映画『あさひなぐ』英勉監督インタビュー
映画『あさひなぐ』英勉監督インタビュー

映画『あさひなぐ』英勉監督インタビュー

最後の最後は自分と向き合うしかないというお話です。

『闇金ウシジマくん』、『アイアムアヒーロー』、『土竜の唄』、『海街 diary』など数々の映画化作品を輩出してきた小学館漫画賞を受賞した人気コミック「あさひなぐ」が待望の映画化! 高校の薙刀部を舞台にした青春ドラマに映画初主演の西野七瀬をはじめ、乃木坂46メンバーが挑戦。

『ヒロイン失格』(2015年)など数々の大ヒット作を手掛け、映画『あさひなぐ』のメガホンをとった英勉監督に本作への思いなどお話を伺った。

―― 劇場公開を控え、現在の心境をお聞かせ下さい。

“当たれっ!”(笑)。本当にみんなに観てもらいたいと思っています。公開が楽しみですね。

実際、僕の周りではおじさんとか業界の人からしか観たという話を聞かないので、やっぱり一般の人たちが観てどう思うかとか、楽しんでほしいなぁと、率直に思います。そう思って作った映画だし。

―― 主演の西野七瀬さんはじめ、出演者は今をときめく乃木坂46のみなさん。元気と活気のある撮影現場だったと思いますが、皆さんいかがでしたか?

みんな映画に出演したり係わった経験が少なかったので、ずいぶん気合は入っていたと思います。この映画に対して、みんなそれぞれ思いは違えど「やってやろう」っていう思いはすごくあったと思います。

それをどうしたら上手く活かせるか、こちらの考えを押し付けるのではなく、どうしたら彼女たち乃木坂46の魅力を引き出せるか、探りながら(意識しながら)撮影しました。

乃木坂46の映画ではなく、普通の劇映画を撮ってくれと言われていたので、ではこっち(映画制作側)に引き込むしかないのですが、彼女たちの魅力を消してまで役にはめるのか、はめないとか、探りながら撮りました。

―― 撮影現場では映像化する上で試行錯誤されたり、何か難しいことはありましたか?

薙刀は僕も知らなかったし、一般の人もほとんど知らないし、ひょっとしたら日本初(たぶん世界初?)の薙刀映画じゃないかな。シーンとしてはあったとしても。

世界初だけあって、あまり映像に向いていないというか・・・(笑)。とりあえず、「棒が長い」、「間合いが遠い」、「人気者が出るのに面を着けている」、「道場でしかやれない」、「天井が高い」など、いろいろと映像にするのが難しい要素があると思います。

やっぱり、キャストが頑張っている瞬間面を着けているし。フェンシングの映画もあんまり観たことないじゃないですか、(顔の表情が)もっと見えないんで(笑)。

それはあったと思います。薙刀のシーンを映像としてどう魅力的に見せるか、彼女たちが持っている魅力を劇映画の中でどれだけ損なわず活かせるか、役としても輝けるか、答えはすぐに出ませんでしたが、そうやらなきゃなぁという大きな命題でした。

それから、薙刀はスピード感もあってすごく面白いのですが、それを映像化するときはいろいろと試行錯誤がありました。

―― 薙刀を題材とした漫画も珍しいと思いますが、こざき亜衣さんの原作はビッグコミックスピリッツで連載中で、単行本も20巻を超え、多くのファンに支持されている作品ですが、映画化するにあたり、取組み甲斐もある一方、プレッシャーはありましたでしょうか?

「この原作はこうです」というような芯になる部分は、こざき亜衣先生が教えてくれていたので、それを損なわないように作るんだなとは思っていましたが、既に20巻続いている作品が約100分になるので全部は叶わなくて、その取捨選択というか、どの部分を描くか描かないとか脚本段階でプロデューサーチームや先生と相当なやり取りがありました。

原作の文字での言葉と映像になって台詞で話す言葉とは基本全く違うと思っていたので、そのせめぎ合いもありましたが、演技経験の少ない乃木坂46のメンバーたちが、それを演じたときにその台詞がしっくりくるのかこないのか、現場での台詞合わせも課題でした。彼女たちは薙刀の練習もあるなか、普段僕らがやるよりずっと長い時間台詞の読み合わせをしたり、薙刀の練習も永延と取り組んでいました。そうしたなか、役をつかんでくると、自分たちが演じるキャラクターはその台詞をどう言うのかなど、自ら考えてその役をつかんできてくれたので、そこから先は苦労なく撮影が進みました。

―― 高校の部活動をテーマにした日本の青春映画は一昔前ですと『ウォーターボーイズ』(2001年)や『スイングガール』(2004年)、最近ですと『ちはやふる』(2016年)や『チアダン』(2017年)など、バラエティ豊かですが、“薙刀”ならではの魅力というのはどんなところにあると思いますか?

これら挙げられた作品は、一致団結してチームで何かをする部活を描いていると思います。『あさひなぐ』は薙刀部として集まってはいますが、みんなで一体となって一つの目標を達成するというシンプルな話ではなくて、最後の最後は自分と向き合うしかないというお話です。原作からある話ですが、それが魅力だと思いました。

映画を観る人は、きっと中高生が多いと思いますが、友達グループとか自分の部活とかあっても、最後は自分で何とかするしかないし、その集団にいるから一歩踏み出せないのだったら、どこかで踏み出さないと自分になれないじゃないですか。これって『あさひなぐ』の薙刀部もそういうところがあります。集団でいるけど、みんなそれぞれ何かを抱えていたり、思いがあって、それを薙刀で出す子もいれば、全然薙刀とは全然関係ないところで出す子もいる。そういうのって僕はいいなと思います。

薙刀で勝つことが映画のクライマックスではなくて、自分と向き合って、何かを一歩前に進めたり、やれなかったことがやれるようになったり、というようなことがこの映画のテーマになっています。

薙刀部の6人が仲がいいとか、一体感で勝ったから「イェーイ!」とか、そういうのはあまり描いていないと思います。いわゆる部活ものですが、勝ったとか負けたとかどちらでもよくて、一人ひとりがその個性で一歩を踏み出すことを描くほうが重要でした。

―― 今後監督が撮ってみたいテーマや題材などありましたら是非お聞かせ下さい。

特に僕がやりたいというテーマがあるわけではなくて、いい企画と出会えればという感じですね。映像作品のパッケージのゴールイメージがあって、その企画が面白ければ、ジャンルもメディアも選ばずやりたいですね。

今回の『あさひなぐ』はとてもいい企画でした。なにせ天下の東宝映像事業部さんでしたし。次は『鷹の爪団』をやらせてほしい・・・(笑)。

―― 最後に、これから映画『あさひなぐ』をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。

ハードル低く侮って観て下さい(笑)。
よろしくお願いします!

 

最後に英監督らしい素敵なメッセージも頂きましたが、映画『あさひなぐ』は9月22日(金)より全国公開となります。

[スチール撮影: 久保 昌美 / インタビュー: 藤田 哲朗]

プロフィール

脚本・監督
英 勉 (Tsutomu Hanabusa)

1968年生まれ。京都府出身。高校時代から8ミリ映画で自主映画を制作。京都産業大学卒業後、東北新社に入社。CMディレクター、テレビドラマ演出家を経て、2008年に『ハンサム★スーツ』で映画監督デビュー。『高校デビュー』(2011年)、『行け!男子高校演劇部』(2011年)、『貞子3D』(2012年)、『貞子3D2』(2013年)、『ヒロイン失格』(2015年)などのヒット作を手がける。また、2015年にはコントバラエティ番組『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』も話題に。2017年は『あさひなぐ』のほか、9月1日公開の『トリガール!』と注目作が続いている。

映画『あさひなぐ』予告篇

映画作品情報

映画「あさひなぐ」ポスター

《ストーリー》

春、元美術部で運動音痴の主人公・東島旭(西野七瀬)は、二ツ坂高校へ入学する。旭は1つ先輩の宮路真春(白石麻衣)と出会い、その強さに憧れ”なぎなた部”入部を決意! 同級生の八十村将子(桜井玲香)、紺野さくら(松村沙友理)、2年生の野上えり(伊藤万理華)、大倉史乃(富田望生)と共に部活動をスタートしたが、”練習は楽で運動神経がなくても大丈夫”―そんな誘い文句とは真逆で稽古は過酷そのもの!

やがて3年生にとって最後となるインターハイ予選を迎える。順調に勝ち進んだ二ツ坂だったが、決勝でダークホースの國陵高校に敗れてしまう。

なかでも國陵の1年生エース・一堂寧々(生田絵梨花)の強さは圧倒的だった。野上新部長のもと再スタートを切った二ツ坂は、山奥の尼寺・白滝院で僧侶・寿慶(江口のりこ)の厳しいしごきによる、地獄の夏合宿を経て一回り大きく成長し、挑んだ秋の大会。

再び二ツ坂の前に宿敵國陵高校と一堂寧々が立ちふさがる。そこで、二ツ坂にとってまさかの出来事が―。

真春は部活動に姿を見せなくなり、精神的支柱を失った二ツ坂はバラバラになってしまう。
そのとき、旭は・・・・・・。物語はクライマックスへ向けて大きく動き出す―。

 
出演: 西野七瀬、桜井玲香、松村沙友理、白石麻衣、伊藤万理華、富田望生、生田絵梨花、中村倫也、森永悠希、角替和枝、江口のりこ
 
原作: こざき亜衣「あさひなぐ」(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載中)
 
脚本・監督: 英勉
 
配給: 東宝映像事業部
 
© 2017 映画「あさひなぐ」製作委員会
© 2011 こざき亜衣/小学館
 
2017年9月22日(金) 全国公開!
 
映画公式サイト

公式Twitter: @asahinaguProj

この記事の著者

この著者の最新の記事

関連記事

カテゴリー

アーカイブ

YouTube Channel

【バナー画像】日本アカデミー賞
ページ上部へ戻る