第33回 東京国 ‎際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門『私をくいとめて』Q&A レポート

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 映画『私をくいとめて』Q&A (大九明子監督)

第33回 東京国際映画祭(TIFF) 
TOKYOプレミア2020部門 
映画『私をくいとめて』Q&A

大九明子監督が撮影秘話と役者・のんを語る!!
「渡航禁止の枷を生かしキャラクターの気持ちを丁寧に」

綿矢りさ原作×大九明子監督の再タッグとなった映画『私をくいとめて』。のんが”おひとりさまライフ”をエンジョイする31歳の主人公・みつ子に扮し、林遣都演じる年下営業マン・多田くんとの久しぶりの恋愛に四苦八苦する様子を描いたラブストーリーだ。綿矢×大九監督のタッグは、第30回東京国際映画祭コンペティション部門で観客賞を受賞した『勝手ふるえてろ』以来。さらにのんが、みつ子の親友・皐月役を演じた橋本愛と7年ぶりの共演を果たすなど話題も多く注目を集めている。みつ子がおひとりさまライフを楽しめる陰に、脳内で生み出した頼れる相談役=Aがいて、人間関係や行動で悩んだ時常に正しい答え(アンサー)を教えてくれるというユニークな世界からも目が離せない。

【画像】映画『私をくいとめて』メインカット

第33回東京国際映画祭(TIFF)では、TOKYOプレミア2020部門に選出。11月5日(木)のEX THEATER ROPPONGIでのワールド・プレミア上映では、上映前の舞台挨拶に続き、メガホンを取った大九明子監督によるQ&Aが開催された。

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 映画『私をくいとめて』Q&A (大九明子監督)

原作の綿矢とはLINEで交流
映画での変更は「原作に対する私なりのアンサーです」

観客による満場の拍手に迎えられ、大九監督が登場。映画の中で印象に残る「エビフライ」の食品サンプルを手に笑顔の大九監督は、真っ先に「たくさんの拍手が聞こえて、袖で感動しながら登場のタイミングを待っていましたが、飛び出たい気持ちでいっぱいでした」と感謝を述べた。まずは司会の東京国際映画祭シニア・プログラマー、矢田部吉彦による質問からQ&Aがスタートした。

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 映画『私をくいとめて』Q&A (大九明子監督&海老天)

―― のんの役は脳内相談者がいるという複雑な設定。そこも含め、今作の製作にあたり大九監督の中で最大のチャレンジと思う点は? 

大九監督: 結果的にそうなってしまったのは、やはり(みつ子が皐月を訪ねて訪れる)ローマを映画の中に構築すること。国境を超えられない今年の状況の中でどうやって実現するかが、私にとってもスタッフにとっても最大の課題でした。

―― みつ子の部屋でのAとの会話が、実在の人物ではなく脳内相談者とのものだと分かるように表現するのは苦労しなかったか? 

大九監督: 脳内の会話でありながら、部屋にいるときは本当にすこに人がいるような音の構成を音響スタッフと作り上げました。探りながらではありましたが、そういう楽しみの形でもありました。

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 映画『私をくいとめて』Q&A (大九明子監督)

―― 原作の小説はかなりシンプルだったが、映画ではかなりキャラクターが掘り下げられたり感情が激しかったりする。(変更にあたって)原作者との信頼関係が基盤にあったり、監督の想いが込められている部分がある?

大九監督: 綿矢さんとは『勝手にふるえてろ』以来、LINEで連絡を取っていちファンとして交流をさせていただいていました。綿矢さんの文学はすごく平易な切れ味の良い言葉でストンと読み収められるのだけど、気持ちいい反面ディスカッションしたくなるような何気ないエピソードが豊富。なので、綿矢さんの出された小説に私がアンサーを返すような気分で、例えば私の怒りはこんな所にあったよというような部分を表現したら、小説より少しみつ子が激しくなりました。

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 映画『私をくいとめて』舞台挨拶 (大九明子監督)

俳優部の”職人”のんの思いがあふれすぎ苦戦した場面とは?

―― のんの幅広い演技を堪能できる貴重な作品。監督から見たのんさんの評価と「さすが」と思ったシーン、てこずっているなと思ったシーンがあれば教えてください。

大九監督: (のんは)一言で言うと職人ですね。原作を“攻略本”にしたり、いろいろなことを丁寧に準備されて現場に臨み、かつ私が細かな演出をした時も的確にアジャストしてくれる、俳優部の職人です。

今回さすがと思ったのは、みつ子がAに操られてワーッと買い物をする場面ですね。逆に本人の想いの強さ故に少し激しすぎたり固まりすぎてしまっていると感じたのは、みつ子が一人旅する温泉の場面。私が原作から一つ踏み込んで働く女性のとしての想いを吐きだしたシーンで、本人も「あのシーンをうまくやりたい」と最初から話していた。その思いがあふれすぎて少し熱くなりすぎたりしてので、そこをほぐしながら撮影しました。

―― みつ子と皐月のローマでの場面が印象的。みつ子の世界が広がった気がした。ローマ旅行前後での彼女の変化という面で、特に監督が意識したことがあれば教えてください。

大九監督: おひとりさまチャレンジの総本山という形で海外一人旅があった。この映画を作る最中、ひたひたとコロナの影響が迫ってきていて私の中でもローマに行くことへの緊張感が高まっている部分がありました。(それができないと)みつ子はどうなってしまうのだろう、と思っていたのでいざ撮影隊がローマに行けないと分かった時、絶対に負けてたまるかという気持ちになった。逆にこの枷を生かしてみつ子と皐月の気持ちを丁寧に描きたいと思い挑んだこともあって、私自身も以降のシーンはホッとして取り組めた部分があります。ただ一つ付き加えますと、ローマはリモート撮影で現地のカメラマンに要望を伝えながら撮ってもらいましたので、映画の中に出てくるローマの街は本物です。

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 映画『私をくいとめて』Q&A (大九明子監督)

―― 多田くんが一番基本設定が変わっている。原作だと体格のいいスポーツマンタイプの多田くんが、なぜ年下で林さんをキャスティングすることになったのか?

大九監督: どの話を映画にする時もそうですが、一番大事にしていることはまず主人公がどういう人間かという部分を咀嚼すること。私のフィルターで見た時、主人公がどういう人になら惚れるか心を許すかという部分を再構築していったら、みつ子が久しぶりの恋愛でAや皐月と話すように堂々と話すことができるのは少し年下で甘い感じの人じゃないかなと考えて、あのキャラクターになりました。

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 映画『私をくいとめて』Q&A (大九明子監督)

最後は大九監督が「今の状況下で、このような形でお披露目ができたことは、監督として一生忘れない経験です」と改めて感謝を伝え、Q&Aは終了。脳内相談役Aとともに崖っぷちロマンスに挑むみつ子の奮闘が、大九監督マジックで温かく描き出された『私をくいとめて』は12月18日(金)から全国で公開。

[記者: 深海 ワタル / スチール撮影: Cinema Art Online UK]

イベント情報

第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門
映画『私をくいとめて』Q&A

■開催日: 2020年11月5日(木)
会場: EX THEATER ROPPONGI
■登壇者: 大九明子監督
■MC: 矢田部吉彦(東京国際映画祭シニア・プログラマー)
■英語通訳: 富田香里

【写真】第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 映画『私をくいとめて』Q&A (大九明子監督、矢田部吉彦シニアプログラマー、富田香里)

映画『私をくいとめて』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『私をくいとめて』ポスタービジュアル (みつ子&多田くん)

《ストーリー》

脳内に相談役=「A」を持ち、充実した“おひとりさまライフ”を楽しむ、31歳・みつ子(のん)。Aと一緒に過ごす、快適なおひとりさま生活に慣れ切っていたみつ子だったが、ときどき会社へ営業にやって来る年下男子・多田くんに“予期せず”恋に落ちる。失恋すれば巨大なダメージをくらう31歳“崖っぷちの恋”に、「A」と共に勇気を出して一歩踏み出していくが…。

 
第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門 出品作品
 
出演: のん、林遣都、臼田あさ美、若林拓也、前野朋哉、山田真歩、片桐はいり、橋本愛
 
原作: 綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
 
監督・脚本: 大九明子
 
音楽: 髙野正樹
劇中歌: 大滝詠一「君は天然色」(THE NIAGARA ENTERPRISES.)
製作幹事・配給: 日活
制作プロダクション: RIKIプロジェクト
企画協力: 猿と蛇
 
© 2020『私をくいとめて』製作委員会
 
2020年12月18日(金)より全国ロードショー!
 
映画公式サイト
 
公式Twitter: @kuitometemovie

この記事の著者

深海 ワタル

深海 ワタルエディター/ライター

女性向け情報誌で旅・エンタメジャンルを担当し、試写会紹介やタレントインタビューなどを執筆。インタビュー実績は堤真一、永瀬正敏、大森南朋、北村一輝、松田龍平、斎藤工、柳楽優弥、柴咲コウ、北川景子、吉田羊、中谷美紀ほか30人以上。学生時代から地元の名画座に通い、年間50本超の映画鑑賞を15年以上継続中。好きなジャンルはヒューマンドラマ、アクション、サスペンス、ファンタジー。人生を変えた1本は、子どもの頃劇場で鑑賞して映画好きのきっかけとなり、通算30回以上リピートしている『ターミネーター2』。

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