- 2017-11-15
- アカデミー賞, ゴールデングローブ賞, ヴェネツィア国際映画祭, 映画レビュー, 映画作品紹介
(原題: Nocturnal Animals)
小説、過去、現在・・・3つの次元が交差する、複雑で唯一無二の世界観。
別れた夫から届いた小説は果たして愛なのか、復讐なのか。
グッチやイヴ・サンローランのクリエイティブディレクターを経て、2005年に自身のブランド、トム・フォードを立ち上げた世界的ファッションデザイナーのトム・フォード。彼のデビュー作である『シングルマン』(2009年)以来、7年ぶりに監督を務めた最新作『ノクターナル・アニマルズ』がついに11月3日(金)より全国ロードショーを迎えた。第73回ヴェネツィア国際映画祭での銀獅子賞(審査員グランプリ)受賞を皮切りに、各国の映画祭で受賞を重ね、細部に至るまで綿密な指示がなされた華やかな世界観と、豪華キャスト陣が織りなす複雑で美しい物語が世界中から絶賛の声を集めている。
《ストーリー》
アートギャラリーのオーナーとして経済的には恵まれながらも、夫との関係が上手くいかず、満たされない日々を送るスーザン。ある週末、彼女のもとに20年前に離婚した元夫のエドワードから彼の書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が送られてくる。彼女に捧げられた小説は暴力的で衝撃的な内容だった。精神的弱さを軽蔑していた元夫の小説に、それまで触れたことのない非凡な才能を読み取り、再会を望むようになるスーザン。彼はなぜ小説を送ってきたのか。それはまだ残る愛なのか、それとも復讐なのか。
《みどころ》
本作のみどころは、なんといってもトム・フォード監督が独自の感性で作り上げた世界観である。主演を務めるエイミー・アダムスが着用する衣装の多くは、映画のために特別に製作されたオリジナルデザインのものであり、劇中にはダミアン・ハーストなどによる現代アートも数多く登場する。衣装、美術、建築、小道具など隅々まで行き届いた緻密で華やかな世界観は、観る者を釘付けにすること間違いなしであろう。
主演を務めるのは『メッセージ』(2016年)での好演が記憶に新しいエイミー・アダムスと、『ナイトクローラー』(2014年)などで知られ、出演作品が次々と公開される人気実力派俳優ジェイク・ギレンホール。『キック・アス』シリーズ(2010年/2013年)のアーロン・テイラー=ジョンソンが第74回ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞、『マン・オブ・スティール』(2013年)のマイケル・シェノンが第89回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされるなど、映画を彩る豪華キャスト陣の競演にも注目が集まっている。
また、原作を大胆にアレンジしたオリジナリティ溢れる脚本もみどころの一つとなっている。“小説”“過去”そして“現在”が複雑に絡み合い、次第にその境界が曖昧になっていくミステリアスなストーリー展開は圧巻である。バイオレンスで衝撃的な内容に、思わず目を背けたくなるような衝動に駆られ、まるで胸ぐらを掴まれているような息苦しさを感じながらも、観たら最後、映画の世界観に引き込まれ、心のざわめきを抑えることができなくなるだろう。
言葉以上に伝わる卓越した演技と演出で導かれる濃厚な世界。離婚した夫婦の間を繋ぐものは、果たして「捨てた愛」なのか、それとも「失った愛」なのか。世界中から感嘆のため息があがる、愛と復讐の美しきミステリーをぜひ劇場で見届けてほしい。
[文: 小森 萌菜]
映画予告篇
映画作品情報
第74回 ゴールデン・グローブ賞 助演男優賞(アーロン・テイラー=ジョンソン)
第73回 ヴェネツィア国際映画祭 審査員グランプリ
邦題: ノクターナル・アニマルズ
監督・脚本: トム・フォード
出演: エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、アーロン・テイラー=ジョンソン、アイラ・フィッシャー、アーミー・ハマー/ローラ・リニー、アンドレア・ライズブロー、マイケル・シーン
原作:「ノクターナル・アニマルズ」(オースティン・ライト著/ハヤカワ文庫)
2016年 / アメリカ / 116分 / PG-12
ユニバーサル作品
配給:ビターズ・エンド、パルコ
© Universal Pictures
TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
公式Twitter: @octurnal_JP