映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶レポート
【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、大森立嗣監督)

映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶

菅田将暉と仲野太賀が秘密の作戦会議!?
異端児YOSHIと“保護者”たちの青春脱線トーク

構想から約25年。『日日是好日』『セトウツミ』『さよなら渓谷』などの大森立嗣監督のオリジナル脚本による最新作『タロウのバカ』が9 月6 日(金)からテアトル新宿ほかで公開を迎える。

社会からはじき出された3人の少年の純粋で過激な疾走を描いた問題作。生まれてから一度も学校に通ったことがない主人公・タロウを演じるのは、大森監督に抜擢され、本作が俳優デビュー作となる16 歳の異端児YOSHI(ヨシ)。タロウと行動を共にする2人の高校生―やるせない悩みを抱え暴力に走ってしまう少年エージ役を菅田将暉、理性的で臆病な少年スギオ役を仲野太賀という演技派が固める。

【画像】映画『タロウのバカ』メインカット

映画公開に先立ち、8月26日(月)にテアトル新宿で完成披露舞台挨拶が開催。メインキャストのYOSHI、菅田将暉、仲野太賀に加え、大森立嗣監督が登壇! 初演技ながら堂々と主演を務めたYOSHI の才能と自由奔放なキャラクターを、監督・キャスト・スタッフが保護者のように見守りながら、作品の中に焼き付けた日々を熱く語り合った。

YOSHIを愛でて」菅田と仲野が初演技の新星への愛を猛アピール

平日の昼間にも関わらず立ち見客まで満員となった今回の舞台挨拶。登壇者の4人は映画の中にも使われたパンダやウサギの被り物を付けて登場し、観客の拍手と笑顔に迎えられた。誰が誰だかわからないシュールな雰囲気ながらも、ファンの大きな声援に包まれイベントはスタートした。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、大森立嗣監督)

まずは、1人ずつマスクを取って挨拶。トップバッターの大森監督は「20年以上温めた作品で、まさかこんな舞台挨拶になるとは」と会場の笑いを誘いながら「楽しんでほしい」と率直な思いを語った。菅田が「これはYOSHIの映画。僕や監督、ましてや太賀なんてどうでもいいから、YOSHIだけを撮影してください」と話すと、仲野も「今日はとにかくたくさんYOSHIを愛でて帰ってほしい」と同意し、初主演の新星への愛をそろってアピールした。

初の映画出演で菅田・仲野の2人と渡り合い、強いインパクトを残すタロウ役を務めたYOSHIは「撮影の時よりも緊張している」と告白。「どう挨拶したらいいの?」「今ナーバス」「ヤバイ、ヤバイ」と常にハイテンションのまま自己紹介。現在16歳で、撮影時はわずか15歳だったことが明かされると観客からは大きな驚きの声が上がった。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (YOSHI)

25年越しの作品作りは『日日是好日』のおかげ!?
アバウトすぎるGoogle検索で奇跡の出会い

まずは、大森監督から最初の脚本を書いてから20年以上掛かった今作が公開されるにあたっての感想が。「脚本を書いてから作れるまでに時間が掛かったけれど、それでもやりたい気持ちは無くならなかった」と監督が話すと、すかさずYOSHIが「僕がまだ生まれてない頃」と反応し、菅田も「俺も1歳になるかくらいの時」と会話に参加。なぜ今のタイミングだったかを問われた監督が「『日日是好日』のおかげかな。ヒットして撮りやすい環境になった。ヒット作はやっぱり大事」と答えると、キャスト一同は爆笑。さらに元は自身初の脚本として書いたものであることに触れ「3人のキャラクターそれぞれに自分が少しずつ入っている。直球で書いているのでストレートに気持ちが出ている」と今作に込めた思いを語った。

主演のYOSHIに出合えたことも一つのきっかけという監督。菅田から「(YOSHIを)どうやって見つけたんですか?」と訊かれると「Googleで『14歳 有名人』で検索したら、下の方にYOSHIがいた」と意外にもアバウトな方法だったことを告白。会場は大きな笑いに包まれた。

自由過ぎる”天然素材”YOSHIに
菅田、仲野が「絶句」の撮影秘話

続いて、菅田と仲野にYOSHIの印象についての質問が。2人はそろって「ひと言で言うと“絶句”」ときっぱり。菅田は自由過ぎるそのキャラクターを“新人類って感じ”と表現するも、「この一年ですごく大人になっている」と評価。仲野は「礼節とかそういういろんなものを飛び越えてくる。初めて会ったとき、片足を上げながら『よろしく!太賀でしょ?知ってるよ、何回か見たことある』って言われた」とエピソードを交えて当時の衝撃を語った。さらに大森監督からも、「撮影中、YOSHIに(監督の)膝の上に乗りながら『これ終わったらゲーセン行こう』って言われて、撮影後に一緒に遊んできた」という驚きのエピソードが飛び出した。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (菅田将暉、YOSHI、仲野太賀)

菅田と仲野はそんな“天然素材”YOSHIへの接し方をかなり考えたといい「YOSHIに対して僕らがどう大人として接するか、結構会議しました。この才能を生かすも殺すも俺ら次第だからって、初めてそんなことを考えました」と告白。菅田の家で大森監督作品の上映会をしたり、自然のうちに菅田と仲野の役割分担がされたという。「現場は太賀、プライベートは俺(菅田)みたいな感じで。現場では太賀が遊び相手になって、僕はご両親と会いに行って挨拶しました。単純にどんな育ち方したらこんな子が育つのか興味があって」と保護者のようだった当時を明かした。当のYOSHIは2人助けられたエピソードとして、最初の食事を上げ「あそこで仲良くなれたのが大きかった。最初が撮影現場で『よろしくお願いします』だと(仲良くなるのは)厳しかったかも」と吐露した。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (YOSHI)

「問われているのは俺達大人の在り方」
監督・キャスト・スタッフが感じた独特の緊張感とは

さらに、話は盛り上がり、撮影中の印象的なエピソードの話題へ。菅田は、3人のシーンは本当に青春の時間だったと回想。「台本はあっても俺ら3人どこまで笑えるか、みたいな感じ。でも緊張感も大事だから、『ここは集中しないと』という場面は俺や太賀がYOSHIに教えないとという気持ちもあった。3人が盛り上がっているシーンでYOSHIが台本を飛び越えてアドリブで掛かってきたとき、俺が(芝居として)ぶち切れて突き飛ばしたら、YOSHIの目の色が変わって『あ、これはちゃんと集中しないとダメだ』って顔になったんです。次のシーンから『よーい』の時にすごく気合を入れるようになって”俳優部”になった瞬間を見た」と若き”俳優”の覚醒の瞬間を感慨深げに語った。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (菅田将暉)

仲野も「YOSHIの変化はものすごく大事だった」と同意。当時と今でもかなり変化していると前置きをしたうえで「大森監督は、YOSHIの大人と子供の一番絶妙な部分を撮ったのだと思っています。その現場に立ち会えたのはすごくうれしかった」。仲野の話を聞いた大森監督も「彼みたいな人を撮影現場に受け入れるときに、問われているのは俺達なんじゃないかって感覚があった。スタッフも『YOSHIをつまんなくさせたら悪いのは俺達』という気持ちでやっていた」と、今作の現場に独特なチーム感があったことを明かした。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (大森立嗣監督)

YOSHIは、「監督に自由にやってといわれて演じたらタロウになれていた。型にくくられていないところが一番良くて、そこは感謝しています。タロウは人間の内側にある勢いや欲が似ていて、演じやすかった」と感謝を伝えた。さらに「タロウの怒りの場面は、あれが人間の純粋な欲のように思います。欲がなくなってマンネリ化してきている現代社会で、彼の怒りを通して、その思いをフラッシュバックさせられるといいと思っています」と16歳らしからぬ分析力を披露。仲野が「こっちが混乱するくらいいろんなものが共存している。子供らしさと頭の良さと」と驚きながら賞賛する場面もとびだした。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (菅田将暉、YOSHI、仲野太賀)

「情報を知りすぎてしまう今、肉体で感じる作品」
素直になれなくなった自分に問いかけてほしい

最後に各キャスト、監督からこれから作品を観る人へのメッセージが。

仲野は「スギオを演じていてもYOSHIに引っ張ってもらった瞬間が何度もありました。作品としては過激な部分や日常から飛躍している場面があって、そういう分からないものや、刺さり過ぎるものへの観る方のアレルギーってわりと強くあると思います。でも一度映画を観て、それにふれてもらっていろんなことを考え、感じてほしいです」と、フラットな気持ちで観てほしいことをアピール。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (仲野太賀)

菅田は「YOSHIという人に接しているとどうしょうもできないことがたくさんあって、でも何故かそれが正しいような美しいような気持ちにさせられました。タロウという存在は彼にしかできないし、彼が演じたからタロウになった。観たらきっと『何かしなきゃ』と思えるはず。一見自分より下に見える存在を見て、自分を見つめなおせるような作品です。常識をぶっ壊すがテーマだけど、いち俳優としてもやれてよかった。何よりYOSHIというスーパースターとの出会いが、いろんな人にいろんなものを贈ってくれると思います」と最後までYOSHIの存在感に言及し、感謝を伝えた。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (菅田将暉)

YOSHIは「単純に何も考えずに観てほしいです。映画はわりと一つの答えに行きがちだけど、この作品には色んな正解がある。何回観てもいろんな正解を見つけられるし、賛否両論の作品なのだと思う。人間の原点に戻ってアグレッシブに欲を出したのがタロウやエージ。その気持ちを思い出させる作品です。ぜひ観てください」と独特の表現で思いを伝えた。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (YOSHI)

最後に大森監督が「この映画を通して、何となく素直になれなくなった自分にもう一度問いかけてほしい。僕達は今情報を知りすぎてしまっている。もう少し肉体で感じて、ふれていけるようになれば少しだけ幸せに生きていけるのでは?という思いも込めています。頭で考えずに体で感じて楽しんでいってください」締めくくり、観客からの大きな拍手と歓声に包まれた。

【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (大森立嗣監督)

YOSHIの自由なキャラクターに引っ張られ脱線も多かったが、仲野が台本どおりの展開に軌道修正を図り、菅田に突っ込まれるなどキャストの仲の良さが垣間見えた舞台挨拶。登壇者もキャストも終始笑いに包まれる中、イベントは終了した。

常識を壊し、純粋で無軌道な少年たちの疾走する姿を衝撃的な展開で描き出した『タロウのバカ』は9月6日(金)にテアトル新宿他で全国公開。

[スチール撮影: 堀 清香 / 記者: 深海 ワタル]

イベント情報

映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶

■開催日: 2019年8月26日(月)
会場: テアトル新宿
■登壇者: YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、大森立嗣監督
■MC: 伊藤さとり【写真】映画『タロウのバカ』完成披露舞台挨拶 (YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、大森立嗣監督)

フォトギャラリー

映画『タロウのバカ』予告篇

映画作品情報

【画像】映画『タロウのバカ』ポスタービジュアル

《ストーリー》

主人公の少年・タロウ(YOSHI)には名前がない。戸籍すらなく、一度も学校に通ったことがない。そんな”何者でもない”タロウには、エージ(菅田将暉)、スギオ(仲野太賀)という高校生の仲間がいる。エージ、スギオはそれぞれやるせない悩みを抱えているが、なぜかタロウとつるんでいるときは心を解き放たれていた。
大きな川が流れ、頭上を高速道路が走り、空虚なほどだだっ広い町を、3人はあてどなく走り回り、その奔放な日々に自由を感じている。しかし、偶然にも一丁の拳銃を手に入れたことをきっかけに、彼らはそれまで目を背けていた過酷な現実に向き合うことになり…。

 
タイトル: タロウのバカ
 
監督・脚本・編集: 大森立嗣
 
音楽: 大友良英
 
出演: YOSHI 菅田将暉 仲野太賀 奥野瑛太 豊田エリー 植田紗々 國村隼
 
配給: 東京テアトル
 
©2019 映画「タロウのバカ」製作委員会
 

2019年9月6日(金) 全国公開!

映画公式サイト

公式Twitter: @taro_no_baka

公式Instagram: @taronobaka

この記事の著者

深海 ワタルエディター/ライター

ビジネスメディア、情報誌、ITメディア他幅広い媒体で執筆・編集を担当するも、得意分野は一貫して「人」。単独・対談・鼎談含め数多くのインタビュー記事を手掛ける。
エンタメジャンルのインタビュー実績は堤真一、永瀬正敏、大森南朋、北村一輝、斎藤工、菅田将暉、山田涼介、中川大志、柴咲コウ、北川景子、吉田羊、中谷美紀、行定勲監督、大森立嗣監督、藤井道人監督ほか60人超。作品に内包されたテーマに切り込み、その捉え方・アプローチ等を通してインタビュイーの信念や感性、人柄を深堀りしていく記事で評価を得る。

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