映画『望郷』完成披露上映会 舞台挨拶
古い家のしきたりに縛られた娘『夢の国』
亡き父に後悔をもつ息子『光の航路』
ある島で起こるふたつの親子の過去と未来をつなぐ感動の物語
「告白」「白ゆき姫殺人事件」「リバース」など、ヒット連発のミステリー作家・湊かなえの累計50万部を超えるベストセラー『望郷』が、貫地谷しほり、大東駿介、木村多江、緒形直人、森岡龍、浜野謙太ら豪華キャストを迎え、『ディアーディアー』(2015年)、『ハローグッバイ』(2017年)の菊地健雄監督により映画化!
2017年9月16日(土)の公開に先立って、8月22日(火)に東京・新宿武蔵野館で完成披露上映会が開催され、『望郷』の主演をつとめた貫地谷しほりと大東駿介、菊地健雄監督が舞台挨拶に登壇した。
《イベントレポート》
『望郷』完成披露上映会の会場は、早いタイミングで満席となり、この作品に対する期待が伺える。上映前、moumoonによる主題歌「光と影」が流れる中、主演の貫地谷しほりと大東駿介、菊地健雄監督が登壇。完成披露を迎えたそれぞれの思いが語られた。
『夢の国』夢都子(むつこ)役の貫地谷は、「本日は、公開に先立ち、みなさま来てくださって本当にありがとうございます。観ていただくのがすごくドキドキしているのですけれども、(しばらく沈黙して)私にとって本当に大切な作品になりました。ぜひ広めてくださったら嬉しいなと思います。よろしくお願いいたします」と感慨深げに挨拶した。
『光の航路』航(わたる)役の大東も「みなさん、暑い中ありがとうございます。『望郷』ということで、どうしても自分の過去だったり、故郷だったりと僕たちも監督含め、向き合わざるおえない作品ですごく大切な作品になりました。みなさんも、きっとそういう気持ちになるんじゃないかなと思います。ぜひ楽しんでください」と思いを語った。
この作品が三作目となる菊地監督は、「本当に暑い中、こんなに多くのみなさまに集まっていただきまして、監督として本当に光栄ですし、とても嬉しく思います。何よりも、貫地谷さんと大東さんとこうして並んで、今日(完成披露の舞台に)立てたことを本当に嬉しく思っております。作品を観ていただいて、感じていただければと思っております。よろしくお願いいたします」と完成披露を迎えたことに対する思いを話した。
『望郷』の主演の話がきたときのことを振り返り貫地谷は「脚本を読ませていただいて、本当に素直にとても面白くて、すごくやりたいと思ってやらせていただくことになったのですけれども。それと同時に、なぜ私にこの役が来たのかなとすごく不思議に思ったのが本音です」と心の内を明かした。
それに対して菊地監督は「一番は、今回の原作がもともと湊さんの故郷である因島をモデルに書かれているというのが、読んでいる中で分かったので、まず、ぜひ因島で完成したいという思いがすごくありました。その中で、因島という島の中で生まれ育った二人の成長譚というイメージがあり、それをやりたいという思いがあったので、本当に島で生まれ育った姿を体現できる方ということで、貫地谷さんと大東さんにぜひに」と説明した。また、「我々は、どうしても(島に)お邪魔して撮ることになるので、その場にいかに居れるかということが非常に重要だと思っておりまして、お二人の過去の作品を観させていただいた中で、二人なら絶対にできると確信をもってお願いしました」と彼らに白羽の矢を当てた理由を話した。
一方、大東は、「湊さんの作品は2回目なんですけれども、前回の『白ゆき姫殺人事件』(2014年)では、撮影が10分で終わったんです(笑)」と、「私は1日(笑)」と笑う貫地谷に、「10分と1日は大違いですからね。あと、(貫地谷さんに)台本もらったやろ」と、台本もなく、「僕、全編アドリブだったんですよ。小説を読んできてと言われて、こっちがインタビューするから、思ったことしゃべってと言われたんです。だから、今回は、まず台本があると思って、それが嬉しかったですね」と主演で台本があったことを笑顔で喜んでいた。
そんな二人のキャスティングについて、菊地監督は、あまり長くない撮影期間の中で、因島に泊まり、主演の二人も含めた近い距離感の中で撮影することができたことや、それぞれの役についても、二人と色々な形でセッションができたという。「本当に細かいところや繊細な部分も含めて、それぞれのキャラクターを作り上げられたので。本当に二人ともチームの一員になっていただいて出来たことがすごくこの作品に、それぞれの役、キャラクターとして立ち上がったと思っているので、ここはぜひ注目してみなさんにも観ていただきたい」と熱く語った。
菊地健雄監督の印象について聞かれると、貫地谷は「初めてお会いしたときから、ピアスが印象的で、すごくお洒落な方なんだなと思って。衣装合わせも本当にこだわっていて、夢都子は2回ありましたよね」と衣装合わせが2回行われたことを明かした。
その理由として、菊地監督は、主人公たちが島で生まれ育った人たちなので、島での見え方を重視するとともに、映像で撮ることから、島の風景の中で、どういう色をもってきたら、夢都子や航というキャラクターを見ている人の目がいくかなどを検討して、因島でロケハンが行われて撮影場所が決まってから、再度衣装合わせを行なったという。
菊地監督は、衣装合わせだけでなく、演出方法においても、貫地谷から「本当に細かいことまで見てくださっているので、雰囲気でまあ良い感じだからOKってことも(他では)よくあったりするのですけれども、そういう妥協は一切なく、本当に私が心の中で、ああ、さっきの微妙だったかなと思うと、絶対に監督がちょっと、もう1回やろうかという風にきてくださって。本当に細かいところまでじっくり見てくださっているという安心感と嬉しさがすごくあって、本当に菊地監督とご一緒できて良かったなと、この現場で大ファンになりました」と称賛されて、大東に「ニヤニヤしている」と指摘されて、「まずいですよね。こういう場でこんなね。ニヤけちゃいますね」と照れ笑いをしていた。
さらに貫地谷は「本当にたくさんアイデアもくださって、私は本当に全部委ねていたような感じで、それで夢都子が出来上がったという感じでした」と菊地監督とともに夢都子を作り上げていったことを語った。
同じく大東も「出会ったときから、初めて衣装合わせ、顔合わせでお会いしたときから、この人を信じておけば大丈夫だなという。大げさじゃなくて、それはどういう部分なんだろうと思ったのですけれども。例えば、この『望郷』を映画化するとなったときに、この作品を読んで、まず湊さんの故郷の因島で撮ろうと思こと。それを本当にやってしまうこと。演出の部分でも、僕なり、スタッフさんなり含めて、それぞれがそれぞれを、この作品にとってのより良い形をみんなが理解をしていて、それは全部監督の力だなあと感じましたね。だから、映像に映っていない監督の仕事があるなと思いました。仲間が(監督に)ついてくるというか、監督からそれを感じました」と称賛し、菊地監督は「まずいですね、これはどういう会ですか。すみません本当に恐縮です」と頬を赤く染めて返していた。
会場の微笑ましい空気感を感じながら、菊地監督は「今日は、和気あいあいとしていますけれども、現場は毎日ピリッとする中で、結構毎日が山場の連続だった」と、撮影中の大変さについて「二つエピソードがあるというところも含めて、重さみたいなものをしっかり受けとめた上でやっていただいたというのがあるので。その辺は緊張がなかなかとけないという大変さはどうですか」と二人に問いかけると、大東は「貫地谷さんを現場で見ていた印象でいうと、やっぱり苦しそうだなとは思いましたよ」と印象を述べた。
すると、貫地谷の声が大きくなって、「そうなんですよ。私、すごく苦しかったんですよ。なのに、大東さん。私、今回は二編、『夢の国』と『光の航路』という二つの作品が一つの作品になっているんですけれども、私がやった『夢の国』とか、スケジュールもすごく大変で、朝から本当に夜中まで撮っていて、久々に私が1回東京に帰っていて、因島に戻って、大東さんを見たら、無茶苦茶謳歌していて。すごいご飯もたくさん食べていて、え、別に睡眠時間なんか全然余裕だよみたいな。あれ、私、何だったんだろって」と大東と比べて苦しかったことを告白。
「レモン農家の人とご飯食べに行きました」と笑って話す大東に「え、ずるいよね」と突っ込む貫地谷。菊地監督も、「誰よりも因島に馴染んだのが大東駿介さん」と、大東が地元の人たちと馴染み、友だち作りまでしていたことが分かった。
菊地監督は、雨降らしのシーンなど、スタッフも含めて大変だったと振り返る貫地谷の撮影については、寒い時期に加えて、『夢の国』の方が夜のシーンが『光の航路』に比べて非常に多く、劇中の夢都子の住むお屋敷を表現するためにも、夜や雨の撮影は欠かせなかったと解説。「夜のシーンを注目して観ていただきつつ、その中で本当に緊張感を保ったままやっていただいてありがたかったです。本当に」と労いの言葉をかけていた。
この作品の見どころには、二人のそれぞれの親子関係がある。
母親・佐代子役の木村多江について、貫地谷は「多江さんは、本当にみなさんも薄幸なイメージがあると思うんですけれども、現場ではとっても明るくて、パワフルでブレなくて、とても強い先輩だなと思って、本当に学ぶことが多かったです」と劇中の母親の印象とは全く違って、「誰よりもハツラツとしていて、本当に色々と私は支えてもらえました」と語った。
父親・正一郎役の緒形直人について、大東は「僕も同じシーンってほとんどなかったんですけど。だから、撮影を見学させてもらったりしてたんですけれど。役者としての先輩としても、そうなんですけれども。言葉に対する責任感というか、セリフに対する責任というのをすごく感じて、全く違うと言ったらあれですけれども。本当に勉強をさせてもらった感じで、、」と菊地監督に言っている意味が伝わっているかを確認すると、菊地監督も、「分かります、分かります。なかなか小説原作で、原作のセリフも生かしていったりすると、普段の日常的に使う言葉とちょっと違うものが入っていたりするんですが、緒形さんは、そこをどういう感じだと相当練られていたというか。そこについては、結構緻密にやりとりをしていただいたりしていて。その場に立つということをすごく意識されている」と大東をフォローした。
大東は、「そうなんですよ。いるということ。言葉をちゃんと届けるのって難しいんですよね。そういうことから、一切逃げないというか。その責任感と立ち振る舞いが父親像だったんですよね。だから、本当にご一緒できて、短い時間でしたけれど。すごく光栄でした」と先輩俳優からの学びについて語った。
さらに、菊地監督は、「本当にありがたかったのは、共演シーンは、本当に限られたシーンしかないんですけれど。当然、航としての役の幼少期に父親を見ているはずだからと、自発的に、結構緒形さんが芝居するときに、どんな父親を描いているのかというのを見てくれていたというのは、僕にとってはすごくありがたい役作りの一環だったですね。本当に」と大東の役作りの姿勢を評価していた。
このように、因島を舞台に、菊地監督や主演の貫地谷、大東たちが、瀬戸内地方の空気や時間を感じながら思いを込めて全力で作り上げられた『望郷』の見どころについて、貫地谷は、「きっと、誰しもが感じたことのある窮屈さみたいなものがこの映画の中に映っています。でも、そこからひとつ、一歩と言わずとも、少しでも前に出る勇気がもてる映画になっています。みなさん、ぜひ観てくださって、もし良いと思ったら、誰か大切な人、お友だちや家族、色々な人に広めてくださったら嬉しいなと思います。今日は、本当にありがとうございます」と勇気がもてる映画だと語った。
大東は、「僕はこの作品で、自分の31年に初めてちゃんと向き合えた気がしました。この作品を観てくださる方が、そういうきっかけにこの作品がなれば良いかなと。自分の人生なんでね。自分と見つめ合うって、意外とないので、それを本当に自然にさせてくれる映画だなあと思いました。僕は、この映画が大好きです。誰かにとって、そうなれば良いなと思います。楽しんでください」と自分と向き合える作品だと伝えた。
菊地監督は、二人の役が小学校の同級生だという設定で、十何年振りに再会した物語であることから、小学校や中学校で机を並べた同級生と「久し振りに再会したときに、それぞれの人生を近況なんかを話しながら、酒なんかを酌み交わしながら語り合うっていう経験が誰しもあると思うんですが。ひとことで言えば、この映画はそういう映画かなと思っております。それとともに、この映画を観て、自分の生まれ育った場所とかに、観終わった後に、映画館を出た後に、ちょっと想いを馳せていただけたりしたら、監督としては、嬉しい限りでございます」と観るものが故郷に思いを馳せる機会になればとメッセージを送った。
また、菊地監督は、楽しんで観てもらうとともに、観て何か心に残った感想や意見、批判など、何でも構わないので、声に出して欲しいと求め、「本当に、みなさんの声をあげていただくと、この映画が一人でも多くの方に届く、本当にすごい力になっていくということを作品を作る毎に感じておりますので、ぜひ口コミだったり、SNSで発信もできると思いますので、何でも構いません。我々も、チェックさせていただきますので、声を出していただけると幸いです。本日は、ありがとうございました」と終わりの言葉を残した。
『夢の国』と『光の航路』のふたつの物語からなる『望郷』は、瀬戸内海の因島を舞台に、光と影を感じながら、私たちがもっている故郷への様々な思いや感情を優しく振り返らせてくれる感動の作品になっている。ぜひ観ていただいて、その思いや感じたことを大切な人たちと分かち合ってみてほしい。
[撮影: 坂本 貴光 / 記者: おくの ゆか]
イベント情報
<映画『望郷』完成披露上映会>
日時: 2017年8月22日(火)
場所: 新宿武蔵野館 スクリーン1
登壇者: 貫地谷しほり、大東駿介、菊地健雄監督
映画作品情報
主演:貫地谷しほり 大東駿介
家に縛られた娘。亡き父に後悔を持つ息子。
ある島で起こるふたつの親子が贈る感動のミステリー
《ストーリー》
古いしきたりを重んじる家庭に育った夢都子(貫地谷しほり)は、故郷に縛られ生活をしていた。彼女は幼いころから本土にある“ドリームランド”が自由の象徴であったが、それは祖母や母(木村多江)の間で決して叶わない“自由”であった。月日は流れ結婚をし、幸せな家庭を築く中、ドリームランドが今年で閉園になる話を耳にする。憧れの場所がなくなる前に、彼女がずっと思い続けてきた事を語り始める―。一方、本土から転任の為9年ぶりに故郷に戻った航(大東駿介)のもとには、ある日、父(緒形直人)の教え子と名乗る畑野が訪問してくる。彼は、航が知らなかった父の姿を語り出し、本当の父親を誤解していた事を知る事となるが―。ある島で起こる、ふたつの親子の過去と未来をつなぐ感動の物語。
原作: 湊かなえ「夢の国」「光の航路」(『望郷』文春文庫 所収)
監督: 菊地健雄
脚本: 杉原憲明
制作/配給: エイベックス・デジタル
2017 / JAPAN / 112 min / COLOR / 1:1.85 / 5.1ch
©2017 avex digital Inc.
公式Facebook: www.facebook.com/bokyomovie/