映画『あさひなぐ』レビュー
【画像】映画『あさひなぐ』メインビジュアル
 

映画「あさひなぐ」ASAHINAG

 

可愛くてかっこよくて面白いを超えた本氣の青春映画!!

第60回小学館漫画賞(一般向け部門)を受賞!「週刊 ビッグコミックスピリッツ」で連載中のこざき亜衣原作の大人気コミック「あさひなぐ」が乃木坂46・西野七瀬主演で待望の実写映画化!

物語は、高校入学を機に「今までとは違う自分になる」、と決意した15歳の高校1年生・東島旭がひょんなきっかけで薙刀部に入部するところから始まる薙刀青春ストーリー。

2017年5月~6月に上演された舞台「あさひなぐ」との連動企画でスタートし、主人公の東島旭をはじめ主要な登場人物達を、今や文字通り飛ぶ鳥落とす勢いで人気を増し続けている乃木坂46のメンバーが務めたことで、公開前から話題沸騰中の注目作である。

《ストーリー》

春、元美術部で運動音痴の主人公・東島旭(西野七瀬)は、二ツ坂高校へ入学する。旭は1つ先輩の宮路真春(白石麻衣)と出会い、その強さに憧れ”なぎなた部”入部を決意! 同級生の八十村将子(桜井玲香)、紺野さくら(松村沙友理)、2年生の野上えり(伊藤万理華)、大倉史乃(富田望生)と共に部活動をスタートしたが、”練習は楽で運動神経がなくても大丈夫”―そんな誘い文句とは真逆で稽古は過酷そのもの!

やがて3年生にとって最後となるインターハイ予選を迎える。順調に勝ち進んだ二ツ坂だったが、決勝でダークホースの國陵高校に敗れてしまう。

なかでも國陵の1年生エース・一堂寧々(生田絵梨花)の強さは圧倒的だった。野上新部長のもと再スタートを切った二ツ坂は、山奥の尼寺・白滝院で僧侶・寿慶(江口のりこ)の厳しいしごきによる、地獄の夏合宿を経て一回り大きく成長し、挑んだ秋の大会。

再び二ツ坂の前に宿敵國陵高校と一堂寧々が立ちふさがる。そこで、二ツ坂にとってまさかの出来事が―。

真春は部活動に姿を見せなくなり、精神的支柱を失った二ツ坂はバラバラになってしまう。
そのとき、旭は・・・・・・。物語はクライマックスへ向けて大きく動き出す―。

映画『あさひなぐ』宮路真春(白石麻衣) × 東島旭(西野七瀬)

《みどころ》

これまで剣道や柔道などを題材としたアイドル主演の映画はいくつかあったが、今回は部活動としてはマイナーな部類に入る薙刀(なぎなた)を題材とした映画である点も新鮮な見所だ。

上映開始30分も経たないうちに、アタマのどこかに在った「人気アイドル出演による単なる和気藹々とした青春ドラマ」という先入観は見事に崩壊する。

まず、練習や試合以外のシーンで次から次に起こるハプニングやキャスト陣が織りなす笑いを誘うツッコミどころ満載のやりとりにやられる人が続出するだろう。青春ドラマにはコミカルさと真剣味がつきものであるが、本作はそのギャップがとても思い切りある作品に仕上がっている。

乃木坂46のメンバー達が演じる役だけでなく、脇を固める役者陣の演じている強烈な役柄も注目だ。

中村倫也演じるお調子者かつ、ゆるすぎる顧問の小林先生。

西野七瀬演じる主人公・東島旭との一見恋愛風なやりとりが不思議と三枚目感を醸し出してしまっている森永悠希演じる男子学生・宮路夏之。

強烈な厳しさでなぎなた部のメンバー達をしごきあげる、“なぎなた教士”の称号を持つ、江口のりこ演じる白滝院の僧侶・寿慶などなど、彼らが物語のテンポを軽快にしてくれており、上映中、きっと観る人の腹筋を何度も崩壊させてくれることだろう。

主人公・東島旭の普段の天然ボケっぷりとなぎなたを通じての成長度合いとのギャップ、旭が憧れる”なぎなたバカ”である二ツ坂高校薙刀部のエース・宮路真春の薙刀における実力の高さと、勉強の出来なさぶりとの落差、紺野さくらの浮世離れ感からくる毒舌っぷりなども、彼らの巻き起こす笑いになんら引けを取らない。

彼女たちはいたって真剣ではあるが、全てが笑いの方向へと空回りする様は我々に病みつき感すらもたらしてくれるはずである。

映画『あさひなぐ』東島旭 (西野七瀬)

薙刀を手にしている以外の時間がボケと笑いに満ち満ちているからこそ、薙刀部における練習、合宿、そして試合本番における彼女たちの表情は真剣そのもの。特に白滝院での合宿は過酷を極める。男子でも生半可な気持ちで臨めば半日と持たず逃げ出すレベルだ。運動系の部活動に所属したことある人ならばきっといつ観ても、心の奥底に眠っている闘争心や向上心に火が付くような、そんなシーンも見所の一つといえる。

挑戦と敗北、挫折と再起、逃走と限界突破を経て成長する薙刀部のメンバー達。本作はフィクションを超えて、思わず目頭が熱くなる本物の感動が見事に生み出されている。

乃木坂46のメンバーにとって、トップアイドルとして走り続けることと、本作の薙刀に打ち込み、各々の役を演じることのやり甲斐や過酷さの度合いにはさほど大差はないのではないだろうか。

日々トップであることのプレッシャーにさらされ、結果を出し続ける日々の連続。ファンが望む自分であることと、自然体で自分らしくあろうとすることが一致していないことに苦悩する時もきっと大いにあるだろう。

自分らしい役、自分らしくない役を演じ抜くためのひたむきかつ真剣な努力の継続が各々の表情から大いに感じ取ることができる。

自分と向き合わなくてはいけない局面に直面している人にとってはより一層、心を打つ青春群像劇として観ることができるあろう。彼女たちの成長していく姿に見惚れるのはもちろんのこと、薙刀の面白さ、魅力にも触れることが出来る105分である。

名作「スラムダンク」(井上雄彦著)の超ヒットが当時のバスケブームを巻き起こし、現在のJBL(ジャパンバスケットボールリーグ)の誕生のきっかけとなったように、本作『あさひなぐ』もなぎなたブームを生み出す大きなきっかけとなるかもしれない。

[ライター: 蒼山 隆之]
[構成・編集: Cinema Art Online UK]

映画予告篇

映画作品情報

映画「あさひなぐ」ポスター

《原作紹介》

「あさひなぐ」は「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中の、 こざき亜衣原作による人気コミック。2011年の連載開始から徐々に人気 を高めていき、「全国書店員が選んだおすすめコミック2012」9位選出を はじめ、第60回小 学館漫画賞一般向け部門を受賞するなど、今日まで高い 評価を得ている。

日本古来の武道ながらも、なかなか縁遠い“なぎなた”を 題材とした本作は、キャラクターたちのコミカルなやりとりをベースに、部活動を通して出会った仲間やライバルたちとの手に汗握る対決シーンは もちろん、登場する幾人もの少女たちの、10代ならではの心の葛藤と成長 が繊細かつ鮮やかに描かれている。

運動音痴でどこかドンくさい主人公・ 東島旭がなぎなた部に入部し、眩しいほどのひたむきさで“なぎなた”と“仲間” と向き合っていく姿は、多くの読者に感銘を与え、同世代の学生にはもちろんのこと、若い頃にこういう経験をしたかったと振り返る大人たちの胸にも響く、爽やかな青春&成長ストーリーである。

コミックは2017年9月12日現在、24巻まで刊行。今回の映画版では1年生の旭がなぎなた部に入部し、秋の新人戦での“まさか”の出来事、そこから旭や真春が自身の苦悩からどう這い上がっていくかが描かれているが、原作ではその後、2年生になった旭が初めて後輩を迎え、心身ともに成長していく姿が描かれていく。また、ライバル・一堂寧々との因縁の直接対決や、新たなライバルの登場など、現在も目が離せない展開を繰り広げている。

《「あさひなぐ」プロジェクトとは?》

「あさひなぐ」プロジェクトは、乃木坂46を起用し、こざき亜衣の「あさ ひなぐ」(「週刊ビッグコミックスピリッ ツ」連載中)を原作として、映画と舞台を同時に展開するプロジェクトだ。企画プロデューサーの上野氏(東宝)によると「2015年に『悲しみの忘れ方 DOCUMENTARY of 乃木坂 46』を制作したときから、乃木坂46 ともう一度仕事をしたいと考えていた。

「あさひなぐ」についても映像化したいと思っていた大好きな漫画であり、「あさひなぐ」に乃木坂46を起用して映画化をしたら、素晴らしい青春映画ができると確信した」という。さらに、今回は東宝として史上初 の映画&舞台の連動プロジェクトである。

これについて、「乃木坂46が16人のプリンシパルなど、舞台で活躍していることは知っていた。また、 「あさひなぐ」は題材として舞台にも向いていると思っていた。ただ、自分は映画を作ったことがあっても舞台については素人なので、演劇のプロと手を組む必要があった。そこで、東宝には演劇部というプロ集団がいるじゃないかということに気が付き、演劇部に企画を持ち込んだ」のだという。こうして、「あさひなぐ」プロジェクトは産声を上げた。

《映画&舞台連動企画について》

2017年2月に情報解禁された本プロジェクトは、5月~6月に舞台上演、9月に映画公開という展開である。当然のことながら映画と舞台で表現方法が異なるため 、原作の中で表現する部分も微妙に異なり、“なぎなた”の表現に ついても方 法論からして異なる。

また、キャストも舞台と映画で全く異なっている。上野氏も「 映画と舞台 両方にまたがっているのは原作と私くらいで、あとは乃木坂46のメンバー の中でも違うキャストが取り組んでいるし、基本的には全く別物だと思 う」という。ただ、「別物だけど、大切にしている部分や根っこの部分は やはり同じで、それをどう表現するかの違いに映画と舞台それぞれの面白 さがある のだと思う。どちらも独立して成立している作品ではあるけれど、両方を観て、最後は共通している “根っこの部分”について 思いを巡ら せてもらえると企画した人間としては嬉しい」という。

《舞台『あさひなぐ』》

舞台『あさひなぐ』は主演の東島旭役に齋藤飛鳥を迎え、2017年5月20 日よりEX THEATER ROPPONGIをはじめ、大阪・森ノ宮ピロティホール、名古屋・愛知県芸術劇場で公演を行い、ライブビューイングも含めてのべ約4万人を動員した。

舞台キャスト: 齋藤飛鳥、井上小百合、新内眞衣、若月佑美、生駒里奈、堀未央奈、衛藤美彩、北野日奈子、七瀬公、大音智海、下司尚実、白勢未生、小山雲母、萩原麻乃、石井一彰、則松亜海、真琴つばさ

舞台「あさひなぐ」公式サイト

《 映画『あさひなぐ』キャスト&スタッフ 》

出演: 西野七瀬、桜井玲香、松村沙友理、白石麻衣、伊藤万理華、富田望生、生田絵梨花、本妃代、岡野真也、江田友莉亜、紀咲凪、北原帆夏、樋口柚子、緒方もも、宮田 祐奈、松田佳央理、中田花奈、斉藤優里、吉川靖子、藤谷理子、池田夏希、加賀成一、飯野智司、中村倫也、森永悠希、角替和枝、江口のりこ
 
原作: こざき亜衣「あさひなぐ」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
脚本・監督: 英勉
 
配給: 東宝映像事業部
© 2017 映画「あさひなぐ」製作委員会
© 2011 こざき亜衣/小学館
 
2017年9月22日(金) 全国公開!
 
映画公式サイト

公式Twitter: @asahinaguProj

この記事の著者

蒼山 隆之アーティスト/インタビュア/ライター

映画俳優や監督のインタビュー、映画イベントのレポートを主に担当。
東京都内近郊エリアであれば、何処にでも自転車で赴く(電車や車は滅多に利用しない)スプリンター。

そのフットワークを活かし、忙しい中でもここぞという時は取材現場に駆けつけ、その時しかないイベントを現地から発信したり、映画人の作品へ対する想いを発信するお手伝いをしている。

また、自身も表現者として精力的に活動を展開。

マグマ、波、雷など、自然現象から受けたインスピレーションをブルーペイントを用いたアートで表現する「Blue Painter」として、数々の絵画作品を制作。銀座、青山、赤坂などで開催する個展を通じて発表している。

俳優の他、映画プロデューサーやインテリアデザイナーと幅広い顔を持つブラッド・ピットをこよなく尊敬している。

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