
ガブリエーレ・マイネッティ監督 インタビュー
イタリア版『レオン』の衝撃!!
日本のアニメから生まれた、エゴイスティックなダークヒーローの真髄
2016年のイタリア・アカデミー賞(第61回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞)で最多7部門を受賞し、イタリア国内で社会現象を巻き起こした映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(原題:Lo Chiamavano Jeeg Robot)が、ついに5月20日(土)より日本で劇場公開される。

本作は、漫画家・永井豪原作の日本のアニメ「鋼鉄ジーグ」を重要なモチーフに、孤独なチンピラが超人的なパワーを得て、「ヒーロー」へと目覚めていく姿を描いたダークヒーロー・エンタテインメントだ。
監督・音楽・製作を務めたのは、本作が長編デビュー作となるイタリアの新鋭、ガブリエーレ・マイネッティ。来日時に登壇した最速上映会でも、その溢れんばかりの映画愛と日本文化への造詣の深さで観客を魅了した。
公開を目前に控えたマイネッティ監督にインタビュー。本作の核となる「エゴイズム」というテーマや、リュック・ベッソン監督の名作へのオマージュ、そして物語に込められた視覚的な仕掛けについて、熱く語ってもらった。
ローマの現実と「エゴイズム」が交差する物語
―― 本作を拝見して、現代のイタリア、あるいは今のイタリアが抱える側面を色濃く映し出している印象を受けました。
確かに、ローマの郊外(ペリフェリア)が持つ側面や、人々が名声を渇望する様子、それに付随する醜さ(トラッシュ文化)、そして現代的なテロへの恐怖といった現実は意識しています。
また、登場人物たちを突き動かしているのは強烈な「エゴイズム」です。脚本を執筆している時、「もしイタリアでゾンビの伝染病が発生しても、イタリア人は絶対にお互いに助け合ったりしないよね」とよく冗談を言っていたほどです(笑)。
どん底の人生を歩み、エゴイストになる理由をすべて持っているような男(エンツォ/クラウディオ・サンタマリア)が超人的な力を手に入れた時、どう振る舞うかを描きたかった。イタリアでは、普通の人であっても、突然そんな力を得てすぐに他人のために使うなんて誰も信じないだろう、というリアリズムに基づいています。

リュック・ベッソン監督『レオン』へのオマージュと独自の反転
―― 物語の構成やキャラクター造形において、影響を受けた作品はありますか?
まだ日本の皆さんにお話ししていない非常に重要なリファレンスがあります。実は、この映画はリュック・ベッソン監督の『レオン』(1994年)から強い影響を受けています。
主人公のレオン(ジャン・レノ)が牛乳を飲み、観葉植物を大切にしているように、本作のエンツォは孤独な生活の中で子供のようにプリンを食べ、植物の代わりにポルノビデオを心の拠り所にしています。
また、アレッシア(イレニア・パストレッリ)というキャラクターは、子供のように振る舞う大人の女性として描きました。これは『レオン』のマチルダ(ナタリー・ポートマン演じる、大人のように振る舞う子供)の逆のパターンです。
悪役のジンガロ(ルカ・マリネッリ)も、ゲイリー・オールドマンが(『レオン』で)演じたスタンスフィールドのような狂気を孕んでいますが、より人間味のあるキャラクターに昇華させました。

主人公エンツォに投影された、監督自身の姿とリアリティ
―― 主人公エンツォのキャラクターには、監督自身の経験や実在の人物が反映されているのでしょうか?
エンツォがポルノに執着している設定は、実際にローマで起きた事件から着想を得ています。ゴミ屋敷のような家の中で、何千本ものポルノビデオに囲まれて亡くなり、1週間後に発見された男性がいたのです。
また、私の幼馴染たちからは「エンツォは監督そのものだね」と言われます。自分では無意識でしたが、正直にキャラクターを追求した結果、自分自身が投影されたのかもしれません。
―― 監督が特に気に入っているシーンを教えてください。
たくさんありますが、例えばスタジアムの下での格闘シーンです。イタリア映画ではあまり見られない描写なので、大きな挑戦でした。あとは、アレッシアが理性を失うシーンの演出も気に入っています。カメラワークを工夫し、彼女の主観的な恐怖と、それを見つめるエンツォの驚きを表現しました。
観覧車のシーンも、予算が限られている中で工夫を凝らした、手作り感のあるお気に入りの場面です。

視覚的な変化で描く、孤独な男が「ヒーロー」になるまで
―― 終盤で「ジーグ」のマスクが登場するシーンは、日本のファンにとっても胸が熱くなる展開です。
あのマスクは、アレッシアが彼のために編んだ「愛の証」です。普通のヒーローは自分の正体を隠すために自分でマスクを作りますが、彼は彼女から「ヒーロー」としての役割を与えられたのです。
また、物語の大部分で、エンツォは修行中の身を象徴するような「黒」い服をずっと着ていました。そんな彼が、最後にカラフルな色(鋼鉄ジーグのカラー)を身に纏うのは、彼が真のヒーローになったことを視覚的に示しているのです。
日本文化への愛と観客へのメッセージ
―― 日本に滞在されて、好きな食べ物は見つかりましたか?
寿司(Sushi)が大好きです!特にサーモンが好きで、一度に20貫は食べられますよ(笑)。ローマでも週に一度は寿司屋に行くほどです。ラーメンも美味しいですが、少し私には重いですね。天ぷらやそばも気に入っています。
―― 最後に、公開を待つ日本の観客へメッセージをお願いします。
シネマアートオンラインの読者の皆さん、こんにちは。本作は、日本のアニメ、イタリアの現実、そしてヒーロー映画のルーツであるアメリカという、3つの文化が融合して生まれた非常にエキサイティングな映画です。
ぜひ劇場に足を運んで、この「イケてる」映画を楽しんでください!
イタリア映画界に突如現れた異才、ガブリエーレ・マイネッティ。彼の語る言葉からは、古典的名作への敬意と、自国の現実を冷徹に見つめる視線、そして何より日本文化に対する深い愛が伝わってきた。エゴイズムの果てに、男が「ジーグ」の名を背負う瞬間――その圧倒的なカタルシスを、ぜひ劇場で体感してほしい。
プロフィール
ガブリエーレ・マイネッティ (Gabriele Mainetti)1976年11月7日、ローマ生まれ。 20歳の時、シナリオライティングに情熱を見出し、監督志望でレオナルド・ベンヴェヌーチ(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』『アルフレード アルフレード』脚本)主催のワークショップに参加する。 ニューヨーク大学のティッシュ・スクール・オブ・アートで、演出、脚本、撮影も学ぶ。演技のキャリアは舞台から始まり、映画やTVで重要な役どころを演じるようになる。 2011年、制作会社Goon Filmsを設立し、長編デビュー作『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』(2015年)が第10回ローマ映画祭で上映される。 この映画で、2016年に第61回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(David di Donatello 2016)で最多16部門ノミネート・最多7部門受賞、第56回イタリア・ゴールデングローブ賞(56ª edizione dei Globi d’oro)で最優秀作品賞受賞、さらに第31回チャック・ドーロ賞(31ª edizione dei Ciak d’oro)4部門、そして第70回シルバー・リボン賞(70ª edizione dei Nastri d’argento)2部門を受賞。この他、短編映画の『Basette(原題)』(2008年)、『Tiger Boy(原題)』(2012年)が知られており、後者は第67回シルバー・リボン賞(67ª edizione dei Nastri d’argento )で最優秀短編映画賞を受賞、また第86回アカデミー賞で短編実写映画賞のショートリストに選出された。 |
映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』予告篇
映画作品情報

《ストーリー》舞台は、テロの脅威に晒される荒廃したローマ郊外。孤独なチンピラ、エンツォは、ふとしたきっかけで超人的なパワーを得てしまった。始めは私利私欲のためにその力を使っていたエンツォだったが、世話になっていた“オヤジ”を闇取引の最中に殺され、遺された娘アレッシアの面倒を見る羽目になったことから、彼女を守るため正義に目覚めていくことになる。アレッシアは日本製アニメ「鋼鉄ジーグ」のDVDを片時も離さない熱狂的なファン。怪力を得たエンツォを「鋼鉄ジーグ」の主人公、司馬宙(シバヒロシ)と同一視して慕い、いつしか二人の間には、ほのかな愛情が芽生えるのだが、彼らの前に、闇の組織のリーダー、狂気に満ちたジンガロが立ちふさがる…。 |
【受賞】 新人監督賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、編集賞、プロデューサー賞
【ノミネート】 脚本賞、撮影賞、美術賞、衣装賞、メイキャップ賞、ヘアスタイリスト賞、録音賞、デジタル効果賞、作曲賞
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
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