- 2020-11-5
- イベントレポート, 日本映画, 第33回 東京国際映画祭, 舞台挨拶
第33回 東京国際映画祭(TIFF)
TOKYOプレミア2020部門
映画『私をくいとめて』舞台挨拶
のん・橋本愛7年ぶりの共演で“魔法”を体感
林遣都は大九監督の想定外演出がヤミツキに
綿矢りさ原作×大九明子監督の再タッグとなった映画『私をくいとめて』。のんが”おひとりさまライフ”をエンジョイする31歳の主人公・みつ子に扮し、林遣都演じる年下営業マン・多田くんとの久しぶりの恋愛に四苦八苦する様子を描いたラブストーリーだ。綿矢×大九監督のタッグは、第30回東京国際映画祭コンペティション部門で観客賞を受賞した映画『勝手ふるえてろ』(2017年)以来。さらにのんが、みつ子の親友・皐月役を演じた橋本愛と7年ぶりの共演を果たすなど話題も多く注目を集めている。みつ子がおひとりさまライフを楽しめる陰に、脳内で生み出した頼れる相談役=Aがいて、人間関係や行動で悩んだ時常に正しい答え(アンサー)を教えてくれるというユニークな世界からも目が離せない。
第33回東京国際映画祭(TIFF)では、TOKYOプレミア2020部門に選出。11月5日(木)にEX THEATER ROPPONGIでワールド・プレミア上映され、上映前の舞台挨拶にのん、林遣都、橋本愛、そして大九明子監督が登壇した。
のん、31歳おひとりさまの役作りは原作が“攻略本”
登壇者がワールド・プレミア上映の喜びと、同映画祭参加への感謝を述べ舞台挨拶がスタート。『勝手にふるえてろ』を仕上げている最中に今作の原作に出合ったという大九監督は、引き続き映画化を手掛けた綿矢作品の魅力について「いろいろな人から“新作がとんでもないことになっている”と言われ、すぐ書店に走りました。私が『勝手に~』の映画の中でやったことが、脳内Aとの会話という形で小説内で行われていた。またカラフルな読書体験をさせていただき、もしこれを他の人が映画化して自分が期待するものと違う作品になったら嫌だと思いすぐに脚本を書き始めました」と熱い思いを語った。
のんはみつ子の役作りに対して「原作を“攻略本”にした」とユニークな表現で回答。「“彼女の痛みはどこにあるのか?”を探りながら、原作を片手に台本を読みときました。他にみつ子の買いそうなカフェ巡りや旅行雑誌を買って、みつ子が好きそうな場所に丸を付けたりドッグイヤーをしてみたりして、おひとりさまを楽しむ時間を掴む作業をして撮影に臨みました。みつ子を演じられたのは楽しい時間」と話し、楽しみながらキャラクターの内面に迫ってみつ子像を作り上げたことを明かした。
林遣都は想像外の演出に“もっと演じたい”とラブコール
「自分でも見たことない表情が撮られている」
みつ子の恋のお相手・多田くん役の林はのんとの初共演を「普段穏やかな印象ですが、本番スタートの声がかかると目の色から変わり、その吸引力みたいなものに常に突き動かされていました。細かい瞬間を大事に大事に共有できている感覚があり、一緒にお芝居をしていて楽しかったです」と振り返った。また、原作からの変化が大きかった多田役について「原作の外見や設定が僕とかけ離れていたので、新たに作っていかないとという思いがありました。ただ脚本にヒントが少なく、大九監督の演出にゆだねる気持ちで現場に臨んだら、序盤から自分の想像を超えた演出が毎日飛んで来るので、それが楽しくてたまらなくて」と想定外の喜びを吐露。大九監督の演出のもとで演技をしたい気持ちがピークに達したころに撮影が終了したことを残念そうに語り、「またやりたいのでよろしくお願いします」と舞台上で監督に直訴する一幕も。「映像を観た時に自分も見たことのない表情が撮られていてうれしく思いました」と締めくくった。
7年ぶりの共演に大照れの橋本愛
のんの瞳が語るせりふ以上の言葉に「快感」
橋本愛は7年ぶりとなったのんとの共演初日がラストシーンの撮影だったことにふれ、「役としては関係がエンディングを迎えているけれど、私たちは久しぶり。アドリブで作り上げないといけない場面だったのですが、照れてしまって全然“段取り”がうまくできなかった」と明かした。「その後、このままじゃまずいと思って2人で脚本の読み合わせをしたら、軽く合わせただけなのに凄いスピードで2人の関係が埋まっていく実感があり、“魔法”だなと思いました。芝居をしたら、(のんの)瞳から色んな感情がたくさん入ってきて、せりふ以上の言葉をやり取りする時間は、毎回電気が走ったような快感でした」と当時の様子を笑顔で語った。
橋本の話を聞いたのんも「共演はめちゃめちゃ嬉しかった。前日はワクワクしていたけれど、実際に会うと恥ずかしくて緊張してしまって。お仕事の映像などは見ていたけど、目の前にすると美しさが増してる!と思い、目を合わせられないくらいドキドキしました。でも、演技を始めたら不自然なことは何もなかった」と喜びを伝えた。
映画を観ながらみつ子と旅をする気持ちで楽しんでほしい
最後に登壇者全員が一言ずつ挨拶。橋本は「みつ子の見つけた幸せだけが正解ではありませんが、人と関わることがどれだけの痛みを伴うものかを感じてもらえる作品。それでもつながろうと頑張るみつ子に勇気をもらって」と笑顔で語った。
少し前に試写を観たばかりという林は「一度では味わいきれない面白さ。大九監督ワールドのユーモアや遊び心が詰まっているので何度も観ていただきたい」と観客に呼びかけた後「明日も元気でお過ごしください」と締めて観客の笑いを誘った。
のんは「今日いらしてくださった方の中にもみつ子のような一面を持っている人がいるのではないかと思います。そんな世の中にたくさんいる“みつ子””みつお”さんを全肯定してくれる作品で、観終わったら気分よく劇場を出られるはず。ぜひじっくりご覧ください」と語り、観客賞への投票と合わせてアピール。
最後に大九監督が、同作を選び足を運んだ観客へ改めて感謝を伝えると「ラブストーリーの面もありますが、皐月や上司などいろいろな人との出会いがある中で、Aとの脳内旅やスケール感のある旅をしてもらいたい思いで作った映画。撮影の中断などもある中でみつ子と観客をとにかく“ローマ”に連れて行くんだという意地で作りましたので、みなさん旅する気持ちで楽しんでほしいです」と締めくくり、フォトセッションを経て舞台挨拶は終了した。
脳内相談役Aとともに崖っぷちロマンスに挑むみつ子の奮闘が、大九監督マジックで温かく描き出された『私をくいとめて』は12月18日(金)から全国で公開。
[記者: 深海 ワタル / スチール撮影: Cinema Art Online UK]
イベント情報
第33回 東京国際映画祭(TIFF) TOKYOプレミア2020部門
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映画『私をくいとめて』予告篇
映画作品情報
《ストーリー》脳内に相談役=「A」を持ち、充実した“おひとりさまライフ”を楽しむ、31歳・みつ子(のん)。Aと一緒に過ごす、快適なおひとりさま生活に慣れ切っていたみつ子だったが、ときどき会社へ営業にやって来る年下男子・多田くんに“予期せず”恋に落ちる。失恋すれば巨大なダメージをくらう31歳“崖っぷちの恋”に、「A」と共に勇気を出して一歩踏み出していくが…。 |