主演・山田杏奈インタビュー
いつの時代も普遍的な姿を意識
映画ならではの新しい魅力を描く
1980~1990年代に若者たちのリアルな恋や友情を描く数々の漫画作品を発表し、『ヘルタースケルター』(2012年)、『リバーズ・エッジ』(2018年)、『チワワちゃん』(2019年)と、時代を超えて著作の実写映画化が絶えない漫画家・岡崎京子の長編漫画第2作にあたる同名漫画を原作とした映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』が11月6日(金)より新宿ピカデリー、ホワイト シネクイントほかにて全国公開された。
東京に住む平坦で平凡な高校生・渋谷ハルコと、大学受験を目前に高校を衝動的に辞めてしまった神奈川ケンイチ。ある夜、偶然出会った二人の平行線の恋と成長を描いた物語。
主人公・渋谷ハルコ役を演じるのは、映画『小さな恋のうた』(2019年)で第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞し、主演作をはじめ次々に注目作への出演が続いている“次世代ヒロイン”と呼び声が高い山田杏奈。もう一人の主人公・神奈川ケンイチ役には、『小さな恋のうた』でも共演、本作で映画初主演となる鈴木仁。昭和に生み出された名作を令和を牽引する若手俳優二人が時を経て等身大で演じる。
主人公・ハルコを演じた山田杏奈さんに本作の出演について話を聞いた。
—— 岡崎京子さんの漫画作品はこれまで数多く映画化されていますが、本作への出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。
岡崎さんの漫画作品がとても好きで、いつかそういう機会があったらやりたいとずっと思っていたので、お話を聞いた時はすごく嬉しかったです。(岡崎京子原作の)漫画や映画はほとんど観ているのですが、『ジオラマボーイ・パノラマガール』はお話を頂いてから原作漫画を読みました。
岡崎さんの作品に出てくる女の子はとても魅力的なので、自分に務まるのかという不安はありましたが、映画は漫画とは違って今の東京を描いているので、新しい魅力を出せたらいいなと思い臨みました。
—— 瀬田なつき監督が手掛けた作品への出演は、ゲスト出演したテレビ東京のドラマ25「セトウツミ」ですね。今作の脚本をご覧になった時、率直にどんな感想を抱きましたか?
「セトウツミ」は撮影が一日だけだったのであまり深くお話できなかったのですが、岡崎さんの原作にある自由さや空気感と瀬田さんの“人物を魅力的に描く力”をとても感じました。
—— 同じ事務所の鈴木仁さんは、映画『小さな恋のうた』でも共演されていますが、本作での再共演はいかがでしたか?
『小さな恋のうた』の時は一緒のシーンが多くはなかったのですが、事務所が一緒なので、緊張なく気心知れた人とできるという信頼感はありました。
ケンイチの朴訥とした感じに仁くんの雰囲気がすごく合っているなと、一緒にお芝居をしていて感じました。
—— 鈴木さん演じる神奈川ケンイチにはハルコが知らない一面があり、そのシーンが描かれていますが、完成した映画を観てどんな感想を持ちましたか?
(ケンイチが夢中になる)マユミとのシーンは私は知らなかったので、ハルコとして観ると浮気の現場を見ているような気分で何と言えない気持ちでした(笑)。でも、ケンイチとマユミのシーンはとても魅力的でした。映画として全体を通して観た時、マユミのお姉さん感とハルコの無邪気さが対比になっているなと思いました。
—— 同級生3人組のシーンも印象的でした。女子高生を一緒に演じた滝澤エリカさんや若杉凩さんとは撮影中どのような雰囲気で過ごされましたか?
同世代ではあるものの、二人とも歳が少しずつ離れていたので、みんな自由に過ごしていました。役としてもみんな自由だけど居心地がいい3人なんだろうなと思っていたので、3人で一緒にいる時の空気感は居心地のよい関係で居られたらいいなと思って過ごしていました。
—— 以前のインタビューで“ザ・JK”を演じたいとおっしゃっていましたが、女子高生(JK)のハルコはどんなイメージを持って演じましたか?また、杏奈さんがイメージする“ザ・JK”と違う点はありましたか?
本作は、いわゆるキラキラ青春映画とも違いますし、女子高生ではあるけどハルコとしてはケンイチとの時間がメインだったので、群れの中にいる1人の高校生というよりかは1人の人間としてのハルコだったなと思います。その点は“ザ・JK”とは違っていたのかなと思いますね。
—— ハルコは恋する高校生ですが、ケンイチを前にした時、家族や友達といる時では異なり、いろんな表情を見せていたと思います。ハルコを演じるにあたって特に意識したことはありましたか?
やっぱり家族といる時、友達といる時、好きな人といる時の顔は皆違うものだとは思うので、考えすぎずにそれぞれ素直な表情を出すようにしました。友達や家族といる時はあっさりとしていて、ケンイチといる時は必死な姿になってというところはハルコの魅力として意識しました。
—— ハルコに共感できるところはありましたか?
共感というか、私自身は思っても行動に起こせないタイプなのでハルコの何でも自由に行動する面は羨ましくて、素敵だなと思いました。
—— 映画では現代の東京を舞台にしていますが、80年代に描かれた原作にあるレコードや缶ジュースなど当時の雰囲気を残しつつ現代的に描かれている印象を抱きました。ハルコを演じる上でも何か意識したことはありましたか?
年代はあまり意識せず、いつの時代にも通じる普遍的なことを意識しました。昔も今も同じように変わっていく東京の中で自分を探し、もがきながら生きる姿を変わらずに描けたらいいなと思って演じました。
—— 瀬田なつき監督は(公式サイトにて)、「笑顔でどんな無茶にも前向きに楽しんで演じてくれる」と杏奈さんを評価していましたが、実際どんな無茶があったのでしょうか?何か思い当たるエピソードはありますか?
お芝居で、脈略がないとしか思えない動きや顔の表情をリクエストされたことがありましたが、完成した作品を観たらそれがとても効いていました。瀬田さんはすごくハルコのことを分かっていて、(映像が)つながった時のことをはじめから想像されているんだなと感動しました。
—— 本作でハルコたちは小沢健二さんの「ラブリー」を歌っていますが、杏奈さんは80年代や90年代の音楽は好きですか?
以前も少しは聴いていたのですが、本作に出演するにあたりよく聴くようになりました。小沢健二さんや大滝詠一さん、ピチカート・ファイヴさんなど、監督やスタッフの皆さんに教えてもらいました。
—— エンディングでは、滝澤エリカさん、平田空さん、持田唯颯さんとの合唱曲がとても素敵でした。映画のエンディング曲をキャストの皆さんで務めることはあまりないことだと思いますが、実際に歌ってみていかがでしたか?
練習などはほとんどなくて、「今日録ります~」みたいな感じで集まって収録したので、若い子たちとわちゃわちゃできて楽しかったです。私は歳上なので落ち着いたトーンで歌っていたのですが、「高い声にして!」と言われて馴染ませたりはしました(笑)。完成したエンディングを観たら、爽やかでポップな感じになっていたので素敵だなと思いました。
—— 本作に続いて、いくつか出演作の公開も控えていますが、今後はどのような役に挑戦していきたいですか?
ちょっと悪い役というか、グレたギャルのような役をしたいですね(笑)。あとは、社会人の役とかもやっていけたらなと思っています。まずは呼んでもらうことが1番なので、いろんなことに挑戦していきたいです。
—— 最後に、シネマアートオンラインの読者の皆さんにメッセージをお願いします。
『ジオラマボーイ・パノラマガール』は、リアルを描いているというよりは、ちょっと不思議な風景であったり、関係性などを描いているので、普段とは違う世界を覗いてみるような感覚で観て頂ければ嬉しいです。
[衣装協力: 中井彩乃 / ヘアメイク: 菅長ふみ]
プロフィール
山田 杏奈 (Anna Yamada)2001年生まれ、埼玉県出身。 |
CAO読者プレゼント🎁
山田杏奈さん直筆サイン入りチェキを2名様にプレゼント!
映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』の公開と山田杏奈さんのインタビューを記念して、シネマアートオンラインの読者の皆様に山田杏奈さんからプレゼントをいただきました❣
★応募方法など詳細は読者プレゼント応募ページで🎵
映画『ジオラマボーイ・パノラマガール』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》“成長するだけじゃ、オトナになれない” 東京に住む平坦で平凡な高校生・渋谷ハルコ、16歳。ある夜、橋の上で倒れていた神奈川ケンイチにひとめぼれする。“世紀の恋”だとはしゃぐハルコに対して、真面目でおとなしげなケンイチは、受験目前、衝動的に学校を辞めてしまいそれどころではない。さらに勢いでナンパした危険な香りのする女の子・マユミに夢中になっていく。二人の平行線の恋はどこへ行くのか。友だちや家族や自分、悩みもがく少年少女の刹那的な視線を切り取った、恋と成長の物語。 |
滝澤エリカ、若杉凩、平田空、持田唯颯、きいた、遊屋慎太郎、斉藤陽一郎、黒田大輔、成海璃子、森田望智、大塚寧々
エグゼクティブプロデューサー: 遠藤日登思
プロデューサー: 松田広子、樋口泰人
共同プロデューサー: 佐藤崇行、本田拓夫、村上凌太
撮影・照明: 佐々木靖之
録音: 髙田伸也
美術: 安藤真人
装飾: 小谷直美
衣裳: 宮本茉莉
ヘアメイク: 有路涼子
編集: 今井俊裕
音響効果: 齋藤昌利
VFX: 浅野秀二
本編集: 野間実
助監督: 玉澤恭平
制作担当: 芳野峻大
音楽: 山口元輔
企画・製作プロダクション: オフィス・シロウズ
配給: イオンエンターテイメント、boid
助成: 文化庁文化藝術振興費補助金(映画創造活動支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会