映画『ソウル・ステーション/パンデミック』(Seoul Station)

【画像】映画『ソウル・ステーション/パンデミック』(Seoul Station) メインカット

映画『ソウル・ステーション/パンデミック』
原題: Seoul Station

世界中を圧巻した『新感染 ファイナル・エクスプレス』の出発点!
社会の根底であえぐ格差社会をあぶりだした異色のゾンビ映画

『新感染 ファイナル・エクスプレス』の前日譚!

世界の映画祭で大絶賛されて、韓国でも1,100万人もの観客動員数を達成して歴史的な大ヒットとなった『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)の企画案は、アニメ監督であったヨン・サンホ監督が『ソウル・ステーション/パンデミック』を制作中に、この作品をブロックバスター(1億ドル以上の制作費をかけて大規模の宣伝を行う大作映画)超大作クラスの大きな映画で実写版を撮ってみないかと出資会社から依頼されてはじまった。それほどに、この作品から、ヨン・サンホ監督の最後の最後まで社会問題を追及した予測不可能な脚本力、社会の根底であえぐキャラクターたちの演出力、究極状態に陥った人間の本質を探求した衝撃的な展開など、異色で類をみないあふれる才能が伝わってくる。しかも、娯楽性のある『新感染 ファイナル・エクスプレス』に比べて、この作品は、普通の人々の感情に非常に忠実であり、主人公の切ない魂の叫びが刻まれたエンディングには、観たものに深い余韻を残すほどの問題作に仕上がっている。

【画像】映画『ソウル・ステーション/パンデミック』(Seoul Station) 場面2

ヨン・サンホ監督が影響を受けた映画監督やアニメーター

持ち合わせた才能を思う存分に発揮しているヨン・サンホ監督が影響を受けた映画監督やアニメーターは、たくさんいるという。アニメーションでは、幼い頃から宮崎駿や大友克洋が好きで、今敏監督の『PERFECT BLUE』(1997年)や『東京ゴットファーザーズ』(2003年)は、人生を変えた名作だという。映画監督では、スターリング・キュービック、デビット・リンチ、デビット・フィンチャーなどにも憧れを抱き、韓国の監督では、イ・チャンドン、ポン・ジュノ、バク・チャヌクの影響を受けて育ったと語る。幼い頃から、少し暗いジャンルの映画が好きだったという彼は、ゾンビという素材にも早くから興味を持っていた。とくに、ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』(1978年)やザック・スナイダー監督がリメイクした『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)が観て面白かったという。日本の漫画では、花沢健吾の「アイアムアヒーロ」(小学館・2009年)や古谷実の「ヒミズ」(講談社・2001年〜2003年)「ヒメアノ〜ル」(講談社・2008年〜2010年)も好きな作品として上げている。

社会の根底であえぐ格差社会の闇をあぶり出す

この作品に登場する人物は、借金を抱えた元風俗嬢や労働意欲をなくしたヒモ男、路上生活者たちなどといった庶民が主要キャラクターに設定されている。さらに、ゾンビが加わることで、彼らを取り巻く残酷な現実が容赦なく浮き彫りにされてゆく。格差社会の問題や国家権力の機能不全、極限状況での人間のエゴや醜さなどをヨン・サンホ監督ならではのストーリー展開によって、普通の人々の孤独や絶望感があぶり出されている。現代社会を生きる私たちの心に大きな衝撃を与え、ゾンビ映画の可能性を開拓したこの作品は、世界中でも高い評価を受けて、第34回ブリュッセルファンタスティック国際映画祭 シルバークロウ賞受賞、第10回アジア・パシフィック・スクリーン・アワード 最優秀長編アニメ賞受賞、第20回富山国際ファンタスティック映画祭クロージング作品、第40回アヌシー国際アニメーション映画祭招待作品、第20回モントリオールファンタジア国際映画祭招待作品、第49回シッチェス国際ファンタスティック映画祭招待作品などでも大絶賛された。

『ソウル・ステーション/パンデミック』は、観るものが死を超えた恐怖を感じるとともに、現代社会の格差問題や国家の機能不全、人間の本質と醜いエゴなどの闇にも目を背けることができない優れた問題作である。『新感染 ファイナル・エクスプレス』の本質となる本作品を観てこそ、ヨン・サンホ監督に感染したと言えるだろう。

【画像】映画『ソウル・ステーション/パンデミック』(Seoul Station) 場面7

《ストーリー》

事の始まりは、ある夏の夜に首に大ケガを負ったひとりの年老いたホームレスが誰にも助けられずにソウル駅で息絶えたことであった。その後、そのホームレスは、地獄の淵から蘇ったかのように凶暴化して復活し、人々を襲った。襲われたものたちは、次々と豹変して凶暴化してゆく。街のあちこちで、豹変した者たちに猛スピードで市民が無差別に噛みつかれる異様な事件が続発する。その異様な状況に巻き込まれた元風俗嬢のヘスンは、感染者の数が異常に膨れ上がる深夜のソウルの街をあてどなく逃げまどっていた。その頃、ヘスンの恋人と父親も、必死に彼女を探し回っていた。全くこの事態を把握できていない警察や機動部隊は、逃げまどう一般市民を暴徒と見なして発泡して助けてはくれない。ただ家に帰りたいとだけ願うヘスンの思いは叶うのか。しかし、彼女には、さらなる非情な運命が待ち受けていた。

[記事構成: おくの ゆか]

映画予告篇

映画作品情報

第34回 ブリュッセルファンタスティック国際映画祭 シルバークロウ賞受賞
第10回 アジア・パシフィック・スクリーン・アワード 最優秀長編アニメ賞受賞
第20回 富山国際ファンタスティック映画祭 クロージング作品
第40回 アヌシー国際アニメーション映画祭 招待作品
第20回 モントリオールファンタジア国際映画祭 招待作品
第49回 シッチェス国際ファンタスティック映画祭 招待作品
 
邦題: ソウル・ステーション/パンデミック
原題: Seoul Station
監督・脚本: ヨン・サンホ
製作総指揮: キム・ウテク 共同製作総指揮: ソ・ヨンジュ、イ・ウン
製作: イ・ドンハ、ソ・ヨンジュ、ヨン・サンホ 
キャラクターデザイン: チェ・ギュソク 美術監督:ビョン・キヒョン
テクニカルディレクター: ヨン・チャンフム 編集: ヨン・サンホ、イ・ヨンジュン
音響監督: オ・ユンソク 音楽: チャン・ヨンギュ 
ワールドセールス: FINECUT
配給: ブロードウェイ 配給協力: コビアボム・フィルム 宣伝: プリマステラ
2016年 / 韓国 / ステレオ・ドルビーデジタル / 92分
© 2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD INC.& Studio DADASHOW All Rights Reserved.
 
2017年9月30日(土)より
新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
 
映画公式サイト

この記事の著者

おくの ゆか

おくの ゆかライター

映画好きの父親の影響で10代のうちに日本映画の名作のほとんどを観る。
子どものときに観た『砂の器』の衝撃的な感動を超える映像美に出会うために、今も映画を観続けている。

★好きな映画
『砂の器』[監督: 野村芳太郎 製作: 1974年]
『転校生』[監督: 大林宣彦 製作: 1982年]
『風の谷のナウシカ』[監督: 宮崎駿 制作:1984年]
『硫黄島からの手紙』(Letters from Iwo Jima) [監督: クリント・イーストウッド 製作: 2006年]

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