ、正直ルールをよくわかっていなくてもドキドキできるものにしたつもりですし、見てる人をどれだけハラハラさせられるかっていうのを考えて作ったところがあるので。「ジェットコースターに乗ってたら空飛んじゃった」みたいな、止まるところを知らず色々な所に連れて行かれる。ただ“ギャンブルをする”ってだけではなく、笑えて、ドキドキして、怖いところもあって…色んな楽しみが詰まった映画になったと思っています。
本当ににただただ気持ちの良いエンターテイメント映画になっています。実は実際映画の作りもそうなっているんですけど、“引きずり込まれる”ような感覚になると思うので、身を委ねて、是非のめり込んで楽しんでいただきたいです。
―― 早くも期待される映画の続編について、一言お願いします!
「皆さん次第」ですね!たくさんの人が本作を観に来てくださって「次が欲しい!」「続きが観たい!」と言ってくださったら、もしかしたらあるのかもわかりません(笑)。
―― 最後に、高野さんご自身の今後の目標や挑戦したいことを教えてください。
自分が漫画が大好きというのもあって、漫画が描きたいです!人とのコラボレーションが映画やドラマの魅力だと思います。ただ“隕石が降ってくる”とか“ファンタジー”だったりをやるのは色んな意味で難しい。でもそういう話が好きなんですよね。それが描けるのはやっぱりアニメーションや漫画など二次元の世界だと思います。
脚本家をしていて、ビジュアルっていうものの強さを痛感することがよくあります。それこそ視鬼神しきがみというキャラクターも、ビジュアル一発で“ドーン”と来るじゃないですか。ああいうのは文字ではどうしても表現しきれないんですよね。そこの化学反応がもちろん良いところでもあるんですけど、一度、自分で一から世界を作ってみたいっていう気持ちがあって。挑戦という意味で、漫画原作とかやってみたいですね!
プロフィール
高野 水登(Minato Takano)1993年、神奈川県出身。2017年にドラマ「仮面ライダーエグゼイド」のスピンオフ作品(裏技シリーズ)にて脚本家デビュー。映画『3D彼女 リアルガール』(2018年)で脚本を英勉監督と連名にて担当。以降、ドラマ「賭ケグルイ」(2018年/MBS・TBS)、「賭ケグルイ season2」(2019年/MBS・TBS)、『映画 賭ケグルイ』(2019年)、ドラマ『映像研には手を出すな!』(2020年/MBS・TBS)、映画『映像研には手を出すな!』(2020年)で英勉監督作品の脚本を手掛ける。 2021年にはドラマ「賭ケグルイ双」がAmazon Prime Videoにて独占配信され、シリーズ劇場版第2弾となる『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』が公開。 その他、主な近作に映画『いなくなれ、群青』(2019年)、ドラマ「あなたの番です」Huluオリジナルストーリー「扉の向こう」(2019年/NTV)、「仮面ライダーゼロワン」(2020年/EX)などがある。 |
『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』予告篇🎞
映画作品情報
《ストーリー》ギャンブルの強さだけで学内のヒエラルキーが決まる私立百花王学園。蛇喰夢子(浜辺美波)の脅威に、生徒会が危機感を募らせる中、上納金を支払うことができない「家畜」の数が激増。 そんな中、2年前のある事件を機に、停学処分を受けていた視鬼神真玄(藤井流星)が舞い戻る。彼の策略にハメられた夢子は打ち負かされ、ギャンブルを封じ込められてしまう。傍若無人な視鬼神は、ついには桃喰綺羅莉(池田エライザ)を生徒会長の座から引きずり下ろす。 そして迎えた、会長交代式。夢子は視鬼神に“公式戦”を申し込むのだった―。 |
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公式ハッシュタグ: #賭ケグルイ